『玄人仕事・アーカイブス #1~#3』
本作をお読みくださり、ありがとうございました。
百二十万文字、四年半に亘ってということですが、本作の形態はオムニバス形式。
一つ一つが独立した、人物も世界観も全く異なる内容となっていました。
連続した形での投稿となっていましたが、一章一章が別タイトルの作品といっても差し支えありません。
ここではそんな物語たちそれぞれに正式な「あとがき」を置くという意味もこめて、各話ごとに簡単な備忘録を残しておこうと思います。
少し懐かしい呼称ですが、「公式資料集」や「ファンブック」。
そのような読み物のつもりで、軽い気持ちで楽しんでくださると幸いです。
※過分に各章のネタバレを含みます。
#1 『ビジネスホテル・バード』
<2015.2/9 ~ 2/9(2016.3/31 ~ 5/8)投稿>
『玄人仕事』、始まりのシナリオにして「小説家になろう」初投稿となる章でした。
当時は「なろう」というものがどういうものかもわからず、何もかもが手探りだったことを憶えています。
投稿日を見ていただければわかりますが当時そんな感じでしたので、今をしてみれば失敗確定な投稿方法、「一挙掲載」をやってのけています。
全く無名な作者が、『Prof.Works ― 玄人仕事 ―』というよくわからないタイトル(のちに『玄人仕事』と改訂)で出した本作は、当然のことながら鳴かず飛ばず…… 初回45PVという結果に終わりました。
「なろうの壁」という現実の厳しさを知った苦い出来事でもありました。
まぁ、べつに今でも二桁PVで終わってる日なんてざらですけどね……
こちらも投稿日に絡んでなのですが、この章は唯一と『大改訂』があった章でもあり、一ヶ月強の時をかけて書き直しがされました。
最初に投稿されたものは「15.憧れし鵬翼」の辺りから、ボッタに出会うところからがスタートで、大幅な加筆修正によって今の形になっています。
お話の最初ということで『実は本作の主人公は別の人物』という、奇をてらったスタートのつもりだったのですが、正直ウケは今一つ。
「あの第一章いる?」という意見もいただいたことから、初めての大改訂への挑戦の意味もこめて書き直しになりました。
でも実は…… 「前の短いのをちょっと変えただけでよかったんじゃないかな?」と、いまだに迷っていたりもします。
天空国家マルウーリラ、神学校の学生たちと、「ガラの書」を狙うレラオンとその一味。
このお話の設定自体は改訂前から全てそろっていました。
「すぐにクライマックスで始まる全章にとっての冒頭的な第一章を」というコンセプトだったのですが、同時に「一本のRPGが書けるくらいのストーリーを作って、惜しげも無く最後だけ描く」という血迷った趣向で突き進んだので、主人公であるシュンを主体にした物語だけでも、元々一本の大長編を描くに充分な量の設定がありました。それを表に出しただけでしたので、改訂にはそれほど苦労はなかったような気もします。
主人公が学生で、テロリストが来て、RPGのような世界観で―― と。
とにかく「初回」ということで、わかりやすい、ありきたりな設定を詰め込んで始められたお話でしたが、その「初回」というのがこの章の最大のネックであるように思えています。
色々な世界をまわるのが『玄人仕事』の売りの一つですが、いきなりぶっ飛んだ世界を出すわけにもいかず…… かといえ、これはあまりにも退屈では? と、いまだに「初回」の難しさに悩まずにはいられません。
知人をして、一ヶ月かけた大改訂後の「これパイロット版?」という名言は、本気で楽器を演奏したあとの「それチューニング?」に続き、一生忘れられない一言であるでしょう。
あ、そうそう。この世界での設定では「一部を除き、魔法は魔法名を叫ばないと出ない」となっております。
マルウーリラの真魔法って、ちょっと歳とると使いにくいですね。
ちなみにボッタについてですが…… あの鳥は私が高校生くらい? の時に作ったRPGに出てくるキャラがそのまま元になっています。
ボス前に陣取り、商品や宿屋、果てはセーブまで売りつけてくる謎の鳥。一回目は宿屋しか使わせてくれないあたりも当時からの由来です。
規制の商品全てに「ポーション㊧」など㊧マーク(左団扇から来ています)をつけて高値で売ったり、わざわざセーブポイントをブチ壊したりして陣取っている小粋なやつでしたが、なぜかあまりにも好評だったので採用しました。
本名ボッタ・クーリー。子供の頃の発想って、考え無しで面白いですね。
各部タイトルは、『鳥』にちなんでつけられています。
#2 『リゾート・ヒーロー』
<2015.2/15 ~ 2/21投稿>
「#1」で一挙投稿の愚を知ったため、一日置きに小出しにする小細工が入りました。
世界観設定としては、『シイニース国領のリゾート地。美しい町並と陽気な日射しが混ざり合う、安らぎの世界、バロア島』と、手元の資料にはあります。
「#2」にして「大人と子供の小さな出会いと別れを描く」という、全く地味な内容は今にしてみればどうかと思います。
しかもメインに据えられるのが「少年」って…… メイドさんがいなかったらと思うと、作者的にはあまりの華の無さにゾッとする設定です。
『玄人仕事』を読んでくれている方に妙に女性が多いように感じていたのは、特に女性に好評というわけではなく、「#2」にして若い男性読者を見事に弾いていたせいだったのかもしれません。
少年タストくんに関しては、伊達がイカと戦っている時にひょっこり現れ「兄ちゃん! 何やってんの!?」と、迷言を残してくれたことが強く印象に残っています。
キャラが勝手に動く、というのは作者としてはいつものことですが、あまりにもコメディチックな奇行に対する素の反応だったので、書いてからかなり笑いました。
褐色メイドのアーニリアさんは仲間うちではウケがよかったですね。
作者としてはそれほど可愛らしく書いたつもりはなかったので意外でしたが、女性キャラは恋愛要素が絡むと可愛く見えるようです。
『世界』が求めた『仕事』は、『魔石』の回収でした。設定上、伊達にとって一番多い『仕事』です。
どこの世界にも生き物がいる以上魔力はあるので、発生件数が高いのですね。『世界』さんたちにとっての、外科手術が必要な腫瘍みたいなものなのかもしれません。
各部タイトルには、『バカンスツアー』っぽいものがつけられています。
#3 『コンサルティング・スノー』
<2015.2/28 ~ 3/14投稿>
投稿を初めた時、手元にあったのは「#3」途中までの完成原稿でした。
「なろう」では一般に一部あたり三千文字くらいを目安に投稿される方が多いのですが、この「#3」まではそんな理由もあって、一部あたりの長さが本当にまちまちです。
ある意味では、文字数を気にしていない改定前の「#1」、そして「#2」「#3」は、本作中もっとも紙の小説に近い読み物だったのかもしれません。
今でも面白いなと思っているのは、当時季節が「冬」だったことです。
この現象はこののちも度々起こったことですが、『玄人仕事』は書いている作中の季節と実際の季節が重なることが多い作品でした。
とくに「#3」「#4」の時期はそのままで、狙ったわけでもないのに季節がかみ合い、創作の助けを得られました。
作者としての「#3」のお気に入りは、冒頭から何度かある食事のシーンです。
時代小説に『剣客商売』という有名な作品がありまして、実は『玄人仕事』は畏れ多くもその作品と特徴の一つを同じにしています。
「主人公はめちゃくちゃ強い、でも一回も戦わずに終わる話もある」。そんな従来の主人公の見せ場を無視したユニークな特徴です。
ですのでもう少しだけその作品にあやかって、「食事」にも力を入れてみました。
もっとも次話以降はそんな考えもどこかにいってしまい、ここだけになってしまいましたが……
「#1」改訂前の段階では、この「#3」がクモの初登場の章になります。
章によってはクモが登場しないので、「どうなってるの?」と思う方も結構におられたと思います。
クモは伊達だけがどこかで『世界』に呼ばれた場合、彼が呼び寄せない限りは元の世界にお留守番しています。
特に呼ぶ必要なく、短期で終わらせられそうに思った場合はそのままにしていることもありますので、「#2」「#5」のように、クモがいないという章が起こるわけです。
もちろん、帰ってからは怒られることもあるのでしょうが……
全体的にストマールを筆頭に、動いてくれるいい人物がそろっている章でした。
舞台が集落ということで人物を多めにそろえてみたのですが、全員に見せ場を振ることは叶いませんでした。
人物たちも雰囲気も、「#3」は結構に気に入っています。
本章で一番困ったのはイカリヌシ戦です。
過去に書いていたプロットでは戦闘シーンがバッサリ省略されていましたので、一から構築するハメになりました。
「#3」はある種、屈強なストマールとのバディものみたいなところもありましたので、お互いにぶつぶつ言い合いをしながら戦うような、「リーサルウェポン」っぽい面白い戦闘シーンをめざして描いてみたのですが、「なろう」では好評で、仲間うちからは大不評でした。
戦闘にコメディ要素が入るのは個人的には好きなのですけど…… そう思わない人も多いみたい。
どうにも今は、小難しく策略を巡らせて戦う方が好まれる時代なのかもしれません。
それにしても…… まさかこの章で最後に使ったアイテムを明かすのが四年半後になるとは思いもよらず……
長いことごめんね、ヴァルキリー・アロー……
各話タイトルは、『雪』に絡んだものになっています。




