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第85話 王都騒乱 帰還

皆様お久しぶりです。


生存報告にもならない短さ(いつもの半分以下?)ですが、よろしくお願いいたします。


前回のあらすじ

シャハーブの前になすすべもなく散った【薔薇の衛士】。シャハーブの眼に捉えられたケイジたちは絶体絶命の状態に……

ゆっくりと近づくシャハーブ。

その体からは強い瘴気が漏れ出している。

そして、それにあてられたケイジたちは一歩も動くことができない。


シャハーブの顔半面を覆う白い仮面。

残り半面を覆う禍々しいまでのタトゥー。

ケイジたちの姿を見てニヤリとシャハーブの口角が吊り上がる。


「つい素のままでやつらを始末してしまったからな。お前らで肩慣らしをさせてもらうぞ」

シャハーブは両こぶしを胸の前でガシガシとぶつけながら、一歩一歩近づいてくる。


ケイジは覚悟を決めなければいけなかった。

(4人は逃がすっ、せめて少しの間だけでも俺が時間を稼がないと……)


「お前たちは組合本部へっ! 組合長に知らせてトシフミたちへの連絡をっ!」

ケイジは自分の愛剣を鞘走らせると、震えようとする体を力づくで抑え込み構えをとる。

そして振り向きもせずにこう言った。

「ジョウジ。皆を頼んだぞっ! 俺が持たせられる少しの間・・・・で絶対にこの場から逃げろっ!」


「くっ! ケイジっ!」

歯を食いしばってケイジの背を見つめるジョウジだが、ケイジの気持ちが痛いほど判った。そして考えた。このままでは5人いても直ぐに殺られ、すべてが終わってしまう、せめて3人は自分が連れて逃げなければいけないと。


「いやぁっ!」

「そんなっ! ケイジっ!」

ジョウジは泣き叫びケイジに駆け寄ろうとするサリナの腕を掴み、強引に引きながら後退しようとする。

そして、ケイジを止めようと前に出掛かっていたハヤトに言葉をぶつけた。

「ハヤトっ! ケイジの思いを無駄にするなっ!」

「でもっ!」

振り返って叫ぶハヤト。


「俺らじゃ、シャハーブはどうにもできないっ! それよりも一刻も早くトシフミをっ!」

ジョウジはそう叫んで、半ば狂乱しはじめたサリナを脇に抱えて走り始めた。

そしてそれを追いかけるハヤトとレイカ。


それを見たシャハーブは、少し興を削がれたように片方しか見えない眉を寄せると、含み笑いをもらす。

「ふっ、まあ、あいつらはいてもいなくても同じだ。それよりそこのお前、ケイジと言ったか。お前の覚悟に免じて最初の一太刀はくれてやる。かかって来い」



「くっ!」

ケイジは瀧のように汗をかき、シャハーブからのプレッシャーに耐えていた。初手を譲られたと言っても、構えた剣でどうシャハーブに仕掛ければいいのか、考えうる限りの手を頭に浮かべたが、どれも通用するようには感じられなかった。

彼はもはや手詰まっていた。

(どうすれば、どうすればいいんだっ!)


「ん? どうした来ないのか?」

構えを取らずにニヤリと笑うシャハーブ。

「そうか、ちょっとは楽しめるかと思ったが、そうでもなかったようだな。ならば……」


シャハーブのその言葉に、自分の死を覚悟し、目を閉じるケイジ。

(ここまでか……、すまないみんな……)




ところが、その時はやってこなかった。

ケイジが恐る恐る目を開けると、シャハーブはケイジを見ておらず、彼に背を向けて北側にあたる王宮や貴族街の方を向いていた。そして肩を震わせながら呟いていた。


「これはっ! いや、間違いない……。だが、これほど……」

そして突然笑い出す。

「ふははははっ! そうだ、そうでなくてはなっ! そうでなくては楽しめんっ! 待っていたぞっ!」


そう叫ぶとシャハーブはケイジを振り返ろうともせず、静かに自分の体を宙に浮かすと、そのまま飛び去っていってしまった。


そしてその場には緊張の糸が切れたのか、前のめりにそのまま意識を失って倒れこむケイジの姿があった。












その頃、貴族街の一角。

敏文たちに留守を任されていたマサルとメグミは王都のただならぬ気配に気がついていた。


「どうやら港の方でよくないことが起きているようですね」

「ええ」

二人は、彼らの執務室で宰相府や探検者組合への問合せを行い、情報の収集にあたっていた。


するとそこへ、警備担当のタカが飛び込んでくる。

「港の方がかなりまずそうだぜ。俺の知り合いの探検者に連絡をとったが、港から魔人の大群に襲われてる。中央の第7~10区は壊滅に近いらしい」

「そのようです。宰相府の話でも陸海の国軍と王都警備隊、探検者には非常呼集がかかって、中央エリアの包囲防衛にあたっているようです。いつ貴族街にも飛び火するかわからないようですね」

そう、メグミがメガネを抑えつつ説明する。


「俺たちはどうしたらいい?」

そのタカの言葉に、顎に手を当てて考えていたマサルが答える。

「まずは男爵さまからお預かりしている屋敷の警備をしっかりと。各所に設置されている防壁構築の魔道具が問題なく起動しているかを確認してください。もっとも、トシフミ様たちが戦ったという、強力な相手が放つ魔法には耐えられないかもしれませんが……」

「ああ、そうかもしれんが、やらんわけにもいかんだろ。その辺の魔獣に飛び込まれても困るからな。全ての起動を確認して、すぐに連絡する。屋敷内の連中にはどうするんだ?」

扉から廊下に向かいつつタカが尋ねる。


「ええ、メグミ、皆に食堂に集まるように伝えてください。私はトシフミ様に連絡を入れます」

「わかったわ」

メグミはそう言うと、カマタ男爵邸に備えられた拡声器で建物の中にいるタカたち警備担当以外の全員を1階の食堂に集合させた。






タカたち5人の警備担当が屋敷の警備状況を確認している間に、マサルとメグミは現状を屋敷内のメンバーに伝えていた。


「かなりよくない状況ですね」

執事のショウノスケが呟いた。


「トシフミ様への連絡は?」

タイジロウがマサルに尋ねる。


「ええ、先ほどなんとか連絡が取れました。探検者組合からすでに連絡が入っていたようで、王都の状況もご存知です。もうまもなく……」

その時、マサルが最後まで話す前に、突然食堂の一角が眩い光に包まれた。


「……戻られたようですね」

マサルが少しほっとした表情を浮かべている。


「心配かけたな」

そして光が収まった時、そこにはマサルたちが待ち望んでいた人物が現れていた。

お読み頂きありがとうございました。

ここしばらく仕事がバタバタしていて、考える気力を失っていました。

少しずつでも前に進めたいと思います。

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