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第84話 王都騒乱 恐慌

おはようございます。

よろしくお願いいたします。


前回のあらすじ

王都の埠頭に現れた魔人たち。

組合本部の指示を受けたケイジたち【漆黒の猟犬】は中央エリア第5区の住民を救うため戦っていた。

そんな中、魔人諸とも住民を殺してしまう【薔薇の衛士】に怒りを露にするケイジたち。

そしてそこに現れたのは……

ケイジたちと【薔薇の衛士】の前に現れたのはシャハープだった。

「あ、あれは、あの時のっ!」

王宮の叙勲式に現れた時と同じように、そして敏文とまみえた時と同じように、白い半面の仮面に、入れ墨姿をしている。敏文と戦ったときは、ローブを身に纏っていたが、今は全身を曝していた。

鍛えられた筋肉を見せびらかすように服を纏っていない上半身。

黒いタイトなズボンにひざ下までのブーツを履き、そして、黒く長い髪を頭の後ろで束ねて流している。

そして、両腕には不思議な文様が刻まれた黒い籠手をはめていた。

そして、不敵な笑みを浮かべている。


シャハーブは敏文との再戦を望んでいた。前回の練兵場地下での戦いでは、途中までは互角の戦いを楽しみ、のめり込みそうになっていた彼だが、敏文の攻撃で顔に傷を負って我に返り、当初の目的の通り、魔獣たちに王都を蹂躙させることを優先した。

ところが、まさか敏文に1万匹を超える虫魔獣たちを一気に屠る術があるとは思いもよらず、彼が立ち去った後に、ホーエン王都が蹂躙されなかったことに、後悔の臍を噛むことになった。

師匠であるマフナーズからの厳しい叱責と共に。


そこで、彼は自分の装備を見直し、今度は直接決着をつけるつもりで、王都に乗り込んできたのだ。

しかし、そこは、ただ敏文との戦闘ができればよしとできる立場ではなく、ホーエンを”惰弱な状態”から”弱肉強食”の世界へ変えるという使命も負っていた。

そこで、まずはホーエン各地で魔獣による騒乱を起こし、各地の戦力を疲弊させるとともに、敏文を王都から引き離し、【モジュレル】で捕えたホーエン国民を魔人としてコーベンに送り込むことで、ホーエン国民に恐怖と絶望を与えることにしたのだった。


そして、そのような状況を作り出した中で、おそらくは王都に戻ってくるであろう敏文と決着をつける、そう考えていた。

そこで、新装備の慣らしという意味も含めて、”軽く”王都に散らばっている”それなりの相手”を見繕って、戦いの前の肩慣らしをするつもりでいた。

そこで目をつけられたのが、王都内で殺気をぶつけようとしていた【漆黒の猟犬】と【薔薇の衛士】だったのだ。




一方の地上の面々。


シャハーブがニヤリと笑いながら上空から自分たちを見下ろす態度に腹を立てた【薔薇の衛士】たち。

ショウは言葉尻は柔らかいように見えて、こめかみに皺を寄せつつシャハーブに向かって叫ぶ。

「そんなとこから我々を見下ろすとは失礼極まりない男ですねっ! 降りてきて正面から話すべきでしょうっ!」

「そうだぜっ! そもそも、自分の名前ぐらい名乗ったらどうだっ!」

タイシが自分の獲物である柄の長いハルバートを肩に担いだ状態でシャハーブを見上げて叫んだ。



「ふん、お前らに名乗るのもの勿体ない気がするがな。俺の名はシャハーブ、エクバートの王シダーグ様に仕える戦士だっ」

自分の王の名前を口にした瞬間、その表情から笑みが消える。


「おい、聞いたかっ? シャハーブだとよ」

「ああ、聞こえたよシュン。あいつだろ、王都に気色悪い虫をわさわさとばら蒔いたのは」

シャハーブの名にニヤリと笑うショウとシュン


「そういえば、シュンは虫が大キライだったな」

「うるせぇよタイシ。俺は醜いものがキライなだけだ」

タイシの余計な突っ込みに、ふてくされた表情で顔をそむけるシュン。


ショウ、シュン、タイシが前方でシャハーブにつっかかる一方で、女性たちのそばにはリョウスケとヒロトが一応、彼女たちを守るように立っている。

「でもよ、あいつを始末すれば、俺たちまた名前が売れるなリョウスケ」

「ああ、だってよ、黄ランクの奴に押し込まれたって噂だぜ? あいつを倒しもしねぇで追い返しただけで救国勲章と爵位もらったんだってさ。運がいいやつもいるよね」


「ふっ、そうだよな。俺たち相手にギャンギャン騒ぐこんな奴らより、まずはシャハーブをやっちまおうぜ」

シュンがケイジたちを鼻で笑いながら、仲間たちに呼びかける。

王都を襲った首謀者とされる男を倒せば、自分たちの名声はさらに上がり、王都で今まで以上に自分たちの好きにできる、そう踏んだからだ。

好戦的な笑いを浮かべながら、【薔薇の衛士】たちはそれぞれの豪華に飾り立てた自慢の武器に手をかけていった。





ケイジたちは、シャハーブを一度見ていた。

王宮での叙勲式で、突然現れた姿をだ。

そして、魔獣1万匹以上を操り、紫ランク【純白の朝顔】の4人をまったく相手にもせず、そして敏文が押し込んだものの勝ちきれなかった相手。決して見下したり油断ができる相手ではない。

自分たちより格上のミサキたちの話を叙勲式の後で聞いていたケイジやサリナはここでシャハーブと出会ってしまったことに恐れを抱いていた。


そして、ケイジはかつて王都へ向かう船上で、敏文の《神速3》のスピードに互角にあたるのが精いっぱいだった自分では、シャハーブにかなわないことも悟っていた。話によれば敏文はシャハーブとの戦闘で《神速10》で戦っていたと聞いたからだ。


「ど、どうするケイジ……」

「あれ、ミサキたちがゼンゼン敵わなかったって……」

小声でケイジに訴えるハヤトとサリナ。2人とも顔が青ざめている。

そして、ケイジがその後ろを見ると、震えているレイカを必死な表情で支えるジョウジの姿があった。


「ああ……、こんなところで会うなんて、くそっ! 」

そうつぶやいたケイジは、ジョウジたちに【薔薇の衛士】たちが戦っているこの間にこの場を脱しようと伝える。

そして、少しずつ後ずさりを始めるケイジたち。


だが、シャハーブは彼らを逃がすつもりはなかった。それなりの相手で新しい装備の試しをしたいのだ。

「おい、お前たち、こいつらの次に遊んでやるからそこを動くなよ」

シャハーブは上空から地上にゆっくりと降りつつ、【薔薇の衛士】たちの次は彼らだと口にしたのだ。

シャハーブの気配に恐れを抱く5人。




「ふん、無用な心配なぞするな。お前らの出番などないさっ! どうせすぐに終わるっ!」

自信満々に言い放つタイシ。


そして、女性たちの護衛にリョウスケとヒロトの2人がつくと、ショウ、シュン、タイシの3人がそれぞれ自分の得物を構える。シャハーブからの距離は10メルほどだ。


そしてショウが叫んだ。

「コード トリニティ!」

すると後方にいたリョウスケとヒロトが口元で何か叫び魔法を発動する。それと同時にシュンとタイシがシャハーブの左右に瞬時に移動した。その瞬間、シュンとタイシ、それにショウの体を2人がかけた魔法によって薄い光が全身を覆っていた。


「ショウさまっ!」

後ろでヒロトとリョウスケの2人に守られた女性たちが叫びをあげると、ショウは女性たちに向けて自信満々にニコリと笑って親指をたてて見せると、正面からシャハーブに切りかかる。


そして、ショウが正面から突進し始めたその時、シュンとタイシが左右からシャハーブに対して懐から何かを取り出し投げつけた。

ボンと音がして、黒と紫の煙が立ち込める。そして、シュンとタイシが煙の中に突入し左右からそのまま切りかかった。

彼らが投げたものは、即効性で視覚を奪う効果のある黒の煙と麻痺効果のある紫の煙を瞬時に発生させる煙幕玉だった。彼ら自身はそれらに抵抗できる魔法をリョウスケたちにかけられている。


そこまでで、シャハーブが反応しないことに、口元にニヤリと笑みを見せながら、ショウは正面からシャハーブに切りかかり、振りかぶった自分のきらびやかな装飾がされた剣を3閃させた。


「速いっ!」

ケイジはショウの動きを見て、そう思った。

彼らのことは決して尊敬できる存在ではないが、その剣速を見て、ケイジはもしかしたら、シャハーブを倒せたのではないかと思ってしまった。



今まで、【薔薇の衛士】たちが対峙してきた普通の敵や魔物であれば、視覚を奪われ、麻痺を受けたところに左右の攻撃を受けている。もし、それを両手で防げたとしても、正面からすかさず切りかかるショウの攻撃を避け切れずに切り裂かれるのが常だった。


そしてショウの手には確かに人を切り裂いた感触が残っている。

いつもの感触に満足したショウは、すぐに後方に飛び下がり、そしてあろうことか後方を振り返って余裕の笑顔で親指をたてて、リョウスケとヒロト、そして心配そうに見つめる女性たちに勝利宣言をした。

「ね、いったでしょ。僕らにかなうものなんていないんですよ、たかが黄色ランクに毛が生えたような男に追い込まれるような男なんて僕らの敵じゃ……」

そこまで、ショウが話したとき、リョウスケとヒロト、それに女性たちの顔が驚愕に変わる。

「ん? どうしたのです?」

女性たちの驚愕の表情にはなれているはずのショウだったが、リョウスケとヒロトまでが驚いているのをいかぶしんで、首をかしげる。


「得意満面なところのようだが、下らんな。ただ目くらましを使っただけではないか」

背後から聞こえるその声に、驚くショウ。

「ばかな、確かに切り裂いた感触があったんだぞっ!」

振り返った彼がみると、そこには無傷のシャハーブが。


「ああ、確かに切り裂いたぞ、お前の仲間をな!」

シャハーブが右腕を振るうと煙幕が風に流されて晴れていく。


そこには、首を失って転がるシュンとタイシの姿があった。

二人の首は驚愕の表情を浮かべて固まっている。

「ば、ばかなっ! あの二人の攻撃をかわしただとっ!」


「ばかはお前だ。あんなしょぼい目くらましで俺をどうにかできると思っているのが笑えるわ。それともホーエンではあの程度の目くらましで十分なやつらしかおらんのか」

「くっ!」

「それに、この二人の攻撃のように蠅がとまりそうな遅さでは、俺に掴まれても仕方あるまいさ。お前の剣速にこいつらの首を合わせるのなぞ、たやすい、たやすい。それにエグバートではお前らの剣の速度では、魔獣の1匹すら殺せんぞ」

そう言って首を傾げるシャハーブ。



「さて、最初の一手は譲ったのだ。今度はこちらの番だな」

そう言ってニヤリと笑うシャハーブ。そして、彼の体から強い殺気が吹き出し始めた。


その姿を見て、その殺気に恐怖を感じたショウは1歩後ずさり、リョウスケとヒロトは両足を振るわせ始める。

「な、なんだよこいつっ!」

「お、おい、やべぇぞ、まじでっ!」

腰が引け始めたショウとリョウスケに対して、ヒロトはすでに涙目になり、そのズボンから湯気のたつものをしたたらせ始めていた。


そんな中、シャハーブが1歩ずいっと前にでると、ショウとリョウスケ、ヒロトは我先にと逃げ出した。

「ひいいっ! あんなの相手にしてられるかぁっ!」

女性たちを放り捨てたままで。


「ああ……シ、ショウさまっ、そ、そんなぁ」

女性たちは完全に腰を抜かして、へたり込んでいる。そしてその足元にはとても淑女としては他には見せられないものが広がっていた。


「ふん、この国の探検者とやらはずいぶんと詰まらんもんだな。あれで最上位のランクだというのか? 此れしきの事でっ」

そう言うが速いか、姿が掻き消えるシャハーブ。


次の瞬間には、先に逃げ出したリョウスケとヒロトが五体バラバラになって上空に吹き飛んでおり、その下ではシャハーブの右腕に胸を貫かれたショウが立ち尽くしていた。

胸に挿していた薔薇を散らしながら。


「ふん、せっかくトシフミとの再戦の為に、新しい装備を手に入れたというのに、試しにもならんではないか、つまらん」


そうつぶやく、シャハーブをケイジたちは、身動きできずに見つめている。

心では逃げ出したいのだが体が動かないのだ。

額には大量に汗をかき、シャハーブの姿を凝視するしかできない。


「さて、お前たちはあいつらみたいにみっともない真似はさらさないだろうなっ」

そう言って、シャハーブが1歩ずつ近づいてくる。


ケイジたちは今までに感じたこともないほどの恐慌に襲われていた。


最後まで読んでくださってありがとうございます。


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