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第74話 防壁上の死闘

お久し振りです。

投稿が遅れてすみません。


よろしくお願いいたします。

「一斉射用意!!」

正面から響く地響きに負けないよう大声を張り上げるカージ。


その声に緊張を高めながらマリカは正面を見据える。

右隣りではイチロウタが狙撃銃を構えている。

そして左隣にはナミがいた。

マリカは、ガトリングの銃身を凹凸がある第一防壁のへこみの部分に据え、防壁正面の地面が見下ろせるよう、木製の台を足元に置いてその上に立っていた。


正面の暗闇が膨らみ、その中から次々と篝火に照らされた巨大なバジリスクが防壁に向かって突進してきた。

「来たっ!」

マリカの表情はますます固くなり、肩に力が入っていく。


そんな様子を見たナミは一旦構えていたコンバットボウを下すと、マリカの肩をポーンと叩いた。

「えっ! なにっ?」

マリカはビクッとすると、トリガーを引きそうになる手を辛うじて止めて、ナミを見る。

すると、ナミはニッコリ笑いながら右肩をグルグルと回し、マリカにも同じしぐさをするように目で訴えかけた。


マリカは、言われたとおりに左右の肩を回す。

するとほんの少しだけだが、肩から力が抜けたような気がした。

「ありがとう、ナミ」

その言葉にナミは無言でコンバットボウを構えなおす。


その間も、バジリスクの突進は止まることなく、そして後方にいるバジリスクが放つ「炎」と「氷」は変わらずに第一防壁の壁を叩き、魔法士たちが構築する《防》系の魔法の障壁にぶち当たっていた。

「くっ!」

魔法障壁を作る魔法士たちの顔には汗が浮かび、障壁を維持するのに必死になっていた。


そして、バジリスクの群れが第一防壁まであと30メルまで迫ったとき、カージの声が響く。

「撃ち方はじめっ!」


3列目以降に配された魔法士たちが《防》の魔法で障壁を作っている間、1列目、2列目に配された魔法士、弓を構えたものたちが、正面に群がるバジリスク目掛けて一斉に、魔法と弓を放つ。別の探検者は投擲用の短めの槍をその力を活かして防壁の上から投げおろしていた。


だが、マリカはまだ引き金を引けない。

本格的な戦闘を初めて経験する彼女は、周囲の轟音に呆然としていた。


その間も防壁の上からの《炎弾》や《氷球》、《雷刃》や《岩球》などがバラバラと降り注いでは、バジリスクに着弾するとその体を吹き飛ばす。

だが、バジリスクの一部には開いた口の中に魔法を受けて吹き飛ぶものもあったが、ほとんどのバジリスクは一旦吹き飛ばされたとしても、その巨大さゆえか、それほどダメージを受けた様子がなく、すぐにその体を返して再び防壁に向かって突進を始めていた。


その様子を見た、イチロウタはマリカに向かって叫んだ。

「マリカくんっ! 今こそ、その魔道銃の力を見せるんだっ!」


そのイチロウタの叫びに我に返ったマリカは、大きく息を吸い込むと気合を入れるがごとく、叫ぶように返事をした。

「はいっ!! 撃ちますっ!!」


そして、マリカの手にその咆哮に伴う振動が強烈に伝わってきた。



マリカが構えるガトリングから発射される魔導弾は、着弾時の爆発力に重点を置いた、爆炎弾というタイプのものだった。1つのベルトに装填された弾丸数は200。マリカはそれを3本、持ち込んでいる。10セルほどの長さの細い弾丸だが、それが着弾すると炎の魔法がさく裂して、周囲2メルにあるものを粉々に吹き飛ばした。

マリカは銃身を一度右の崖側に向けると、中央に向けてその銃口をずらしながら引き金を引き続ける。それによって1秒間に2発の間隔で発射された弾丸は、赤い閃光を伴いながらまっすぐにバジリスクの群れに次々に突き刺さっていった。


それまでは、魔法が当たろうが、矢が刺さろうが、平然として突進を止めなかったバジリスクが、マリカの爆炎弾を受けると、体に大きな風穴をあけながら吹き飛んでいく。そしてその場から起き上がることもなかった。


「おおっ! すごいじゃないかっ! これならいけるかっ!」

男爵の隣で戦況を見守るシノハの口から、驚きの言葉がこぼれる。


「確かにっ! だが気を抜くなっ! 奴らの数はまだまだいるぞっ! 他の者も手を緩めるなっ!」

「「「おうっ!」」」

男爵の叫びに応えて、マリカの攻撃に勢いづいた防壁の兵や探検者たちは、あらん限りの力を振り絞って、魔法や矢・槍を放ち始めた。



「撃ち終わったっ!」

「よしっ! 次のベルトの装填だっ! 落ち着いてゆっくりとだっ!」

そのイチロウタの指示に従い、最初の200発を打ち終えたマリカは、腰のポーチから次のベルトを引っ張り出すと、大きく息を付きながらそれを給弾口に差し込む。


だが、緊張からか、なかなかうまく差し込むことができずにいた。

「くっ、填らないっ!」



その間に仲間の死骸を乗り越えながらバジリスクが防壁に迫る。

その先頭は、すでに空堀に迫り、一部のバジリスクは第一門正面の空堀にかけられた短い橋に迫ろうとしていた。


「これ以上近づけるなっ!!」

男爵が声を張り上げる。


そんな中、バジリスクたちはその巨大な体に似合わない俊敏さで空堀を飛び越えて防壁にへばりつこうとしていた。

その巨大な体が防壁を超えれば、防壁上の兵たちはひとたまりもない。


魔法士たちは、それまで、斜めに打ち下ろしていた魔法弾をほぼ真下に向けて必死に放ち始める。

バジリスクはその爪を防壁に食い込ませて少しずつ登ろうとするのだが、魔法士たちの必死の抵抗に魔法弾を喰らって空堀に次々に落下していく。


その時ようやくマリカの装填が終わり、再び、ガトリングが火を吹き始めた。

だが、ガトリングはその構造上、防壁の真下を打つのには適していない。

「マリカくんは、堀に近づくバジリスクをっ! 真下のは無理だっ! それは僕らがっ! ナミさんっ!」

イチロウタはナミに向かって叫ぶと、狙撃銃を防壁の真下で今にも登ろうとしていた一匹に向けて、狙撃銃を撃ち放った。

ナミも眼下のバジリスクに向けて矢を射ち放つ。


「ギャウッ」

顔の正面、眉間に弾丸を喰らったバジリスクは反り返るように空堀に向かって落ち、ナミの矢をその眼に受けた別の一匹は他のバジリスクを巻き込みながら、空堀に落ちていく。


だが、イチロウタの狙撃やナミの弓術、それにマリカ必至のガトリング操作にもかかわらず、バジリスクたちは第一防壁に取り付いてしまった。


「お館様っ! 取り付かれましたっ!」

第一門の鐘楼から、左右の防壁を監視していた兵からの声が上がる。


「くそっ! まだだっ! 堀に叩き落とせっ!」

男爵は自分も叫びながら強弓を撃ち放つ。


バジリスクは次々と第一障壁に飛びつくと、その鋭いかぎ爪にものを言わせて、じりじりと30メルの高さがある第一障壁を登ってくる。


一方、第一門正面のバジリスクはその大きな体を突進させて、硬度の高い緑鋼で作られた門扉に轟音を響かせている。

緑鋼は最初のうちは、バジリスクの体当たりをはじき返していたが、どこでそんな知恵を得たのか、次第にバジリスク達はただ闇雲に突進するのではなく、第一門が石造りの第一防壁に取り付けられているつなぎ目にその巨大な口から氷弾や炎を吐き出して叩きつけている。


「お館様っ! 第一門がっ!」

「第一門がどうしたっ!」

「バジリスクの攻撃で門扉の接続部の負荷がっ!」

「なにっ!」

「長くはもちませんっ!」


その兵の報告を聞いた男爵とシノハの顔色が変わる。

バジリスクの数は当初報告の一千匹をもはやとっくに超えている。

これで第一門が突破されれば、第二門と第二防壁があるとは言っても、兵や中にいる避難民の衝撃は計り知れない。

弓を放つ手を休めないものの二人は額に大粒の汗を流し、厳しい表情を浮かべていた。

男爵はシノハに告げる。

「シノハっ! 第一防壁の放棄の準備を」


そして男爵とシノハが第一門に気を取られている間にも、カージとイトーがそれぞれ防御指揮をしていた左右の防壁上でも、兵たちに動揺が走り始めていた。


イチロウタが叫ぶ。

「カージさんっ! 空堀がもうバジリスクの死骸でいっぱいですっ! このままでは、やつらが死骸を踏み台に防壁を超えかねませんっ! 早めの決断をっ!」


その声を聞いたカージは大きく頷くと、そばにいたタケイに指示をだした。

「タケイっ! お館様に第二防壁への後退の指示を仰いでくれっ!」

「はっ!」

タケイはすぐさま、第一門鐘楼へ向かって走り出す。


「先生ぇっ! ガトリングのベルト撃ち尽くしましたっ!」

マリカも普段は出さない大声で叫ぶ。

そうしないと周囲の喧騒で声が通らないからだ。


絶大な威力を発揮して防戦を支えていたマリカのガトリングだが、弾を撃ち尽くして銃身が空転している。

「くっ! すぐにガトリングをポーチに仕舞って他の武器をっ! 出来るだけ威力の強いものをっ!」

「はいっ!」

マリカは銃身に熱を帯びたままのガトリングを構わずに魔法のポーチに突っ込むと、その中から今度はランチャーを数本取り出した。

そのうちの茶色い一つをイチロウタに向けて放り投げる。

長さ1.5メル程の茶色く細長い筒状のもので、筒の後方には、黄色い弾倉に5セルほどの直径の弾頭が5つ装填されていた。轟雷弾と呼ばれる雷の魔法を閉じ込めたロケット弾で、ガトリングほどの速射性はないが、1弾の威力は大きく上回るものだ。


イチロウタとマリカは安全ピンを引き抜くとすぐに第一防壁にしがみ付くバジリスクに向けて次々に轟雷弾を発射する。

すぐさま5つの弾頭を打ち尽くし、ランチャーを放る二人は、すぐに次のランチャーを構えてバジリスクに立ち向かった。


だが、もはや、二人の善戦は全体の流れを止めることができない。


そしてついに、その時が訪れてしまう。

イトーが指揮していた左翼の城壁上にバジリスクがたどり着いてしまったのだ。


魔法士たちはそれぞれ受け持ったエリアに《防》の魔法障壁を張り続けていた。だが魔力は無限ではない。当然切れる瞬間が訪れる。そのために魔力回復薬が配布されていたのだが、戦いなれていない魔法士の一部にあせるあまりまだ魔力が残っているにも関わらず、与えられた貴重な魔力回復薬を飲んでしまった者が何人もいたのだ。結果、周囲の魔法士に比べ早く魔力が枯渇してしまい、その場所の魔法障壁が失われる事になってしまった。


そこにバジリスクが飛び込んできたのだ。

防壁を乗り越えたバジリスクはすぐさま口からは炎を吐き、その強靭な尻尾でその場に居合わせた兵や探検者を次々と弾き飛ばし戦闘不能に追い込んでいく。

「ひぃぃっ!」

「たっ、助けてくれぇっ!」

尻尾に吹き飛ばされ防壁の外に飛ばされる魔法士。

バジリスクの炎の直撃を受け、火だるまとなる警備隊員。

腰を抜かして逃げ遅れた義勇兵の一人がその巨大な口に捕らえられて背筋が寒くなるような音を立てて体の骨を砕かれている。


対処する間もなく、直ぐに十数人が身動き出来なくなってしまった。


「ちっ! 焦ってがぶ飲みしやがったなっ! 交代要員に魔法障壁を張らせろっ! 上がった奴は火力を集中して追い落とせっ!」

イトーは舌打ちしながらも、反撃の指示を出す。


だが一度橋頭堡となる場所をバジリスクに確保されてしまったことが致命的な状況を生んでしまった。

その一匹のバジリスクに手間取る間に数匹のバジリスクに防壁上に這い上がられてしまったのだ。


5メルという巨大さと見た目の凶悪さ、それに直前に見せた尻尾の攻撃の強烈さ、人間の骨など容易に砕いてしまうその強靭な顎の強さは兵たちに恐怖心を植え付けてしまった。そのため、多くの兵たちは腰が引けてしまう。


そのため、バジリスクにジリジリと押され、そこに出来たスペースを詰める形で新たなバジリスクか防壁上に這い上がってきた。



「いかんっ! 第一防壁を放棄っ! 防御を徹底しつつ、第二防壁まで下がるんだっ!」

男爵が叫ぶ。


イトー、カージはその指示を受けて防壁の上で、自分が指揮する兵や探検者たちにそれぞれ指示を飛ばす。

「魔法障壁を厚くしろっ!」

「連絡橋を使って第二防壁まで下がるんだっ!」


その指示に魔力が枯渇した魔法士や手持ちの矢を射ち尽くした兵達がまず先に連絡橋へと走る。

それ以外の魔法士たちは魔法障壁を引き続き張りつつ、ジリジリと後退していった。



イトーがいた左翼にバジリスクが上がってしまった為、第一門の鐘楼にいた男爵やシノハたちは、カージがいた右翼側から連絡橋を目指す。


男爵達が鐘楼を降り、右翼の防壁上を連絡橋へ走っていると、そこにいた魔導銃を腰だめに構えた少女とすれ違う。

「マリカじゃないかっ!」


「お館様っ! 早く連絡橋へっ! 私たちがここをっ!」

男爵が少女に後方を託す事に躊躇いを見せると、側にいたイチロウタが口添えした。

「多分、いえ、間違いなく彼女がこの中で一番火力があります。私たちが彼女を守りながら後退します。ですからお館様たちは第二防壁の防御指示をっ!」


そのイチロウタとマリカの後ろには数人の魔法士や、ナミの姿もある。

さらには防壁上でバジリスクの侵入を妨害している数人の魔法士も親指を立てて殿を担う意思表示をしている。



彼らはその眼差しに強い光を宿しており、決して破れかぶれに申し出ているのではないことが男爵やシノハの眼には見てとれた。


「お館様っ! ここは彼らにっ!」

そのシノハの言葉に男爵は頷くと、マリカに向かって言った。

「わかったっ! だが決して無理はするなよっ!」


「「「「「はいっ!」」」」」


男爵達が連絡橋を向かったのを見るや、イチロウタたちは迫り来るバジリスクの群れに向かって攻撃を開始した。


「マリカっ! 遠慮は要らない。おもいっきり撃ち放てっ! ただ、忘れるなっ! 少しずつ後退しながら連絡橋を目指すぞっ!」

「はいっ!」

周囲の魔法士たちも呼応する。

「俺たちもやろうぜっ!」

「おうっ!!」




一方、イトーが指揮していた左翼は総崩れになりかかっていた。

イチロウタの様な経験がある探検者がおらず、また、マリカの様な火力を持っている人間がいたわけでも無かった。副隊長のイバは第二防壁の部隊の指揮に回っており、イトーをサポートする人材にも欠けていた。元々男爵はこちらにモンドノジョーを充てる積もりだったのだが、直ぐにバジリスクが迫る中、替えの人員を回す事が出来ていなかったのだ。


後に男爵はこの事を生涯の痛恨事として抱え続ける事になる。



イトーがバジリスクの向こう側、鐘楼に近い側にいた兵たちに向かって叫ぶ。

「お前たちはお館様と合流して右翼から連絡橋をわたるんだっ!」

兵たちが魔法士の障壁を頼りに右翼へ後退を始めるのを見届けると、イトーは後ろを振り返って指示を出す。

「魔力の残っている奴は魔法障壁を重ねて張るんだっ! 俺たちも連絡橋を渡って後退するぞっ!」


そう、イトーが指示をしたときだった。

本来ならば魔法障壁でバジリスクの侵攻を止めつつ徐々に後退すべきところを一部の探検者達が我先にと逃げ出してしまったのだ。その姿を見た義勇兵達もわらわらと後を追い始める。

「ひぃぃっ! もうだめだぁっ!」

彼らの経験の浅さが、冷静な判断能力を奪っていた。


「おいっ! こら待てっ! お前たちが先に逃げるなっ!」

そのイトーの声は彼らの耳には最早届いていない。


「くそっ! 残った人員で何とかするぞっ! 障壁を厚くしろっ! 徐々に後退だっ! 大丈夫だっ! 第二防壁のイバたちからの援護も来るっ!」

「はっ!」


この時イトーの周囲を固めていたのは彼が率いる第二警備隊の約五十名と幾名かの探検者達だった。

当初第二警備隊全百五十名のうち、魔法と弓術、槍術に心得のある八十名が第一防壁に配されていた。

そのうち十名程は最初のバジリスクが防壁上に現れた際に戦闘不能となり、残り二十名弱は右翼の連絡橋へ向かっていた。


中にはイトーの指示をきちんと理解して踏み留まった探検者もいたのだが、それ以外の義勇兵や探検者の殆どが連絡橋を目指して走り出してしまった結果、イトーの周囲には七十名に満たない人数しか残っていなかった。


しかも魔力は枯渇しかけ、残り矢も少ない。

それでもイトーは残った人員を鼓舞しながら、自身は先端に小型の斧がつけられた長柄の戟を振り回し、バジリスクと戦っている。


第二防壁のイバが率いる隊からの援護射撃も届き始めた。


「いいかっ! ここで後ろに抜けさせるなっ! 今だっ! 5メル後退しろっ!」


全力でバジリスクを叩いては相手が怯んだ隙に後退を掛ける。


それを繰り返しながら連絡橋の手前まで来たその時、魔力が枯渇した警備隊の魔法士の一人が意識を失いその場に倒れ込んだ。

「おいっ! カンジっ! しっかりしろっ!」


カンジが担っていた魔法障壁が途切れたその瞬間、二匹のバジリスクが次々とその驚異的な跳躍力を見せてイトーたちの頭上を飛び越え、連絡橋の袂に降り立ってしまった。


そしてイトーたちの背後から口から吐き出す炎による攻撃を放ってきた。

イトーの側にいた魔法士が咄嗟に《水防》の魔法を張るが、その場にいた全員をカバーすることが出来ない。


「ぐあああっ!」

「ぎゃああああっ!」


数人の警備隊員が炎に巻かれて防壁上から落下する。


バジリスクに退路を絶たれた人数は約二十名程。


「隊長っ!」

その様子に顔を青ざめさせたイバが自分が率いる隊に援護を強めるように指示を出そうとしたその時、何かが弾け飛ぶ様な轟音が辺りに響き渡る。


「まさかっ!」

そう叫んだイバの眼に映ったのは、ぐにゃぐにゃに曲がって第二防壁の壁に叩きつけられた第一門の変わり果てた姿だった。


そして直ぐに最早門とは呼べないそこからウジャウジャとバジリスクが入り込んできた。

「副隊長っ!」


青ざめた顔でそう叫ぶ部下に対して、イバは迷っていた。

本来の彼の立場からは全兵力を真下のバジリスクに向けなければならない。そして、一刻も早く連絡橋を落として第一防壁にいるバジリスクの侵入を防がなければいけない。

だが、今連絡橋を落とすことは、イトーたちの退路を絶つ事になってしまう。

彼にとって只の上司という存在ではない、日頃から兄とも父とも慕ってついてきた相手を見殺しになど出来ようはずもない。


「くっ!」


判断に迷い苦しむイバに部下が決断を迫る。

「副隊長っ! ご指示を!」



その時、第一防壁の方から渾身の想いで発せられた言葉がイバの耳に届いた。


「イバァーーッ! 迷うなぁっ! 連絡橋を落とせーーーっ! 俺たちの、ミヤザの人々を守るためだぁーーーっ!」 


「しかし、隊長ぉーーーっ!」

イバは慟哭しながら叫び返す。


その間にもイトーたちの集団は魔法障壁が弱まり、力尽きて、数を増すバジリスクの前に最早防戦すら出来なくなりつつあった。

その横を何匹ものバジリスクがすりぬけて、連絡橋の上を後退する兵たちに迫る。


「イバァーーーッ、やれっ! やるんだぁっ!」

イトーは手持ちの戟を必死に振り回しながら叫んでいた。


「くっ! 隊長ぉっ!」

イバは拳を握りしめると、魔法障壁でバジリスクたちを抑えつつ連絡橋を兵たちが渡りきったのを見定めてから命令を下した。


「連絡橋を……落とせぇっ!」


その命を受けた土魔法士が連絡橋の両端に魔力を加える。

その瞬間、連絡橋の上にいたバジリスクの体が宙に浮いたように見えたが、轟音と共に連絡橋だったもの諸とも、第二門の前に蠢いていたバジリスクの群れの上に落下した。


その轟音の中、イバの耳にはイトーの声がはっきりと届いた。

「よくやった!」


イバが顔をあげると、一匹のバジリスクに咥えられたイトーが折れて残った戟の柄をバジリスクの左目に突き刺した状態で、バジリスク諸とも第一防壁から落ちていく様が眼に飛び込んできた。

そして落下した場所は直ぐに蠢くバジリスクの群れに呑み込まれてしまった。


「くっ! 隊長ぉーーーっ!」

イバは自分の左の掌を右拳で打ち付けると、涙を隠そうともせず部下に激を飛ばした。


「隊長の弔い合戦だっ! 一匹たりともここを通すんじゃないっ! 隊長たちの死を無駄になんか出来るかぁっ!」

「「「「「おうっ!!!!」」」」」



ミヤザの人々を安らからしめる刻はまだ訪れる気配を見せていなかった。

筆が遅くて本当にすみません。

リアルがドタバタしていて、時間を見つけて少しずつ書いています。

本当は次話の投稿予定も入れたいのですが、明示出来ないことおわびします。

10日後ぐらいまでにはなんとかしたいとは思っています。

見捨てずにお待ちいただけるとありがたいです。

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