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第56話 陽光の精霊

おはようございます。

毎日あっついですね。


今日からお盆休みの方もいるのでしょう。

シゾウマは今日も仕事です……。


電車空いてるといいなぁ……。

 その日、雲ひとつない好天のなか敏文達は陽光の祭殿に向かって歩いていた。

 陽光の祭殿長ミコルとの約束の時間まであと1時間。内壁の西門をくぐると、目の前には荘厳な輝きを見せる祭殿ととてもよく整備された庭園が広がっていた。


「ほう」「すごーい」

 その光景を初めて目にする敏文とサラは感心する。

 祭殿の建物までの数百メルは一直線に参道が整備され、その両側にはいっぱいに植えられた花々がその色と香りで目と鼻を楽しませてくれる。その向こうには散策が可能な小道が整備され、さらにその奥には所々に植えられている大木の根元に人々が休憩できるようなベンチやテーブルが置かれていたり、そばを流れる小川では参拝者の家族だろうか、子供たちがはしゃいで水遊びをしている。


「これだけ広大なスペースをこれだけ整えるには大変だろうな」

 敏文が感心していると、ミサキがそれについて説明してくれた。


「そうね。もちろん祭殿専属の庭園師がいてね。常に訪れた人が楽しめるようにいろいろと心を配っているそうよ」

 そこで敏文は一昨日ジュンケイが言っていたことを思い出す。

「そういえば庭園には童女が一人居るって言ってたな」

「ええ、庭園の童女で名前が確か……サンという娘だったと思うけど。それがどうしたの?」

「いや、この前の西の大市で会った少女たちと似たような娘なのかなって思ってな」

「どうかしらね。私も見たことはないわ」

「そっか」


 そうやって歩いているうちに庭園の風景は西洋風の公園といった感じから、敏文が日本で見たことのある築山や灯篭がある和風のものに変わっていた。

「こんな庭もあるのか。なんだか懐かしいな」

「向こうにもこんな庭があったのですか?」

 その言葉を聞いてハルが敏文に尋ねる。


「そうだな。日本庭園といって自然の風景を模して築山を築いたり、小さな川を流したり、砂の庭園で砂に描いた模様やそこに置いた岩で海や島を表したりする庭があったんだ。しばらく眺めていても飽きなくてね。俺が暮らしていたよりもずっと昔の人が作ったものなんだけど、とても癒されるものだったよ。ここにあるのは少しそれににているなぁって思ってさ」

「そうですか。でも、確かに心が癒される光景ですね」

 ハルも敏文が眺めているのと同じ風景を眺めている。



「さて、あそこが入り口よ」

 ミサキが指で示しながら敏文に言う。建物の入り口には国軍とは違うすこし煌びやかな軍服の衛兵が数人立っており、一般の参拝客と祭殿関係者への面会者に対して確認を行っていた。

「祭殿の兵士は殿士と呼ばれていてね。国軍とは違って、祭殿が直接抱えている衛兵なの」


 敏文達は入り口にいる殿士に祭殿長との面談の約束があることを伝える。


「そうか、確認するから少しの間待っていてくれ」

 殿士はそう言うと、詰め所の面会者リストを確認する。

「確かに探検者チーム【純白の朝顔】ミサキ以下4名、同じく【ミスティック】トシフミ以下5名、合計9名の申請は受理している。人数は……6、7、8、9、10……? ん? 一人多いようだが?」

 殿士が首をかしげる。


「あ、ミシェルの分……」

 アヤメが気がついて呟いた。

「あ……」

 ミシェルが目を見開く。

「もしかして私だけ入れないの?」


 その時、ミサキが殿士に話かける。

「昨日確かに1名ミシェル=アシュリーが追加になること申請していたはずなんですが、確認をしてもらえますか?」


「ん。ちょっと待ってくれ」

 殿士が面会者リストの紙を捲っていく。そしてあるページでその手が止まった。

「おお、あった。確かに申請を受理しているな。では、それぞれ身分を証明できるものを見せてくれ」


「よかったぁ」

「……ありがとうミサキ」

 ほっとしたミシェルがミサキに感謝する。

「一人で待ちぼうけは辛いもの」


 敏文達は探検者ギルドの腕輪を殿士に提示する。ミシェルは魔法・生物研究所の職員であることを示す指輪を提示した。


「ん。確かに確認した。では、祭殿内にご案内する。おいっ!」

「はっ!」

 1人の若い殿士が駆け寄ってくる。

「この方たちを第8控え室へ案内して差し上げてくれ。ミコル様に面会予定の方々だ」

「はっ! かしこまりましたっ! どうぞ皆様こちらにっ!」


 敏文達はその殿士について祭殿内に入っていった。


 祭殿の中に入った敏文はその光景にまた驚くことになる。

 入ってすぐは広いホールとなっており、その高い天井にはびっしりと多彩な絵が描かれており、柱と柱の間の壁にはさまざまな植物を象ったレリーフが刻まれている。その精巧さは目を見張るものがあった。


 それをはじめてみる敏文とサラはお上りさんよろしく周りをキョロキョロしている。

「どうでしょう、凄いものでしょう?」

 前を行く殿士が得意そうに話しかけてきた。

「これらの美しい天井絵や壁の彫刻は、この祭殿の建築が始まったときから、その時代の名工たちによってずっと手を加えられてきているそうです。ですから、この祭殿はまだ未完成ということなのですが、それでもこの美しさには圧倒されます。私はこの光景に魅せられて殿士となったようなものですから。今はそれを毎日見られて幸せなのです。そしてこの祭殿の長であられるミコル様はこれらの彫刻よりも美しい。その方をお守り出来るのは光栄の極み」


 目をキラキラさせながら、そう語る殿士の姿に女性たちはクスクスと笑っている。

「あ、こ、これは失礼致しました。お役目を失念していたわけではありませんのでご容赦をっ」

 

「フフフ。いや、とても幸せそうなのでつい。ごめんなさい。別にあなたを咎めるつもりはありませんからご心配なく」

 ミサキの言葉にその殿士は顔を真っ赤にしている。

「……それにしても、こちらにいらっしゃる女性の方々は皆お美しい。皆様のように美しい方々にお目にかかれて大変光栄です」


 殿士がそう言うと、女性たちは顔を見合わせてまたクスクスと笑い出した。

「さっきのミコル様や彫刻に魅せられたあなたの話の後では、ちょっととってつけたような感じですわね」

「あ、いえっ、決してそのようなことはっ。み、皆様は本当にお美しくてっ」

 ミサキに指摘された殿士はさっきよりさらに顔を真っ赤にして緊張のあまり固まっている。


「はいはい、ありがとうございます。とても嬉しいですよ。さ、先へ進みましょうよ。えっと……」

 サラがそう言うと、殿士はしゃきっと気をつけをして自分の名前を名乗った。

「はっ。小官はリゾウ=サヤマルと申します」


 リゾウはそう言うと、カチコチな動きのまま、ぎこちなく前に進み始めた。

 それを見た女性たちがまたクスクスと笑っている。敏文達は先を進むリゾウの後に付いていった。



 第8控え室で敏文達が待つこと20分。控え室のドアをノックする音が聞こえ、一人の女性が現れた。

「皆様お待たせ致しました。これからミコルさまと面会をするお部屋にご案内いたします。どうぞこちらへ」

 女性は白くタイトなスーツを着ている。祭殿なので巫女服をイメージしていた敏文は少し驚くが立ち上がり、彼女のあとについていった。


 彼女に案内された部屋には長方形の大きなテーブルがあり、左右に7つずつの椅子が置かれている。そして所謂お誕生日席には装飾が施された背もたれが大きな椅子が置かれていた。


 お誕生日席に向かって近いほうから左側にトシフミ、ハル、ブンゾー、サラ、アヤメが、そして右側にはミサキ、アオイ、カオリ、シオリ、ミシェルが着く。


 すると、入り口の扉が開いて先ほど案内してくれた女性がミコルの来訪を告げた。

「祭殿長ミコル様のお越しです」

 敏文達は一斉に立ち上がり、入り口に体を向ける。


 すると、入り口から美しい金髪を靡かせ、コバルトブルーの瞳をした女性が現れた。


 その姿は神々しくどこかに照明係がいるのかと見紛うほど後光が差していた。

 そして敏文がイメージするまさに白い巫女服を身に纏っている。その縁は金糸で彩られこの祭殿の文様だろうか、おなじマークが入った帯のようなものを首から両側に提げている。そして手には金色の文様が入った杖を持っていた。


(やっぱりこれだよっ。祭殿の長で女性ならこんなイメージだよな……)

 敏文はそう考えながらも、ミコルに対して頭を垂れる。他の皆も同様の姿勢をとった。


「皆様お顔をお挙げください。わたくしがこの陽光の祭殿の長をしておりますミコルです」

 敏文の耳に心地よい声が届いてくる。


 敏文が顔をあげると、正面の椅子にミコルが腰掛け、その両脇には同じく金糸の縁取りはないものの巫女服を着た女性が2人彼女を守るように立っている。そしてその後ろにはさきほど敏文たちを案内してくれたスーツの女性が立っていた。


 そして、部屋の入り口、窓側には殿士が間隔をとって立っている。


 敏文はミサキの顔を見ると、彼女が頷いたのを確認して話を始めた。

「この度は私どものために貴重なお時間を割いてくださり誠に有難うございます。探検者チーム【ミスティック】のトシフミと申します。こちらにおりますのは……」

 敏文は順に皆を紹介していく。


 そして全員を紹介し終わったとき、ミコルが口を開いた。

「皆様ようこそ。どうぞお掛けください」


 全員が席に着くとテーブルには祭殿で作られたというハーブティが準備され、よい香りが漂い始めた。

 そこでミコルは改めて立ち上がり、みなを見渡して話始めた。

「今日こちらにお越しの皆様は先日のコーベンの大災難で王都を守ってくださった方々だと伺っております。皆様のご尽力には私からもお礼を申し上げさせてください。本当にありがとうございます」

 ミコルが頭を下げる。


「いえ、ホーエンに暮らすものとして、そして王都であれに遭遇してしまった探検者として出来る事をしただけです。どうぞお顔をお上げください」

 ミサキが言う。


「でも、1万匹以上の魔獣を1晩で倒すことが“出来る事”で済まされるものでもないでしょう。あなた方はそれをなされた。少なくともホーエンに住む者としてお礼を申し上げることくらいはよろしいでしょう。そして今日あなた方が私に会うためにコーベンからお越しになられた。これは私に何かできることがある、そういうことでございましょう? 私に出来る事や、お答えできることでしたら、遠慮なく仰ってください」

 そう言ってミコルは敏文を見る。


「では、貴重なお時間を頂戴している手前、単刀直入に申します。闇の魔法について、そしてその対応方法についてご存知であればお教え頂きたい」

「闇の魔法?」


 少し首を傾げるミコルに対して敏文は姿勢を正して話始めた。

「今回王都を襲ったものはエクバートの王、ジハーグの部下と名乗るシャハーブというものでした。彼は武術もさることながら、僅か2、3ヶ月で王都の地下に1万6千匹以上の虫系統の魔獣を整え、王都を蹂躙しようとしたのです。魔獣はなんとか退けることができたものの、シャハーブは健在。そしてシャハーブは改めて再びホーエンに害をもたらす事を宣言しました。我々は恐らくは彼が使っている魔獣を操る力はホーエンでは特殊魔法の1つとされている、闇の魔法であろうと考えています」

「なるほど」


「次にシャハーブが襲ってきたときに我々は対抗できるようにしておかなければいけない。結果的に前回王都を蹂躙し損ねた彼は次回はより一層厳しい攻撃をかけてくることが予想されます。ところが、我々は闇の魔法についてほとんど知識がありません。そこで、いささか筋が違うかもしれませんが、現在ホーエンに闇の魔法を使うものが知られていないという以上、その対極をなすと考える光の魔法をお使いになれるミコル様、あるいはこの神殿に祭られていらっしゃる陽光の精霊なら、闇の魔法自体やそれへの対応について何かご存知なのではないかと考えたのです」


 敏文の言葉にミコルは頷いて話し出した。

「ご来訪の目的はそういうことでしたか。確かに闇の魔法であれば魔獣を使役することができます。私は直接見ているわけではありませんが、それほどの魔獣を従えていたのであれば、そのシャハーブなるものは闇の魔法の使い手なのでしょう」


 サラがそこで質問する。

「今、闇の魔法を使う人はホーエンにはいないということなのですが本当なのでしょうか?」

「そうですね。ホーエンの魔法体系を整えたディリコがその時ホーエンにいた闇を司る常闇の精霊から祝福を受け使えるようになったということですが、それ以降闇の魔法を行使できたという人間はホーエンには存在していないようです。オズーノ様のお弟子のひとりであるジョウという方が研究をされているとは伺っていますが、使い手であるわけではありません。ただ……」


「あくまでホーエンには・・・・・・いないということですか……」

 敏文のその言葉にミコルが頷く。

「そう。他国ではどうかはわかりません。ディリコの時代以降、常闇の精霊がどこにいったのかは我々には全く判っていないのです」

「その常闇の精霊がエクバートにいる可能性は十分にあるということですね」

「はい」


「ところで闇の魔法というのはどういう特徴をもつ物なのでしょうか?」

 ミサキが尋ねる。

「光が届かない場所で澱む様々な生き物の瘴気が混ざり合い、周囲の空気中に漂う魔力を取り込んで変化した力が基になっていると言います。光に対する影であれば、光のない所には存在できませんが、闇というのは、光がなくとも存在しえます。それは地中であったり、洞窟のなか、海中、建物の中、そして人や生き物の心の中にも」


「人の心にもですか?」

 ハルが自分の胸に手を当てながらそう尋ねた。

「ええ、そうです。人の心には多かれ少なかれ、他人を恨み、嫉み、嘲り、貶めたり、自分の欲望を満たしたいという自己中心的な感情があるものです。それが強くなったとき、そこにはが存在するのです。闇の魔力はそれらの力を依代として強くなっていくものなのです。人間が生きている以上、それらがなくなる事はないでしょう」

 ミコルはそこで一息つき、ハーブティに口をつける。


「なるほど。シャハーブはエクバートが恵まれた環境にはなく、我々ホーエンや他の国々が怠惰な生活を送っていると叫んでいました。彼らには自分たちが置かれた現状に満足できるどころか、他国に対する嫉みが強く含まれているのでしょう。それがエクバートに蔓延しているのであれば、闇の魔力の基となるものがエクバートには溢れているということでしょうか」

 敏文は大きく頷いていた。


「そうですね。シャハーブなるものの言い分どおりであればそうなのでしょう。国あるいはその地域全体がそのような環境であるならば、闇の魔力の基となるものを完全に排除することは相当に困難なはずです」 



 そこで敏文は話の方向を変える。

「闇の魔力の基が根絶できないのであればその方法を議論してもしかたありません。ただ、我々は目先の話として近いうちに再びシャハーブが襲ってきたとき、それにどう対抗するかを考えなければなりません。今回は王都だけが大規模な攻撃を受けました。そして偶々我々も王都にいた。でも、次にも彼らが王都だけを襲うとは限らない。今回魔法・生物研究所が魔導樹の異常に気がついたように、何らかの前触れが捕らえられるのであればよいですが……」


「今から魔導樹をホーエンのあちこちに植えて観察するわけにもいかないしね……」

 カオリがつぶやく。


「それについてなのですが……」

 ミコルが話し出す。

「現在、ホーエン国内には当祭殿の分殿が10箇所あります。それらの分殿に現在近辺を流れる魔力の流れを大気中・地中・水中を含めて監視するように申し伝えてあります」

「それはすごい。すぐに変化がわかるものなのですか?」

 ブンゾーが驚きとともに尋ねる。

「大きな変化であればなんとか……、ただ分殿の近辺10キルの範囲は可能ですが、それ以上の距離となると変化を捉えることは難しいでしょう」


「難しいものですね」


「あとは定期的に国中の土魔法士たちに気配をさぐって貰うしかないか」

 ブンゾーが呟く。


「このローメリアの世界で闇の魔力が高まっている場所と言うのは判らないのかしら。そうすればエクバートがどこにあって、何処が彼等の本拠地か判れば……」

 ミサキがミコルに尋ねる。


「私には難しいですね」

 

「そうですか……」

 ミサキは少しガッカリする。


 その時だった。ミコルが持っていた杖が淡く光り始める。そしてその光がとても強くなった。


「これは……」

 敏文達は突然の出来事に驚く。


「少し待ってください」

 ミコルは敏文達にそう言うと右手をこめかみに当てて、何やら頷いている。


 最後に大きく頷くと、ミコルの持つ杖から光が消える。


 するとミコルは後ろを振り返り、そこに立つ白いスーツの女性に確認した。


「マユ、この後の予定はどうなっていますか?」

 

 マユと呼ばれた女性はすぐさま答える。

「この後は司祭様達との打ち合わせの後、ナーラの街の長ほかの皆様との会食の予定となっております」

「申し訳ないけど全てキャンセルしてください。改めて予定をセットしてくれるかしら」

「畏まりました」

 マユは一礼すると直ぐに部屋を出ていった。


「あの、何か起こったのでしょうか?」

 ハルがミコルに尋ねる。


「ええ、私にとっては何より大事な事です。あの方からのご指示ですから」

 ミコルはそう言うと敏文の顔を見る。


「トシフミ様、それにハル様。お二方はこれから私と一緒にお越しください。他の皆様はこちらでしばしお待ちください」

 敏文とハルは顔を見合わせる。


「あのっ、私も一緒に行ってはダメでしょうかっ!」

 そう声を上げたのはアヤメだった。

 だが、ミコルは静かにそれを拒絶する。

「申し訳ありませんがそれは出来ません。あの方のご意志はトシフミ様とハル様お二方のみを伴うようにというもの。それに背くわけには参りません」


「そんなっ」

 アヤメはとても悲しそうな表情を浮かべている。


 それを見た敏文はアヤメに声をかけた。

「済まない。みんなと一緒に待っていてくれ。何があったのかは後でちゃんと説明するから」

「アヤメ、ごめんね」

 ハルも困った表情でアヤメに声をかけた。


「では、参りましょう」

 ミコルはそう言うと、ガードとなる二人の女性と共に敏文とハルを伴って部屋を出ていった。



 祭殿内の回廊を歩きつつ敏文はミコルに尋ねる。

「これから一体……」


「あの方がお二方と直接お話をされたいと仰るのです。私以外の方と直接お話をされたいというようなことは滅多にあることではありません。ですので私も少し驚いております」

 正面を向いたままミコルはそう答えた。


 途中何度か殿士が守る扉を通り、更に階段を何度か降りていく。

 そして、最奥の扉を開いてそのなかに入ると、そこは地下であるにも関わらず壁全体が明るく光り、天井からは暖かな太陽の光がさしている天井の高い広間だった。


「地下なのにこんなに明るいなんて……」

 敏文とハルも驚いていた。


 するとハルに向かってミコルが告げる。

「さて、ハル様。これからあの方とお会い頂くのにその首飾りは不要でございましょう。おはずしくださいませ」

「あ」

 ハルが敏文を見ると敏文は大きく頷いた。


 ハルが首飾りを外すと、ミコルが笑いだす。

「やはりそうでしたか。ナツキ様。フフフ」

「お久しぶりです。ミコル様。黙っていてすみませんでした」

「いえ、色々とご事情がおありなのでしょう。さあ、あの祭壇の前に」

 ミコルがそう言って二人を促す。


 そしてミコルはその祭壇の前で膝まづいた。敏文とナツキもそれに従う。


 すると祭壇の上に目映い光が幾つも現れたかと思うとそれがひとつに集まり人の形を取っていく。そして声が響いてきた。

「ミコルよ。ご苦労様です」

「はい、お二方をお連れ致しました」


「トシフミ、ナツキ。驚かせてしまったようですね。私が陽光の精霊。光を司る者です。どうぞお顔をあげてください」

 

 敏文とナツキが顔をあげると、祭壇の上には柔らかな光を湛えた背中に美しい羽を持つ女性が浮かんでいた。


最後まで読んでくださってありがとうございます。


陽光の精霊との会話が少し長くなりそうだったので一旦ここで切りました。

夏バテになりそうですが体に気を付けてください。

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