第53話 2人の決意 ※
また2週間ぐらいかかってしまいました……。
勢いで書いてる時はサクサク行くんですが難しいですね。
やっぱりワールドカップに睡眠時間を削られているのが堪えてるのかな……。
クラウ達はロンディールに向かう馬車の中にいた。
レスティと使い魔達は影に入っていて、馬車の窓際に座ったクラウの隣の座席にはアレハンドロとパオラが座っている。向かいにはエドアルドが相変わらず飄々とした態度で座っていた。
クラウは赤毛の姿に戻っている。
その隣で、アレハンドロはパオラに謝っていた。
「パオラ、本当に迷惑を掛け倒してしまった。なんとお詫びしてよいか……」
「やめておくれよ。あんたが悪いわけじゃないんだろ。幸い店が燃えたわけじゃないし、ちょっと片付ければまたすぐに始められるさ」
そこにエドアルドが場に合わない明るさで話に入ってきた。
「いや~。パオラさん。すぐには無理じゃないかなぁ。一応闇のギルド“黒カラス”に目をつけられちゃった場所だしねぇ。少しほとぼりが醒めるまでは様子を見たほうがいいと思うなぁ」
パオラはそのエドアルドの話に困惑気味だ。
「じゃあ、どうすればいいんだい? 私にはあそこ以外に住むとこなんかないんだよ」
「ん~、そこはちょっとロンディールに着いてから相談させてもらってもいいかなぁ」
エドアルドは頭をかきながら答える。
窓の外を眺めていたクラウがエドアルドに問いかけた。
「これから、オレ達はどうなるんだ?」
「そうだねぇ。まずは、ロンディールのギルドに着いたら、そこのギルドマスターと一緒にこれまでの経緯を聞かせてもらうことになると思うよ。だいたいはあいつらとの会話で僕も理解できたけど、君の口からきちんと説明してもらいたいしね」
「……はぁ」
「説明するのがいやかい?」
溜め息をつくクラウにエドアルドは首を傾げながら聞いてくる。
「いや、仕方ない、とは思ってるよ。ただ、行く先々でいろいろと起こる自分に嫌気がさしているだけだ」
「ふーん。まあ、でも、今回は君の手の届く範囲では誰も死んでいないし、よかったんじゃない?」
「今回? ちっ、ギルドにはこれまでの事を知られてるってことか……」
「うーん。ある程度は知ってるよぉ」
「……」
それを聞いたクラウは窓の外を眺めてそれ以上はなにも話さなくなった。
「……まあ、ギルドについたら、いろいろ聞かせてよ」
エドアルドはニコリと笑うと、それ以上クラウに問いただすことはしなかった。
◇◇◇◇◇
ロンディールのギルドに着いたクラウ達は、すぐにギルドマスターの応接室に通された。
アレハンドロはソファに座って目をつぶって腕を組んでいる。パオラは終始落ちつかなそうに部屋の中を見ていた。
そこへ扉が開いて、エドアルドともう一人の男が入ってくる。
「すまない、待たせたな。ロンディールのギルドマスターのガルシアだ」
茶色い短髪のえらの張った顔立ちをした男だ。太い眉と大きな鼻が特徴的で、背はクラウより少し低いが、横にどっしりとした体つきをしている。
ガルシアはクラウ達3人の向かいのソファにどっかと腰を下ろす。エドアルドは入り口に近い側の1人がけのソファに座った。
「この度はうちの元職員が迷惑をかけてすまなかった」
ガルシアはそう言うとクラウ達に頭を下げた。
「別にギルドマスターのせいというわけじゃないだろ」
クラウがそう言うと、ガルシアは眉間に皺を寄せてこう言った。
「いや、キュカが闇のギルドにつながっていることを早々に感知できなかったのは俺のせいだ。彼女の普段の振る舞いからまさかと思ってしまった。確かに最近、いくつかの依頼で冒険者達の失敗が続いたり、護衛の任務にミスがあったりと、おかしいとは考えてそれなりに調査はしていたつもりだったんだ。まさか身内から情報が漏れていたとはな。ギルドマスター失格だ」
そう言って俯くガルシアにエドアルドが言う。
「まあ、その点は詳細の報告をしたあとにロマニールの本部に判断を仰ぐことになりますねぇ。ですが、その判断が下るまではあなたはロンディールのマスターですから、しっかりしていただかないと」
「そうだな。今はできる仕事をしよう。すまないが、今回の経緯を教えてくれ」
顔を上げたガルシアは、クラウ達にそう言った。
「わかった」
クラウはそう言うと話を始めた。
「そうか、そういう事情だったのか。それでキュカは“黒カラス”につけこまれたんだな」
ガルシアはソファの背もたれに体を預けて、天井を見上げる。そして思い出すように言った。
「彼女がギルドの職員になってそんなに経っていないころ、一時挙動がおかしな時期があったんだ。妙に何かにおびえるようなそぶりを見せたかと思ったら、訳もなく含み笑いを漏らしていたり……。おそらくその時期とセレスティーナさんの事件が重なるのだろうな」
ガルシアは溜め息をつきながら呟く。
「俺がもう少し気に掛けてやるべきだった。仕事を始めたばかりの職員の中にはえげつない依頼内容を聞いたり、討伐した魔物などの部位を見たりすることがきっかけで情緒不安定になる者もいる。彼女もそういうことだろうと思っていた。思い込みが招いた結果か……」
それを見ながらエドアルドが言った。いつもの飄々とした雰囲気ではない。
「ガルシア。そろそろ前を向く話をしよう。私たちがこれからしないといけないことは、キュカをどうするかだけではない。“黒カラス”にどう対応するかと、彼らをこれからどうすればいいのかを考えなければ」
「そうだな。お前の言うとおりだ」
そう言うとガルシアはクラウに向かって言う。
「ところで、ひとつ教えてほしい。君はなぜ“黒カラス”に追われているんだ? しかも話によると200万ユールもの大金が懸賞金として掛けられていると聞く。よほどの事だと思うんだが。もしかして君の魔獣を従えている能力と関係があるのか?」
エドアルドも頷いてクラウを見る。
(言いたくはないけど、ファナ達の姿もエドアルドには見られている。話したほうがギルドの協力を得られるか……)
クラウは決心すると、ウェスカスに着くまでに自分の身に起こった出来事について話をしていった。
「そんなことが!」
「そんな大変な思いをしたのかい……」
アレハンドロとパオラも驚いている。
「でも、異世界から来たって言うのは……」
ガルシアが首を傾げているとエドアルドが言う。
「ん~、その話は僕は聞いたことがありますねぇ。このローメリアという世界には極まれに異世界から迷い込む人がいるのだそうです。そういう人のことを“異邦の人”と呼ぶらしいですねぇ。このシャンハールのエリアでも過去に何人かそう言われた人がいたらしいですよ」
「それで、迷い込んですぐにグレイウルフに襲われて両腕を失った挙句にその老師とやらにつかまったと。そこから逃げ出したことで追われているんだな」
ガルシアの確認にクラウは頷く。
「最初は老師の研究所の人間に追われていたんだけど、途中から闇のギルドの連中がオレを追うようになって。やつらは目的が達成されればその経過で何がおきてもかまわないらしい。それでヤシュトやヌマンシアではオレに関わった人に迷惑をかけてしまった」
「それで、連中を退けている内に、懸賞金が上がっていったってことなんでしょうねぇ」
手のひらを上にして片手を上げながらエドアルドが言う。
「だから、オレは老師の部下を倒してヌマンシアで得た擬態の能力を使って元の姿を隠して、今の姿でこの街に入ったんだ。だけど、キュカはなぜか俺がコージだと判断していた」
そのクラウの言葉にエドアルドが答える。
「おそらくギルドで得た情報から判断したんでしょうねぇ。それに“黒カラス”経由で君が擬態の能力を持っていることも知ったのかもしれません。それでヌマンシアで忽然と消えたコージと突然ヌマンシアに現れた新人冒険者が同一だと判断したんでしょう」
「君は擬態の能力以外に、人の記憶を読み取る力もあるそうだね。“黒カラス”についてやつらからなにか情報を得ていたりはしないかい?」
ガルシアの言葉にクラウは頷く。
「それほど多くはないけど、少しなら。ヌマンシアで倒した男からその記憶の一部を読み取ったからな」
「それじゃ、キュカや今回襲ってきた連中からはどうだ?」
ガルシアが聞くとエドアルドが代わりに話す。
「あ、それはまだじゃないかな。ウェスカスで僕たちが拘束して別々に連れてきちゃったし」
「そうか、それじゃ、キュカやそいつらからも情報収集をしたい。申し訳ないが協力をしてもらえないだろうか。対策はその情報を得てからにしよう」
ガルシアが言うとエドアルドも大きく頷いた。
「そうだねぇ、それがいいね。じゃ、さっそく行こうよ。あ、アレハンドロさんとパオラさんはここで待っていてよ」
「ああ、そうだな」
「わかりました」
2人は頷く。
「じゃあ、あとでね。お父さん」
クラウの中にいるレスティはそう2人に声を掛けた。
「ああ、レスティ後でな」
アレハンドロはにこやかにクラウ達を見送った。
ガルシアとエドアルドに連れられて、クラウはギルドの地下にある独房に向かって階段を下りていった。
『ねぇ、クラウ。様子が変よ』
そうクラウの頭の中にアヴァが語りかけてくる。
『そうだな宿主。気配探知したほうがいいかもしれねぇぜ』
グーラも同調する。
するとその時、先を行くガルシアが大きな声をあげた。
「なんだっ! お前たちどうしたんだっ!」
ガルシアが駆け寄る先を見ると、魔道具の灯りがゆらゆら揺れるその先に2人の警備兵が倒れているのが見える。
クラウが近づくと、2人とも首から血を流していてすでに事切れている。
「くっ、奴等が近くにいるのかっ!」
そういってクラウは気配探知を行う。
「なっ、なんてこった!」
クラウが感じ取ったのは独房にはガルシアとエドアルドの気配以外、生きているものがいないという事実だった。
「くそっ! 先回りして口封じされたのか!」
独房の中で呆然とするガルシア達を追い越してクラウは通路を先へ進む。
すると、そこには首を掻かれて事切れているドミンゴとキュカの姿があった。
『そんなっ! キュカっ!』
いくら自分を襲ったとは言え、かつての級友の変わり果てた姿にレスティも驚きを隠せない。
そして、クラウは極めつけに嫌な予感がした。
「くそっ! やばいっ! マスターっ! エドアルドっ! 上に戻ろうっ!」
クラウは走る。階段を駆け上がり、驚く職員を突き飛ばしながら廊下を走ってマスターの応接室に飛び込んだ。
そこで目にしたものは……
ソファに並んで腰掛けていたアレハンドロとパオラの体から突き出している真っ黒な2つの腕だった。
『!!!』
クラウの中でレスティが声にならない悲鳴をあげる。
クラウが急いでソファの後ろに回るとなんとソファの影から2本の腕が突き出ていて、ソファの背もたれに突き刺さっていた。
そして、2本の黒い腕の間に口元と目の部分だけ開いた黒い覆面をした頭が見える。
そしてその口元はニマリと笑っていた。
「くそっ! ふざけんなよっ!」
クラウはグーラを剣に変えて覆面の人物を攻撃する。
クラウが剣をその頭に振り下ろすと2本の腕と共に突然その姿が掻き消えた。
その瞬間、アレハンドロとパオラの胸から血飛沫が音を立てて飛び出した。
「ぐぁっ……」
アレハンドロからはまだ声がする。パオラの方はもう首を垂れて動く気配がなかった。
『お父さん!』
レスティの悲鳴が聞こえる中、クラウは部屋を見渡しながら覆面の人物を探す。
「くそっ! どこに消えたっ!」
その時、部屋の反対側、窓際に置かれた観葉植物の影から男の声が聞こえてきた。
「くくくくくっ。おれはこっちさ」
そして上半身だけを影から出したその覆面の男は、楽しそうに笑う。
「そこかぁっ!」
クラウは右腕を男に向けてかざすと《鉄弾》を連射する。だが、するっと影に消えた男は篭った音を立てながら床の中を動き、さらに声を発した。
「ふふふ。むだだよ43号。そんなもの当たらないね」
「その呼び方! じいさんのところの奴かっ! 出てきやがれっ!」
クラウの叫びに男の笑い声が重なる。
「くくく。聞いていた通り老師や先輩に対して口の利き方がなっていない奴だな。おれは38号。まあ覚えておくんだな」
その時、廊下からガルシアとエドアルド、それにギルドの警備兵が飛び込んでくる。
「な、なんだこりゃっ!」
叫ぶガルシアに対して、ソファやテーブルに派手に飛び散っている血飛沫を見たエドアルドはアレハンドロとパオラに駆け寄る。
ソファの後ろから2人の首に手を当てると叫んだ。
「パオラはもう無理だ。アレハンドロはまだ脈が残ってる」
そう言うとエドアルドは治癒魔法でアレハンドロの胸の傷を塞ぎにかかる。
「あれれ、ちょっとだけずれちまったか。まあ、そいつは元冒険者だったし、直前に気配を感じ取ったようだったからな。心臓を突くことはできなかったか。まあ、いい。その2人のことはもののついでだしな。言われた奴等の始末は終えた。今日は挨拶代わりだ。43号また近いうちに襲ってやるよ。物陰には気をつけることだ。くくく。これから毎日安心して寝れるなんて思うなよ。お前がこれからどんなに脅えて暮らすことになるか楽しみだな。はっはっはっ」
「おいっ! 姿を見せやがれっ!」
クラウのその叫びにはもう38号の反応はなかった。
「ちきしょうっ!」
クラウは右腕の剣を床に突き刺して悔しがる。
『お父さん、しっかりしてっ!』
そう泣き叫ぶレスティの声に、はっとなったクラウはレスティを影から出してやる。
『お父さんっ!』
慌ててアレハンドロの正面に回ったレスティは口を押さえて悲鳴をあげる。
「レスティ! 今は治療が先だっ! 治療魔法が使えるんだよなっ! 手伝ってくれっ! クラウもっ!」
そのエドアルドの言葉にレスティとクラウは自分を取り戻し、慌ててアレハンドロの傷の治療のため魔法を行使し始める。
「間に合ってくれっ!」
その後ろではガルシアが警備兵に叫んでいた。
「おい、ギルド内に警報を鳴らせっ! 奴がまだいるかもしれん! そいつは影から突然現れる。足元だけでなく影のあるところからすぐに離れるように伝えるんだっ!」
「はいっ!」
警備兵たちは慌てて部屋を飛び出していった。
「くそっ! ギルドの中に侵入を許すなんてっ!」
ガルシアは両手を握り締め震えながら悔しがっている。
「よし、傷口は塞がったな。あとは、体力回復薬を……」
エドアルドはそう言うと、腰のバッグから液体の入った小瓶を取り出す。そして少し開いていたアレハンドロの口の中に流し込んだ。
「頼む。間に合ってくれ」
そう言うエドアルドの傍らでレスティは泣きながら、クラウは歯を食いしばって治癒魔法をかけ続けていた。
それから30分ほどが経ち、運び込まれた担架に乗せられたアレハンドロはギルド併設の病院へ移された。レスティはそこに付き添っている。
そしてパオラの遺体は布にくるまれて地下の安置所に移された。
運び出される遺体に向かってクラウは黙って見送ることしかできなかった。
クラウはギルドマスターの部屋でガルシアとエドアルドと向かい合ってソファに座っていた。
そこは、さっきまでアレハンドロ達の血飛沫で赤く彩られていた場所だ。ギルドの職員達が魔法で血糊をとり、ソファに開いた穴を塞いでいた。
「クラウあれが君が言っていたモルモティアなんだね」
エドアルドがそう語りかける。
「……ああ、あの番号で人を呼ぶ非人間的なことをするのは奴らだ。……それに老師の事を話していたからな」
クラウは俯きながらそう答えた。その手は強く握り締められている。
(また、オレに関わった人を巻き込んでしまった……。パオラは何の関係もないのにっ! どうしてなんだっ!)
「どうやら、クラウが囚われていた組織は“黒カラス”とつながりがありそうだな。奴らに辿り着きそうな情報の出元を塞がれた形か……。どう対応すればいいか……」
ガルシアがつぶやく。
「あんな風に影から神出鬼没に現れるようだとこちらも対処の仕様がありません。あれを防ぐとするとロマニールの冒険者ギルド本部の魔法結界ぐらいしか今は思いつきませんね」
エドアルドの言葉にガルシアはため息をつく。
「あんなもん、ここで展開なんかできるわけがないしな」
「そうですね。各ギルドに全てあれを展開していたら、それだけでギルドが潰れてしまいます」
「どうやって、守ればいいんだ……」
頭をかかえるガルシアにエドアルドが言った。
「ん~。方法がないわけではなさそうなんですけどね」
「なにっ! どうすればいいんだっ!」
「あるのかっ!」
ガルシアとクラウは驚いてエドアルドに詰め寄る。
「いや、なに、彼らが狙っているのはどうやらクラウのようですしね。だったら、クラウにロマニールのギルド本部に行ってもらえばいいと思うんですが」
「なるほどっ!」
ガルシアはポンっと手を叩く。
「ただ、それだとクラウくんはずっとギルド本部の中に篭っていなければいけなくなるんですよねぇ」
「あ」
「それは本意じゃないでしょ?」
クラウはその言葉を聞いてこれから自分がどうすればいいのか考え込んでいた。
(このまま、逃げ続けていてもまた誰かを巻き込んでしまう。オレの周りで関係のない人が命を落とすのはもうたくさんだ。どうすればいい……。ギルド本部に篭ったって何も解決されない。オレは、オレは……)
『そうね、前にでるしかないかもね』
『宿主、穴の中で頭抱えてても何も解決しねぇと思うぜ』
『ワタシハクラウニズットツイテイクワ』
『あ、ぼくもぼくも』
体の中から仲間の声が聞こえる。
「お前達……、そうだな。立ち向かうしかないよな」
その会話に部屋の外から声が加わった。
『クラウ』
アレハンドロについていたはずのレスティとボリスがそこにいた。
『もしあなたが“黒カラス”に立ち向かうというのなら、私にも手伝わせて』
『わしもおなじきもちだな』
「だけど、危険なことに……」
そうつぶやくクラウにレスティは笑って答える。
『あら、忘れたの? 私とボリスは一度死んでいる身。クラウのお陰でこうしてまだ想いを留めていられる。あなたが立ち向かうのなら私達も……ね。それにお父さんやキュカみたいに闇のギルドの犠牲になる人がこれ以上でないように私も何かしたいのよ』
「いいのか? 人を殺すことになるかもしれないんだぞ……」
『“黒カラス”の奴らだけよ。それなら私も戦えるわ』
決意を顔に表しながらレスティは力強く言い切った。
「そうか……わかった」
クラウはそうつぶやくと、ガルシアとエドアルドを見つめる。決意をその眼に現しながら。
エドアルドとガルシアは、顔を見合わせる。
クラウの呟きから彼が使い魔たちと相談しているのだろうとは思っていたが、その表情の変化からクラウがひとつの決断をしたことを悟った。
「ガルシアさん。エドアルドさん。オレは奴らに立ち向かうことに決めた。もう逃げ回るのはやめる。これ以上、オレに関わった人が犠牲になるのを見ている訳にはいかない」
そのクラウの言葉にエドアルドがニッコリ笑って返した。
「そうですか。決めましたかぁ。その点なんですが、実は冒険者ギルドもこれ以上彼らを放置しておけないという意見が多くてですね。幹部は全面対決することで一致しています。よければ君にも協力してもらえるとありがたいですねぇ」
「わかった。ぜひ頼む」
クラウは短くだがはっきりと言い切った。
「実際今回のキュカのようにギルド内部にも奴らの息がかかった人間が入り込んでいることでしょう。簡単ではないと思いますが、一度拳を振り上げれたらもう戻れません。あなたにも最後まで付き合ってもらうことになりますがいいですか、クラウ」
エドアルドの言葉にクラウは答える。
「ああっ!」
それを見たエドアルドはレスティに向かって言った。
「お父さんはこちらのギルドの病院でお預かりします。今はまだ動かすことができませんから。あなたがクラウといっしょにロマニールに向かったことは意識が戻ったら伝えてもらうことにしましょう」
「わかりました。ありがとうございます」
レスティはエドアルドに丁寧に頭を下げた。
「じゃあ、これからロマニールに向かいましょうか!」
エドアルドは立ち上がってクラウ達にそう宣言した。
「ああっ!」「はいっ!」
クラウとレスティはこれから起こる絶対に負けられない戦いに力強く望むことを決意していた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
次話からまたホーエン編に戻ります。




