第39話 王都騒乱 其の三
2014.4.18 話を大きく修正しました。
「ふうっ、片付いたか……」
最後のビグチュラを仕留めると、ケイジは一息つきつつ、《魔力回復薬》と《精神力回復薬》を口に放り込む。彼としてはあまりこの薬には世話になりたくないのだが今日は仕方なかった。
「ケイジ、大丈夫?」
サリナか声をかけてくる。
「ああ、心配ない」
ケイジ達はビッグファングアントの群れを撃退した後、探検者組合本部からの緊急依頼を腕輪に受信し、それを受諾した。
それで割り当てられた庶民街西側の西第18区の魔獣の排除と逃げ遅れた住民の捜索にあたっていた。
王都は、小高い丘の上にある王宮を中心にして、扇形に広がっていて、王宮を囲む様にひとつひとつが広い敷地を持つ貴族街が連なり、庶民街との間にある内壁に囲まれている。
庶民街は、西・中央・東の3つのエリアに別れ、西と東はそれぞれ20区まで、港や商業施設、商店そして噴水広場がある中央は10区に分けられている。
そのうち西のエリアは第1区~第5区が大きな商店の経営者や貴族ではない高級官僚などが住む所謂山の手だ。
そしてその外側に第6区~第12区があり、中流階級が居を構えている。
最後にその外側、海に面した第13区~第20区は中流~低所得者が住んでいる。
西第18区は海に近いどちらかといえば庶民の中でも中の下の所得層が多く住んでいる下町だ。古い住宅が多く、細い路地が多くあり迷いやすい。
ちなみに中央エリアは商人や職人、港の関係者が多く住み、東エリアは国軍関係者や政府職員が多く住んでいるほか、魔法・生物研究所を始めとする研究所や公共機関が集まっている。
ケイジ達は《鳥瞰の図》を手に、ひとつひとつのブロックを確認しながら進んでいく。
そして逃げ遅れた住民を見つけると、区の東側に待機している国軍のところまで連れていき、港までの輸送と護衛を頼んでいた。そしてまた戻っては捜索を行う。それを繰り返していた。
つい今しがたも、逃げ遅れた親子を襲おうとしていた3匹のビグチュラを仕留めたところだ。
ケイジ達が助けた親子を国軍に預けてまた元の捜索に戻ろうとすると、向こうから馬車が2台こちらに向かって来た。
馬車の周りには、5人の探検者が馬上で護衛に付いており、馬車に乗っている娘と馬上の探検者の1人が楽しそうに談笑している。
「あれは……、[薔薇の衛士]の連中じゃないか。なんでここまで住民の護衛を……。担当の国軍に頼んでないのか」
ケイジがそう呟くと、隣にいた国軍兵がその疑問に答える。
「あいつらは自分の助けた住民は自分達で港まで護衛すると言って譲らないんだそうだ」
「最後まで責任を持ってということか?」
国軍兵はふっと笑ってケイジに答える。
「そうとらえれば、聞こえはいいがな。要は金持ちの連中に自分達が守ってやったっていう恩を売りたいようなのさ。奴等の担当は富裕層が住んでるエリアの西端の第5区だ。ただ、同じ第5区に入った他の探検者チームの話だと、同じ住民でもすぐ側で使用人達の住居が襲われているときは見向きもせずに見殺しにして、自分が守っていた商人の馬車の護衛しかしなかったらしい」
「それって、酷くありませんか?」
レイカが口を挟む。
「救助した人達の護衛ももちろん大事だが、ランク紫の特級探検者なんだから、特定の商人だけじゃなくてもっと多くの人を助けたり魔獣の討伐の方で活躍してくれればいいんだがな」
彼等はホーエン全土にも15しかない紫ランクの探検者チームであり、しかも今王都には彼等以外に紫ランクは2つのチームしかいなかった。だから、本来、魔獣討伐の最適戦力なのだが、彼らには住民の為に戦う意思などかけらももっていなかった。
彼等は5名全員が薔薇を常に胸に飾ったキザなイケメン集団で、王都では特に女性に人気が高かった。だが、一方でケイジ達でも良くない噂を度々耳にする連中でもあった。
その時ケイジはサリナが、固く握った手を震わせながら奴等を睨んでいるのに気がついた。
「どうしたサリナ」
「えっ、な、なんでもないわよ」
明らかになんでもある反応なのだが、お互いのプライベートにあまり干渉しないという条件でチームを組んだケイジは、必要以上の事は仲間に聞かない事にしていた。
(あの様子だと何か深い訳がありそうだな)
ケイジは近い将来彼らと事を構えるような気がした。
◇◇◇◇◇
敏文達は、ダイカクからの連絡を受けた後、探検者の腕輪の通信機能を使って、探検者組合本部へ連絡をとる。
そして、魔獣の排除の依頼は継続して受諾するが、魔法・生物研究所の調査を助けるため、担当エリアの割り当てを外してもらうように要請した。受信した担当員は渋ったが、ダイカクからの連絡を受けたオズーノからの要請により、ドーセツがダイカクのフォローという件を了解してくれたことで、路地の奥に入り込むような捜索からは外されることになった。
途中でなにがあるかわからないので、敏文はまたナツキに《変化の首飾》を使ってもらうように依頼する。そして今度はシンジローとカズミにも。
途中に国軍の兵士がいれば、3人の顔は知られすぎているだろう。その後どう影響するかわからないからだ。
ドーセツの了解を得た敏文達はダイカクが指定した練兵場へ向かっていた。練兵場は西第5区、第12区、第20区のさらに先、王都の西の外れにある。貴族街とも接する広大な場所だ。王都全体で見ると扇の端に当たる部分になる。敏文達は今、西第11区を抜け、第12区に入ろうとしていた。もうすぐ、ダイカクたちが待つ場所にたどり着けるところまで来ていた。
すると、走っている敏文達の前に、第12区の避難民の保護と港への護衛を担当している国軍兵の集団が現れた。
「そこの探検者達待て! お前達どこに行くつもりだ!」
敏文は魔法・生物研究所の要請で、練兵場へ向かっていること、それについては探検者組合本部にも了解をとって行動していることを伝える。
しかし、魔獣との戦闘がいつ始まるかわからない場所で待機をつづけている彼らは、殺気立っていて敏文の言うことに理解を示そうとしない。
「我々はそんな話は聞いていない。これから先は、我々以外は第12区を担当する探検者以外は入ることはまかりならん!」
「じゃあ、探検者組合本部に問い合わせてみてくれ! 許可は得ているんだ!」
「陸軍本部からのそのような命令は受領していない! であるから通すわけにはいかん!」
「問い合わせをしてみてくれっ!」
「必要ならば上層から命令がくるはず。そのような命令は未だないっ!」
(くそっ。なんて堅物なんだ。このままここで無駄に時間を過ごすのか!)
敏文達が国軍兵と不毛なやり取りを続けていたその時、横合いから女性の声がした。
「そこで何を揉めているのです?」
現れたのは白い外套を纏った4人の女性だった。
「これは、[純白の朝顔]の皆さん。この区の捜索の状況は?」
国軍兵の問いに淡い茶色の長いストレートの髪を首横で纏めた4人の内では年長の女性が答える。
「ええ、この区の探索は終りました。もう残っている住民はいないはずです」
「はっ、了解しましたっ!」
「ところで何を揉めていたのです」
再び尋ねられた国軍兵がようやく敏文達の事を説明する。
「いえ、こちらの探検者達が、魔法・生物研究所からの要請でこの先の練兵場に向かうと言うのです。探検者組合本部の許可も得ていると。しかし、我々はそんな通達は受けていない。従ってここを通すわけにはいかんと答えていたのです」
「そうでしたか。では、私が探検者組合に問い合わせてみましょう。その結果で判断いただければよろしいのでは?」
「……はっ。ミサキ殿がそうおっしゃるのであれば」
渋々ではあるがようやく堅物の国軍兵が折れた。
「あなたたち、チーム名はなんとおっしゃるの?」
ミサキと呼ばれた女性が敏文に尋ねる。
「[ミスティック]だ」
「そう。あなた達が……」
少し驚いた様子のミサキは探検者の腕輪で通信を始める。
「……ええ、はい、はい、なるほど。……ええ、私達は西第12区の捜索は終わりました。え?……はい、了解しました。はい、ありがとうございます。では」
探検者組合と連絡がついたようだ。
「彼らチーム[ミスティック]は確かに魔法・生物研究所の要請を受けて、それに探検者組合本部の許可も得てこの先の練兵場に向かおうとしているようです。通して差し上げてください。それと、探検者組合本部から、私達も彼らと同行するように要請されました」
「えっ?」
敏文は少し驚く。
「私達が帯同することにご不満でも?」
ミサキが首を傾げる。
「あ、いや、申し訳ないが、俺達は貴女方のことをよく知らない。だから帯同の指示が出たことに驚いただけだ」
すると、敏文の答えに国軍兵達が驚く。
「おい、こいつら[純白の朝顔]を知らないって言ったぞ。どこのモグリだ。本当に探検者か?」
すると、ミサキは表情を崩して笑顔で言う。
「フフフ。そうですわね。お互い自己紹介がまだでしたわね。私達はチーム[純白の朝顔]。ランク紫の探検者チームです」
敏文達は驚いた。
(へぇ。4人とも結構若く見えたのにランク紫とはな……)
彼女は自己紹介を続ける。
「私がリーダーのミサキ。そして、こっちがアオイ。そっちの双子で髪が赤く短い方がカオリ。そしてもう一人がシオリよ。私達は姉妹なの。私が紫のクラス2、妹たちは紫のクラス1ね」
ミサキは3人を紹介する。
「アオイだ。よろしく」
「カオリだよっ!」
「シオリです。よろしくお願いします」
ミサキは背は165セルぐらい。サラより少し低い。年齢は26歳で深い碧色の瞳に鼻筋が通った美しい女性だ。紫の探検者というわりにはごつごつした感じは一切なく無駄な贅肉は無さそうに敏文には見えた。しかしながら女性らしい豊かな曲線も持ち合わせている。彼女は風と土魔法の使い手であり、腰には細いレイピアの左右に差している。ミサキはこれを両手で使っていた。
アオイは内側にカールした黒く長い髪をしている。ミサキより若干背が高い。168セルほど。年齢は24歳。黒い瞳に芯の強そうな表情をしている。ミサキと比べると少し細いが俊敏そうな印象をしていた。水と雷魔法の使い手であり、穂先に小型の斧がついた戟を使う。
双子の一人目カオリは元気が取り柄のハキハキしたタイプだ。金髪の毛先が赤いショートカットでボーイッシュな感じを受ける。背はミサキよりも少し低い。160セルちょっとというところだった。少し赤みのある瞳と少し挑戦的に敏文を品定めするように見る表情からは勝ち気なように敏文には見えた。火と土魔法の使い手であり、《火風輪》という輪の形をした刃がついた投擲武器を得意としていた。
最後に挨拶したシオリ。丁寧な挨拶をしている。彼女は双子のもう一人とは違い物静かな感じだ。背はカオリと同じくらい。淡く青い瞳に金髪の長い髪の毛先を背中の辺りで束ねていて、両側の耳の所の一房だけまっすぐに垂らしている。水と土魔法の使い手であり、変幻自在の棍を使う。
4人とも周囲の目を引くほどの美人だ。下の2人は可愛いという方が近い。
敏文はナツキたちも含めて自分のチーム[ミスティック]のメンバーだと伝える。それぞれ、ハル、シンジ、イズミと紹介した。
敏文はシンジローとカズミ2人の名前を勝手に付けてしまったが、とっさの話なので2人もあわせてくれていた。
「あなた達の噂は聞いています。急に頭角を現してきた有望な探検者達だと」
「ありがとう。とりあえず、よろしく頼む。すまないが今の騒動の原因を調査している魔法・生物研究所の人間を待たせている。急ぎたいのだがいいか」
敏文はミサキに礼を言いつつも、すぐに動き出したい旨伝える。
「ええ、そうでしたわね」
その時、ダイカクから通信が入った。
『トシフミ。今どこにいる?』
『遅くなってすみません。今、第12区に入ったところです』
『そうか、俺達はなんとか練兵場の前にたどり着いたところだ。魔獣を排除しながらだったから、少し時間がかかってしまってな。さっき話したとおり、王都中の地中の魔力の流れはこの練兵場の地下に向かって流れ込んでいる。絶対にこの下になにかあるんだ。急いでこっちに向かってくれ』
『はい、わかりました』
「今の通信は?」
敏文が《遠話の腕輪》を使っているのを見たミサキが言う。
「ああ、この先で待っている魔法・生物研究所の関係者で俺の師匠のものだ。急ぐぞ」
そして、敏文達[ミスティック]と[純白の朝顔]が練兵場へ向かおうと走り出したその時だった。
地面が揺れる!
一拍の間をおいて敏文達が立っていた通りの地面が大陥没を起こした。
「うぉっ!」
「きゃあっ!!」
2つのチーム全員が巻き込まれた。
敏文はとっさにその場にいる全員に土属性の防御魔法《土防》を掛ける。
「くそっ。間に合えっ!」
敏文達は崩れ落ちた土砂の上に、20メートルほど落下した。
「くそっ。いきなりかよ……。みんな怪我ないか?」
「ええっ」「大丈夫」
サラやハルの返事を聞き、ミサキたちを見ると彼女達も問題ないようだった。敏文を見て頷いている。
「ありがとう。とっさに防御魔法を展開してくれたんですね」
「無事ならいい」
上から国軍兵たちも声を掛けてくる。
「おい、大丈夫かぁ!」
「ああ、全員無事だ!」
敏文はそう答えると周りを見渡す。
「これは……」
敏文は驚いた。正面に15メルほどの高さの大きな横穴が開いていたからだ。後ろを振り返ると後ろにも続いている。つまり、大きな空洞の途中が陥没して敏文達は落ちたということだ。
そして、敏文はふとさっきのダイカクの言葉が頭をよぎる。
「……王都中の地中の魔力の流れはこの練兵場の地下に向かって流れ込んでいる。絶対にこの下になにかあるんだ……」
(もしかしたら、この空洞をたどればその「なにか」にたどり着くのではないか)
敏文がそう思った時だった。
『トシフミッ! まずいよっ!』
コウが警告を発する。
敏文も気がついた。不穏な気配に。
そして、敏文達の前後に開いた空洞から目を赤く光らせたビッグファングアントの群れが現れたのだ。
「くそっ! 奴等の通り道だったかっ!」
敏文の言葉に、敏文の後ろにいたミサキが叫ぶ。
「街の中心に近いほうは私達がっ!」
そう言うとミサキ達は街中に向かう方のビッグファングアントに向かって、魔法を放ち始める。
「よし、じゃあ、正面は俺達がやるっ! ハル達は防御に徹してくれっ! 皆いいかっ!」
「「「「「「おうっ!(はいっ!)」」」」」」
ビックファングアントの群れは折り重なるように敏文達に向かって突進してくる。
「セイラン!」
まず、敏文はセイランに指示して《豪風》で奴等の突進を牽制した。すると、風に煽られて先頭にいた数匹が後方に吹き飛んでいく。
そして、群れとの間合いを取ったところで、サラが《氷刃》を、アヤメが《風刃》を、ブンゾーは破魔の矢を放って先頭にいる数匹を倒す。
敏文は腰のバッグから《魔賦の剛鎗》を取り出して、タクミに呼びかけた。
『タクミっ! 槍の技を!』
『了解だよっ! トシフミに無双の槍の技を!』
《魔賦の剛鎗》は、緑鋼という非常に軽いが貴鋼に近いとても硬い金属でできている。柄の部分は伸縮自在で、笹の葉のような形をした穂先が3枚ついている。そしてその名の通り、穂先と石突きに魔力を賦与することができ、対魔獣戦でも有効に使えるものだ。切る、突く、払うの槍の技以外に、賦与した魔力を使って、《刃》の魔法の威力に近い一撃を放つこともできる。
「皆、俺に構わず魔法で攻撃を続けてくれっ! 俺のほうでかわすっ!」
敏文はそう叫ぶと、《魔賦の剛鎗》に雷の魔力を賦与し、《身体強化》をしつつ《神速》を今使える最大の10(10倍)に発動して《跳躍》で群れの真ん中に飛び込む。
敏文は暇を見つけては《身体強化》と《神速》の連携について、タクミと訓練していた。それでなんとかつい最近10まで引き上げても、体を壊さない程度の《身体強化》ができるようになっていたのだ。
「こいつの使い初めだっ! 加減せずにいかせてもらうぞっ! はあああああっ! おりゃあっ!」
敏文はサラ達の魔法攻撃を避けつつ、ビッグファングアントの脚や牙の攻撃をかいくぐりながら、剛鎗をお見舞いする。魔力を賦与された《魔賦の剛鎗》はその切れ味を存分に発揮し、ビッグファングアントは胴を払われ、脚を切られ、頭を割られて次々に吹き飛ばされていく。
そして、5分ほどで、近づいてきていたビッグファングアント80匹ほどはすべてその場で動かなくなった。
最後の1匹を倒したあと、街中に向かう側で戦闘していたミサキ達のほうを見ると、ちょうど彼女達も、後方からやって来ていた30匹程度を倒し終わったところだった。
「ふう、とりあえず、片付いたか」
敏文が《魔賦の剛鎗》を払って一息つくと、ミサキ達が戻ってきた。
「こっちは片付きました。って、貴方方は本当にランク黄色なんですか? 私達が4人で30匹を倒す間にいったい何匹を……」
ミサキが驚いた表情をしている。
「え、これ貴方達だけで……」
「うそでしょ!」
「私達よりたくさん……」
妹たちも驚いていた。
「まあ、いろいろと訳ありでね。今は詳しく話している時間がない。見ての通り、ここは奴等の通り道だったようだ。と、いうことはだ。これをたどれば奴等の大元にたどり着くんじゃないかと思うんだが」
敏文の話に、ミサキ達やブンゾー達も頷く。
「で、あなたは今から行くつもりですか?」
ミサキの問いに、敏文は頷く。
「大元を叩かないと、いつまでたっても王都の地下から魔獣たちが現れることになる。そうしたら、もうここには人間が住めなくなってしまう」
「それはいやです!」
ハルが叫ぶ。
「長く栄えてきた私が大好きなこの王都を父の代で廃墟にはしたくありません!」
言ってしまってから、ハッと気がついたハルは自分の口を押さえる。
その一言にミサキ達は怪訝な表情をする。
「失礼ですが、貴女は……」
敏文はため息をつく。
「私の話し方が悪かったようです。ただ、思いは判りますが、お話される時は気をつけたほうが……」
「すみません。つい」
ハルは、申し訳なさそうに敏文を見ると首飾を外す。シンジとイズミも首輪を外した。
「ナツキ様ではありませんか! それに近衛のお2人も! なぜこのような所にこのような者達と!」
ミサキ達は驚いている。
「私が無理を言って彼らについてきたのです」
「いや、でも……」
何か言おうとするミサキにナツキは言う。
「説明すれば長くなってしまいます。今は一刻を争います。遅れれば彼の言うとおり、この王都は廃墟になってしまう。これから先が危険なことは今の様子で私でも解ります。でも、私はこの王都が魔獣たちに蹂躙されるのを黙って見ていることはできません。少しでも力になりたい。そう思ってトシフミ様達についてきたのです。トシフミ様っ。私も一緒に参ります。戦闘ではあまり力になれなくても、できるだけのことをしたいのです。お願いします」
敏文はふうっとため息をつくと、ミサキ達に向かって話す。
「このお方は、失礼ながら少し頑固なところがおありだ。俺達も危険だと何度も説得したのだが……。だが、時間がないのも事実だ。俺達は大元をつぶしにこれからここを進む。あなた達はどうする?」
ミサキ達は顔を見合わせると、はっきりと返事をした。
「もちろん、一緒に行きますわ。私達もこの王都は大好きですもの」とミサキ。
「来るなと言っても無駄だ」とアオイ。
「行くに決まってるでしょ」とカオリ。
「仕方ありませんよね」とシオリ。
敏文は苦笑いをしながら、ブンゾーとシンジローに尋ねる。
「どうしてこの国の女性達はこんなに力強いんだ?」
2人は両手を広げて、「「さあ?」」と答えるだけだった。
そこで敏文はダイカクに連絡をとる。
『ダイカクさん! 聞こえますか?』
『ああ、聞こえる。どうしたんだ?』
『たった今、第12区の通りの地面が陥没を起こして、俺達はその穴に落ちました』
『なに! 大丈夫か?』
『ええ、ビッグファングアントの群れに出迎えを受けましたが全員無事です。ですが落ちたところに大きな横穴が開いているのを見つけました。魔獣達の通り道のようです。おそらくこの先にあなたがおっしゃる練兵場の地下のなにかがあるのだと思います』
『……お前、その道を行くつもりか』
『ええ、行ってみようと思っています。今、私達だけではなく、紫ランクの[純白の朝顔]も行動を共にしてくれています』
『そうか、彼女達が……。よし、俺達も、すぐに……』
『お願いします。ただその前にお願いがあります。練兵場の地下には何があるかわかりません。もしかしたら、ここと同じように練兵場が陥没することも考えられます。国軍兵に練兵場から離れるようになんとか伝えていただけないでしょうか』
『判った。これから、オズーノ様経由で陸軍卿に頼んで貰う』
『では、こちらは魔獣を排除しながら先に進んでおきます』
《遠話の腕輪》の通信を終えると、この先の状況を確認するため、敏文は土魔法を絡めた気配探知を最大レンジで発動する。
「こっ、これは…………」
敏文は驚きを隠せない。
「どうしたのです?」
ミサキが聞いてくる。
「今気配探知を地下に使って見たんだ。練兵場の方へ行くにはこの空洞を下って行くのでまちがい無さそうなんだが、そっちの方から物凄い数の魔獣の気配がする」
敏文の説明に皆驚く。
「でも、行かれるんですよね」
「ああ」
ミサキの言葉に敏文は頷く。
するとミサキは地上にいる国軍兵に向かって叫ぶ。
「国軍の皆さん! 今から私達はこれからこの空洞を前に進みます! この先には魔獣の大群がいるようです。もし私達が撃ち漏らしたらここから魔獣の群れが現れる事になります! 増援を頼んでここから魔獣が地上に出るのを阻止してください! 最悪の場合はここを土魔法で埋めてでも!」
「わ、判りましたっ!」
国軍兵達は慌てて準備を始める。
敏文はナツキ達にもう一度念を押す。
「ここから先は極めて危険です。彼女が言った様に場合によってはここから上がれないかもしれない。それでも一緒に行きますか?」
ナツキは敏文の目を見て、しっかりと答える。
「はい、わかっています。連れて行ってください」
「そうですか。わかりました。では、しっかりとついてきてください」
ナツキは決意を目にはっきりと表しながら言った。
「はいっ!」
最後まで読んでくださってありがとうございます。




