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第36話 黒の増殖

2014.4.18 話を大きく修正しました。

 敏文は男爵邸に戻り、自分の泊まっている部屋に入ると、改めて魔収納のサイドポーチの中身の確認を始めた。

 やっぱり何が入っているのかは知っておかないと。


 手をサイドポーチに入れ、『一覧』と念じると入っているもののイメージが頭に流れ込んでくる。


 まずは回復・治療系の薬があるようだ。

《魔力回復薬》×25

《体力回復薬》×31

《精神力回復薬》×20

《状態異常治療薬》×18

《外傷治療薬》×43

《空腹抑制剤》なんてのも入っていた。


 次に移動や探索時の補助が主の魔道具がある。

《伸縮の橋脚》

《袋間の伝書》×20

《透化の胞衣》

《変化の首飾》

《罠破の手袋》

《浮揚の足帯》

《転移の大図》

《防音の耳飾》

《防臭の首飾》

《万潜の口金》

《常温の腕輪》


 そして、主に戦闘補助になる魔道具があった。

《伸長の縛縄》

《影操の手袋》

《身代りの宝玉》紅玉×10、蒼玉×8、黄玉×11、碧玉×15、褐玉×10

《遠操の魔杭》×32

《閃光の投玉》×21

《誘眠の投玉》×18

《麻痺の投玉》×25

《難脱の格子》×2


 直接の武具も入っていた。

《超速の脛当》

《剛力の籠手》

《反魔の大盾》

《反重の大鎧》

《破防の苦無》×22

《影縫の苦無》×25

《斬霊の細剣》×4

《魔賦の剛鎗》

《帰還の投斧》×4

《粉砕の大鎚》


 さらに壊れた武具、道具の修繕用の魔道具まで。

《万具の繕床》


 それ以外にも、ホーエン各地の酒や、つまみになるような特産品等が入っていた。


「これは、さすがに貰いすぎだ……」


 最後に手紙が2通入っているようだ。1通はナスリーンからだ。もう1通は差出人の名前がない。元の持ち主宛なのかも知れない。


 敏文はまずナスリーンの名前が書かれた手紙をあける。そこにはこう書かれてあった。

「トシフミへ。

 色々な物が入ったままになっていて、さぞ驚いたことでしょう。これは前の持ち主であったあるランク紫の特級探検者からの次の持ち主であるあなたへの贈り物です。

 この探検者が引退する間際に、本来このバッグを引き継ぐつもりだった一人息子が病気のため亡くなったの。

 持ち主は自分が亡くなったあと、このバッグが誰とも知れない人間に渡る位なら、私に将来有望な探検者が現れた時に、中身ごと譲ってほしいと頼んできたの。

 だから、この中身は是非有効に使ってください。

 一緒に入っている手紙はその探検者から、次の持ち主に宛てた手紙よ。だから、あなたが読んでください。


 あと、この手紙は《袋間の伝書》といわれる魔道具で魔収納のバックを持っている人との間なら、自分のバッグに書いた手紙を入れて送る相手を念じると届けられるものです。何か私に用事があるときは、あなたのバッグに入っている物を使ってみてください。


 あ、バッグに入っているお酒や食料は飲んだり食べても大丈夫だから。このバッグに入れたものは時間の流れが止まるの。だから心配いらないからね。


追伸:何か珍しい魔道具を手に入れて手放す時は必ず私にね!


ナスリーン」


 敏文はもう1通の元の持ち主の手紙を開く。

「この手紙を開いてくれたこと感謝する。わしはこのバッグの前の持ち主であるヒョーゴと言うものだ。この手紙を読んでくれていると言うことは、君はナスリーンが認めた将来性のある探検者なのだろう。このバッグとその中身を君の探険に是非有効に使ってくれ。

 別紙に入っている魔道具の使い方と効果を書いておいた。どう使うかは君のセンスだ。上手く活用してくれる事を希望する。


君の活躍を祈念して ヒョーゴ」


 手紙に添付されていた別紙には、魔道具それぞれの使い方、効果がきれいに記載されていた。敏文はしっかり目を通して把握する。


(ナスリーンとヒョーゴに感謝して大事に使わせて貰おう)


 敏文はバッグの中から《充魔の小箱》を専用のベルトに5個セットして腰につける。

 これは、ナスリーンの店で腰につけるベルトと合わせて5個買ったもので、魔力回復により最大魔力値を超える余分な魔力を1個に当人の最大魔力値の10分の1を最大として蓄積できる充電型の電池見たいなものだった。万一の予備魔力として保険となるものだ。

 敏文の場合、魔力の容量が大きいことから、高威力の精霊魔法を行使する必要が出た時に魔力回復薬では追い付かないかも知れないと考えて買ったものだった。

 これはブンゾー達もみな購入していた。


 魔力を溜めたこの小箱は他の魔法士が使う事も出来るが、1度の魔法で自分が持つ魔力値を超えるような行使の仕方は出来ないらしい。


 そして敏文は元々持っていた《通魔の投網》や《ムラサメ》、ハカタンで買った直剣・籠手をバッグにしまう。 


 その時、敏文の部屋にブンゾー達が入ってきた。

「おい、バッグの中身見たか?」

「ああ。感謝しないとな。凄い量の物が入っていたよ」

「俺のもだ」

「わたしも」

 ブンゾーとサラが揃って言う。


「これから、アヤメも含めて、それぞれの戦闘のスタイルを考えて、装備を交換しないか?」

 敏文はそう提案した。

「そうだな。折角貰ったんだ。有効に使えるように工夫しよう」

「え、私にも分けてくれるの?」

「ああ、もちろん」

「ありがとう!」

 アヤメも嬉しそうだ。


 敏文達は、その夜、色々な場面を想定しながら、対応方法と装備を検討、交換していった。


◇◇◇◇◇


 翌日、組合で依頼を受ける為、食堂で早目の朝食を取っていると、ダイカク、キキョウ、マリカが入ってきた。


(ダイカクさんと男爵は御前会議の為に王都に来ていたはずだ。キキョウさん達もそれに合わせて来ていたはずで用件がすんでしまったら帰るのだろうか)


 ここ数日、敏文達が組合絡みでちょくちょく出掛けていたのですれ違いになってあまり話していなかった。敏文は今後のことを今聞いておこうと考えた。

「男爵やダイカクさんは、この後どうするんですか? 御前会議も終わったし、ミヤザに戻られるんですか?」


「ん、ああ、そう思っていたんだがな。最近魔導樹の様子がおかしいようでな。オズーノ様から調査を手伝って欲しいと頼まれているんだ。男爵は明後日の国王生誕祭を見届けてからミヤザに帰るそうだ。キキョウ、マリカ、ナミもその時一緒にミヤザに帰ってもらうつもりだ。お前達はどうするんだ?」


「俺達はしばらく王都で組合の依頼を受けた後、ホーエンを廻る旅に出ようかと思っています」

「そうか」

「いいなあ。私も行きたい……」

 マリカがまたまた拗ねている。


「そう言えば、マリカは今は学校は休みなのかい?」

「そう。国王生誕祭の前10日間と後3日間は休み」

「そうか、だからこっちに居られるのか。じゃ、こっちに暮らしてた時の友達とかに会ったりしてるんだ」

「そう」


 ダイカク達も席について朝食をとり始めた。


「さて、俺達はそろそろ行かないとな。じゃあ、また夜に」


「ああ」

「気を付けていってらっしゃい」

 何だか遠足に子供を送り出す母親のイメージだな。キキョウは。


 さて、今日は何の依頼を受けようか……。


◇◇◇◇◇


 結局、今日は皆でそれぞれの別の依頼を受ける事にした。敏文は土魔法士への依頼とあった道路陥没事故の現状復旧工事だ。


 何でも、街中の道路が突然陥没したらしい。何人か巻き込まれて死人も出たそうだ。

 一応役人の検証は終わったそうだが、同じく工事を引き受けた別の土魔法士は、そんなの信用出来ないと言っていた。

「あいつら、上からちょちょいと見て終わりなのさ。何でこんなことになったのかとか、もう起こる事はないのかっていう調査なんかしやしねえ」


 それを聞いた敏文はタクミとトモエに地面の下の様子を探る方法がないか聞いてみる。

「……そう言うのが解る方法ってある?」

『《気配探知》の技と土魔法の組合せかな。トモエ、他にある?』

『そうね、土の魔力を拡散させつつ《気配探知》をすると地下の様子も解ると思うけど』

「やってみるか」


 敏文は言われた通りに発動してみる。

 すると頭の中に地下の様子がイメージとして浮かんできた。

「15メートルぐらい下か。何だか大きな空洞が続いているなあ。この辺に坑道でもあったのか? トモエ知ってる?」

『この辺で鉱石の採掘があったって記録はないわねえ』

 探知範囲を拡げるが、やはり先の方まで続いている。


 敏文は依頼主の親方に、聞いてみる。

「親方、この陥没、地下の大きな空洞が原因のようだが、結構先の方まで空洞が続いているように感じる。話ではここを埋めて元のように均すって話だったけど、それだけでいいのか?」

「そうかもしんねえけどよ。俺達が依頼されてんのは、ここ埋めるだけなんだよ。余計な事はいいから、ちゃちゃっと埋めてくんな。それ以上の事しても、依頼料上乗せなんて出来ねえからな」


(仕方ない。親方詰めてもしょうがない。後で男爵かダイカクに話して宰相やトモナリ辺りに伝えて貰おう)

 敏文はそう思って、とりあえず言われた通りに土魔法で穴を埋め、土を平らに均して固める作業を何人かの土魔法士と一緒にやった。


◇◇◇◇◇


 依頼を完了し、組合に完了報告をした後、敏文は男爵の屋敷に戻る途中に、マリカが同じ年頃の女の子2人と、街を歩いているのを見かけた。


 普段はぶっきらぼうな感じがするが、友達とは楽しそうに話している。


 その様子に少し微笑ましさを感じつつ、その場を去ろうとした時、3人の前に柄の悪い男達が立ちはだかる。

「よう、姉ちゃんたち、楽しそうにしてんじゃねえか。俺達も交ぜてくれや」


 友達2人は、マリカにしがみついて怯えているようだ。

 助けに入ろうか、敏文がそう思った時だった。手前の路地にその様子を伺う4人の男達がいる。

「ユキノスケさん! まだですよ!」

「ばか、今行かないと、前みたいに終わっちゃうだろ!」


 ユキノスケと呼ばれた男はセンスはともかく金のかかっていそうな派手な服を着ている。残りの3人はその取り巻きというところか。


(なんなんだこいつらは……)


 敏文はマリカ達の様子を見つつ、この男達の会話に耳をそばだてる。

「ユキノスケさん! まだですって! 打ち合わせより早すぎますよ!」

「ばかっ、愛しのマリカたんが、悪い奴等に絡まれているのだっ! 今行かないでかっ!」


 4人が漫才やってる間に、男達がマリカ達を連れていこうとその腕を掴んだ。


 が、その瞬間、マリカが《雷鎖》の魔法で男達を纏めて絡め取る。男達は雷撃に痺れてのたうっている。


(マリカって意外に過激な反応をするんだな……)


 自業自得?な男達は、服や髪の毛を焦がした揚げ句、痺れて動けないようだ。


「ばかっ、だから今行くと言ったではないかっ! 終わってしまって私が出る幕がないではないかっ!」

 ユキノスケは取り巻き達を、ポカポカと小突いている。


「だが、しかーし。今日はこれだけではないのだっ。次の手にいくぞっ。何をしている! マリカたんはいつまで王都にいるかわからないのだ。早く彼女の前に私が劇的に登場して、彼女の心を射止めねばっ!」

 そう言うと取り巻き達を急かしながら、ユキノスケは路地をマリカ達とは別の方向に走っていく。



(おい、まだやる気なのか…………)

 話の様子からすると、今回が初めてじゃ無さそうだ。

(マリカもめんどくさい奴に絡まれたもんだな。でも、気になる(面白い!)から、少しついて行ってみるか……)


 しばらく、マリカ達の後をついて行くと、また男達に絡まれる。


「あいつらはっと」

 周りを見渡すとやつらがいた。やはり建物の陰から出番を伺っているようだ。


 敏文はユキノスケ達が隠れている建物の方へ無関係を装って近付いていく。


 そしてユキノスケ達の背後に回ると、またも出番のタイミングを巡って漫才をやってる彼等に後から声をかけた。

「さ、一緒にマリカの所に行こうかっ!」

 そう言うと、敏文は《伸長の縛縄》を使って一纏めに縛る。


「な、何をするっ!」

 驚くユキノスケ達に敏文はにやりとしながら伝える。

「お前、マリカと話したいんだろう。さっきから話してたことと同じことを今からマリカ達の前で話して貰おうか」

 敏文はそう言うと、4人をマリカ達が男達と揉めそうになっている場所に引きずって連れて行く。

 《伸長の縛縄》は自在に長さを変えられて使い手の意思通りに相手を絡め取る魔道具で、絡め取られた相手はその意思に反して、使い手に逆らえないとヒョーゴの手紙に書いてあった。

 確かにその通りになっていた。


「よう、マリカ」

「あ、トシフミ。そいつらは何?」

「ああ、こいつらは、今マリカ達に声をかけて絡んでいるこの男達の雇い主だ。たぶん。おい、そうだろう?」


 敏文が男達にいい放つと、男達は脱力する。

「なんだよ。てめえらが捕まってたんじゃ、話はお仕舞いじゃんかよ! ああ、そうだよ! 俺達ゃこのユキノスケっていう若旦那に適当にマリカって娘に絡んで、若旦那が出てきたら、やられてくれって金で雇われたんだよ。ちぇっ、後金もらい損ねたな。くだらねえ。おい、行こうぜ!」

 そう言って去って行った。


 敏文とマリカは、男達が去ったあと、敏文に引きずられて、座り込んでしまっているユキノスケ達を見下ろす。

「さて、と言うことらしいが、こいつらどうするマリカ?」

 敏文は敢えて人の悪い笑いを浮かべて話す。


 ユキノスケ以外の3人は、一斉に弁解を始める。

「す、すいませんでしたっ! この王都きっての大商店トト屋の若旦那ユキノスケさんが、前からマリカさんにぞっこんで、何とかマリカさんの気を引きたいって」


「マリカさんが中等学校に通っている頃からなんですけど、その頃から、誰かをマリカさんに絡ませては、それをユキノスケさんが助けるって、ユキノスケさんが考える王道にこだわって。最初は店のでっちや用心棒達にやらせてたんですけど、大旦那様に叱られてからは、外の男を雇ってやらせてたんです!」


「マリカさんが、王都から居なくなってから収まってたんですけど、つい先日、王都で久しぶりにマリカさんを見かけて。また、虫がうずいたみたいで!」


 3人が聞きもしないことまでしゃべってくれたお陰で大体の事情がのみこめた。

(こいつらはそんなに前から、ワンパターンなことをやってたのか!)


「だからか~」

「おかしいと思ってたんだよね~。マリカと王都を歩くと必ず誰かに絡まれるって有名な話で。そっか~。謎が解決~」

 マリカの友達も納得していた。


 敏文がユキノスケの頭をぽんぽんと叩くと、ユキノスケが頭をがくっと下げて話し出した。

 おっ、少しは反省したのか?


「麗しのマリカたんには、王道の出会いこそって思ってたのに…………。マリカたん、この3年間僕は淋しくて淋しくて、狂いそうだったよ。今まで何処に……」


(こいつ全く反省してないな……)


「私の友達に怖い思いをさせたのは許せない。トト屋の大旦那に言いつけてお仕置き」

 マリカはそう言う。


「え、あ、ちょっと待ってくれ」

 ユキノスケは青い顔をして言う。


「人を使って、私たちを怖がらせた。りっぱに犯罪。王都の警備隊にでもいい」

 マリカがそう言うと、ユキノスケは更に顔が青くなる。

「あ、いや、それは……。す、すいませんでした。もう、しないから……」


「信用出来ない……」

「誓約書でも、何でも書きますから」

「そんな紙切れで……」


 その時、敏文はふと思い付いたことがあって、マリカに耳打ちする。

「それ、いい!」

 マリカの顔がにぱっと人の悪い笑顔になっていく。あ、まずい提案したか……。


「じゃあ、私のファンクラブを作るから、それに入れば許す」


 マリカの話にユキノスケは即答する。

「え、ファンクラブの会員にして頂ける! なります! ならいでかっ!」

「そこの3人も!」

 更にマリカは取り巻き達も巻き込もうとする。

「えっ、私たちもですか……」


「お前たち、何を躊躇う! 栄誉あるマリカたんファンクラブに入れるのだぞ! 絶対に入会だっ!」

「「「はぁ」」」

 取り巻き達は渋々了解する。


「但し、ファンクラブの会員は、会長である私の決めるルールの厳守は絶対。それが守れない場合は、今まで私の友達を怖がらせたことをトト屋の大旦那と王都警備隊に言いつける」

 マリカがそう言うとユキノスケは一も二もなく了解する。

「解りましたっ。会長のルールは絶対ですっ」


 敏文はそこで《伸長の縛縄》を解いてやる。


「トシフミ、何か書くもの持ってる?」

 マリカが言うので、敏文は紙とペン、それに台に出来るようにボードを渡す。とっさの時に書き物とか出来るようにたまたま買っていたものだった。

 マリカはそれに、さらさらと何かを書き出した。


「じゃあ、ここにサインして」


 そこには[マリカファンクラブ入会書]と書いてあり、次のようなことが書いてあった。

1、私達はマリカファンクラブに入会します。

2、入会したからには、会長であるマリカ=ササヤマが決める会のルールには絶対に従います。

3、もし、会のルールに従わない場合は、会長の決めた罰を受けることを了解します。


 ユキノスケは嬉々として、残りの3人は本当に仕方なくその紙にサインした。


「おおっ、栄誉あるマリカたんファンクラブ会員第1号だっ! く~っ!」

 ユキノスケは感動して涙している。


「よし。じゃあ、会員ルール第1条。悪いことをした時は、会長の指示に従い、反省文を書くこと。はい、紙を渡すから今までの事、全部そこに書いて、そしてもうしませんって書く! そして最後にサインするっ!」

「は、はいっ、会長っ!」

 ユキノスケ達は、敏文がペンと紙とボードを渡すと、今までやったことを書き連ねた長文の反省文を書き始める。


(まさか、ブンゾー達に渡そうって思って買ったペンとボードを先にこんなことに使うとは……)

 自分で提案したから仕方ない。

(おいおい、こいつら裏にまで書いてるよ。どんだけやったんだか)


 結構時間がかかったが、マリカの友達も、何故かいつの間にか集まった周りの野次馬も面白そうに見ている。


「会長っ! 出来ましたっ!」

 ユキノスケが、何故か反省文を嬉しそうにマリカに差し出す。

 後の3人もマリカに渡した。


「じゃあ、明日。この時間にあそこにあるカフェに来て。ファンクラブのルール渡すから」

「おおっ、ファンクラブの集い第1回だっ! もちろん喜んでっ!」

「じゃ、解散っ!」


 マリカの指示に、4人は走って去って行く。

「うお~~っ! ファンクラブ会員だぁ~~っ!」

 ユキノスケは雄叫びを上げながら雑踏に消えて行った。


「よし、これで今までの悪事の証拠は掴んだ」

 マリカが黒いオーラを出している。

「さて早速ルールを作らないと。どんなルールを作ろうか。ふふふふっ」


(あ、黒い。黒マリカになっている)

 敏文はマリカの違う面(暗黒面という)を見た気がして、すこし腰がひける。


「なんか、面白いものを見たわね。中等学校ん時のみんなにも教えなきゃ」

「うんうん! あ、ルール私たちにも一緒に考えさせてよ。面白そう。私たちも怖い思いをしたし、いいよね」

 二人が言うと、マリカもうなずいている。


「「「ふふふふふふふ」」」

(あ、黒いのが3人になった)


「…………じゃあ、俺は行くから。ゆっくり考えて」

 敏文はその場を去る事にする。3人の今の黒さを見てると、ちょっとだけあいつらが可哀想にも思えたが、自業自得だと考えることにした。


◇◇◇◇◇


 その日の夜、敏文の部屋にサラとアヤメが来て不思議そうに聞いてきた。

「ねえ。マリカの様子が何だか変なんだけど、トシフミ何か知ってる?」

「え?」

「何だか、今まで見たことないくらい、黒いオーラが出てるのよ。部屋にこもってなんかやってるみたいだし」


 敏文は今日あった出来事を話す。

「そうだったんだ~。だからマリカいつも絡まれたんだ。私と一緒の時にもあった!」

 アヤメは、手をぽんぽん叩いている。

「え、何。じゃあ、マリカはいまその会員のルールとやらを考えているわけ?」

「どんなルールを考えてるんだろう」

 サラも興味を持ったようだ。

「「なんか、面白そう!!」」


(あ、あなた達まで興味持ちますか……)


「マリカに見せて貰おう」とサラ。

「あたしも巻き込まれた事あるし、1個ぐらいルール作らせて貰おうっと」とアヤメ。


「「ふふふふ」」


(あ、黒いのがまた2人増えた)


◇◇◇◇◇


 翌日、出来上がった325条迄あるという会員ルールに会員の4人は、人前もはばからず涙したという。1人は歓喜の、残りの3人は後悔の涙だったという。


 こうして王都におけるマリカの舎弟が4人誕生した。


最後まで読んで頂いてありがとうございます。


タイトルほどおどろおどろしい物にはなりませんでしたね……。


次話から、少しずつ話が動き出す予定です。

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