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第28話 ファナ ※

久しぶりにコウジの話になります。

これから数話、お付きあいください。


2014.4.18 話を大きく修正しました。

 試技室から逃げ出した康司は、山の中を転がるように走り降りる。


「はあっ、はあっ、くそっ、ここが何処なのか解らねえ。どっちに逃げりゃいいんだよ。グーラ、アヴァ、道知らねえか?」

 ぜーぜー言いながら聞いて見たが、2人の反応は素っ気ない。

「わたし知らないわよ」

「おいらも。おいら達に道を聞くのは間違いだぜ」


 遠くの方で康司を探す声がする。

「おい、どうだっ!」

「まだ見つからねえ! だが足跡がこっちの方に続いてる。そう遠くないはずだ! 急いで追うぞ!」


(くそっ、何処か足跡がつかない場所探さないとっ)


 そう思って沢に入ったり、わざと岩の上を越えたりしたのだが少し離しても、直ぐに追ってこられてしまう。


 夜になれば足跡は見えなくなる。康司は自分にはイーリスが残してくれた気配で周囲を把握する力があるから少しは引き離せるだろう、そう思って、必死に山の中を逃げまわった。


 ところが、辺りが段々暗くなり追撃の手が弱まるかと思ったが、そうはならなかった。

 松明を持って追っているんだろう。沢山の篝火が赤い蛍のようにあちこちで揺らめいている。

 馬のいななきも聞こえる。


(どうしてこちらの動きが解るんだ! 暗い山の中を相当逃げたはずなのに……)



 その時だった。康司は頭の中に自分を呼ぶ声が聞こえたような気がした。

『ワタシヲヨビダシテ』


 慌てて周りを見るが誰もいない。この声はグーラやアヴァではない。


(誰なんだ!)


『ワタシハ、アナタノカゲニイルモノ。ワタシヲヨビダシテ』


 そこで康司ははっと、自分がグレイウルフを使役出来ることを思い出した。そこで真っ暗で自分の影はないが、魔獣を呼び出す言葉を小声で発してみた。

 すると、そこにグレイウルフが現れた。影が無くても暗いところからなら呼び出せるようだ。


「(呼んだのは君か?)」

 小声で聞くと、頭の中に言葉が伝わってくる。

『ソウ。ワタシニノッテ。ハヤク!』


 康司は考える余裕もなく、グレイウルフの上に跨がり、固い毛につかまった。

「(これでいいか?)」

『シッカリツカマッテ。スコシズツ、スピードヲアゲルカラ』

「(わかった。)」


 康司がそう言うと、グレイウルフは最初はゆっくり、そして康司が振り落とされないように時々振り返りながらゆっくりとスピードをあげていく。


 グレイウルフの固い毛のせいか康司は跨がっている太ももの部分と手のひらに痛みを感じるが、そんなことは言っていられない。

 康司は歯を食いしばって揺れと痛みと眠気に耐えていた。


 そして時々止まっては魔法使いから奪った簡単な傷を治療する魔法で手と太ももの傷を治療しつつ進む。


 空が白み始め明け方になった頃、ようやく川沿いの街道まで出ることが出来た。


「大分引き離したな。少し休憩しよう。ズボンについた血も洗わないと」

『ワカッタワ』


 グレイウルフはそう言うと、川原の大岩の側で立ち止まる。

「ありがとう。助かったよ」

『カイドウゾイデハ、ワタシハメダツワ。ワタシヲカゲニモドシテ』

「その前に教えてくれ。オレはこれからお前を何て呼べばいいんだ? 名前はあるのか?」

『マエノアルジニハ、ファナ、トヨバレテイタワ。デモ、スキニヨンデクレテカマワナイ』

「そうか、じゃあオレもファナと呼ばせて貰うよ。ありがとうファナ。影に戻ってくれ」

 すると、ファナは明るくなって出来た康司の影に姿を消した。


 康司はズボンを脱ぎ、太ももの治療をした後、川に入ってズボンについた血を洗い流す。だが、完全には落ちきれない。その時ふと、魔法使いから奪った魔法の中に生活に役立つ魔法があり、その中に洗濯の魔法があった事を思い出す。


(やってみるか)


 予想よりきれいになったズボンを同じく魔法で乾かして履き、康司は街道を歩きはじめた。


(それにしてもこの街道どこに向かっているんだろう)


 康司はこの国が神聖シャンハール帝国だということしか知らない。


「なあ、アヴァ。この場所とか、地図みたいな情報をどっかで手に入れられないかなぁ。あと、この世界の基本的なこと知りたいんだけど」


「そうねえ、やっぱり知ってる人から戴くのがいいんじゃない」

「え、何、じゃあアヴァは能力だけじゃなくて記憶とか知識も奪えるってこと?」

「出来るわよ。ただ、他人の記憶なんて奪ったら面倒な事になると思うから、知識をコピーするとかの方がいいんじゃない?」 

「そうか。誰か通ってくれれば、少し話して握手とかでも出来ればいいのか。なるほど」


 そう話していると、向こうから何かがやってくる。土煙と共に現れたのは馬に乗った8人の野盗達だった。


「なっ、しまった!」

 物陰から確認せずそのまま待ってしまったのは失敗だった。康司は後悔する。


 馬を止めて、6人が康司を囲むように剣を抜いて立っている。残りの2人は馬を降りて頭ずつの馬の手綱を押さえていた。


 康司は身構えた。


「おい、見ろよ! 街道を1人で武器も持たずに歩いてやがったぜこいつ。殺してくださいって言ってるようなもんだぜ!」

「魔術士かも知れねえぞ」

「こんな泥だらけの魔術士なんていねえさ!」

「この様子だと大したもん持って無さそうだな。おい、持ってるもん全部出しな」


 康司は本当に何も持ってない。

「何にもねえよ」

 康司がそう答えると、野盗達は笑いだす。

「え、なんだってぇ? 今、私は命が要りませんって言ったのかぁ~? え?」

「こいつ死にてえってさ! 望み通りにしてやるぜぇ~!」


 野盗達が剣を振り上げたその時、康司はグーラとアヴァに合図して、両手を野盗に向けて《鉄弾》と《気弾》をその場にいる全員の足を目掛けてぶちまけた。


「グギャア!」

「痛てぇ!」

「だから俺が魔術士じゃねえかって言った……」

「うるせぇ! ちきしょーっ!」


 野盗どもはうずくまって動けないようだ。康司はまだ意識があるやつにもう一度|《気弾》をみぞおち辺りにぶつけて気絶させていく。


 そして野盗達の能力、体力を奪い、知識を順にコピーした。

 野盗だけに大した能力は持ってないようだ。新たに得られたのは《馬術》と何故か《料理》の能力で後は今までに奪った事のあるものだけだった。

 知識については収穫があった。一番近い村や周辺の街等への道がわかるようになったのだ。お金や文字その他の一般的な知識も得られた。


 ところが、7人目の能力を吸収しようとしたその時、一番離れた場所で馬の手綱を握っていたはずの男が、こちらの攻撃で倒れて動けないように見えていたのに、一瞬の隙をついて馬に飛び乗り逃げ出した。

「しまった! 気絶したフリだったのか!」

 康司は直ぐに気が付いて《鉄弾》を数発打ったが、逃げられてしまった。


「ま、仕方ねえか」


 康司は野盗の馬の鞍についていたロープを使って、7人を縛りあげていく。

(こんなときにボーイスカウトの経験が役に立つとはな)


 そして街道の樹木に数珠繋ぎにして逃げられないようにした。

 一応、覚えたての文字で「野盗の一味 取り扱い注意!」と書いた看板を立てておく。


 その後野盗達が武器を使えないように、自分用に確保した剣1本と弓1張、矢筒1つを除いてナイフ等も含めて全部グーラに食べさせた。


 彼らが腰に付けていた財布は、脅迫行為の代償としてありがたく頂戴し、その上で奴等の馬の一頭に乗ると、他の馬は全部逃がしつつ、一番近い村であるヤシュト村を目指す事にした。


 ヤシュト村へは馬で1日半の行程だ。

 と言っても走り続ける訳にもいかないので、適当に休みながらになる。


 しばらく馬で走った康司は、昨日脱出してから、何も食べていないことに気が付き、街道横に湧き水がある場所で馬を止めて、馬につけられていた荷物に何か食べ物がないか探してみた。


 すると、干し肉が見つかった。


 康司は側にあった木に手綱を結わくと、湧き水横に生えている木の幹に寄りかかりながら座って干し肉を食べた。


(久しぶりに味があるものを食べたな……)


 康司はそのうち疲れが出たのかウトウトとし始め、木の幹にもたれながら眠りについてしまった。


◇◇◇◇◇


「おい、こんな所で寝てると野盗に襲われるぞ!」

 突然の声に康司は起こされる。どうも少し腹が膨れた康司は迂闊にもぐっすり寝てしまったらしい。


 康司が辺りを見回すと、街道に馬車が止まっていて、そこから商人っぽい風情の男が二人、心配そうに見ていた。


「ああ、起こしてくれてありがとう」

「お前さん、何でこんな所で。どこに行くつもりだ? 歩いてここまできたのか?」

「ヤシュトって村に行こうと思ってたんだ。そこにいる馬で…………。あれ? 馬がいない……」


 先程手綱を結わいた場所に馬がいない。


 すると、馬車の男が教えてくれた。

「さっき街道を空馬が走っていたぞ。そいつがお前さんのかい」


(しまった! 手綱の結わきが緩かったのか)


 康司は腹が減って、眠さもあったからか、手元が疎かだったようだ。

「どうも、そうらしい……」


「お前さん、ヤシュトに向かうって言ってたよな。俺達はヤシュトに帰る途中なんだが良ければ乗ってくかい?」

「いいのか?」

「何、どうも悪い奴には見えねえからな。馬を無くして困ってたんなら、お互い様だ。俺の名前はトマス、後ろのやつがウーゴだ」

「すまない。助かる。オレは康司って言う」

「コウ、コージでいいのか?」

「言いにくいなら、コージでいいよ」

「そうか、すまんな。コージ」


 康司は、馬車に乗せてもらうことにした。

 御者台のトマスの横に座る。ウーゴは荷台にまわった。康司が座るとトマスは馬車を出発させた。


「ありがとう。よろしく」

 康司はトマスとウーゴと其々握手する。その時にアヴァに指示をするのも忘れない。


 トマスとウーゴは、ヤシュト村の人間で村の工芸品等を他の街に売ったり、卸したりする一方で生活必需品などを仕入れて村で売っている商人だ。


 トマスは背は175セルぐらい。年齢は40歳を少し過ぎている。オレンジ色の短い髪をして、もみ上げをあごまで届くほど伸ばしているのが特徴だ。人のよさそうな顔は相手を安心させるものがあるようだ。

 そして、ウーゴはトマスより少し高くて180セル弱。20代半ばだった。肩ぐらいまでの少し長めの金髪を首の後ろで縛っている。誠実そうな男という印象だ。


「コージは、どこの出身なんだ?」

 そう聞かれた康司はたじろぐ。どう説明しても理解してもらうことはむずかしいだろう。それで、咄嗟にこう答える事にした。

「実はオレには昔の記憶がないんだ。それで、記憶を取り戻す為にあちこち旅をしながら記憶の欠片をさがしている」


「そうなのか。それは大変だな」

 トマスは、そのまま受け取ってくれたようだ。


 康司は移動中、ヤシュト村やこの世界について、トマスやウーゴから話を聞いた。


 ヤシュト村は、村の周辺に豊富にある木材を使った木工品や木炭と乾燥させた野菜等が特産の静かな村だ。トマスの様に商人をやっている人間は後1人しかいなくて、けっこう村の人達からは頼られている。


 トマスには、息子と娘が一人ずついる。奥さんは病で亡くしていた。息子は帝都ロマニールの大きな商会に修行に出ているらしく、トマスにとっては自慢の息子のようだ。ウーゴにはお腹が大きな奥さんがいて、もうすぐ生まれる予定だ。


 そんな話を聞きながらその日は過ぎ、日が暮れて来たので野営をすることになった。


 ウーゴが食事の準備をする間、トマスが馬車も含めた周りに魔獣避けの杭を刺していく。


 そして食事の準備が出来て、康司はこの世界にきて初めてのまともな食事にありつけた。ただの豆と干し肉のスープにパンというものだったが、豆がこんなに味があって美味しいものだったと初めて感じた康司だった。

「うめぇ」

 涙を流しながら食べている康司に、2人は顔を見合わせながら言う。

「そうか。うめえか。おかわりあるからな。ゆっくり食え」


 そしてその夜は交替で火の番をしながら野営をした。康司は2人に出会えた事に感謝した。


◇◇◇◇◇


 翌日昼頃になった時、トマスが康司に向かって叫ぶ。

「おい、コージ。着いたぞ。あれがヤシュト村だ」


 ヤシュト村はトマスの話の通り静かな村だった。村の建物は土レンガでできていて、古い物には屋根に草が生えていたりする。1軒1軒の家は離れていて、その間には畑が広がっている。のどかな農村という感じだ。


 馬車はまず、ウーゴの家に向かう。

 街で仕入れてきた雑貨や生活用品、注文を請けたタバコや酒などの嗜好品などを家続きの倉庫に入れる為だ。ウーゴの家は商店も兼ねている。


「アニタ! 帰ったよ!」

 ウーゴが家に向かって叫ぶ。


「ウーゴ、お帰りなさい」

 ウーゴの奥さんのアニタが扉をあけて出迎えた。ペンギンの様によたよたと大きなお腹を抱えながら、家の前に出てくる。

「ほら、あなたのお父さんが帰って来ましたよ~。嬉しいでしゅね~」

 アニタはお腹の子供に向かって話しかけている。それを見たウーゴはとても嬉しそうだ。


 康司は荷台から荷物を倉庫に入れるのを手伝う。

(誰かの手伝いなんていつ以来だろう……)


 荷物を入れ終わった時、トマスが康司に礼を言う。

「すまなかったな。荷物運ばせちまって」

「いや、昨日助けて貰ったし。それくらいなら。まだ全然借りを返せてないよ」

「ところでコージは、ヤシュトに知り合いがいるのか?」

「……いや、いない。自分がどこで暮らしてたかもわからないんで、一つ一つ村や街を回ろうと思って」

「そうか、なら今夜は俺の家に泊まるか?」

 康司はその提案をありがたいと思ったが、いくらなんでも甘え過ぎのような気がして断ろうとした。

 すると、トマスは笑って言った。

「人の好意は受けるもんだ」



 結局、康司はそのままトマスの言葉に甘える事になった。

 ウーゴとアニタに手を振って別れを告げ、トマスの家に向かう。


 トマスの家はウーゴの家からそう離れていない場所にあった。家の側には大きなオレンジの木があり、その枝と家の間に渡されたロープには洗濯物が干してある。


 トマスは馬車を止めると大きな声をだした。

「おい、エリン帰ったぞ!」

 すると中から元気のいい女の子の声がする。

「父さんお帰り!」

 走って飛び出してきた女の子は、康司の姿を見て急停止する。

「父さん、誰?」

「ん、ああ、こいつはコージと言ってな、街道で馬を無くして困ってたところを拾ってきた」

「父さんまた……」


 何だか、やっぱり泊まるの気が引けてきた。

「なあ、トマス。オレやっぱり……」

 そう康司が言いかけたとき、エリンが早口で話はじめる。

「あ、いや、あなたを泊めるなといってるんじゃないの。気を悪くしたならごめん。うちの父さんお人好しでね。よく知らない人にも優しくしてしまうものだから、いつかひどい目に会うんじゃないかと思って」

「馬鹿っ、人への好意はな、後で何倍にもなって還ってくるんだよ。それに俺はちゃんと人を見て声をかけてるぞ」

「はいはい、わかりました。さ、コージだっけ? あなたも早く馬車から降りて家に入って」

 そう言うとエリンはすっと踵を返して家の中に入っていった。


 家の中は綺麗に片付けられていた。まだ15歳だったはずだが、見た目以上にしっかりしているようだ。


「そこ、座って」

 康司はエリンに言われた通りにテーブル横の椅子に座る。するとエリンは手際よく、オレンジを切ると、それを搾り器に入れてコップに搾りだした。


「どうぞ。見た通り搾りたてよ」

「ありがとう」


 少し酸っぱさの残るその味は渇いた喉にはとても美味しかった。

「あ~っ、うまい!」

「でしょ」

 エリンは嬉しそうだ。エリンは160セルより少し低いくらいで、少し赤みがかった金髪の長い髪を後で1本の三つ編みにしている。美人じゃないけど笑うととても可愛らしい。


「おかわりいる?」

「じゃ、お願い!」

「わかったわ」


 エリンがオレンジを搾っているとトマスが納屋からもどってきた。


「俺にも一杯くれや」

「はいは~い」


(そうか、エリンはトマスが無事に帰ってきて嬉しいんだ。)

 テキパキと家の中を動き回るエリンを見て康司はそう思った。


「オレンジはこの村の特産になるんじゃないかと思って育ててるんだよ。どう思う?」

 トマスが康司に聞いてくる。

「そうだな。少しだけ酸っぱさがあるけど、暑い時や疲れた時には凄く旨く感じるんじゃないかな」

「そっか。もう少しかな」


 その時、エリンが康司に尋ねた。

「ねえ、コージの生まれた所には、どんなものがあるの?」


 康司がどう答えようかと黙っていると、トマスが代わりに話し出した。

「コージは前の記憶がないんだそうだ。この村に来たのも、何か思い出すものがないか探しにきたらしいぞ」

「そうなんだ。ごめんね」

「いや、いいよ」

 康司は何だか心苦しくなっていた。


「そうだ。じゃ、明日私が村の中を案内してあげるよ。」

「おお、そうしてやってくれ」

 エリンの提案に、トマスが同意する。


「ありがとう」

 康司は二人にお礼を言いつつ、エリンもトマスのことを言えないくらい、いい意味でお人好しなんだなと考えていた。


◇◇◇◇◇


「おはよー。コージっ!」

 次の朝、エリンの元気な声に康司は起こされる。

「さ、ヤシュトの案内してあげる!」


 朝食後、康司は早速エリンに連れ出され、ヤシュトの村を歩き回ることになった。

「あれがこの村の村長の家で、こっちが学校だよ。記憶にない?」

「これが一番大きな石の橋、これは?」

「あれがこの村の一番高い建物だよ」

「じゃ、この広場は?」

 エリンは次々に村の名所?を案内してしてくれるが、微妙な場所が多い。


 どの場所でも首をふる康司にエリンは言い出した。

「うーん、やっぱりうちの村、コージが暮らしたことがある所じゃないんじゃない?」


(はい、その通りです……)


 罪悪感が芽生えはじめて少しへこんでいる康司にエリンが励ましの言葉をくれる。

「そんなにガッカリしないで。きっと、いつか記憶取り戻せるよ」

「ありがとう。」


(次から罪悪感がでない話を考えよう……)


 康司がそう考えていると、エリンが提案する。

「ねえ、少し遠出になるけどいい景色のところがあるんだ。お腹がへった時に食べるものも持ってきてるから行ってみない?」

「ああ、まだ時間もあるしいいよ」


◇◇◇◇◇


 1時間後、康司はエリンの案内で斜面を上がり、山の中腹で村を見下ろす事ができる場所にたどりついた。確かに風が気持ちよくて景色がいい。


 エリンはそこでパン、干し肉、チーズとオレンジジュースが入ったビンをバッグから取り出す。


「さ、食べよう!」

 景色がいい場所で心地よい風に当たりながら食べる食事はとてもおいしく感じられた。

(こんなの中学の遠足以来か)


「私ここの景色が大好き。そしてこの村が大好き。だから父さんと兄さんと3人でここで商いして暮らしていきたいんだ」


 康司は夢を語るエリンにある意味羨ましさも感じていた。

(オレはこの世界で何を目指して暮らせばいいのか……)



 その時、康司は村の1軒から黒っぽい煙が上がっているのに気が付いた。


「なあ、あの黒い煙が出ている家は、炭でも作っている家なのか?」


 エリンは口に手を当てて驚いている。

「コージっ! 直ぐに戻ろう!」

「どうしんだエリン!」

 青ざめた顔をしてエリンはこう答えた。

「あれは、ウーゴとアニタの家だよ! 炭作りなんかじゃない! あれは家が燃えてる!」

「なんだって!」


 康司達は、食べていたものを放り出して、急いで山をかけ降りた。

最後まで読んでくださってありがとうございます。


これからもよろしくお願いいたします。

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