第26話 国王拝謁
2014.4.18 話を大きく修正しました。
敏文が定期船を飛び立った時、その甲板ではケイジ達が驚愕の表情を浮かべていた。
「おい、ありゃなんだ!」
普段は無口なジョウジまでがその表情に驚きを隠せないでいた。
「あれは基本属性魔法なんかじゃない。生物を使役出来るっていう生魔法か?」
ケイジは呟く。そのケイジの視線の先には今飛び立っていった敏文たちの姿があった。
辺りが段々明るくなってきた。ケイジは腰の袋から小型の双眼鏡を取りだし前方の様子を伺う。あの船に群がっている魔獣は百や二百じゃ無さそうだ。
「ケイジっ、俺っちにも見せてくれっ!」
ハヤトはケイジから双眼鏡を引ったくるようにすると、前方を見ながら叫ぶ。
「トシフミは、船の回りを旋回してるぞ。どうするつもりなんだ! あっ、何だか魔獣達が混乱してバタバタしてる。何かやったんだ!」
「貸しなさいよっ!」
今度は、サリナが双眼鏡を奪う。
「トシフミ達、船に降りるようよっ!」
双眼鏡を取り返そうとするハヤトを片手で押さえつつ、サリナが叫ぶ。
「あっ、何か魔法を放ったわ。火魔法に見えるけど……」
それはケイジの目にも見えた。強い炎が5、6発ほど上空の魔獣の更に上に放たれた。
「あれは外したのか? どうするんだ……」
すると、少し時間をおいてそれはまるで炎の雨のように魔獣の群れの上に降り注ぐ。
「すげぇ!」
「あんな魔法って……」
ハヤトとサリナが驚きの声を上げる。
「火魔法にあんな方法が有るのか!」
ケイジは少なくとも自分が学んだ中にはなかった上級魔法に驚きを隠せない。
その時、もう一度双眼鏡を覗いたサリナが叫ぶ。
「生き延びたのが何匹かこっちに向かってくるわっ!」
ケイジは3階の甲板にいるサラに向かって叫んだ。
「奴等の生き残りが、こっちにくるぞっ! 船長と後部甲板の[虎の庵]に伝えてくれっ!」
「わかったわっ! んっ? あれはなにっ! 何か大きなものがっ!」
サラが船尾の方向、海の方からやって来る何かに気が付いた。
ケイジはその何かの動きから、その狙いが定期船ではなく前方の船であることに気づいた。
「あいつの狙いは…………この船じゃない! 向こうの船だ! おい、ブンゾーっ! トシフミに知らせてやってくれ!」
「おうっ!」
ブンゾーが《遠話の腕輪》を使い始める。
その時、バットエイプの生き残りが近付いてきた。
「今度は、俺達の番だな!」
ケイジはチームの皆に伝える。
「いいか! 一匹も逃すなよっ!」
「ええっ!」「わかった!」
ケイジ達は、近付いてくるバットエイプを魔法や弓で迎撃しはじめた。
そしてバットエイプは直ぐに全滅し危機は去った。向こうの船も大丈夫だったようだ。
ケイジは船長の指示を確認する為、操舵室に向かう。途中でブンゾーとサラが近付いてきたので握手する。二人も魔法でバットエイプを数匹打ち落としていた。
「ブンゾー、サラ。トシフミのあれは……」
「すまん。それはあいつが戻ってから本人の口から聞いた方がいいと思う」
ブンゾーはそう答える。
「そうか……。わかった。本人から聞くことにするよ」
ひとまず危機は去ったようだ。
(あいつが戻ったら、ゆっくりと説明して貰うとしよう)
ケイジは次第に近くなる前方の船を見ながらそう考えていた。
◇◇◇◇◇
奴等から回収した魔道具等を艦長に託し、行きと違い艀で定期船に戻った敏文を待っていたのは、敏文を囲んで質問攻めにするサリナとハヤト、タイガの3人だった。
「ねえっ、あの火の魔法は何っ!」
「なあ、あの鳥はどうやって使ってるんだっ! あと俺っちも乗せてくれっ!」
「お前、隠してることが沢山あんだろ。キリキリ吐いちまいな。黄色のくせにあんなことまでやりやがって! お前一体何もんだ!」
それ以外にも[虎の庵]の他のメンバーや、戦闘を見ていた警備兵、一部の耳の速い乗客が敏文を囲んでヤイヤイ言っている。
ブンゾーとサラは少し後ろで苦笑いしていた。
「おい、それくらいにしてやれ。トシフミ達も船長に報告が必要だ。道を開けてやれ」
「ほら、サリナもハヤトも。気持ちはわかるけどね」
ケイジとレイカが助け船を出してくれた。
敏文はケイジ達のお陰で、無事に船長室に入った。船長室には、船長、警備隊長、[漆黒の猟犬][虎の庵]それに[ミスティック]がいた。
船長が話を始める。
「さて、今、君たちのお陰でこの船は無事に王都に向かっている。そこで少し時間もあることだし、トシフミ、起こったことについて俺達に説明してくれないか」
「わかった。まず襲われていたのは王室専用船だった。乗っていたのはこの国の第三王女ナツキ様だ」
「なんだって! ナツキ様が!」
「じゃ、もしトシフミ達が助けに行かなければナツキ様が大変な事になっていたかも知れないの!」
(皆なんでここまで反応するんだろう)
敏文がそう思っていると、トモエが説明してくれた。
『ナツキはね、国民に人気があるのよ。王家の3人の王女のうち、上の二人に比べて、民に別け隔てなく接するし、慈善活動もよくやっているようよ』
『なるほど』
敏文は再び話始める。
「船を襲っていたのは、バットエイプという猿に蝙蝠の羽根が生えたようなやつだ。数百はいたな。本来バットエイプは、火と風の魔法が弱点らしいんだが、中に火魔法の魔道具を持っていた奴が何匹かいてな。そいつらが、船の動力部分を壊してしまった為に動きがとれないようになっていたようだ」
「なるほど、そうするとあいつら自然に集まった訳ではないんだろうな」
敏文の説明にブンゾーが反応する。
「ああ、恐らくな。でなければ魔道具なんか持っているはずがない。それに、次に襲ってきた白い鯨にも魔道具と思われるものが刺さっていた」
「ということは……」
サリナの声にケイジが返す。
「ああ、意図的に誰かが攻撃させたってことだろう」
そこで船長が釘をさす。
「王家が絡むこの手の話には関わらない方がいい。巻き込まれてもいいことは何もないと俺は思うぞ」
それに対してケイジが言う。
「俺達はそれでいいが、トシフミはそうはいかないだろう。何せあんなもの見せられたら国が黙ってないんじゃないか」
部屋にいる全員が敏文を見る。覚悟はしてたが説明しなきゃいけないだろうな。
「俺は基本属性魔法以外に、精霊の直接の助けを借りた精霊魔法を使うことが出来る」
「精霊魔法だと?」
タイガの声に、サリナが続ける。
「精霊の祝福を受けて使うっていう特殊属性魔法ではないの?」
「特殊属性魔法は、精霊の祝福を受けたものが使えるものだと聞いている。俺のは精霊が直接宿ってその力を直接振るっているものだ。だから精霊魔法と呼んでいる」
「じゃあ、あの大きな蒼い鳥は……。あと、あの火の魔法は……」
そう言うレイカに敏文は答えた。
「ああ、蒼い鳥は精霊そのものだし、炎の魔法も別の精霊に力を借りている」
「お前、どうやって……、それにいくつの精霊を……」
「俺には今4人の精霊が力を貸してくれている。これ以上の詳しい話は勘弁してくれ。俺自身にもわからないことが多すぎてな。説明が難しい」
タイガの問いに敏文はそう答えた。
「4人も……」
「聞いたことねぇ」
皆、口々に驚きを表していた。
「いずれ表に出るのかもしれないが、船を降りてからも俺のことで騒がないようにしてくれると有り難い」
すると船長が言った。
「俺達も色々と事情を聴かれるだろうから、見たことを話さないというわけにはいかないかもしれないが、今聞いた話を表に出るまでは言わないということならできる。皆そういうことでどうだ?」
「[漆黒の猟犬]は了解した」
「おう、[虎の庵]も了解だ!」
「皆ありがとう」
そこで船長がその場を締める。
「よし、話はこれまでにしよう。王都まであと1日の行程だ。その間しっかり頼んだぞ!」
「「「おう!」」」
それからの行程は、穏やかな天候の中、特に問題もなく過ぎていった。
◇◇◇◇◇
そして翌日。
昼頃になった時、甲板に出ていた敏文は行き交う船の数が増え、流れてくる空気に活気を感じるようになっているのに気が付いた。
「もうすぐか……」
そう呟くと、側にいたアヤメが叫ぶ。
「見て! あれが王都コーベンよ!」
王都は想像以上に美しい街だった。
ヤナーガも美しい街だったが、王都はまた違った美しさがある。海に面した家々は白く統一され、屋根も碧色の瓦で統一されていた。奥にそびえるロッコ山を背景にして小高い丘の上に、白と碧の王宮が建っていて、街は三重の白い城壁に囲まれている。
「どう? なかなか綺麗でしょう」
アヤメが傍らに寄って言う。
「ああ、明るい空にとても映える街だな」
「街もとっても活気があっていいところなんだ」
定期船は岸壁に接岸する。定期船の発着所には、大勢の出迎えの人達が来ていた。定期船がくる度にこんな状況なんだろうか?
敏文がアヤメにいつもこうなのか聞くと、アヤメも少しビックリしているようだ。
「もしかして、王室専用船の件が伝わってるから?」
タラップが下ろされ一般の乗客が次々と大きな荷物を抱えて降りていく。
[虎の庵]の連中が近付いてきた。
タイガが片手を差し出しながら話しかけてきた。
「今回の依頼では、面白いものを見せてもらった。またどこかで会うこともあんだろ。そんときゃ、俺達とも仕合ってくれや」
「ああ、またどっかでな」
敏文はタイガと握手する。
(こいつら暑苦しかったけど、考えてみればいいやつらなのかもしれない)
そして、[漆黒の猟犬]が現れる。
「よう。ケイジ」
「この3日間はいろいろあったが、楽しかったぞ。トシフミ」
「そうだな。そうだ[遠話の腕輪]にお互いを登録しておかないか」
敏文達はお互いのチームの面々と[遠話の腕輪]の登録を行う。
「何かあるようなら、声をかけてくれ」
敏文はケイジや他の[漆黒の猟犬]のメンバーと握手を交わす。
「ああ、お互いにな。トシフミ」
そして、[漆黒の猟犬]はタラップを降りていった。敏文達は近づいてきた船長と挨拶を交わす。
「今回、偶然とはいえ、君たちが依頼を受けてくれていて助かった。ありがとう」
「また、ニシノベに行くことがあるでしょう。その時はまたお願いします」
「こちらこそ。またの乗船を待っているよ」
敏文は船長と笑顔で握手し、タラップをおりた。
タラップをおりるとそこには見慣れた、そして少し懐かしい顔があった。
「よう、ご活躍だったみたいだな」
そこには、ノーギ男爵とダイカクの姿があった。それにキキョウ、マリカ、ナミの姿もある。ノーギ男爵達とは半月、ダイカクとは10日ぐらい会ってないだけなのに、何だか懐かしさを感じてしまう。
「ええ、随分やらかしてしまいました。でも、隠して後悔するぐらいなら出来ることはやっておきたかったんです」
敏文がそう言うとダイカクが笑って言う。
「以前と違って、色々と覚悟が出来たようだな。顔つきが違って見えるぞ」
「そうでしょうか」
隣にいたアヤメが、ダイカクに話す。
「お父様。何とか無事に王都までこれました」
「お前も色々と経験しているようだな。いい表情になってきた」
「お父様がトシフミたちと一緒に行くのを許して下さったお陰です」
「そうか」
ダイカクも嬉しそうにしている。そこにマリカが割って入ってきた。
「ずるい……。アヤメ姉ちゃんばっかりずるい。私も[ミスティック]に入る!」
アヤメは二つの腕輪を着けた左腕を少し得意気に見せながら言う。
「あなたは高等学校卒業してないでしょ」
「夏には、特例で卒業できる。そしたら入る!」
この国の学校は、成績が優秀なら飛び級や繰り上げで卒業が出来る制度がある。
「ダイカクさん。あんなこと言ってますがどうします?」
サラがダイカクに話を振る。
「卒業してから決めるさ」
「よし、じゃあ、馬車を待たせているから、俺の屋敷に向かおうか」
ノーギ男爵がそう言った時だった。
「ノーギ男爵様、お話し中に申し訳ありませんがよろしいでしょうか」
軍服を来た数人の男達が、そこに立っていた。
◇◇◇◇◇
数分後、敏文達は近衛兵が操る馬車に揺られて王宮へ向かっていた。
やって来た兵士曰く、王室専用船の救出に対して、国王様から御言葉があるとのこと。
(まいったな。国の王様に会うことになるなんて。こんな格好でいいのか? 俺達の出自や精霊達のこと聞かれたらどう答えようか。俺は会社の部長以上に偉い人なんて話したことないぞ)
唯一の救いはノーギ男爵が同乗してくれたことか。ダイカクとキキョウ達は呼ばれてないから登城出来ないと、男爵の屋敷に向かった。
「まあ、緊張するなと言ってもムリだろうな。ついたら控え室で最低限の礼儀だけ教えてやる。後は聞かれたことだけ答えてくれればいい」
ノーギ男爵はそう言って敏文の肩を叩く。
馬車は庶民街から貴族街を抜けて、王宮へ入ってきた。サラは周りの景色を見ながらきれ~いと無邪気にしている。ある意味俺より彼女の方が大物か?
そして馬車は王宮の入口の前で止まった。王宮には、王族用、貴族用、一般用の出入口があるそうだ。今回男爵が同行している為に貴族用の入口から入る。
敏文達は王室のメイドに控え室に案内される。
そこで敏文達は長時間待たされる事になった。最初の内は、男爵から作法のレクチャーを受けていたので気にならなかったが、途中から忘れられているのかと思ったほどだ。
男爵に聞くと恐らく飛び込みで要件が入ったのだろうと言う。
ブンゾーはソファに座って寝ているし、サラはお腹減った~とじたばたしている。アヤメは辛うじて耐えているが疲れた様子だ。
男爵はついて早々すまんなと苦笑いしている。
そして漸く呼ばれた時は夕方になっていた。
それでも相手が国王なので、礼節を欠いてはいけないと、緊張しながら入室する。
謁見の間は、天井が高く、様々な調度品で飾られたとてもきらびやかな部屋だった。
奥に国王夫妻が座ると思われる玉座があり、そこから一段下がった床と、さらにもう一段下がった床がある。敏文達は一番低い段の、中央で待つように言われた。
周りにはきらびやかな礼装の軍服で身を固めた近衛兵が立っていた。
敏文達は教えられた通り、片膝をつき、片手を胸にあてて、頭を垂れたまま、ホーエン国王の入室を待つ。
国王から頭を上げよと言われるまでは、そのままの姿勢で頭を上げるなと言われていたので、何人かの入室の気配を感じたが、動くことができなかった。
そして、ついに国王が現れる。
「ホーエン国王! マサノブ=トイーダ陛下のおな~り~」
その声と同時に周りの空気がピシッとしたものに変わる。
前方に人が入ってくる気配を感じたが敏文達は、そのまま声がかかるまで待ち続けた。
「次は何であったかな。何、王室専用船の危機を救ったという探検者たちであったか。そうか、そうか。頭を上げよ」
敏文達は漸く頭を上げることができた。正面を見ると、少し小柄だが髭を蓄えた王冠をかぶった男が敏文達を見下ろしていた。
そして国王の右には男性が2人と左にはナツキが立っていた。
一段下がった所には家臣達が左右に整列していた。その中にはヤナーガのタチバナ伯爵や、ノーギ男爵の姿もある。
「その方達名前はなんと言うか」
敏文達は名乗りを上げる。
「探検者チーム [ミスティック]の敏文でございます」
「同じく、ブンゾーでございます」
「同じく、サラと申します」
「同じく、アヤメでございます」
「この度、第三王女であるこのナツキが乗船していた王室専用船を、魔獣の群れから救うてくれたこと大義であった。よって褒美を取らせる。受けとるがよい」
「はっ! 有り難き幸せにございます」
敏文は侍従がトレイに乗せて持ってきた袋を丁寧に受けとる。
「これからも、ホーエンのために尽くしてくれ」
「はっ!」
敏文は頭を下げて、大きな声で答えた。
「大義であった。もう下がってよいぞ」
「はっ!」
敏文達は、国王を正面に見たまま、後ろに数歩下がり、そのまま退出した。
控え室に戻った敏文達は漸く一息つき、置かれていた水差しの水を飲む。
「ふーっ。落ち着いた」
「お前達ご苦労だったな」
ノーギ男爵が声をかける。
「緊張して生きた心地がしませんでしたよ」
「そうは見えなかったがな」
「男爵は慣れているかもしれませんが、こちらは一般庶民ですから。こういうことには不慣れなんですよ」
その時、ノックの音がして、メイドがタチバナ伯爵の来訪を告げる。
「よう、お前達。元気にしておるようだな」
「これはタチバナ伯爵。ヤナーガでは大変お世話になりました」
「いや、世話になったのはこっちのほうだ。それにしても、そう何日も経っておらんのに色々と巻き込まれておるようだな」
「まあ、今回は自分から首を突っ込んだ部分もありまして」
敏文は苦笑いしながら頭をかく。
「そうか。でも偶然にしてもお前達がこの国の王女を救った事に変わりはないのだ。臣下たる俺からも礼を言わせてくれ」
その時だった。またコンコンとノックの音がして、控え室の扉が開きメイドが、第二王子のヨシトモ、第三王女ナツキ、王弟で宰相補のトモナリの来訪を告げる。
「これは、タチバナ伯爵。おじゃまでしたか?」
ナツキの問いにタチバナ伯爵は、
「いえ、それはございません」
敏文はナツキに向かって褒美の礼を言う。
「この度は、過分な報酬を頂戴致しまして恐縮の限りです」
「いえ、わたくし達の命を救って頂いたのです。あなた方に来ていただくのがもう少し遅ければ、私やあの船の者達は大勢命を落としていたことでしょう。あの時は充分にお礼を言うこともできないままとなってしまい大変すまなく思っています」
その時、ナツキの後ろにいた男性が、話し出す。
「君が[ミスティック]のトシフミか」
「はい」
「そうか、我が妹を救ってくれたこと感謝する。私はホーエン国王マサノブ=トイーダが次子ヨシトモだ」
ヨシトモは28歳。183セルと敏文より少し背が高い。少し癖のある亜麻色の髪をしている。4つ年上の兄と違い、非常に気さくな性格で身分にこだわらない社交的な人物だ。現在は貴族の子弟が多く所属する近衛兵団騎兵第一連隊の第一大隊長をしている。決してお飾りではなく、武芸にも優れ、雷魔法の魔法士でもある。独身で甘いマスクもあり、国民の、特に女性の人気は非常に高い。
「私は宰相補のトモナリだ。私からも感謝したい」
トモナリは現国王マサノブの弟にあたる。38歳で背は177セル。前国王からすれば三男に当たる。栗色の長い髪を後ろで束ね、あごの先に短い髭を蓄えている。胆力に優れ、前国王が崩御する前は、現国王ではなく、このトモナリを押す声もあったほどだ。自分が側姫の子であることもあり、王位継承争いで国を損なってはならないと自ら王位継承権を放棄。現在は一臣下として、キジマール宰相を支える宰相補の地位についていた。
“きゅるきゅるきゅる~”
トモナリが感謝の言葉を話したその時、サラの腹の虫が空腹についに耐えかねて抗議の声をあげた。
ミスティックの4人は昼食をとるタイミングを失したまま、拝謁に望んでおり皆空腹だった。
「ああっ、申し訳ありません」
さすがにサラも顔を真っ赤にしている。
するとナツキが提案してきた。
「フフフ、随分お待たせしてしまったようですものね。どうでしょう、これからわたくし達と夕食をご一緒に如何かしら。タチバナ伯爵、ノーギ男爵も如何ですか?」
すると部屋の扉が開いて声がした。
「その席、私も御相伴してもよろしいですかな」
そこに立っていたのは、謁見の間で臣下の先頭に立っていた銀髪の男性だった。




