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第22話 天智の精霊

2014.4.18 話を大きく修正しました。

 翌朝、敏文達は出発の準備をしていた。ニザエモンとブンゾーが敏文の顔を見てホッとした表情をしている。


 昨日の夜ブンゾーは気をきかせたつもりなのか部屋には戻って来なかった。

 別の部屋を借りて休んだようだ。


 サラとアヤメは暫くは部屋にいたが、敏文が立ち直ってきた様子に、自分達の部屋に戻って行った。



「どうやら、吹っ切れたようだな。さぞかし昨日はお楽しみ……」

「そんなん違うわっ!」


 そんなやり取りを見てニザエモンはにっこりして言う。

「元気になったのなら、ようございました」

「ニザエモンさんにもご心配おかけしました」


 馬車の準備が整った時、通りから声が聞こえてきた。

「待ってください!」

 そこにいたのは、昨日の定期馬車の乗客だった男と男の子だ。

「昨日はどたばたの中でキチンとお礼を申し上げることができませんでした。私はハカタンの職人でタキチというものです。これは、息子のトラタです。この度は私共の命をお助け頂き本当にありがとうございました。一言お礼を申し上げたくて」


「それはご丁寧に」


 トラタは目をキラキラさせながら敏文に話しかけた。

「おじちゃん、すげぇ強えーんだな。おいら、戦ってる時のおじちゃんの動きぜんぜん見えなかったんだ。ビックリしたぜ」

「私にも全く」

 タキチも頷いている。


 敏文はにっこり笑って返すと、タキチに聞いた。

「あなた方はこれからどうされるのですか? ハカタンに戻られるのでは?」

「はい、そのつもりですが、定期馬車を探して乗る積もりです」


「他に一緒にいかれる方は?」

「いえ、私達だけです。妻と娘は、あの襲撃で……。一緒にいた女性達はこのチクシールで降りる予定だと言っていましたから」

「これは辛い事を聞いてしまいました。すみません」

「母ちゃんと妹の仇はおじちゃんが取ってくれた。おいら、辛いけど母ちゃんと妹の分も精一杯生きるって父ちゃんと一緒に誓ったんだ。だから、泣かねえ」

 そう言いながらもトラタは辛そうだ。 


 敏文は余計な事を聞いてしまったと思い、タキチに提案する。

「あの、よければハカタンまで一緒にどうですか? 申し訳ありませんが、あちらの客馬車ではなく、こちらの荷馬車になってしまいますが……」

「えっ、でも宜しいのですか? ご迷惑になるのでは……」

「ニザエモンさん、よろしいですよね」

「ええ、荷馬車の方にということであれば、私に否やを言える事ではないですよ」

「ブンゾー、サラ、アヤメ。いいか?」

「ああ、構わないよ」

「よろしくね、トラタくん」


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えてお願いします」

「おいらも、よろしく!」


 そうして同行者の増えた一行は、チクシールを出発した。


 この日は昨日とは異なり、大きなトラブルはなかった。一度だけ、バスケットボールぐらいの大きさがあるジャイアント・ビーの群れと遭遇したが、敏文、ブンゾー、アヤメの《風矢》・《風刃》、サラの《水弾》の連射で次々と打ち落として切り抜けた。


◇◇◇◇◇


 そして、ようやくハカタンの街並みが見えてきた。

 ハカタンの街は、ニシノベ島の北の海辺にある街で、商人の街と言われるところだ。街には、活気があり大陸のトリアードや、南のサウザン=ユナイトとの交易の玄関口にもなっている。

 南の関所で、敏文たちは探検者組合の腕輪で、ニザエモン一行や、タキチ・トラタの親子は通行証を見せて通ろうとしている。

 関所の兵士は、にっこりと笑って挨拶してきた。

「ハカタンへようこそ。ゆっくり楽しんでいってください」

 敏文は片手を上げると、馬車を出発させる。



 街の中心街に近づいてきたところで、荷馬車のブンゾーから声がかかる。

「おーい、トシフミ。タキチたちがここでいいってよ」

「そうか。わかった!」


 敏文は馬車を止めニザエモンに一言断ると、後ろの荷馬車の方へ向かう。

「よう。トラタ。疲れなかったか?」

「うん、おじさん。ここまで送ってくれてありがとう」

「トシフミさん。本当にお世話になりました」


「俺達は、何日かはニザエモンさんのところに厄介になることになりそうだ。また、会うことがあるかもしれないな」

「いずれまた」

 敏文はタキチと握手する。

「じゃーなぁ! お姉ちゃんたちも元気で~」

 トラタは元気いっぱいに敏文達に手を振りながら後ろに数歩さがる。


「ばいばーい!」

「トラタくんも元気でね~」

 サラとアヤメも力いっぱい手を振っていた。


 そうしてタキチ親子は人ごみの中に消えていった。


「さて出発するか。ニザエモンさん、お宅はこの近くなんですよね」

「ええ、もうすぐです」


 ニザエモンの商家はそのすぐ近くにあった。

「おい、ずいぶん大店じゃないか」

 ブンゾーが驚く。

 ニザエモンの店は、輸入雑貨や食料品、酒、その他いろいろなものを扱う貿易商で、ニザエモン一代で作り上げたものらしい。店の前には、輸入された果物や野菜などが並び、買い物客であふれている。店の奥行きはかなりあり、2階や3階にも売り場があるようだ。中には、いろいろな商品が陳列され、入り口右側には商談用のスペースが、左側には、雑貨、衣類、酒などの陳列スペースがあり、奥には試着室なんかもあるそうだ。


 また、棟違いの建物もあり、通りの反対側には家具や装飾品さらには武器などを扱う店も持っていた。


「凄い! なんだかちょっとしたデパートみたいだね。トシフミ」

 サラがはしゃいでいる。

「そうだな。凄いな」

「これだけのお店は王都にもそうないかも」

 アヤメも感心している。


「お褒めいただき光栄です。さ、店の前だと馬車をゆっくり止めることもできません。裏のほうに回りましょう」

 ニザエモンがそう言うので、敏文は店の裏側に向かって馬車を進めた。


 結構な距離を進んだあと、ちょうど店の反対側に居住用の入り口があり、大きな門と馬車止めがあった。

 すると馬車が入るのがわかったのか玄関から使用人たちが列を成して出迎えしているのが見える。


 ニザエモンが馬車を降り、客馬車の扉を開くと、クミとヒトミ、それに4人の女性の使用人も降りてくる。


 すると、玄関から年配の女性が飛び出してきて、クミとヒトミを抱きしめる。

「クミ! ヒトミ!」

 女性は周りを憚らずに大泣きしながら、何度も2人の名前を呼んでいる。


 すると、横から中年の男性が声をかけた。

「お父さん、お帰りなさい」

「ああ、今かえったよ。トウエモン」

「お帰り、クミ、ヒトミ、そしてお前たちも」

 トウエモンと呼ばれた男性は、2人だけではなく、使用人たちにも声をかけていく。

「ただ今帰りました。ご心配をおかけしてすみません。トウエモン兄様」

「ただいま。トウエモンおじちゃま」


 男性はクミの兄のようだ。若旦那というところか。

「さあ、家に入ろう」


「トウエモン、その前に皆にご紹介しておきたい。今回、強盗団から皆を救い出してくださった、探検者チームのミスティックのトシフミ様、ブンゾー様、サラ様、アヤメ様だ。娘たちの命の恩人だ。命を救っていただいただけでなく、私からの無理なお願いを聞いていただき、ここまで護衛をしてくださった。お前たちからもお礼を言っておくれ」


「そうでしたか。これは失礼をいたしました。私は父の元でこのニザエモン商店の副支配人をしておりますトウエモンと申します。この度は妹や姪、そして我が家の使用人たちを救っていただいたとのこと。本当に感謝いたします。長旅お疲れでございましょう。さあ、どうぞお入りください」

 そう言うとトウエモンは丁寧に腰を折った。


 トウエモンは30代後半でゆったりした着物に羽織を着ている。羽織にはニザエモン商店のマークだろうか、背中に大きな看板と同じマークがついていた。背はトウエモンより少し高い160セル前半。少しふっくらした感じだ。


「ああ、お見苦しいところをお見せしてすみません。私はニザエモンの妻のサトミと申します。この度は本当にありがとうございました。もう、娘や孫の顔を見ることはかなわないのではないかと、打ちひしがれておりました。ニザエモンから、2人が見つかったと聞いて、どんなに喜んだことか」

 サトミは、涙声だが嬉しそうに言う。


 サトミはトウエモンより小柄な年配の女性だ。白髪の混じった髪を結い上げ、薄茶色の和服に似た着物を着ていた。

「義息やもう1人の孫コウタロウは残念でございましたが、今は2人や使用人の娘達が帰ったことを喜ばせてください。十分な御もてなしはできないかもしれませんが、さあ、どうぞおあがりください」

 サトミは、そう言うと敏文達を家の中に招いた。


 その日は風呂をいただき、ハカタンの海の幸で歓待を受けた。そして、お疲れでしょうからということで、早めに部屋で休ませていただくことになった。


 4人で同じ部屋に布団を並べて休む。

「なんだか、凄い歓待で気が引けちゃったね」アヤメが言う。

「そうだな。ちょっとびっくりしたな」とブンゾー。

「お魚がおいしかった~」とサラ。


 少しの間、わいわいと話をしていたのだが、皆疲れていたのか3人ともそのうち、寝てしまったようだ。


 敏文はコウ、タクミ、セイランに話しかける。

『コウ、タクミ、セイラン。ここまで何とかこれたのはブンゾーやサラ、アヤメ以外にも、お前達に助けてもらったおかげだ。本当にありがとう』


『いろいろあったけど、まだまだこれから大変なことたくさんありそうだしね』とコウ。

『ま、タイクツはしなさそうだよね』とタクミ。

『あらあら、タイクツしのぎでトシフミと一緒にいるの? あなたたちは』

『え~、そういう意味じゃないけどなぁ。ねぇ、タクミ』

『一緒だと楽しいっていってるんだよ。な、コウ』

『仲がよいこと。フフフ』


『いずれにしても、これからもよろしくな、3人とも』

『まかされた!』『は~い!』『ええ、よろしく』

 そして、敏文も眠りに落ちていった。


◇◇◇◇◇


 翌日、敏文達はニザエモンの依頼を完了したことについて、完了報告書を持って探検者組合へ行った。


 受付の女性に完了報告書を提出し、腕輪に依頼完了の記録をしてもらう。腕輪には戦闘の記録などもされるらしい。今回の依頼では、クラスは上がらないと思っていたのに、腕輪を見ると刀の紋様がひとつ増えている。


 よく理由がわからないので聞いてみると、仕事の完了だけではなく、依頼主からの評価や組合が解決に協力を求められている事に関係する戦闘の記録等も、評価の対象になるらしい。今回の盗賊等の捕縛、討伐はその対象だったようだ。

 そして、依頼報酬についても、当初決めた30万イェンの倍、60万イェンが払われ、依頼外の盗賊討伐の報償金として別途20万イェンが払われた。


 敏文は後でニザエモンに倍は貰いすぎだと言ったが、ニザエモンは笑って言った。

「私たちの命は安くありませんので。これでも安いと思っております」


 取り敢えず、各自に20万イェンずつ分けることにする。


 これからどうしようか、3人に相談するとサラとアヤメはニザエモンの店で買い物をしたいといい、ブンゾーは街を歩いて見たいと言う。

 そこで敏文はニザエモンに聞いた大図書館を覗いてみる事にした。


 夕方にはお互いニザエモンの屋敷に戻る事にして、敏文は教えて貰った大図書館へ向かった。



◇◇◇◇◇



 大図書館は大通りを200メルほど歩いた所にあった。大きな煉瓦造りの建物で3階建だ。


 敏文は受付のカウンターの女性に身分証明の代わりに探検者の腕輪を提示すると、閲覧の方法を聞く。

 1階には、動植物の本や、児童書、物語や小説の類、それにファッションやハカタンの店の紹介本などがあるそうだ。

 2階には、古文書や歴史書、学問・研究、魔法、地図、土地や風土に関する本等が置いてあるらしい。

 3階は、研究書類等が納められているらしい。

[異邦の人]について、探すとしたら2階だろうか。


 敏文が考え込んでいると、本をうず高く両手で抱えた女性から、声をかけられた。

「何かお探しの……、きゃあ!」

 案の定、前が見えていなかったのだろう。足元の段差につまづいて敏文に向かって盛大に本をぶちまける。

 敏文は何とか2冊の分厚い本は手で防いだのだが、3冊目と4冊目は避けられずに、頭に貰う。

「…………つ~~~~~っ!」

 本が厚かったせいか半端ない痛みが敏文を襲う。敏文は頭を押さえて暫く動けなくなった。


「あ~~~っ! すみません、すみません、すみません、すみません……」

 その丸いレンズの眼鏡をかけた女の子は、ひたすらペコペコ謝っている。


「お客さま、本当に申し訳ありません。あなたはまたやって!」

 受付の女性が敏文を脇のソファーに連れて行ってくれた。


「すみません、すみません、すみません、すみません……」

 まだ、謝ってる。

「もう、いいよ。大丈夫だから、これ以上謝らなくていいから。それより大事な本なんじゃない? 早く集めた方がいいと思うけど……」

「きゃあ! 大変!」

 そう言うと彼女は、放り出した本をまた全部抱えようとしている。

「アイ! それだとあなたまた前が見えないでしょう! 半分置いて行きなさい!」

「あっ、はい!」


 受付の女性は、ふうっと息をつくと敏文に改めて詫びる。

「お加減は大丈夫でしょうか。ご迷惑をおかけしました」

「いえ、わざとじゃないですし、気にしてませんから。でもまだ慣れてない感じですね」

「今年、中等学校を卒業して入ったばかりの娘です。あの、そそっかしいところがなければ 、本のこともよく知っていてよい娘なんですが……」


(アイちゃんか。そう言えばよちよちしてた頃の愛里のこと、アイちゃんって呼んでたっけ……)


 敏文は受付の女性にホーエンの古い伝承等が書かれてある本等がないか聞いてみた。

 調べてもらうと2階の奥の218号室に保管されているらしい。敏文はお礼を言って、2階への階段を上がった。


 2階は手前から左右に交互に番号がふられていて、広い空間に本棚が並ぶ1階と違い、ジャンル毎に部屋が別れているようだ。201号室から220号室まである。その中の奥の方に218号室はあった。


 余り人が入らない部屋なのか埃臭い。


 収められている書籍は時代別に並べられていた。

(そう言えば、ダイカクに[異邦の人]のこと聞いたとき、いつ頃の時代に現れたのか聞くの忘れたな。どこの時代を調べればいいんだろう……。せっかく来たのになぁ……)


 取り敢えず、敏文は古い時代の物を取ってみる。ぱらぱらと数ページめくってみたのだが文字が読めない。ホーエン語で書かれているようだ。


 敏文がこの本は読めないと諦めて本を本棚に戻した時だった。


(なんだ? 奥の方が少し光ったような気がするが……)


 敏文は誘われるように本棚の奥へ進んでいく。すると、古い1冊の本が光っているように見えた。手に取ってみると、表紙には何もかかれていない。


 敏文は表裏を見てやはり裏側にも何も書かれて開いないことを不思議に思ったが意を決して開いてみると、そこには年配の女性がにこやかにこちらを見ている挿し絵があった。


 若い女性のようにも見える不思議な絵だ。何となく暖かい感じがした敏文は、絵を見て微笑んだ。


 すると、声が聞こえる。

『何か探してる本があるのかい?』

 年配の女性の声だ。敏文は周りを見たが誰もいない。


『私はここだよ』

 すると、本の挿し絵の女性が本の中から抜け出てきた。サイズは手のひらサイズだ。


「うおっ!」

 敏文は仰け反って驚く。


『何か知りたいことがあるようだね。何が知りたいんだい?』

「貴女は…………?」

『私は天智の精霊と言ってね。学問や知識を司る精霊なのさ。ずっとここに籠っていてね。ここの建物にある本も読み終わった所でそろそろ退屈だなぁと思った時にあんたがあらわれたんだよ』

「ここの本全部って一体何冊あるんですか?」

『大体5万冊ぐらいかねぇ』

「5万冊! 貴女は一体いつからここに籠ってるんですか!」

『さあ、もう忘れたよ。ところで知りたいことはなんだい? ここの本にあることなら何でも知ってるし、それ以外にも私が知ってることなら答えられるよ。言ってご覧なさいな』

「貴女は[異邦の人]という存在を知っていますか? 今日俺はその事が調べたくてここに来たんだ」

『[異邦の人]ねぇ。何でそんなこと調べたいんだい? ……もしかしてあんたがそうなのかい?』

 少し考えた敏文は頷く。

「精霊である貴女に隠してもしょうがないか。ええ、その通りです」

『ほぉ。なるほど』

 彼女は興味深そうにこちらを見ている。


「俺はこのローメリアとは違う世界、地球と言う星の日本という国に住んでいた人間です。ある拍子にこの世界にもう1人の女性と一緒に来てしまった。何故ここに来たのか、それが偶然なのか、意図されたものなのかもわからない。そんな中過去にも俺と同じように他の世界から来た人間がいたって事を聞いたんです。その人間がどんなことをして、どう生きたのか。最後にどうなったのかを知りたくてここに来たんです。そして元の世界に戻れる方法を探しています」


 彼女は、にっこり微笑んで優しく語りかけてくる。

『そうかい。大変な思いをしたんだねぇ、あんたは。なるほどねぇ、[異邦の人]だからかい。それともあんただからなのかねぇ。あんたからは何となく普通のローメリア人にはない何かを感じたんだよねぇ。それで本から出て話してみる気になったのさ』


 そう言えば、タクミやセイランも似たようなことを言ってたかなあ。


『私の記憶の中には、この世界で暮らしたといわれる[異邦の人]と呼ばれた人達の記録が何人か残されている。どうだい、あんたの記憶にある元の世界、地球の記憶や知識と私の記憶にあるこの世界の知識や記憶、もちろん[異邦の人]の記録も含めてだけど、交換するってのはどうだい?』

 天智の精霊は提案してくる。


『そうだね。ただ交換しておしまいって言うのも詰まらないね。もし、嫌じゃないなら、あんたのこの世界での旅に私もついて行こうかね。その時々でお互いに聞きたい事の情報を交換するってのはどうだい?』


 敏文はその話に凄く魅力を感じた。

「いいんですか?」

『あたしは新しいことを知るのが大好きなのさ。あんたの世界の事はローメリアのどの文献にもない興味深い話だと思うからねぇ』

「じゃあ、よろしくお願いします」

『そうかい。じゃあ、名前を貰おうかね』


「そうですね…………、ではトモエ(智恵)さんというのはどうですか?」


『トモエだね。いいねえ』

「よろしく、トモエさん。俺は敏文です。それと、気が付いてるかもしれないけど、俺には3人助けてくれている精霊がいます。紹介しますね。コウ、タクミ、セイラン」

『よろしく、コウだよ』

『タクミです』

『セイランといいます。よろしくお願いします』

「3人とも仲良くお願いします。トモエさん」


『…………』

 何だか、トモエの様子が変だ。

「あの、何か…………」

『なぜ私だけトモエさんなんだい?』

「え?」

『他の精霊達は呼び捨てなのに、なぜ私だけ“さん”付けなんだい?』

「え、ああ、私よりもお歳が上に……」


(あれ、そう言えば、コウ、タクミは見た目子供だし、セイランは鳥の姿だから年齢は解らない。そもそも幾つだっけ? 精霊だから、俺より全然歳上?)


「えっと、コウさん、タクミさん、セイランさん…………」


『うわっ、それやだトシフミ!』とコウ。

『ボクもヤだね。よそよそしい』とタクミ。

『何だか、今更よね』とセイラン。


 確かに敏文も呼びづらいと感じた。


『見た目で呼びづらいなら、これならどうだい?』

 そう言うと、トモエは敏文の手のひらの上でくるっと体を一回転させた。すると今までは、見た目おばあちゃんだったのが、20歳台後半の女性の姿になった。いつの間にか落下防止の細い鎖がついた細目のレンズの眼鏡をかけている。トモエは右手の人差し指で、眼鏡ををついっと押し上げると敏文に聞く。

『これならどう?』


 口調も見た目と相応に変わっている。

「解った。じゃあよろしくトモエ」



 トモエにはタクミと同じ右のこめかみ、タクミの上に宿って貰う事にした。トモエの紋章は羽根ペンで、タクミの角の紋章に沿うように現れた。


 敏文はそのまま、過去に来たという[異邦の人]についてこの場所でトモエに話を聞くことにした。


(これからどうすべきかを考えるのに役立つ話が聞けるだろうか……)


 敏文は期待を持ってトモエの話に耳を傾けた。

天智の精霊を登場させました。いろいろな知識を持っているようです。これからどういう活躍をさせられるか……。

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