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第16話 探検者組合

2014.4.18 話を大きく修正しました。

 翌朝、目を覚ました敏文は酷い頭痛と吐き気に襲われていた。


「うえっ。完全に二日酔いだ。寄って集って飲ませてくれて……まったく」

 敏文は呼鈴を鳴らして、メイドに水を持ってきて貰った。


「大丈夫ですか? 旦那様があんなにお酒を飲まれるのは久しぶりなので少し驚きましたが」

「みっともないところ見せて済まないな。もう少し水を貰えるか?」

「はい。どうぞ」

「すまんな。ありがとう。君、名前は?」

 年齢的には16、7歳ぐらいだろうか。小柄で明るい茶色の髪に目がくりくりとして可愛らしい娘だ。ただメイドの仕事はまだ不馴れな様子だ。ちょっとオドオドしている。

「あ、ご挨拶が足りなくてすみません。私カリンと言います。今日、トシフミ様とこのお部屋を担当しております。何なりとお申し付けください」


「ありがとうカリン。もし、知ってたら教えてくれ。途中から記憶がない。俺はどうやってこの部屋に……」


 カリンの話によると男爵に部屋に連れて行かれた敏文はダイカク、ブンゾー、カージ、タケイも巻き込んで、すごい量の酒瓶に埋もれていたらしい。


(途中までは楽しそうに笑っていたサラの顔が引きつっていたところは覚えているのだが……。途中でいなくなったんだろうか)


 男ども全員が呂律が回らなくなりながらも、男爵が追加の酒をメイドに頼んだところで、やってきたアケビさんの一喝が入りお開きとなった…………ようだ。その時にはサラはいなかったらしい。

 というのも、敏文には途中から全く記憶がない。何だか知らない歌を歌いつつ一人で大丈夫と言い張って、ふらふらと部屋に自分で戻ったそうだ。



 カリンが出ていった後、部屋の窓際にある安楽椅子にタクミが膝の上にコウを抱いて現れた。昨日二人は宴会が始まる寸前に巻き込まれたくないからって逃げ出していたんだっけ。

『あ~あ~、しょうがないな~』

『まったくだよ。あんなになるまで飲まなきゃいいのに。どうして人間はそんなにお酒が好きなんだろうね。そう思わない? コウ』

『そうだね。でも顔洗って、しばらく放っておけばそのうち復活するんだよね』

『しょうがないね。人間って』


「なぁ、タクミ。二日酔いをすぐに治す技ってない?」

『ないね』

 敏文はばっさりタクミに切り捨てられた。

(淡い期待をもったのに……)



『それは水か土の魔法士に頼めばいいんじゃない』

 タクミの一言に、敏文ははたと手を打つ。

「そうか! その手があった!」


 敏文は、自分が水と土の初級の治癒魔法を覚えたことをすっかり忘れていた。

 早速敏文は習得した《水癒》の呪文を唱えて、胃の辺りに手をかざした。


「あれ? 楽にならない……」

『確か、水とか土の初級魔法には状態異常の解除の効果はなかったんじゃなかった? タクミ』

『そうだね。コウ。酔っ払ってるからそこまで頭がまわらないんだよ。たぶん』


(そうだった……。確かダイカクにそう教えてもらったんだった。二日酔いは状態異常の扱いだった)


 コウとタクミの視線が痛い。


(上級の水魔法が使えるダイカクか、中級の水魔法が使えるキキョウに助けてもらわなければ……)


 敏文はふらふらしながらダイカクの部屋を訪ねたが、寝ているのか扉を開けてくれない。仕方なく、敏文はキキョウを捜して屋敷の中をふらつくことになった。



 漸くキキョウを見つけて笑われながらも中級の治癒魔法で回復してもらい立ち直った敏文は、午後になってサラと一緒に呼び出されて男爵の部屋に向かった。


「サラ、昨日はすまん。途中から全く記憶がなくてな。いつ部屋を出たんだ?」

 サラは一言、「知らないっ!」と素っ気ない。

(何か不味い事でもしたのだろうか……)


 部屋に入ると、ダイカク、ブンゾーがいて敏文を見て笑っている。

「おう、漸くのお出ましか」

「昨日、貴方達があんなに飲ませるからでしょう!」


 苦笑いしながらも、男爵が言う。

「まあ、そう言うな。トシフミ、昨日はご苦労だった。シノハの話では助けられた避難民の子供たちとその両親がとても感謝していたそうだぞ」

「そうですか。みな無事でよかったです」

「あの後、炊き出しに参加していた者や子供の親を襲った者達を捕らえて話を聞いたんだがキエモンに金を貰って言うとおりに働いたと言っていてな。それを材料にキエモンを追及したんだが、詐欺の件はともかく、子供達をどうするつもりだったのかについては、奴隷商人に売るつもりだったの一点張りでな。それ以上は口を割らん。手の込んだ事をする以上、それだけじゃないようには思うんだが……」

「そうですか。俺はキエモン以外にもう一人海に飛び込んで逃げおおせた黒い服の男が気になります。あれはただ者ではないような気がします」

「そいつも引き続き探させている。ところで今日ここに来てもらったのは、お前に頼みがあるからだ。なんだか頼んだり巻き込んだりばかりで悪いが話を聞いてくれ」

「わかりました」


 男爵は椅子に座り足を組み直して言う。

「俺はこの前のシーバの騒動について、王都に上って国王陛下始め主だった重臣の方々の前でご報告をした。その上で、散魔石についてはご裁可をいただき、魔法・生物研究所のオズーノ殿にお会いして調査をお願いしてきた」

「それで……」

「まだ結果はでておらん。ただ宰相のキジマール伯爵によると、ホーエン国内で何箇所か魔物が増加したり、異変が起こっているようだ。ただどこも異変の原因がわかっていなかったようで、今回の散魔石の話は、何か全体の原因解明のためのきっかけになるかもしれんということで、大層お喜びであった」


「そうでしたか」

「その後、王都から戻ってきたところで、ヤナーガのタチバナ伯爵から連絡があってな。今回の経緯をぜひ自分にも聞かせてほしいというお話があった。魔道具の通信だけではよくわからない部分もあろうということで、直接お話をされることをご希望でな」


(ヤナーガか……。確かこのニシノベ島の西側にあるんだったな)

 敏文はダイカクに見せられた地図を頭に思い浮かべる。


「本来なら俺が行くべきところだが、俺は都合があって行けん。また、タチバナ伯爵はヤナーガの海軍基地を指揮される海軍卿でもあられるので、そうおいそれと任地を離れられるわけにはいかないのでな。すまんが、タチバナ伯爵と面識のあるダイカクと、実際に戦闘にも加わっているお前たちに行ってきてほしいのだ」

「なるほど。わかりました。私でお役に立つのでしたら」

「ブンゾー、サラ。お前たちも一緒について行ってくれ」

「はい」「わかりました」


「そう言えば男爵様。ゴヘーさんやシーバの人達から、散魔石のあった場所の話ですが何か解った事はあるのでしょうか」

 敏文の疑問に男爵は頭をかきながら答える。

「それがなトシフミ。どうもゴヘーの話がスッキリせん。ゴヘーが男2人にシーバの案内をしているのを里の者が見たようなのだが知らぬ存ぜぬ一辺倒でな。ゴヘーを調べると共にその男達の行方を追っているところだ。もう少し待っててくれ」


「そうですか。ありがとうございます。ところでダイカクさん。ヤナーガまではどうやって行くのですか? 船ですか?」

「船もあるが、今回は馬車を使って陸路で行こうと思う。大体、片道1週間程度かな」

「男爵様、伯爵様はそれぐらいかかっても問題ないのでしょうか。お急ぎと言うことではないのですか?」


 男爵は笑って言う。

「そこはお前は心配せずともよい。一刻を争うと言うことではなく、直接話を聞きたいと仰るのでな。お前達がこの世界を知るのにここに留まるだけが良策とも言えまい。旅をして、いろいろ見てくるのはよい事ではないかな」

「そうですね。わかりました」


 そこで男爵は机の引き出しから1通の封書を取り出した。

「そこでだ。ダイカクから頼まれていたお前たちの身元保証の件なんだが、お前たち探検者組合というものを知っておるか?」

「はい。ダイカクさんに教わって存在だけは」

「であれば話は早い。紹介状を書いたから、これを持って早速訪ねてくれ。探検者として登録してくれれば、俺がそれに身元保証を加えておこう。ヤナーガや他の街に入るのに組合の認証があるのとないのではずいぶん扱いが違うというしな。なあ、ダイカク」

「そうだな。組合長のモンドは信用できると思うがな」

「わかりました。お二人がそのようにおっしゃる方であれば、この後すぐに尋ねることにします。身元保証という意味では登録は私とサラの二人がすればよいのでしょうか?」

「いや、ブンゾーも一緒のほうがよかろう。なあ」

「そうだな。一緒に旅をするにあたっては俺も登録しておいた方がいい」


「それでは、早速行ってきます」

「ああ、そして旅の準備が出来次第、出来るだけ早急にヤナーガに向かってくれ」

「わかりました」


◇◇◇◇◇


 敏文達はミヤザの探検者組合へ向かうため男爵の屋敷を出ようとしていた。そこにキキョウやアヤメ、マリカ、ナミが家に帰る為に現れた。

「お父様。どちらかにお出かけになるのですか?」

 キキョウが尋ねた。


 ダイカクが簡単に事情を説明する。するとアヤメが言い出した。

「お父様! お願いです。今度のヤナーガ行き私も同行させて下さい! お願いします!」

「どうしたんだ急に」

「私、今回の事で自分の未熟さを思い知らされました。今のままではいけないと思って。風魔法士として、そしてきちんとした大人としてもっと成長しないと。皆さんと旅をすることでそのきっかけにしたいのです」


「今回みたいに後先考えない行動を取らないと皆に誓えるか? もし、一人が身勝手な行動を取れば組んでいる全員に迷惑をかける事になる。旅の中ではそれが死につながる事もある。組んでいる者に取ってそれは許される事ではない。それが理解できるか?」

「はい!」

 アヤメの眼は真剣だ。

 ダイカクは少し考えて答えた。

「わかった。お前にとって成長の機会になるかもしれん」

「ありがとうございます。お父様!」


「なら、私も!」

 マリカも声をあげたがキキョウに、あなたは学校あるでしょうと説得され、渋々留守番することになった。



◇◇◇◇◇ 


 ダイカクの案内で、敏文とサラ、ブンゾーにアヤメは、ミヤザの街中にある探検者組合の建物に入った。

「思っていたより広いな」

 敏文は入口から入ってすぐにそう呟いた。そこには、ハイカウンターに窓口が3つと右手の奥にローカウンターの相談席のような席が2つある。

 右手の壁には、黄、赤、青、紫の掲示板があり、沢山の紙が貼ってある。あれは依頼の内容が書かれてあるのだろうか。

 そしてカウンターの手前には、順番待ち用なのか、長椅子が3つ並んで置かれている。午前も遅くなっていて昼近くになっているからか、カウンター前には人がいなかった。

「人いませんね」

 サラが言う。

「探検者たちはもっと早い時間に依頼を確認にくるか、夕方日が暮れる前ぐらいにその日の成果を持ち込むのが普通だからな。この昼前の時間帯にはここにいないものなのさ」

 ダイカクが説明してくれた。

「ま、だから新規の登録なんかの時間がかかるものは、日中にやるのがいいんだろうな」

「なるほど」


 ダイカクは受付カウンターに進んでいく。

「やあ、ユリネ。元気か?」

「ああ、これはダイカク様! 男爵様からのお話の件でいらしたのですね」


 ダイカクが話しかけたユリネは年齢的にはサラと同じ25歳。雰囲気的に非常にほんわかとしていて癒し系のかわいらしい女性だ。ふわりと内側に巻いた肩までの髪とふっくらした頬が年齢より若く見せている。


「ああ、聞いているか」

「はい、もちろんです。ダイカク様がいらっしゃったら、2階の組合長応接にお通しするように申し付かっていますから」

 そう言うと、ユリネと呼ばれた女性は同僚にカウンターの業務を依頼しつつ、立ち上がって敏文たちを2階へ案内した。立ち上がると背は少しアヤメより低いぐらいなのがわかった。

「こちらにどうぞ」


 案内された場所は、2階の階段を上がった一番奥の応接室だった。

 そこは、ゆったりしたソファがしつらえられている。

「どうぞ、こちらにおかけになってお待ちください。今、支部長を呼んで来ますね」

 ユリネはそう言うと、応接から出て行った。


「ダイカクさんは、彼女とお知り合いなんですか?」

「ああ、俺は探検者組合に登録している探検者でもあるからな。この支部の依頼を受けてこなしたこともあるし、何度もここは訪れているのさ。今の娘はユリネといってな、ここの支部長モンドノジョーの娘だ」

「そうなんですか」



 その時応接室の扉が開いた。

「やあ、ダイカク」

 背はそれほど高くはないが、しっかり鍛えられた体をした短髪の男が入ってきた。


 モンドノジョーは47歳。ダイカクより2歳年上になる。探検者組合のミヤザ支部長を務める一方、現役の青ランクの探検者でもあった。槍を得意とし、土の魔法も使うことができた。


「おう、すまんな。モンド。ヨシノリから連絡が行ってると思うが」

「ああ、聞いている。それで登録するのは3人と聞いていたが」

 ダイカク以外に4人いるのを見てモンドノジョーが尋ねた。


「すまんが娘のアヤメも合わせて4人の登録を頼みたい」

 モンドは少し首を傾げたが、ニコッと笑って言った。


「そうか解った。おいユリネ、準備してくれ」

「はい、支部長」

 そう言うとユリネは一旦部屋から出てすぐに戻ってきた。トレイに何か小型の箱を乗せている。

「じゃあ、皆さん少しだけ指を貸してください。ほんのちょっとだけちくっとしますけどすぐに終わりますから」

 ユリネはまず敏文の人差し指を手にとって蓋を開けた小箱に乗せ、そしてゆっくり蓋を閉めた。

「つっ!」

 少しちくっとしたが、すぐに痛みはなくなった。ユリネはすぐに蓋を開き敏文の指を外すと、箱の中蓋を取り出した。すると箱の底には黄色い腕輪が入っていて、その腕輪を敏文の左手首にはめた。

 腕輪が少し光るとサイズが敏文の腕にピッタリに変わっている。


 ユリネはニッコリして言った。

「これで、後はお名前等の必要事項をこちらの書類に書いていただければ終了です」


 敏文は黄色の腕輪を眺める。腕輪には刀の模様が1つと、ノーギ男爵の家の壁にあった紋章が刻まれている。

「すいません。今の仕組みと模様の意味を教えてください」


「ええ、わかりました」

 ユリネはにこやかに話始めた。

「この箱はミナミー島の刀匠の工房で作成されたもので、先ほどちくっとした時に、あなたの血を少しだけ採取してこの腕輪と、中蓋についている札に、その情報を記録するようになっているのです。この情報は王都コーベンにある探検者組合の本部に保管されます。各支部は情報を魔道具で本部とやり取りして各探検者の情報を把握しますし、依頼の処理結果や組合への貢献等を記録し、昇級等に反映するのです」


(なるほどネットで本部のサーバーに記録するみたいなものか……)


「で、模様の意味は?」

「まず探検者には、その成果によって4つの級が設けられています。初級、中級、上級、特級です。そしてそれぞれを表している色が黄、赤、青、紫で、各級にはさらに5つのクラスが設けられています。ですからトシフミさんがされている腕輪は黄色のクラス1を表しているのです。そして男爵様の紋章が入っているのは、身元証明の意味が有ります。男爵家の関係者であることを示しているのです」


「なるほど。わかりました」

「では、他の方々もお願いします」

 再びユリネはニッコリ笑った。


 そうして登録を済ませた敏文達は黄色いひよっこ探検者として活動を始めることになった。

今回は説明が多い話になってしまいました。

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