第1章「勇者、現代日本に立つ」
(1)
「ん、え、あれ?」
神々しい光とともに魔法陣の中から出現した女勇者の第一声は、なんとも微妙なものだった。
「こ、ここはいったいどこだ? 私は何を……」
「うわー、まさか本当に召喚出来るとは」
「ん、少年。私を呼び出したのはもしや君か? ……何をじろじろ見ている」
「……向こうの世界に返すのってどうすればいいんだっけ」
「ちょっと! いきなりいらない子扱いしないで!?」
(2)
「一応確認するけど、あんたが異世界の伝説の勇者・エレア様?」
「いかにも」
「実は、あんたに世界を救ってもらおうと思ってこの現代日本に召喚したんだけど」
「げ、現代日本!?」
「そう」
「現代日本というと……『ヘイボンなコーコーセー』と名乗る救世主を何度となく我が異世界に送り込んできた、あの現代日本!? 魔法も剣も使えないくせに、謎の『シュジンコウゾクセイ』で我らの世界を救ってしまう、あの『ヘイボンなコーコーセー』の故郷・現代日本だというのか!?」
「どんな認識だよそれ」
(3)
「し、しかし少年、私のような勇者がこっちの世界に来るというのはちょっと変じゃないか? 普通は逆……」
「……俺からすると、なんの技能もない『平凡な高校生』をぽんぽん召喚して、そいつに世界の命運を託しちゃうあんたら異世界の連中の方がよっぽど変だと思うが」
「……言われてみるとそうかも」
(4)
「ま、まあいいだろう! 私も元の世界では勇者とまで呼ばれた女、召喚されたからにはきっちり、君の世界を救ってみせようではないか」
「わー、頼もしー(棒)」
「で、この世界に迫っている危機とはいったい何だ!?」
「……経済の行き詰まり、終わらない戦争、エネルギー危機、環境破壊、すさんだ人の心……」
「そ、それは私の力でなんとかなるものなのか!?」
(5)
「冗談だ。実はこの世界に、大魔王アブラクサスが復活した」
「アブラクサスだと!? ヤツは私がこの手で倒したはず……」
「うちには代々、『大魔王が現われたときには、これを使って伝説の勇者を呼び出せ』ってこの魔道書が伝えられていてな。それであんたを召喚させてもらったわけだ」
「ふ……なるほど」
(6)
「私に任せておけ、少年。所詮は1度倒した敵、何を企んでいるかは知らぬが、すぐにでも倒してくれよう」
「さすがは勇者様だな」
「そういえば、名前をまだ聞いてなかったな」
「……佐間那レイ。17歳だ」
「レイ、か。どうせ短い付き合いになると思うが、よろしく頼むぞ……ハッ!?」
「どうした」
「今気づいたんだが……」
「ああ」
「レベルが、1に戻っている……」
「向こうの世界に返す方法は……」
「チェンジは止めて!」
がんばれ勇者。




