ごめんあそばせ召しませ執事?3(千文字小説)
有栖川亜梨沙は大富豪の令嬢です。
まだ十七歳ですが、お金持ちの上に美少女なので、通学しているインターナショナルハイスクールではモテモテです。
しかし、亜梨沙は同級生のイケメンの告白にも落ちませんし、耳も貸しません。
何故なら亜梨沙は、事もあろうに自分の邸で働いている執事に恋をしているからです。
執事の名前はトーマス・バトラー。世界執事協会所属の執事です。
でも、亜梨沙は素直に自分の気持ちを伝えられません。
遂に友人達を招待してお茶会が開催されました。
その中には亜梨沙の親友の桜小路蘭がいます。
「亜梨沙、あの方、素敵ね」
蘭は早速トーマスに目をつけます。
亜梨沙は慌てますが、
「大した事ないわよ。全然いけてないし」
と言い、
(ああ、トム、許して!)
と心の中で絶叫します。
「そう? 私は好みよ。声かけてみるわ」
蘭はトーマスに近づきます。
亜梨沙は蘭にトーマスを好きな事を知られたくないので、何もできません。
「ご機嫌よう、トム」
蘭は、今まで何人もの男を落として来た流し目でトーマスを見ます。
「いらっしゃいませ、桜小路様」
トーマスは恭しくお辞儀をしました。
蘭はトーマスが自分の流し目に全く動じていない事に気づき、ムッとします。
(これならどう?)
蘭はイブニングドレスの胸元を大きく開け、トーマスの腕を取ると、
「お飲み物、頂戴」
とその胸をトーマスの腕に押しつけます。
(ひー!)
もう少しで叫んでしまいそうになる亜梨沙です。
「畏まりました」
トーマスはやんわりと蘭の腕を解くと、一礼をして飲み物を取りに行きます。
「……」
蘭は敗北感に打ちのめされました。
お茶会はお開きになり、メイドやトーマス達が後片付けを始めます。
亜梨沙はトーマスに近づき、
「蘭はどうだった? 積極的だったでしょ?」
「はい」
トーマスは亜梨沙を見て答えました。亜梨沙はギクッとしましたが、
「何よ、蘭の事が好きになったの?」
と高飛車に尋ねました。するとトーマスは、
「いいえ。お嬢様以外の方に優しくしてはならないと言われましたので、そのような事はございません」
亜梨沙はその言葉に真っ赤になりました。
「何よ、私のせいみたいに言わないでよね!」
亜梨沙は怒ったフリをしてトーマスから離れます。
「申し訳ありません、お嬢様」
トーマスはゆっくりと頭を下げて詫びました。
亜梨沙は天にも昇るような喜びを感じていました。
まだつづく……。