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作者: 尚文産商堂

完全なる権限を取得した。

これで、研究所全体の情報をとることができる。

手野グループの一研究所とはいえ、末端の方のところだ。

そこまで警備が強くないと見える。

他社の産業スパイとして派遣されてきた俺にとって、それはとても喜ばしい状況である。

それに、ようやくここまで来たのだから、あとは必要なことをすればいいだけだ。

このために15年間は頑張ってきたのだから。

「ほう、よく働いているようだな」

さっそく情報をとろうとして暗号化された外付けハードディスクをつないだ瞬間、部屋の片隅に、今まで確かに誰もいなかったはずなのに誰かが立っていた。

スーツ姿で、営業マンに見える彼は、腕組みをしながら俺の方をじっと見ている。

「君がほかの企業から依頼を受けて、情報を撮るように言われていたのは知っていたよ、15年も昔からね」

更に一人増える。

「だが、君がそれを事に動かさなければ、我々としては大切な研究員として遇するつもりだった。非常に残念だ」

もう一人増えた。

「重ね重ねいうが、この結果をもたらしたのは君自身のせいである。それは君自身が自覚していることだとは思うがね」

併せて4人。

部屋の四隅から現れてきた。

「あ、あんたらは……」

周りを見回しながらも、ハードディスクは働いてくれている。

少なからずの情報を得ることはできることだろう。

「もしも」

無理矢理引っこ抜こうとしている俺に対して、最初に現れた男が俺に話しかけてきた。

「もしも、君がそれをもってこの部屋を一歩でも出てしまったが最後、君を我々は契約違反によって捕縛することになる。これは最初で最後の警告だ、それを置いて、ここから出ていけ。そして二度と産業スパイとしての行動を起こすな。そうすれば、研究所所長も、社長もこのままここにいても構わないという話だ」

「そんなうまい話があるものか、絶対嘘だっ」

USBを引っこ抜いて、1歩2歩と扉へと向かう。

最初の彼はため息をついて、警告はしたぞ、とだけ俺に伝えた。

扉を出ると、一歩歩く前にはたと目の前に男が立っているのに気づく。

「警告はしたぞ、話を聞いていないとは言わせんからな」

男は俺の姿を視認するなり、一言俺に言ってきた。

途端、世界は逆転し、気づけば地面に組み伏せられた。


「ご苦労さん」

「武装社長、しかしよく把握しましたね」

契約違反として当該研究者は後に懲戒免職の処分を受けることとなる。

だが、最初に産業スパイだと喝破のは実は武装社長だ。

「ああ、何やら不安定な挙動を示すことがあってな。それでとある筋に頼んで調べてもらった。同業他社から人を受け入れることはあるが、こうも露骨にスパイ行動をとってしまうのであれば、見直すことも進言しないといけないだろうな」

そう言いつつ、武装社長は笑っていた。

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