白撃竜とのレベル差約120①
その後も、ホーンウルフやハンマーラビットの進化形態にあたるエクストラビットを、シグは同じ要領で撃破し続けた。
レベルも順調に上がっている。
(今何時頃だろうか……。)
ゲームに没頭している自分に気が付きシグは、現実世界の時間が無性に気になった。
シグは、現実世界の時間が見れるウィンドウを開いた。
(9時……。早いな。)
午前9時22分に指していた針に、少し衝撃を受けた。
ゲームをしていると時間を忘れるというのは、全国共通だろう。
(トイレも行きたいし1度ログアウトしてまた入るか。)
トイレに行きたいという気持ちや食欲,睡眠欲,あるいは性欲も、現実世界の感情はすべてゲーム内においても脳によって伝わっている。
一度ログアウトして、トイレに行き、軽く食事をしたシグは再びすぐにログインをした。
この日曜日という学生にとって大切な休日を、一分たりとも無駄にしないために。
入り口から伸びているけものみちを再び歩き続けると、辺り一帯に木が一本もない開けた場所にたどり着いた。
開けた場所の奥には、大きな岩崖がドスンと構えている。
今まで無数の木によって遮断されていた日光が、シグを照らす。
地面に広がる雑草は、日光で少し輝いている。
(本当にこれはゲームなのか??自然観が現実と全く変わらない。)
シグは、自然の空気、匂い、雰囲気すべてが現実と差がないこのゲームに驚きというより違和感があった。
日光で、明るい開けた大地だったが、次の途端その陰一つない明るい土地は陰におおわれた。
シグは、突然と陰になったあたり一帯を見て戸惑いを見せる。
そして、シグは空からそよ風のような風を感じた。それに、大きな羽をグワングワンと動かす羽音が空から聞こえる。
空から刺激が加えられていることから、空を見上げると、白い羽を持つ白い竜がいた。
その竜はシグをギラっと見ている。
(竜……。)
シグと目を合わせた後、竜は、少しずつ下降してシグの10メートル前に、羽を置いた。
(白撃竜リヴァエ。)
シグの開いたウィンドウにはそう書かれている。
竜のレベルは、シグの5倍以上ある156レベルだった。
(絶対に勝てない。圧倒的すぎる。)
シグは負けると悟りながらも、ウィンドウのアイテム欄から《ノーマルガン》を取り出した。
(確か初心者応援機能で10日間、10回だけ同じ場所でリスポーンできるんだったっけ。)
シグは、ブログに書いてあったことを思い出した。
その機能を思い出し、もしかしたら倒せると思ったシグだった。
否、絶望を見た。
一つ目は、竜に銃撃してみた結果、HPは0.1パーセント減ってないくらいだったことだ。
二つ目は、竜の白いレーザーの様な攻撃によって、即死したことだった。
シグは初のリスポーンをした。
ゲームのレベル差というのは、このレベル差だと、さすがに覆せないのかもしれない。