魔物の森で初魔法
日曜日。
窓から太陽の光が入りだした頃。
割と早起きであるシグ(詩草冴斗)は、すんなり『isekai』にハマってしまい、今日もゲーミングチェアに深く座って、ゲームに関することをネットで検索していた。
「そーゆー感じね。なら次のレベ上げ場所は、【魔物の森】がいいってことか。」
見ているのは、『isekai』をプレイしている人達のブログだ。先日、出会った小麦・リズエルに教えてもらったのである。
シグは、マウスのカーソルをシャットダウンに合わせてクリックして、ゲーミングチェアを離れた。
向かった先は、ヘッドギアとスーツが置いてあるベッドだ。
―――――
『接続完了……』
『ゲームスタート……』
シグが目を開けると、昨日ログアウトした【始まりの街ヴェネラ】の入口にいた。
シグは、朝の準備体操的な行為か、軽く背伸びや前屈などをする。
そして、準備体操が終わったのか、拳に少し力を入れて小声で「よしっ、行くか。」と独り言を言う。
朝は、休みである日曜でありながらも、夜に比べて比較的人は少ない。
歩き出したシグが向かっている先は、先程ブログで見つけた【魔物の森】だ。
広大な【ヴェネラ草原】とゴブリンが多数生息する【ブルグ鉱山】を経路に控えている。
このゲームの移動手段は、走るか、NPCによる有料の街から街区間の馬車に乗るかである。
他には、瞬間移動の巻物という使うと好きな場所に移動できるアイテムがあるが高価なために初心者では買うことが出来ない。
ただシグは、AGI(敏捷)にステータスを振っているため現実よりは早く走ることが出来る。
近寄ってくるモンスターを倒しながら走り続けたシグは、約1時間無いくらいで、目的地である【魔物の森】に到着することが出来た。
【魔物の森】を前にして26レベルであるシグは、1度足を止めた。
ブログにはレベル50以上推奨と書いてあったからだ。
ただ、シグには、推奨という言葉は通じなかった。なぜなら、レベルが離れているそのモンスターの強さを味わいたいのである。
1度止めた足だったが、好奇心に全てを預けて、入口から長く続いている全く舗装されていない林道を、シグは、1歩また1歩と進んでいく。
異世界系ライトノベルあるあるの草むらに気をつけながら。
(出てくるなら、出てこい!驚かすのだけは辞めてくれ。)
右手には、《ノーマルガン》を装備している。
最初に対面したのは、ホーンウルフと言われる狼姿のモンスター1匹だった。
ホーンウルフは、チャームポイントである立派なツノをシグに向けて、威嚇している。
ウルルルルルル
ウィンドウを開き鑑定をしてみると、ホーンウルフのレベルは、48だった。
2倍近いレベル差に、シグの体には電気が走った。
ただ顔は、笑っている。
先に攻撃を仕掛けたのは、シグだった。
シグは、《ノーマルガン》でホーンウルフに銃弾を発射する。
着弾はしたもののホーンウルフのHPバーは、10分の1も減っていない。
(流石のレベル差だな。普通に当ててたら勝てないか。)
ホーンウルフは、勝ち筋をねろうとしているシグに向かって、口から魔法陣を出現させて数百の氷の礫を放った。
シグはとっさに横に走り出し、交わそうとはしたが、数百の礫を交わすことは出来ず、数弾当たってしまった。
シグのHPバーは、半分削れる。
(まじか。まずいな。半分食われた。1発で……。)
焦ったシグだったが、1つ考えがあった。
(使ってみるか。あれを。)
それは、レベル20にレベルアップした時の、報酬である魔法だ。
そう、20レベルになると、初心者支援として初心者にでも使いやすい魔法としてあげられた200の魔法の中から1つ好きなのを習得できるのだ。
(使うか。一撃射撃を。)
一撃射撃―――魔法銃装備専用。1発に込めた必殺の射撃。火力は、魔法銃の基本ダメージ量に依存する。この魔法にはエイムアシストは適用されない。この魔法を使用したあと、3分間敵の攻撃ダメージ量は2倍になる。
(このゲームは、叫べば魔法発動できるんだよな。恥ずかしいけど……。)
「一撃射撃!!」
エイムを合わせて、放った弾丸は、《ノーマルガン》の銃口に発動された白い魔法陣を貫通した瞬間に、白い力を纏った。
その弾丸は、見事に避けようとしたホーンウルフを貫く。
ホーンウルフは、1発でHPバーを0にして、赤く弾けるような演出とともに姿を消した。
(1発か……。この魔法使えるな。)
シグは、レベルが上がると共に、新しいスキルと、ドロップ品である《ホーンウルフの角》を獲得した。
スキル《狼の魔力》―――INT(魔力,知力)が少し加算される。
シグ・ザウエル
Lv.28 魔法銃
スキル 《駆け出しの魔法銃士》,《狼の魔力》
魔法 《一撃射撃》
HP―――3100 MP―――460
ステータス
STR―――0
AGI―――30
INT―――62
VIT―――0
DEX―――0
DEF―――0