紫髪と少女vs男2人組③
「負けた⋯⋯。」
男二人組は、膝を着いて頭を抱えている。
さっきまでの威勢は、すんなり消えたようだ。
見物人である人達は、満点をたたき出したシグを見て、手で口を抑えてヒソヒソと話している。
「あいつ、何者だよ?」
「エイムアシストほぼマックスでも、無理じゃないか?」
「化け物かよ⋯⋯。」
シグが周囲の反応に少し耳を傾けていると、少女が話しかけてきた。
「シグ552、やっぱやるじゃん。」
フードを被っていたので、顔があまり見えなかった少女は、フードを外しながらそう呟いた。
シグは、フードを外した彼女の顔には見覚えがあった。
(あれ?あの顔どっかで⋯⋯。)
「お前?!?!クランLiz/Lの小麦か?!?!」
クランLiz/L―――『ガンライズ』のゲーム内におけるトップランクのクラン。総合力では、全世界3位という実績を残している。
「やっと分かってくれたか⋯⋯。私はすぐ気づいたんだけどな⋯⋯。」
「いや、すまん。フード被ってたし。」
「それもそーね。でもこうしてまた会えるとは思わなかったわ。」
そう、少女(小麦)と最後にあったのは、ガンライズのサービス終了の前に行われた世界大会最終決戦の戦闘中だったので、サービスが終わった今会えるはずがなかったからだ。
「『ガンライズ』で化け物、運営の敵と言われたシグ552が、『isekai』をプレイしてたんだなんて思わなかったよ。」
「サービス終了で、暇だったから3日前に始めたんだよ。何となくね。でもまだ『ガンライズ』の楽しさには劣るけど、結構ハマってるよ。」
そのあと少し話した結果シグは、彼女は、小麦・リズエルという名前でこのゲームを、ガンライズと並行にプレイしていたと知った。
そのシグが小麦との再会を喜ぶ中、周囲の目は、満点をたたき出したシグへの興味から、フードを外した小麦への興味へと変わった。
なぜなら、小麦は『isekai』のギルドランクに置いて上位に君臨する《銃弓星座団》の副団長として有名だからである。
「お前、そんなすごいギルドに入っているのか。さすがだな。」
「別にそんなでもないよ。そーだよ!!シグ552も入ろうよ!!《銃弓星座団》!!」
「シグ552の呼び方やめてくれ⋯⋯。今はシグ・ザウエルだからな。あと俺レベル20にも達してないよ?」
シグ552という名前は、《ガンライズ》の時にシグが使っていた名前である。
「別に、レベル関係なくない?これから上がっていくわけだしね。どうせまたゲーム性崩壊させるようなことするんでしょ?《ガンライズ》みたいに。」
「崩壊させては無いな?でもやっぱ入らないよ。ゆっくりやっていくつもりだし。」
「わかった。まぁ入りたかったら言ってね。」
シグは、ゲーム性の崩壊をさせたという言葉に少し不満を持ちながらも、そう答えた。
その後フレンド登録をして、シグと小麦の再会劇は幕を閉じた。
ちなみにシグが《ガンライズ》においてゲーム性を崩壊させたというのは、シグが本来ならば遠距離用に使われるべくあるスナイパーライフルで突撃しヘッドショット一発で倒すという奇想天外なプレイ方法を行っていたことである。
当時の《ガンライズ》の運営は、このシグのプレイに頭を相当悩ました。
ただ、スナイパーライフルのダメージ量を下げると本来のスナイパーライフル仕様ではなくなるし、規制をかけても自由度が失われるので、結局のところサービス終了まで何も出来なかったのである。