紫髪と少女vs男2人組②
男二人組が先攻だった。
「点数かっぱらってこい。」
「任せろ。」
片方の男は、片方の男の肩を後ろから触り、射撃ゾーンに送り出した。
男が向かった射撃場所には、直径約2メートルの円が書かれている。
男は、射撃ゾーンである円に入り、銃を召喚する。
召喚されたのは、立派な漆黒のライフルである。
「行くぜ。相棒⋯⋯。」
男は、漆黒のライフルにそうつぶやいて構える。
射撃ゾーンから100メートル離れた的は、モンスターの形をしたAIで、右往左往に動いている。
さっきまで騒がしかった見物人である人溜まりは、静まり返る。
場で聞こえるのは、別の的で射撃練習している人達の射撃音だけだ。
――パン――
男が放った弾丸は、モンスターの形をしたAIの、若干真ん中より左を貫いた。
モンスターの形をしたAIの上に浮かぶ半透明の大きなパネルに、8点と表示される。
結果この男は、8点.6点.7点の21点で幕を閉じた。
周りの反応的に、上手い方なんだとシグは悟った。
ただ、少々疑問もあった。疑問と言うより、謎といった方が近いのかもしれない。
(これは凄いのか??)
もう一人の男の方は、5点.8点.6点の19点だった。
なので、男二人組の方の点数は、足して40点ということになる。
「今までで最高得点じゃないか?もう勝ったも同然だな。」
「君たちの番だよ?サレンダーでもいいけど。」
男二人組は、どうやら今までの最高得点をたたき出したらしく、おおいに調子に乗っている。
今まで負けていない男たちからしたらそれは、勝ったも同然に捉えられるからだ。
ただし、シグにも少女にも緊張な面も、絶望な面も見られない。
後攻であるシグらの番が始まった。
先に撃つのは、少女だ。
少女は、射撃ゾーンである円に入る。
そして少女は、銃を召喚して取り出した。
取り出したのは、水色の電気を帯びている電子的な長い銃だった。
「おい、あいつが持ってるのライトパルスR10じゃねぇか?」
「ライトパルスR10って、あの電皇龍パルスのドロップ品か?やば!!」
周囲から多くのヤジが飛び交う。
そんな中彼女は、1度も落ち着こうという様もなく、3発の射撃を約10秒の間に終わらせた。
結果は、8点.8点.9点だった。
これに男二人組は仰天した。見物人も全員、口を抑えて驚いている。
(彼女、上手いな。心拍も呼吸も上手く逃がし、手ブレも約3ミリ。やるね!)
(で、俺の番か⋯⋯。)
射撃ゾーンから出てきた少女とアイコンタクトを交わしてシグは、射撃ゾーンに入った。
可憐な少女のアイコンタクトは、恐らく頼んだというそのままの意味だろうとシグは思う。
射撃ゾーンに入ったシグに緊張などは全くなかった。
銃を召喚で取り出したシグは、《ノーマルガン》を持つ。
シグが銃を持つと、少女の時のようにヤジが飛んだ。
「あいつが持ってるの《ノーマルガン》じゃねーか。」
「初心者か?ノーマルガンじゃ無理だろ?飛距離もねーし。そもそもエイムアシスト倍率とかもないじゃん。」
「ノ、ノーマルガンか。良かった。あの女は、うまかったが、こいつが初心者なら別に勝てる。こいつが15点取れなきゃ別に勝ちだ。」
男二人組は、負けの未来が見えたからか、焦っている。
ただ、その未来は現実になった。
風でなびいたシグの紫髪に少し隠れている右目には、モンスター型のAIターゲットの10点の部分が写っている。
10点.10点.10点
点数が映し出される半透明の大きなパネルが、10以外の数字を表示することは無かった。