敵の退却
「マヒ君ちょっとさがれ!!私がやる!!」
自分の持っている魔法の中でいちばん強い魔法をイヴニャーという初期モンスターに軽くやられたために、軽く失望したマヒ・ジョウタイは言われるがままに下がった。
「炎大精霊の司令!!」
声の主である赤髪の弓使いが右手の弓をおろし、左手を上げて放った魔法は無数の赤い魔法陣を起動する。
魔法陣はシグとクロエそしてイヴニャーをドーム型に囲んだ。
(これはさすがにクロエひとりじゃ無理だ。俺がやらないと……。)
「クロエ!!後ろは俺がやる、前を頼む!!」
今までクロエに任せ切りだったMPが無いシグは、声を張って漆黒の長銃を構える。
「連射式形態!!」
1個1個の魔法陣に向けてシグは引き金を引く。
マズルフラッシュが少し暗い辺りを照らす。
シグはものすごい勢いで1個1個と今にも何かを射出しようとしている魔法陣を消していった。
そんな中、前方を任されたクロエとイヴニャーは、魔法陣を全て消せるはずもないので防御態勢に入った。
全ての魔法陣は、魔法陣の前に炎の隕石を生成し始める。
今にでも飛んできそうな無数の炎の隕石を、クロエとイヴニャーは冷静に見つめた。
後方は、シグが全ての魔法陣破壊に成功したため魔法陣は無かった。
残りは元々後方よりも数が多い前方の魔法陣だけだ。
シグが後方の魔法陣を片付けて、前方のクロエ達を見るため振り向いた瞬間だった。
全魔法陣が一斉に炎の隕石をクロエとイヴニャーの元に射出した。
(クロエは魔法陣破壊をしないで、飛んできたのを止める気か。100くらいある隕石を全部ほんとに止めれるのか?)
シグは、疑問を抱きながら見守る。
「悪魔皇の精霊抹消」
その魔法によりイヴニャーから放たれたのは、電波のような光だった。
直線的に進んでくる隕石全てを照らすような暗い電波のような光だった。
鼓動のような音を立てて光は広がっていく。
そして、その電波のような光を浴びた炎の隕石は、核から消滅していき一つ一つ消えていった。
消えるというより、分子レベルで分裂を起こしていた。
「あー、まじ?私のこの魔法消されるんだ、、、」
「アカネのその魔法を消しちゃうか……。ほんとにやばいなそのイヴニャー。そんな強い魔法を使えるって、テイマーずるくね?下方修正入れろよ。じゃないとゲームバランス崩れるやろ。」
(分かるぞ、その気持ち。でも、ほかのテイマーのモンスターはそんなでもないんだ。クロエのイヴニャーが異常なだけで、、、)
強すぎるイヴニャーに翻弄されて、2人は口を動かすしかできなかった。ただ、シグもその2人の気持ちに心の中で同情する。
「帯電弾」
「ファイヤーキャノン!!」
その後2人は、距離を取れる魔法をシグとクロエに放ち、隙を見てクリスタルまで後退した。
それに対してシグとクロエは、追いかけたところでメリットがないと判断し、ゆっくりとクリスタルに向かうのであった。