速さvs体力②
何度かの交流により、グラナイトにほとんどの攻撃が効かないと知っていたため、様々な作戦を考えてきたが、盾が動くことや思ったより効かないことなどの結果からツィー・ツィーの頭の中にある作戦は残りひとつとなった。
しかしその残り1つの作戦は、独創的で抽象的で、荒っぽい、いわゆるワンチャンな作戦だった。
(でもこの作戦は、残りのMPを全て使うし、一か八かすぎる……。)
全てのMPを使うので効かなかった場合、事実上の負けであるために、ツィー・ツィーは少しやることに躊躇した。
(やるしかないか。)
刻一刻と制限時間が迫っていることから覚悟を決める。
1度背中に収めた、左手用の剣を抜いた。
「敏捷強化」
「攻撃速度強化」
2つの魔法を使い、ツィー・ツィーは自分に速度が上がるバフをかけた。
「そして、、、敏捷限界突破」
ツィー・ツィーの4000というアジリティ(敏捷)は、この魔法により8000というありえない数値になった。
敏捷強化などによって生まれた青いオーラは、黒いオーラへと変わる。
「黒くなった??まぁ攻撃力がないのに変わりはない。こいや。」
黒くなったツィー・ツィーの体に若干ビビったが、どうせ勝てないだろうと嘲笑うグラナイト。
ただし、アジリティ(敏捷)が8000という驚異はこの時は分からなかった。
「行くぞ……。」
黒いオーラを纏ってそう呟いたツィー・ツィーを見て、グラナイトは固唾を飲んだ。
ただし、固唾を飲みきらないうちに自分の構える大盾の前に影があった。
その影には、2本の刃と頭が写っている。
(……。)
グラナイトは、一瞬のことすぎて、頭の処理が追いつかず、反動的に盾をしっかりと構えることしかできなかった。
その後、大盾に1秒に10回くらいの衝撃が生まれた。
その衝撃は、至って大きな威力がある訳ではないが、小刻みに小さな威力が連打されているために、大きな威力とさほど代わりがなかった。
そう。ツィー・ツィーの最後の作戦は、自分が出せる最高速度を持って最高速度の連撃をして、制限時間までに5万というグラナイトのHPを削りきることだった。
ツィー・ツィーは、自分の目でも追い切れない速さで、剣を持つ両腕を、グラナイトの大盾に向かって振り回した。
ただし、グラナイトは思った。
(例え、どんだけ速い攻撃だとしても、どうせ0ダメージだろ?……。)
大盾を構えながら、グラナイトは、ウィンドウを開いてHPを確認した。
(……。あれ?減ってる、、、そうか。速すぎて1発1発へのダメージカットが追いついていない。3発で1発みたいな形になってる。ただ、20ダメージとかしか出てない。これなら間に合わない。)
ただし、グラナイトの読みは次第に外れていく。
ツィー・ツィーの攻撃速度はさらに加速して行った。
「うおおおおおおおおお!!」
(アニメで攻撃する時、キャラクターがこういう声出すの謎だったけど、この速度で攻撃してると出ちゃうなこれ。)
大きく声を上げながら、ツィー・ツィーは両手を振り回した。
大盾と二本の剣の間には摩擦でたくさんの火花があがった。
20.20.20.20.20とダメージが量産されていった。
その量産の速度的にもしかしたら、時間以内にキルされると思ったグラナイトだったが、逃げたところで追いつかれるし、トラップはあるしと、とくに対策はできない。
ただ、盾を構えることしかできなかった。
時間が刻まれると共に、グラナイトのHPは次第に減っていった。
(くっそ。何も出来ねぇ。くっそ、くっそ。)
完全に、連撃が作業化し、ツィー・ツィーが少し放心状態に入った頃、グラナイトのHPは1万を切った。
ゲーム内と言っても、脳内と体の速度が追いつかない。
1万を切った時から、HPが0になるまでは一瞬だった。
グラナイトは、「くそおおおおおお!!」と叫びながら白い粒子となった。
その後、ツィー・ツィーは、軽くガッツポーズをして、ぶっ倒れた。
ツィー・ツィーお疲れ様です。