速さvs防御力①
「さて、グラナイトあとはお前だけだ。」
「正直わかってたぜ。あの4人が簡単にやられるのはな。レベル200だが、あいつらは弱すぎる。ただお前にだけは負けねぇよ。来いよ、ツィー・ツィー。」
盾を持たない左手を前に出して、来いよとハンドジェスチャーをする。
グラナイトは、銀色に染まる大盾を構えている。
彼の防御力と体力は、ゲーム内においてトップレベルで高い。
そしてそんな彼をさらに一段と強くする魔法を彼は使った。
「継続損傷領域」
グラナイトを中心として半径30メートル程度を、半透明の膜が覆う。
その領域内にいるツィー・ツィーは、継続的にダメージを食らっていく。そのダメージは、5秒に100ダメージだった。
(これが、グラナイトの継続ダメージの魔法か。5秒に100ダメージ食らっているということは、俺の残りHP16000を100で割って、160。160かける5で800秒。13分以内に決着をつけないと、俺が死ぬな。)
「どうだ?わかりやすいだろ?13分以内に俺のHPを削りきれたらお前の勝ち。無理だったらお前がバットエンドだ。」
グラナイトは、左手で首を切るようなジェスチャーをした。
「……。」
(シグは簡単に150キルを成し遂げた。なら俺だってこいつをやってやる。)
「超高速移動」
気合を入れたツィー・ツィーは時間もないので直ぐに、魔法でグラナイトとの間にあった距離を詰めた。
(こいつに遠距離の攻撃などはない。こいつも確か防御力と体力に極振りだから。)
「防御力強化」
「ガードフォース」
距離を詰められる瞬間に、グラナイトは2つの魔法を発動した。
どちらも効果時間が決まっている、防御力を上げることができる魔法である。
その魔法によって強化されたグラナイトの大盾にツィー・ツィーは左手で持つ剣で渾身の通常攻撃を与えた。
しかし、ダメージは出なかった。
なぜなら速度に全振りしているツィー・ツィーは、主に剣使いの攻撃力をあげる筋力(STR)が1ポイントだからだ。
ツィー・ツィーが主に使う高速双撃や双剣強襲は速度による攻撃力アップもするために、筋力1のツィー・ツィーでも火力が出る仕様となっている。
(くっそ、やっぱ通常攻撃じゃダメージがでねぇ。なら……。)
通常攻撃では無駄だと思ったツィー・ツィーは、振りかぶって瞬時に切り替えて、もう一度攻撃体制に入った。
「高速双撃」
再度、オーラを纏った2本の剣は、盾に攻撃を与える。
しかしダメージは、ツィー・ツィーが思っている程出ない。
1度、距離を詰める前にいた場所までツィー・ツィーは後退する。
その時、ツィー・ツィーはバレないようにトラップ魔法を仕掛けた。
ただし読まれていた。
「痛くも痒くもねぇな。ツィー・ツィーちゃんよ。あと俺は1歩も動かないからトラップ魔法意味ねぇぞ?」
(やっぱトラップは、さっきので警戒しているか。ならしょうがない、考えていた全部の手使うか。)
ツィー・ツィーは、左手に持つ剣を背中に付いている鞘に戻した。
そして、右手に持つ剣を両手持ちに切り替えて、おおきく振りあげて地面に指した。。
「剣圧地震」
剣が刺さった地点から、周囲に振動が伝わっていく。
周囲一帯に大きな地震が起こった。
「これならどうだ??外部からのダメージならさすがに食らうだろ?」
しかし、ツィー・ツィーがグラナイトを見た途端、効いていないことがわかった。
グラナイトの周りを半透明の光の障壁が囲んでいた。
その障壁内では地震は起きていない。
「なんで効くと思ったかな?お前知能ないんじゃないの?」
「っクッソ。無理か。なら次だ。」
ツィー・ツィーは、時間を失わないようにと次々に戦い方を変えていく。
魔法を使わなくても相当速い足で、崩れた大地をかけ進み再度距離を詰める。
超高速移動は、トラップによって動かないと断言したグラナイトに対して、MPを使うだけで意味が無いと悟ったため使わなかった。
「また、なんか攻撃する気か??俺に物理攻撃は1番無意味だぞ?お前ガチで馬鹿だな。」
グラナイトがそう思った瞬間が、ツィー・ツィーは狙いだった。
ツィー・ツィーは魔法を使う。
「宙返回斬」
グラナイトの大盾の前にいたツィー・ツィーは高く飛び宙返りをしてグラナイトの後方に素早く入った。
狙いは、大盾で守れない背中だった。
回転と同時に剣の刃がグラナイトの背中を貫こうとした。
その時だった。
ツィー・ツィーが貫こうとした背中の部分に大盾が瞬間移動してきたのだ。
それによって、大盾に塞がれダメージは通らない。
「ハッ?どういう魔法だよ。」
「スキル《絶対守護の知能盾》。俺が盾を通さないで攻撃を食らうことはないんだわ。」
(まじか……。)
ツィー・ツィーは3度目の後退を余儀なくされた。
(あいつに攻撃を与えれたとしてもそもそも、体力が5万くらいあって削りきれない。)
「アイシクルバレット」
「サンドショット」
盾が動くという事実によって、考えてきたほとんどの作戦が水の泡になったために、ガサツに魔法をグラナイトにはなった。
「あーあ、やっちゃったな。」
「属性反射」
ガサツにはなったツィー・ツィーの2つの魔法は、大盾に当たった途端水色と茶色の粒子になって消える。
すると次の途端、その粒子が光の速さで跳ね返り、ツィー・ツィーを襲った。
「属性系の魔法も俺には聞かねぇよ。お疲れ様。むしろ跳ね返るわ。」
(くっそ、やらなきゃ良かった。ダメージを食らっちまった。残りHP12000か。俺が死ぬまで残り時間120かける5でピッタリ10分。)
(やばい。本当にどうする、ツィー・ツィー。考えろ、相馬右京。)