ギルド総力戦②~全弾ヘッショの150キル~
残り10人にもなると、ものすごい集中を見せているシグの集中力も切れ始めていた。
(残り10人……。)
シグに立ち塞がる残った10人を見た。
そして残った10人が化け物と化したシグに震えている中、このギルド総力戦の観戦所には、150キルが行われそうという情報に駆けつけた多くの人がいた。
観戦所にいるプレイヤー数は、初めから有名ギルドの【北方騎士団】と謎の無名ギルドの総力戦というキャッチコピーがあってか、少し多い1000人程度の観戦者数だった。
しかし、紫髪の男が150人を倒しそうという話題が流れていって、観戦者数が3万人に膨れ上がった。
『彼確かさ、あいつだよ、【陰陽旅団】のツィー・ツィーを倒したヤツ』
『てかツィー・ツィーもいないか?無名ギルドに。』
『ほんとだ。名前がある。』
『なんか、射撃が上手いというか、銃の扱いが上手いというか、』
『150キルったら、えぐいな。』
『無名ギルドなのに、総力戦ってことは勝ったら一瞬でランク100入るんじゃない?』
『確かにやば』
そんな会話が観戦所において飛び回った。
観戦所の真ん中に移るスクリーンに映し出されるシグに全員興味津々だった。
そんな中シグは、残った10人を倒そうとしている。
シグは、下ろしていた銃口を敵に向けて、1度膝に着いた左手をもう一度銃の持ち手に戻す。
すると、10人のうち2人の敵が飛び出してきた。
「エアースラッシュ!!」
「サイクロンショット!!」
2人のうち女性の方は豪快に剣を振り風圧の刃を、男性の方は剣を持たない右手から小さい竜巻を、シグに飛ばした。
シグはそれに対して1分間攻撃力が上がる魔法《白撃竜の閃き》を使い、2つの魔法に白いレーザーを正確に放った。
それによって、シグと2人の真ん中あたりで魔法の衝突による爆発が起こる。
爆発の煙によって、2人とシグの視界は遮られる。
2人に隙が生まれた瞬間だった。
気づいた時には、シグに後ろに廻られ頭を白いレーザーで貫かれた。
シグは、音と感覚で2人の居場所を把握し、背後に回ったのである。
《白撃竜の閃き》によるバフもあり、2人は計4発の白いレーザーにヘッドを抜かれて白い粒子となった。
シグが、2人を倒して次の行動に移る時だった。
一人の別の男が持ち前の察知魔法を使ってシグの背後を取って、脳天に向かって斧を振り下ろした。
もちろん、背後に廻られるまで爆発の煙によってシグは気づけなかった。
(まずい、後ろ!!)
「貰ったぜ!!ブレイクアックス!!」
振り向く間もないシグを見て、男は満面の笑みで攻撃力の高い魔法を使った。
ただ……。
ズガンンン!!!!
斧の刃の部分は、シグが後ろに出した銃のストックの部分に当たる。
シグは、銃口を左で持ち上げて右手で銃を支えてストック部分を頭より上に持ってきたのだ。
衝撃により、シグは前方にノックバックしたが、銃に当たったためダメージは無かった。
シグの持っていた漆黒の銃は衝撃で空を舞った。
ノックバックしたシグは、前転をしてすぐに立ち上がり漆黒の銃の着地地点に入る。
ただ、銃を持たないシグを斧使いの男は、見過ごさなかった。
中を浮く銃の着地地点に棒立ちするシグとの距離を《縮地》という魔法で詰めて、斧を振り上げた。
「あっぶねー、負けるとこだった。」
シグは、斧使いの男にそう言葉を残して、笑った顔でしゃがんだ。
そして、思いっきりジャンプした。
ステータスのAGI(敏捷)の強化による多少の運動神経向上によりジャンプ力は高かった。
ただ、それだけではなく、シグは振りあがった斧の刃の部分をもう一度蹴り上げる。
それにより、宙を浮いている銃に手を掛けれた。
斧使いの男の真上で銃を手にしたシグのやることはひとつだった。
銃を構えて、銃口を下に向けて2発の白いレーザーを斧使いの男の
脳天に向かって射撃した。
男は白い粒子となって消えて、シグは着地する。
その後、爆発の煙が消えて少し経ったとき、残りの7人も白い粒子となった。