ギルド総力戦①~化け物vs150~
8月5日、日曜日。
ギルド【北方騎士団】とギルド【7月21日の政変】のギルド総力戦の日がやってきた。
総力戦開始の1時まで残り15分となったところで、ギルドホームで固まっていた6人に転移の魔法陣が発動した。
ハッと気づくと、《俺バト》の時のようなただ真っ白いだけの空間にいた。
『これから15分後に、ギルド【北方騎士団】と、ギルド【7月21日の政変】の総力戦を始めます。』
天から聞いたことのある女性声優の声が流れる。
『場所は、【古戦場跡】。マップが【古戦場跡】に変わっているのでお使いください。ゲーム中確認いただけます。ルールは、相手のギルドのクリスタルの破壊または、相手の全滅によって勝利とさせていただきます。クリスタルの位置はマップに載っていますので、ご確認ください。細かなルールもウィンドウに載っておりますのでご確認ください。1時に自陣クリスタルへの強制転移を行います。』
(ギルドのクリスタルの破壊か……。フラッグ戦ってことね。)
ルールを聞き、『ガンライズ』の時にあったフラッグ戦というモードを思い出す。
「フラッグ戦ってことは守りと攻めわけないとな……。6人でどう乗り切るか……。」
ツィー・ツィーの一言で作戦会議の流れに入った。
「マップを見た感じ、真ん中に何も障害物がない荒野が広がってて、周りは堀とかがある感じだね。グラナイトの性格的に、真ん中の荒野で大量のプレイヤーを進軍させると思う。」
「ならそれは俺がやる。全員キルするから任せろ。」
シグはバチッと決める。
他の5人は、もしかしたらできそうなためにそれに対して、何も思わなかった。
「でも、レインを連れてけ。回復とか役に立つから。」
ツィー・ツィーはレインをつけることによってそれを了承する。
ツィー・ツィーは、出会った頃からレインの回復、支援においての適応能力や状況把握能力、空間認識能力をかっている。
「じゃあ残りは守備に回るか??」
「そうだね。クロエを軸に守ってもらいたい。俺は、要件あって横から回るわ。バレないように。」
ツィー・ツィーはイチヤの質問に答えた。
結果作戦は簡単に決まり、シグとレインが中央突破、ツィー・ツィーがサイドからの突破、イチヤ、クロエ、日和の3人がクリスタルの守りをすることになった。
1時になると、開始の合図が入り、イチヤ達6人は自陣のクリスタルへと転送された。
転送されてすぐに、シグとレインは、イチヤ、クロエ、日和と別れて荒野に向かった。
荒野は、いかにも戦場だったというような荒野だった。
シグとレインが1歩1歩と歩いて進む古戦場跡の荒野において、前に微かに影が見えた。
その影は100を超えている。
赤色のローブや、海賊の衣装、星型の杖を持つやつなど様々なプレイヤーが150名、シグとレインの前に立ち向かった。
古戦場は、霧や若干の暗さに包まれている。
霧が消えて前に敵がふたりいることを確認した150名のプレイヤーは、強者ヅラをシグ達にみせた。
「おい、こいつらまじで2人でやる気なのか?150人と……。」
先頭にいる男は、うひゃひゃと腹を押えて笑った。それに伴って、他のプレイヤーもシグ達を嘲笑う。
「ほんとにプレイヤーを大量投入してきやがった……。レイン、回復と攻撃強化を頼んだ。」
「任されたっす。でも、ほんとに勝てるんすか?多分1人3発とかっすよ。」
「任せとけ、、、全員ぶち抜いてやるよ。しっかり。」
シグは、後方に残すレインに後頭部でピースを作って見せて、150人に向かって歩き始めた。
歩く途中で《ブレイク・ノヴァM1000》を両手に召喚する。
レインは、後方でシグの攻撃強化や回復などを行う。
「フゥゥ。やりますか。」
歩いていたシグは1度深呼吸をして、歩くスピードをどんどんあげていく。
そして、左右に展開する150人の真ん中に向かって、走り始めた。
すると慌てて150人の前線にいるプレイヤーは全員遠距離系の魔法陣を発動した。
20、30になる魔法陣がシグに垂直に発動された。
「連射式形態。」
それに対してシグは、連射式に切りかえた銃の弾丸を一つ一つの魔法陣に当てて、魔法陣を構築破壊していく。
ただし時間的に全ては破壊できず、3つ4つ程度の炎の球や紫電は飛んできた。
ただそれを、『ガンライズ』の時に培った持ち前の反射神経でパルクールの様に躱していった。
躱しながら前に進んでいくと、150人の本隊の中に侵入した。
150人は一斉に武器を構えて、シグを囲んだ。
色々な武器の刃がシグに向く。
「囲め!!囲め!!」
「リンチにしろ!!」
様々な声が飛び交う。
囲まれたシグは、1度連射式形態をキャンセルして、刃の元に突っ込んだ。
1人の槍使いは、シグに向かって槍を奮ったが、シグの持つ銃から放たれた弾丸で弾かれて、気づいた時にはもう1発が顔の前にあった。
3人の剣士は、シグを囲んで一斉に剣を振るったが、シグの姿はそこにはもうなく空ぶった。シグの姿がなく、焦って周りを見ると後頭部に銃口をつけられて射撃される。
15人の魔法使いは、シグが近距離部隊と交戦中にアイシクルバレットという氷の礫を隙を産んだシグに向かって大量に放ったが、全て連射式形態による的確な射撃によって、爆発し消滅で終わった。
入り交じっていて誰がダメージを受けているのかがよく分からないため、回復部隊が上手く回復をすることが出来ず150人はだんだんと減っていく。
シグの脳へのぶち込みで1人また1人と減って行った。
それに対してシグは、レインの才能のある状況判断と空間認識能力のおかげで回復魔法が入り、攻撃を食らってもHPが減ることは無かった。
「41」
「42」
キルを数えるというシグのくせが出ている。
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「74」
「75」
「おい!マジで誰か止めろーー!!」
「半分死んだぞ!!」
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「無理だ。こいつまじで隙がない。」
「回復部隊何やってんだよ!?!?」
「銃を横に持って剣を止めるなんて聞いたことねぇよ。」
「102、ハァ、、ハァ、、」
「103」
だんだんシグの呼吸も乱れていく。
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「こいつ今まで全部ヘッショじゃねぇか?」
「てか敵の後ろにいる回復術師どうなってんだよ??なんでこんな動きのこいつの場所を完璧に把握できる??」
敵は、場所の把握をしないとできない回復という分野において、完璧にこなせている後方に立つ男の技量も意味がわからなかった。
「132」
「134」
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「おいしっかり構えろ!!残り10人だぞ!!敵のHPも減ってるはずだ。」
残りの人数が10名となった敵は、シグから1度距離をとって武器をしっかり構えた。
「どうやってこの化け物に勝つんだよ……。」
140人がキルされた中、10人には戦意なんてものは存在しなかった。残った10人には、シグの後ろに何らかの化身が見えている。