このFPSトップランカー、射撃ゲーすぎる
シグとイチヤが、10体程度のスライムとの戦闘を終えて、【始まりの街ヴェネラ】に戻っている最中だった。
シグとイチヤの目線の先約200メートル前に、ハンマーラビットという白いハンマーを持ったうさぎの群れを発見した。
「おい、シグ。あの群れ倒しに行かないか?相当経験値になりそうだぞ。」
「倒すのはいいけど、別に行く必要なくないか?」
イチヤは、このシグの返答の意味がわからなかった。
するとシグは、アイテム欄に戻した銃を再び、ウィンドウから召喚する。
この行動を見て、イチヤは全てを悟った。
「シグ、さすがに無茶だ。200メートルはあるぞ。ステ振りもしてないからエイムアシストも付いていないし。ましては、その銃は弱いやつだ。いくら銃が結構上手くても⋯⋯。」
シグの思いがけない行動に対して、イチヤはその行動を踏みとどまらせようとした。
しかし次の瞬間、イチヤは反旗を翻された。
―――バン―――
―――バン―――
―――バン―――
3回にわたって撃ち放たれた弾丸は、3匹のハンマーラビットの頭を貫いたのである。
「スコープなしでも、200メートルなんて楽勝だろ。ガンライズのトップランカーの意地ってもんだ⋯⋯。」
「お前、マジか⋯⋯。今俺の脳内で、シグ・ザウエルは化け物とインプットされたわ。」
「そりゃどうも。」
【ガンライズ】でも化け物という2つ名を持っていたシグは、化け物と言われるのは、割と慣れていて、強すぎるという意味において嬉しい部類に入っていた。
【ヴェネラ草原】でレベル上げを終えて【始まりの街ヴェネラ】に戻ってきた2人は、別行動をすることになった。
シグは、イチヤに教えてもらったことをしていた。
(ステータスポイントどれに振ればいいんだ?)
そう、それは、ステ振りである。
STR(筋力)、AGI(敏捷)、INT(魔力、知力)、VIT(体力)、DEX(器用さ)、DEF(防御力)。
6つのステータスに、戦闘によってゲットできるポイントを振り分けないといけないのだ。
STR―――筋力の向上により、魔法銃の反動を減らすことができ、安定率が増す。
AGI―――敏捷の向上により、魔法銃自体には関係がないが、移動速度が増す。
INT―――魔力の向上により、魔法銃の基本的な火力が伸びる。ダメージ量が増す。
VIT―――体力の向上により、魔法銃自体には関係がないが、HPが増す。
DEX―――器用さの向上により、振れば振るほどエイムアシストのアシスト力が増す。エイムアシストはDEXに振らない限りついていない。
DEF―――防御力の向上により、魔法銃には関係ないが、敵の攻撃を減らすことが出来る。
(エイムアシストだけはいらないな⋯⋯。)
エイムアシストをつけるのは、初心者だけという【ガンライズ】においての暗黙の了解が脳において働いた。
迷った末に、シグは、ステ振りを完了した。
シグ・ザウエル
Lv.18 魔法銃
スキル 無し
魔法 無し
HP―――1500 MP―――250
ステータス
STR―――0
AGI―――26
INT―――25
VIT―――0
DEX―――0
DEF―――0
エイムアシストがないと20メートルでも当てることが出来ないとされるこのゲームにおいて、200メートルをエイムアシスト無しで当てるのは、ゲームバランスを崩すことになることを、シグはまだ知らない。
そもそも、エイムアシストが向上するDEXにステ振りをしなかった銃使いは、全世界プレイヤーの中で、シグただ1人であることも今はまだ知らないのであった。