No.1ギルドマスターとヘボワシ
シグは、3日間をアレとアレ獲得するために動いていた。
そのアレとアレは、どちらもこれからの戦いのために必要だった。
そして、シグが考えるアレとアレとは、リロード時間の短縮のスキルと速度をあげる魔法だ。
(200人を倒すなら、ダメージがあまりにも少なくなる連射式形態は不可能。ただ1発と1発の射撃の間に3秒のリロード時間を持つ通常形態でも、勝てる気がしない。そして、相手の魔法を躱すことと的に近づくための速さが欲しい。)
まずシグは、読むことによって魔法を覚えることが出来る魔導書の書店に向かった。
魔導書店は、たくさんのプレイヤーがいた。
剣用魔法、槍用魔法、回復系魔法、テイマー用魔法、闇属性魔法など様々なジャンルで棚が区分けされていた。
シグは、店内を歩き回って速度系魔法という区分けのスペースに至った。
(さて、良さそうなのを探しますか。)
50冊程度あった速度系魔法と区分けされる魔導書は、背中の部分に大きく魔法の名称が書いてあってとても分かりやすかった。
シグは、片っ端から魔法の名称を見ていって、良さそうなのを探す。
(瞬動回避、速度強化、氷結移動…………。)
速度系魔法と区切られたスペースにある全ての魔導書を見たが、全く分からなかった。
頭を抱えながら、どれを選んだ方がいいか迷っているシグに、1人の男が近づいてくる。
「なんか、お探しかい?君。」
声をかけられたと思い、フッと声の方を向くと、そこにたっていたのは全身白いローブの男だった。
顔には、狐の仮面をつけている。
(誰だこいつ?)
「えっと、速くなるような魔法が欲しくて。ただ、いっぱいあって分からなくて。」
「あー、はいはい。シグくんは、どんなのがいいの?交わすための速さ?移動のための速さ?的に近づくための速さ?」
「えっと、、、なんか全部できるような万能な感じの速さが欲しいっすね。」
「あー、ならね、」
狐の仮面の男は棚から探すのではなく、ウィンドウから探していた。
「これあげるよ。」
そして手に取った魔導書をシグに見せる。
《残像の舞踏》
「けどこれ、あなたのなんじゃ?」
「そうだけど、あげるよ。ここであったのもなんかの縁だし。で多分シグにはそれが合うよ。その魔法効果中の全てのモーションが早くなるから。」
「遠慮したいとこなんですけど、貰いたいっすね。」
「潔いい子は、好きだよ。」
シグは、狐の仮面の男が手に持っている魔導書を受け取った。
「じゃあ大事に使ってね、あと君に一言。ゲームっていうのはね、シグ君みたいにその場その場での適応力も大事だけど、未来予知って言うのも大事なんだよ?んじゃ【北方騎士団】と頑張ってね。」
そうシグに言い残し、颯爽と狐の仮面の男は去っていった。
(なんで【北方騎士団】とのギルド総力戦のこと知っているんだ??あっ、そもそもなんで名前知ってたんだ??)
そんな謎を残して去っていった狐の仮面の男は、いずれシグに立ちはだかる、現環境No1ギルド【ファイヤーボール】ギルドマスター、シャーロット・シャーロックである。
次の日は、リロード時間の短縮ができるスキルの獲得のために動いていた。
しかし、割と簡単に手に入れることが出来た速度系の魔法に対して、リロードの時間を短縮させるスキルの獲得は難航していた。
ネットで調べた限り、《魔法弾構築速度上昇》というスキルがリロードの時間短縮に能力がぴったりだということがわかった。
そのため、《魔法弾構築速度上昇》が覚えれるというフィンドルというワシのようなモンスターを倒しに来ていた。
ただ、倒しても倒しても全く獲得できないのだ。
(この作業ゲーつら……。)
ネットによれば1時間も狩れば獲得できると書いてあったが、現在2時間が経過した。
「こい!!」
「くっそ、こい。ヘボワシが。」
上空を飛ぶフィンドル達をシグは、銃で撃ち落としていく。
射撃と同時に独り言をぼそっと呟いている。
こい!!こい!!と叫ぶが一向にスキル獲得のウィンドウは出てこない。
「頼むヘボワシ!!」
「こおおおおおい!!」
レベルが離れているため一発で倒すことは出来るが、上を向いて撃っているため体勢的に辛かった。
3時間たって、シグが諦めようと思った時、ウィンドウが表示された。
『スキル《魔法弾構築速度上昇》を獲得しました。』
(……。……。)
シグは、足から崩れ落ちた。
(終わった……。)
――――――
シグが行っていた魔道書店の裏路地にて。
「シグくんいたから呼んだけど、良かったの?世界に君しか持ってないお気に入りの魔法を複製して渡しちゃって。」
「いや、むしろ面白くなってきた。《残像の舞踏》は全てのモーションの速さを変えちゃうから、普通のやつじゃそもそも使えないんだよ。ゲーム性自体全く違くなるしね。」
「まぁ、シャーちゃんがいいならいいんだけど……。相当気に入ったんだ、あの子を。」
「ツィー・ツィーとの試合見て、プレイングとかキャラコンが本物だったからね。多分あれはれっきとした彼の才能だよ。」
「ゲームオタクキッモ。」
「うっせー。ゲームにも才能の一つや二つあるんだよ。」