第2回ギルド会議
フローリング、壁紙、ポスター、椅子や机、全てがイヴニャー関連物である会議室に【7月21日の政変】ギルドメンバー6人は集まっていた。
クロエ以外の5人の中でこの部屋は、イヴニャー地獄として名が通っている。
「そういうことがあって、ギルドランク9位の【北方騎士団】と戦うことになりました。」
ツィー・ツィーは来週の日曜日に【北方騎士団】とのギルド総力戦が決まった事の経緯を、その場にいたシグとイチヤ以外に話した。
「総力戦って確か人数とか合わせないやつだよね?私が生産職であんまり戦えないとして5人対200人でどうやって勝つの?無理に決まってるじゃん。」
「すまん、あの時はギルドポイントのことしか考えてなかった。それと前に【ファイヤーボール】のシャーロットとアイスが、200人ギルドを全滅させたことがあったから俺らでも行けるかなって思ってしまい……。」
現実を見ている日和にツィー・ツィーはペコペコとしかできなかった。
「決まっちゃったことは、やるっきゃなくない?」
イヴニャーの背もたれである椅子に座るレインは、漫画を読みながらそう呟いた。
適当にレインは言っているが、その通りだった。
ちなみに、漫画というのは『isekai』の運営側の契約している漫画で、街にある漫画屋などで買うことによって読むことが出来る。
「別に俺が200人ぶち抜くからそれで良くね?」
「さすがだな、お前。」
この時はまだ全員分からなかったが、後にシグに関わりが深くなっていくと気づくことがある。
シグ・ザウエルは、脳天気なお調子者に見えて実は、向上心が高く能動的で何らかの理由を持って言動、行動を行っているという事だ。
なのでシグの言動には200人を倒せる根拠があった。
「来週の日曜日ならまだ時間あるしレベル上げしませんか?」
イヴニャーのぬいぐるみを抱えながらおっとりとしている健気な子はそうつぶやく。
全員、会話の中でもっと強くならないとと思っていたために全会一致だった。
「フレンドのところから確認したが、今俺が279、シグが141、イチヤが127、クロエが168、日和が206、レインが236。」
このゲームにおいて、レベルというのはさほど強さに影響するという訳では無いが、逆に考えればレベルは経験値なために簡易的な強さ指数なのである。
レベルが高い人ほど、全ステータスの合計やスキルや魔法の数が多い。
「みんなでボスとか行くか?まだギルドメンバーの戦い方すらあんま知らないし……。」
「シグ、それありだわ。そうしよう。」
6人は、お互いに聞いた情報でしか個々を知らないために、ボス戦に行くことになった。
そんな中である1人が手を挙げた。
「今日から3日間は、ボス戦じゃなくて個人個人でレベル上げにしないか?個々で調整とかしたいだろうし。」
挙がった手に装備品の甲冑の1部である青い小手を身につける者、イチヤだ。
「あーおっけー。それで行くか。」
ギルド総力戦である来週の日曜日まで、3日間を個々の調整をして、その後ギルドメンバー全員でボス戦をすることに決まった。
会議が終わると、シグは4階にある自分の部屋へ向かった。
シグの部屋の壁には、このゲーム内に登場する魔法銃のモデルガンが多数置いてあるガンラックが置いてある。
真ん中には、イチヤがハンモックで庭園にずっといるぐらいなら、と買ってきた室内用ハンモックがズドンと構えている。
シグは、そのハンモックに身をあずけて思考時間に入った。
(200人なんて『ガンライズ』でも倒したことないし、そもそも魔法とかがある『isekai』で倒すなんて結構難しい気がするが……。アレとアレがあれば多分行けるんだよなァ。)