ギルド総力戦
ギルドには、ギルドランクというものがある。
ギルドランクとは、様々な視点から決まるポイントによって割り出されるギルドの総合順位である。
ポイントは、ギルド総力戦やギルド対抗戦、このゲーム一の大規模イベントであるギルドウォーズなどで決まる。
ギルドランクの上位のほとんどは、上限である200人の大規模ギルドである。
―――現ギルドランク―――
1.ギルド【ファイヤーボール】
2.ギルド【副都心】
3.ギルド【王政復古の大号令】
3.ギルド【XYZ】
4.ギルド【悪役令嬢と第七王子の守護団】
5.ギルド【プレリュード】
6.ギルド【確定演出】
7.ギルド【141421356(一夜一夜に人見頃)】
8.ギルド【riri】
9.ギルド【北方騎士団】
10.ギルド【陰陽旅団】
7位より上のギルド7つを《アブソリュート・セブン》と呼ぶ。
シグ、ツィー・ツィー、イチヤは、その日も【繁栄の都市エディン・エレン】を歩いていた。
シグとイチヤは、拠点を【繁栄の都市エディン・エレン】に移してからだいぶ月日がすぎたため、地理感覚がついてきている。
3人は歩いていると、妙な人だかりを目にした。
レアそうな鉄の甲冑を着る4人組を中心にその人だかりはできていた。
シグ達は少し気になって、人だかりの中に入った。
「これ以上のアイテムを出せるヤツ他にいるか?こいつに決定するぞ?」
4人組のリーダーであろう男は、1人のおどおどしい高校生くらいの男の肩を掴んで、人だかりに向かってそう叫んだ。
「知ってるか分からんが、あれは現ギルドランク9位の【北方騎士団】の連中だ。今叫んでたやつがギルドマスターのグラナイト・フォーク。この連中はギルドランクは高いがほんとゴミだから気をつけた方がいい。」
ツィー・ツィーは、4人組に聞こえないように小さな声で説明した。
「じゃあすごい人達やん。」
「いやアイツらがギルドランク高いのは、弱小ギルドだけを倒してポイント上げてるからな。しかも何が酷いって、あーやって良いアイテム持ちのやつをアイテムと引き換えでギルドに入れて、抜けさせるんよ。」
そんな風にツィー・ツィーが、【北方騎士団】の悪さについて説明していると、4人組のうちの1人が人だかりの中にツィー・ツィーがいることに気づき、リーダーであろう人にこそこそと伝えた。
「おいおい、陰陽旅団の、ツィー・ツィー君じゃないか。ずっとギルドランク俺らの下だけど大丈夫そう?」
クスクスと笑いながら、陰陽旅団のことをわざと陰陽旅団と読んで煽る。
「グラナイト・フォーク、お前性格変わらないな。そんなことしてるとお前運営にBANされるんじゃない?」
「されねーよ。」
「後俺、陰陽旅団辞めたんよ。」
「へー、まぁあんなヘボギルド辞めるべきだよな。」
「ヘボはやめろ、失礼だ。」
上から目線で罵倒するグラナイトを、ツィー・ツィーは冷静に対処した。
「てかお前の隣にいるやつ、お前をボコしたヤツじゃん。俺バトで。ライブで取り上げられてたもんなお前らの戦い。」
グラナイトは、ツィー・ツィーの隣に立つ紫髪の男は、俺バトにおいてツィー・ツィーを倒したやつだと認識する。
「てか速さの王様とか光速のフード男とか呼ばれたやつが、初心者武器持ってるやつに負けたのダサすぎだろ。そいつ射撃うまかったけど、まぁ俺様なら勝てるわ。」
グラナイトは嘲笑う。それに乗っかってほかの3人も笑っている。
(ツィー・ツィーのいうように、こいつほんとに性格悪いな。ヘッショ抜いてやりてぇ。)
「グラナイトだっけ?やれるもんならやってみろよ。」
グラナイトの性格の悪さに少しイラッときたシグは、挑発した。
「あぁ?舐めてんじゃねーよ。始めたばっかのキッズがよ、、、お前ツィー・ツィーごときに勝って、俺バトで少し評価されたからって調子乗ってんじゃねーよ?アァ?俺様はな俺バト15位なんだよ舐めんな、、、」
「ならグラナイト、ギルド総力戦しねーか?俺とシグが新しいく作ったギルドと【北方騎士団】で。」
ツィー・ツィーは、思いついたそばからそうお願いした。
「総力戦でいいのか?そっちはどうせ5.6人のギルドだろ?こっちは200人だぜ?」
「いや、問題ない。」
「クソが、舐めやがって。まぁいい、なら決戦は来週の日曜日。総力戦だ。」
怒り狂ったような顔をして、グラナイトはほかの3人と1人のおどおどしい高校生くらいの男を引っ張って去っていった。
ギルド総力戦とは、文字通り総力を用いるために上限人数は決まっていない。そして、総力戦においての1番の特徴は、ポイント変動の大きさだった。
勝ち負けがしっかりとしている総力戦は、負けると持っているポイントのほとんどが相手のギルドに持っていかれるリスクが大きいのだ。
しかし逆にいってしまえば、これは作りたてでギルドポイントが0に近いギルドである【7月21日の政変】的にはプラスでしか無いのだ。
そこを見越して総力戦にしたツィー・ツィーだったが、後になって6人対200人で戦うと考えると絶望的だった。
(負けても0変わらないしいっか。)
そんな中で隣で成り行きを見ていたシグは、ツィー・ツィーが作った6人対200人という絶望的状況が楽しみすぎて仕方がなかった。
―――――
【工業の都市アバスタン】
街は、あまたに存在する工場から出る煙でいっぱいだった。
街は、オイルの匂いと工業の音で溢れている。
そんな薄暗い街の中に経つ鉄で骨組みが作られた大きな歯車で動く時計台の建物は、あるギルドのギルドホームである。
そのギルドは、現環境において1番有名でいちばん強いとされるギルド、【ファイヤーボール】である。
「そうだ、面白い情報もらったんだよね。」
「面白い情報??」
「そう。シャーロットがさ、気に入ってた俺バトで光速のフード男に勝ったシグ・ザウエルだっけ?っているじゃん。」
「あぁ、ガンライズ世界1位ってちょっと話題になった子か。戦いたかったわほんとに。」
「とりあえず、その子がツィー・ツィーとギルド設立して、【北方騎士団】と総力戦するらしい。」
「へー。さすがアイス、情報仕入んの早。」
シャーロットと呼ばれた男と、アイスと呼ばれた女は全方角窓で作られた部屋で噂話をしていた。