ギルド【7月21日の政変】②
ギルドメンバーとなる顔合わせは1時間に突入した。
せっかくということで、レストランを堪能したり、ギルド作成とは関係ない最近の世論の話など、結構グダっている。
「てか、ギルドホームってどうすんだ??」
ギルドとは別の会話が進行している中、そんな一声が生まれる。シグだ。
ギルドホームとは、ギルドが所有する場所、建物である。
「いろいろ、買える範囲で内見いってみるしかなくないか?俺の金で出す気だけど、少しでも良いところに住みたいから、出せる人は出してくれ。」
ツィー・ツィーがそうお願いするとものすごい答えが返ってきた。
「2000万リアなら出してもいいよ?」
そう答えたのは、日和だ。
2000万リアという大金を軽く払うといっている日和に、全員驚いている。
「本当に言ってるのか?俺が準備してた額で500万だぞ?」
「金に関しては、生産職なりにものすごいあるから使ってくれて構わないよ。」
そう言って、日和はウィンドウで先ほどフレンド登録を済ませたツィー・ツィーに2000万を送り付けた。
「日和、まじで言ってるん?まあ2000万大事に使わせていただくわ。」
2000万が送られてきたことを確認したツィー・ツィーは日和に感謝した。
「じゃあ、私も、これ。」
ウィンドウをいじりながら珍しく敬語ではなく片言でつぶやいた、クロエもシグに対してある物を送った。
「ちょっと待って、まじ??」
クロエから送られてきたものに、手の甲を口に当てて軽く驚いた。
送られてきたものの正体は、《神竜の神魂》だった。
《神竜の神魂》とは、このゲームのラスボス的存在とまで言われる《東を収めし神竜ライトワ》、《西を収めし神竜レフティア》が落とすドロップ品で有名であり、マーケットにおいての市場価格が500万となっている。
「何が送られてきたの?」
驚く反応をしたツィー・ツィーが、驚いた理由を知りたいレインは、ツィー・ツィーのウィンドウをのぞき込んだ。
「えっ、、、《神竜の神魂》?!?!」
ツィー・ツィーの画面に映っていた《神竜の神魂》にレインの声はレストランの一角に轟いた。
実際そのレベルのものなのである。難易度が高すぎてとてもじゃないほど周回ができないライトワとレフティアにおいて、ドロップ確率がほぼない《神竜の神魂》を持っていることはすごいことなのである。
「すごく運が良かったのか、レフティアと戦ったら《神竜の神魂》もドロップしたし、しかもテイムしちゃったんですよね。」
「テイム?!?!」
「テイム?!?!」
「テイム?!?!」
「テイム?!?!」
もう知っていたシグ以外の4人は声をそろえて驚く。
レフティアをテイムしたなど聞いたことがない事であって、考えられない事なのだ。
「クロエとは一回共闘したんだけど、イヴニャーが好きすぎてイヴニャーにレフティアを合成したらしい。」
「合成した?!?!」
「合成した?!?!」
「合成した?!?!」
「合成した?!?!」
シグが経験談を語ると、再度4人は声をそろえて驚く。
「待て待て、クロエちゃん。まとめると、レフティアをテイムして、イヴニャーに能力を合成したってことか?そもそも一発でテイムしたのか?」
手のひらを前に出して、一度場の驚きと困惑を止めて、イチヤは言動をまとめた。
「あってます。」
「すうううう、ふうー。シグといい、クロエちゃんといい、変な奴が多いな。」
イチヤは、息を吸ってはいて、言いたいことを抑えた。
「、、、てか俺今ちゃかりイチヤから攻撃受けたくね?」
「まあ、シグは変だろ。」
ツィー・ツィーはシグの言ったことを即座に取り消す。
その後、初のギルドによる会議はとりあえずシグがギルドマスターとしてギルド設立建白書をウィンドウから提出して終わった。
【7月21日の政変】はそうやって生まれた。
ツィー・ツィーは、このギルドを作ってよかったと感じた。
そして、このギルドなら、日本サーバー(世界)を取れるかもと思った。