ギルド【7月21日の政変】①
「とりあえず、この6人でギルドを設立するってことで……。まず、お互い知らない人もいるから自己紹介から行こうか。」
【繁栄の都市エディン・エレン】の《レストラン・クロノス》。
名の知れたプレイヤーであるクロノス・タシスの経営するレストランであり、【繁栄の都市エディン・エレン】においてプレイヤー経営の飲食店ランキングでは堂々の1位を維持している。
6人席のテーブルに、紫髪の男、赤髪センター分けの男、白髪の少女、フードがついている黒髪の男、金髪の少女、水色髪の男が座る。
「じゃあ、話を進めてる自分から。元陰陽旅団所属ツィー・ツィーです。えー、双剣士で、速さには自信しかないです。20歳で見た感じみんなより歳上なので、大人な感じ出していきたいと思います。んじゃ次シグ。」
フードがついてる黒髪の男は手を組みながら、隣に座るシグに次の番を振った。
「シグ・ザウエルです。銃が好きです……。」
ツィー・ツィーが作った流れ的に、もう少し長く自己紹介を言わないといけないのに対して、シグはマイペースに2行で終わらせた。
そのマイペースな行動によって、6人のテーブルに沈黙が起こる。
もっと話せよというような闇の深い沈黙だった。
「え?終わり?短くね?」
「シグ、もっと話すことあるだろ。」
手を組みながら、シグの3行目を待っていたツィー・ツィーは沈黙を区切るためにそうつぶやく。
そのツィー・ツィーのヤジにイチヤも乗った。
「いや、これ以上話すことないわ、、」
「すまん、俺が悪かった。でもシグってほんとマイペースだよな。」
ツィー・ツィーは、シグのマイペースさを読み取れなかった自分が悪いと思い込み一礼をする。
「じゃあ次は私ね!!」
金髪の少女は、手を挙げて明るい笑顔を放つ。
「日和・ヒヨリです。鍛冶師やってます。自慢なんだけど、OV1まで精錬強化できます。このギルドの鍛冶マイスター私にください!!」
日和の元気さは、テーブルを明るくした。
「OV1までって、めっちゃすごくないか??」
精錬値とは、鍛冶師にしかできない武器の強化の1種で、+値とも呼ばれる。
+F+E+D+C+B+A+S+SS+SSS+OV1+OV2と強化の強さが表せられる。
平均的な鍛冶師ができる精錬強化は+B程度なため、OV1まで精錬強化ができる日和は相当な実力者である。
(陰陽旅団の鍛冶マイスターでも+Sまでしか強化できてなかったし普通にすごいな……。)
シグから鍛冶師の女性が入るとしか聞いてなかったツィー・ツィーは、結構な実力者ということを知らなかったために驚いた。
「すごいっしょ、ありがとフード君。」
「フード君、、、最高だわ。」
日和の唐突なツィー・ツィーのあだ名であるフード君に少しツボったシグは、口を押えながら笑う。
そして、その笑いは他の4人にも移った。
緊張感のあった6人のテーブル席も、笑いも入って明るくなる。
「じゃあ、笑いが起きたところで、次俺で。イチヤ・カイっす。槍使いやってます。そこの銃の天才君と始めた頃が同じです。じゃあ、次君どうぞ。」
正面に座るシグを見ながらイチヤは自己紹介を終え、隣に座る白髪の少女に笑顔で出番を振った。
「はい、えっとクロエです。テイマーです……。」
白髪の少女であるクロエは、少しほっぺを赤くして下を向きながらそう話した。
健気で恥ずかしそうに話すクロエに、シグを除く他4人は見守りたいようなそんな感じがした。
クロエが話終わったあと、シグと同様に沈黙が起こるが、シグの時の沈黙とは全く違う沈黙だった。
「おいこら。お前ら、なんか俺の時と対応違くね?クロエ俺より短くねーか?」
「クロエちゃん。めっちゃ可愛い!!マジ天使!!」
シグの意見をかき消すように、クロエの隣に座る日和がクロエを撫でた。
初見なのに、グイグイくる日和のおかげで、クロエの緊張は少し解ける。
「じゃあ、ラスト僕。レイン・アヴォイドです。ツィー・ツィーさんに誘ってもらい参上したっす。13歳。回復とか支援とかバフ系魔法持ってる。よろしくっす。」
水色の髪色の彼は、早口でそう自己紹介した。
「あっそう。シグには言い忘れてたんだけど、結局回復系のスキル持ちは必要だからこいつ入れた。こいつ反抗期だけど優秀だから入れてやってくれ。」
「ツィー・ツィーさん、反抗期はいらないっす。」
6人全員の自己紹介が終わり、次の話題はギルド名決めになった。
「ギルド名とかってほんとむずいよな。誰かいい案ないか?」
ツィー・ツィーの進行の元、ギルド名決めが始まった。
「ちょっとかっこいいネタっぽいのが良くない?」
イチヤは、右手の親指と人差し指を顎につけて考えながらそう言った。
そのイチヤの方向性にはみんな納得だった。
【ナイトメア騎士団】みたいな厨二心くすぐる名前ではなく、【ちょんまげ団】のようなネタに行く名前でもなくちょうどいいのが欲しかった。
すると、シグがみんなに聞いた。
「今日何日だっけ?」
「7月21日っす。」
レインは答える。
「じゃあさ、俺が歴史の時間に習ったのいじって、7月21日の政変つうのはどう?」
みんな考えるのを辞める。
「やるじゃんシグ。それ丁度よくかっこよくて丁度よくネタになってる。」
イチヤはシグをほめた。
全会一致で、ギルド名は【7月21日の政変】に決まった。
ギルドメンバーの歳紹介
シグ・ザウエル、17歳
イチヤ・カイ、17歳
ツィー・ツィー、20歳
日和・ヒヨリ、16歳
クロエ・グレープソーダ14歳
レイン・アヴォイド13歳