フードを被る双剣士①
シグが8人のパーティを全滅させた時、丁度、アイチューブのライブ配信、PvP闘技場の真ん中に浮かんでいる特大モニターには、その姿が映っていた。
『え?w』
『何今の?』
『なにあのプレイ、』
『どゆこと?』
『おい今の見たか?今のなんだよ?』
『こいつヤバすぎwww目線にいない敵にヘッショ当てたぞ』
『えっっぐぅぅ』
『うますぎやろwwwwwwwww』
『ヤバすぎ笑』
ライブ配信のコメント欄には、疑惑のコメントが1000件以上続く。
数秒で数千というコメントが打たれたために、コメント欄がラグくなっている。
またPvP闘技場で観戦をするプレイヤーの間にもどよめきが起こる。
一般視点からすると、シグが普通にやっているプレイは、普通ではなく異常なのである。
『で、マジでこのプレイヤー誰?www』
『誰だよこの、エントリーナンバー1009番。特定出来るやついねーのかよ?』
『特定したわwシグ・ザウエル』
『聞いたことねぇわwww』
『こいつアレじゃね?レベル30くらいで白撃竜倒したヤツ』
『そーやんけ』
『あーあの話題になったやつかw』
『それツイットーで見たわ』
ライブ配信、PvP闘技場では、話題が完全にシグ・ザウエルという無名のプレイヤーに移る。
シグは、ライブ配信などで話題になっていることも知らずに、森で着々とプレイヤーを撃破していった。
そんなに強いプレイヤーがいなかったため、ダメージもなく簡単に撃破していくことが出来た。
そんな中森を真っ直ぐに進んでいると、森をぬけ、緑におおわれている平野にたどり着く。
その平野には、数本の木しか景色を遮るものがなく、開けている空間だった。
シグは、そんな空間に身を委ねながら、少しこれまでの疲労を整えるために1呼吸をしていた。
すると何かを感じた。
平野の先から何かが、向かってくるような。
そんなのを感じた。
運命は、シグに休みを与えなかったのだ。
シグが目でとらえることができたのは、数メートル先に残った残像までだった。
向かってきたのが何かもとらえることが出来ない。
瞬きした目を開けた途端、フードを被るプレイヤーが右手に持つ剣の刃が顔の前にあった。
その剣の刃は、シグの顔を斬った。
切られたような演出と共に、シグは後方へノックバックした。
ノックバックした時やっとシグは、気づいた。
プレイヤーに攻撃されたことを。
気づいていないわけではなかった。脳が思考という数コンマ秒の処理に追いつかなかったのだ。
シグのHPバーは、残り1000も無くなっていた。
フードを被ったプレイヤーの顔は、フードの影でうっすらしか、見ることは出来なかった。
両手に剣を持っている。
シグが、考える時間をしていると、フードを被ったプレイヤーのうっすらと見える口が動いた。
(今、魔法を言ったのか?やばい。なんかくる。)
高速双撃
超高速移動
フードを被ったプレイヤーは、シグに考える時間を与えなかった。
音速の速さで、シグの間合いに入る。
そして、両手に持っている、魔法によってオーラを放っている剣で斬る準備に入った。
(くっそ、)
シグは、考える時間が追いつかなかったため、全てを自分の運動神経(体)に任せている。
体は、防衛反応で、銃を持っている右手を前に出した。
「一撃射撃……。」
口も反射的にそう言った。
フードを被ったプレイヤーの持つ右手の剣がシグの脇腹に到達するより先に、銃弾がフードを被ったプレイヤーの腹に着弾する。
そのためフードを被るプレイヤーはノックバックして、シグは死に至る攻撃を結果的に回避した。
そして、フードを被るプレイヤーは、1度構えていた剣を地面に刺して、フードを外した。
「君、まじ??俺の、あの速さに追いつけるんだ。やるじゃん。」
シグの体は、一瞬のこの攻防に、全てを持ってかれた感覚にあって、言葉が出ない。
この数秒の攻防を、シグは1分に感じた。
シグの脳内では、今の攻防の映像が流れている。
「おいおい、終わりか??もっと楽しませろよ、俺を。」
「おいフード男ちょい待ってくれ!!今思考中なんだよ!!」
「リょーかい、30秒待ってやるよ。優しいな俺様。」