第14回バトルロワイヤルで勝った俺はisekai最強になった件
午後8時。
開催場所である【繁栄の都市エディン・エレン】の上空に花火が放たれる。
赤、青、緑に光るその花火は、《第14回バトルロワイヤルで勝った俺はisekai最強になった件》(以後、バト俺)の開始の合図を示している。
《バト俺》開催にあたって、動画配信サイトアイチューブの『isekai』公式サイトで配信されるライブチャットや、世界チャット、《バト俺》を見ることの出来るPvP闘技場は大いに盛り上がっていた。
8時になった瞬間、エントリーをしたプレイヤーは全員、待機場に強制的にワープされる。
シグとイチヤもワープされる。
待機場は、何も無い真っ白い空間で、たくさんの人がいた。
周りの人が敵という意味もあって、少し緊張した空気が漂っている。
シグとイチヤもそれを感じて、お互い一言も話さなかった。
そんな中で、上空に、大きな映像が浮かび上がった。
その映像には、某有名アイチューバーとこのゲームのゲームマスターがたっている。
『これから行われる、《第14回バトルロワイヤルで勝った俺はisekai最強になった件》にエントリーの皆さん。こんにちわ。』
『さて、始まりましたね、略して《第14回バト俺》。今年は、最低限必要レベルが、100から60に下げられたからか、出場プレイヤーが5万人という多さを記録しています。』
『5万人もいるんですか??すごいっすね。前回も圧巻だったけど、今回も面白そうだ。』
『さて、今回のバトロワのルール説明に入ります。今回は、10個のバトロワフィールドを展開し、10個のブロックに分けて、バトロワを行っていただきます。ひとつのブロック約5000人のプレイヤーがいることになります。そんな中争ってもらうのは、生存ではなくキル数。キルされるまでにどれだけキルできるかというのが大事になります。そして、そのキル数で、全ブロックの中で総合順位をつけさせて頂きます。』
(俺が好きなルールだな。隠れるのナシなのは、探す暇が省けるから好きだ。)
『いつもとルールは変わりませんが、10個のブロックって、規模が大きくなりましたね。』
某有名アイチューバーは、ゲームマスターの説明に言葉を入れる。
『その他ルールは、バトロワ中、ウィンドウの注意で読めますので、そこでお願いします。』
『では、《第14回バトルロワイヤルで勝った俺はisekai最強になった件。スタートです!!》』
某有名アイチューバーがそう叫んで、その動画はブチッと切れた。
そして、全エントリープレイヤーは、ウィンドウにどのブロックかが送られてくる。
(俺は、Aブロックか。)
「イチヤ、お前何ブロックだ?」
「F」
「なら、戦うことはなさそうだな。健闘を祈るよ。」
「よっしゃ。お互い頑張ろう。」
そうシグとイチヤは、気合を入れて、グータッチをした。
すると、体が白い粒子になって転送された。
シグが転送されたのは、岩山の山頂だった。周りを見渡す限り岩山におおわれていた。
ただ、西の方角には、少し森林地帯が見えた。
(色々な、バイオームが合わさっているのか。)
「ただ、ひとつ言うとするなら、ここは俺ゲーのバイオームやな。高いとこに俺を転送しちゃだめでしょ。」
独り言を言いながらシグは、《ノーマルガン》をアイテムボックスから召喚し、右手にとった。
そして構える。
シグが構えた先は、周りを見渡す中で見つけた、岩山に潜んで様子をうかがうプレイヤーだった。
銃弾を1発そのプレイヤーに当てた。
しかしキョロキョロと、どこからダメージを与えられたか、見渡すだけだった。
シグは、自分に気づいていないプレイヤーに、構わず頭を銃弾でもう2発ぶち抜いた。
するとプレイヤーは、白い粒子になって消えた。
シグのウィンドウが自動で開いて1キルと表示される。
「へー、ヘッドショット3発なんだ……。倒しやすくていいな。楽勝。」
比較的HPがモンスターより高いプレイヤーに対しての通常攻撃は、ヘッドショット3発で仕留めれた。
『ガンライズ』時代から好きな人を射撃でキルする気持ちよさにシグの右手は震える。
1発のダメージはばらつきはあるが、《ノーマルガン》の基礎ダメージ500+魔法銃使用時のINT値によるダメージ力増加で429×1+スキル《初級魔法銃士》によるバフで50+基礎火力で100×ヘッドショット倍率で2倍により、2158ダメージとなる。
そのあとも、岩山を見渡して、敵を探しているプレイヤーを、気づかれないで射撃しているシグはキルを取り続けた。
3発か4発で倒すことが出来る。
――2キル――
――3キル――
――4キル――
――5キル――
――6キル――
――7キル――
ハンドガンで狙撃するというのは、客観的に見るととても恐怖だった。
(敵がもう居ないな。場所変えるか。)
シグは、岩山には敵がいなくなったことを確認して、岩山を最速で駆け抜け、森林地帯の方に移る。
AGIのステータスが上がっているため、【魔物の森】の時よりも断然早く走れていた。跳躍力や加速力も上がっている。
森林地帯に入ると、シグは、気配を感じた。
たくさんの敵がいるような気配だ。
その気配は予想通りで、入った途端に、複数の魔法がシグを目掛けて、木の裏や草むらから飛んでくる。
(まじか、やばい。)
全反射神経を集中させ、右にずれてかわそうとしたシグであったが、2つの炎の球に命中する。
シグのHPバーは、6800から4100に下がった。
そして、木の裏や草むらから現れたのは、8人のプレイヤーだった。
そのプレイヤー8人は、俺の事を見て、武器を構えている。
(そうか、別にチーミングダメとはルールにないから、フレンド同士で一緒に戦えるのか。まぁでも、探す暇が省けていい。)
「敵は、魔法銃だ!!近距離勢で行く、遠距離勢は援護を頼む。」
銃を構えているシグを見て、リーダーっぽい男がそう仲間に叫んだ。
そして、その指示通りに、槍、両手剣、剣盾を持った3人のプレイヤーが突っ込んできた。
(このまま、3発ずつを当てたところで、9発、リロード時間を入れると、27秒。に対して3人が間合いにはいるのに約推定5秒。あれを使ってみるか。)
「白撃竜の閃き」
そう。それは、《白撃竜リヴァエ》戦において、獲得した新しい魔法だった。
効果に1分間の火力上昇と書いてあったので、試しに使ってみた。
シグは、突っ込んできた3人の中で、1番先頭を走る槍を持つ男に構えて撃つ。
撃ってみると、銃口の手前に発動された白い魔法陣を通り抜け白いレーザーとなった銃弾が、発射される。
そのレーザーは、シグにとって少し思い入れがある。白撃竜のレーザーと同じだからだ。
銃弾は、右に避けようとした槍使いの顔に当たって、槍使いは白い粒子となった。
元のダメージである2158ダメージが、1分間、5倍となるために1万を超えるダメージをくりだせる。
その後残りの7人は、槍使いが一発でやられたことを恐れて、散開したようだったが、隠れている敵も、何とか避けようとする敵も、全てシグによってヘッドショットを食らわせられて、全滅した。
1人は、後ろに隠れていたのに、銃を持つ右手を後ろに向けて照準を見ずに顔を射撃されて、1人は、魔法による速度上昇で加速したのに顔に射撃されて、シグの射撃技術に完全に圧倒された1分だった。
全員、「何だこの化け物は……。」とつぶやいてこのフィールドを去っていった。
1分の中、8発で8キルを得たシグだった。