一目惚れとエントリー
【繁栄の都市エディン・エレン】の真ん中にあるとされる宮殿を正面に2人は、進んでいく。
すると、プレイヤーが溢れかえっている場所にたどり着いた。
その場所はものすごく広い広場で、たくさんのテントや、カーペットが置かれていて、商品が陳列している。
軽く5000人くらいの人がいる。
(これが、マーケット市場ってやつか。)
シグとイチヤは、目を合わせた。
「シグ、1回解散して、30分後にここにまた集合しないか??お互い、欲しいものとか見たいものが違うだろうし。」
「わかった。ならまたここで会おう。」
シグとイチヤは、お互い手を振って1度別れる。
そして、シグは、マーケット市場の中を歩き始めた。
(欲しいものとか特にないしな……。)
マーケット市場は、約6畳の区画を借りることによって、主に武器、装備品、ドロップ品などのアイテムを売ることが出来る場所である。
当然、値段などを決めるのは売り手の自由であり、取引も両者合意で自由にすることが出来る。
マーケット市場は、このゲームの中の3つの街にしか存在しない。
「ポーション売ってまーす!!」
「精錬値Aの《シャープナイフ》など、剣や短剣売ってまーす!!」
様々な呼び込みが行き交う。
シグは、満員電車や渋谷のスクランブル交差点みたいな人がごちゃごちゃしている小道を歩きながら、陳列するアイテムをうっすらと見ていた。
小道のやや中心にいるため、左右前後の人の影響で、道のサイドに並ぶマーケットは少ししか見ることが出来ない。
そんな満員電車状態に萎えたので、1度マーケット市場の外れに出ることにした。
外れに出てみると、人数はだいぶ少ない。
外れにも様々なマーケットがあった。
そんな中、通り過ぎようとしたひとつのマーケットを出店している女の子から声をかけられた。
「君、武器は何??」
顔的に同年代と予想できる女の子の周りには、木でできた机が並べられていてたくさんの剣や杖が並んでいる。
このゲームには生産職と呼ばれる、武器を作る鍛冶や調合して回復アイテムなどを作る合成などを行うスキルを持つプレイヤーが存在する。
ゲーム内のクエストやストーリークエスト、モンスターからドロップする武器よりも、生産職の人達が作る武器の方が圧倒的に強いのだ。
「魔法銃だよ。」
シグは、話しかけてきた女の子のマーケットの前で1度足を止めた。
「魔法銃は……。」
女の子は、木でできた机に魔法銃を並べてないことを確認して、ウィンドウを開いて、アイテムボックスを確認している。
(俺の初期装備である《ノーマルガン》もそろそろ替え時ってやつか。でも結構かっこいいし、お気に入りなんよな。)
「あっ、あったー。」
女の子は、アイテムボックス中からお目当てのものを見つけて、シグの前に召喚した。
魔法陣によって召喚されたのは、漆黒の大型な大口径のスナイパーライフルのような魔法銃だった。
(待って、なにこれ!!カッコよすぎる……。まじかよ。全長約150cm。見た目は言うならバレットm82って感じか。かっこいいー。)
自分の好みの銃に似ていた銃に、シグは興奮を抑えれない。
「おっ、お気に召したかな?かっこいいでしょ?結構自信作。ベースは【東方の街アインセンク】で0.001パーセントで出現するストーリークエスト《東方の狙撃手》のクリア報酬の《ブレイク・ノヴァM1000》だよ。基礎攻撃力は1040で精錬値はOV1。とりあえず、この私が作ったんだから最強よね。」
最後の方は、何を言っているのかよく分からなかったが、とにかく強いということがわかった。
その銃が欲しくて仕方がないシグは、女の子に聞いた。
「ちなみに、それいくら?」
「そうね……。いくらなんだろう。これ、多分世界に配信したらオークションでものすごいことになりそうだけど、なんかあんた気に入ったから、1000万リアで売ってあげるよ。」
(1000万リア……。)
想像よりも遥かに高い金額に、興奮が収まる。
シグは、ウィンドウを開き所持金を確認したが、約10万リアしか持っていなかった。
「すまん、まだ始めたばっかでお金ないから買えないわ。」
少し悲しい顔をされた、女の子は顔を明るくして、シグに言う。
「まぁ、君が買えるようになるまで残してやっといてもいいよ。だから1000万リア集めてきて。フレンド申請送っとくね。」
ウィンドウでフレンド申請が送られてくる。
名前は、《日和・ビヨリ》というらしい。シグは、承認を押した。
(変な名前してんな。)
「じゃあ、1000万リア集まったらまた来る。」
「はいよー、連絡してねー。そうそうたまんないと思うけど。えーっと、シグ・ザウエル君……。」
日和は、ウィンドウで、名前を確認してそう最後につぶやく。
「おう。」
手を振りあって別れ、シグはすぐイチヤとの再開場所に向かった。
約束の集合時間になったからだ。
「イチヤごめん、遅れたわ。」
シグが、再度満員電車のような小道を戻って着いた頃には、集合時間より5分すぎていた。
「やっと来た、って言いたいとこなんだけど、俺もいまさっき着いたんだよね。それで、いいのあったか?」
「あったんだけど、金がなくてな。」
「まじ?奇遇だ。俺も。」
どうやら、イチヤも欲しいものが金が足りなくて買えなかったので、意気投合し、シグとイチヤは稼ぎ方を考え始めた。
考えていると、シグは、目線の先に打開策になるようなポスターを見つけた。
『第14回バトルロワイヤルで勝った俺はisekai最強になった件』エントリー受付中!!!!!!1位はなんと賞金1400万リア!!!!!!
(ラノベのタイトルみたいな大会名だな。でもこれで勝てばあのバレットM82似のやつが買える……。)
「イチヤあれに出ないか?」
シグは、例のポスターに指をさして言った。
「シグ。受付行くぞ!!」
見た瞬間、イチヤはそう言って歩き出した。
そうして、シグとイチヤは、次の日に行われる『第14回バトルロワイヤルで勝った俺はisekai最強になった件』にエントリーするのであった。
補足として、これはシングルで行う『isekai』の日本サーバー内において1番大きな大会である。
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イチヤ・カイ
Lv.79 槍
スキル 《初級槍使い》、《速度槍の心得》、《両手持ち》、《敏捷怪力》
魔法 《三段突き》、《縮地》、
HP―――12000 MP―――1800
ステータス
STR―――56
AGI―――142
INT―――19
VIT―――33
DEX―――103
DEF―――0
装備
《武人の軽装》
ちなみにこのゲームの大会名は全部ラノベタイトルです(๑•̀ㅁ•́ฅ
第22回パーティから追放されない俺の冒険ライフ
など……。