だんだん、有名に……
このゲームには、主に世界チャットと呼ばれるチャットが存在する。このチャットは、ゲーム内のウィンドウで確認又は発信することが出来る。
世界チャットでは運営側から、強力なボスモンスターが撃破された時、その撃破したプレイヤーが記載される。
昨夜、世界チャットを見ていたプレイヤー達は、ある運営からのチャットに目がいった。
『プレイヤー レベル28 シグ・ザウエル 《白撃竜リヴァエ》撃破。』
最初これを見た各プレイヤーは、明らかにおかしいことから、運営のミス、バグや、チートによる撃破などと考え至ったが、これまでにこの運営からのチャットでミスやバグが1件も無いことと、チートだった場合表記する前にBANされていることから、これが本当の情報だと考え始めた。
ただ、おかしいと思うのは、正しいのだ。
なぜなら、まずレベル差である。シグと名乗るプレイヤーはレベル約30という初心者レベルに対して、《白撃竜リヴァエ》は上級者でも倒すのが難しいレベル156である。これは不可能としかいいようがなかった。2つ目に、これがソロ撃破ということである。ボス戦というのは、本来4人のパーティを組んで行うものなのである。
このふたつを考慮した場合、実質的にこのシグと名乗る者が行ったとされる《白撃竜リヴァエ》撃破は不可能なのだ。
このシグ・ザウエルという初心者による《白撃竜リヴァエ》撃破は、アイチューブと呼ばれる動画投稿サイトにおいて世界に拡散されたのであった。
シグの《白撃竜リヴァエ》撃破から一日がたった。
撃破をしたシグ(詩草冴斗)の日曜日は、討伐の疲れからゲームをログアウトして寝て過ごしていた。
そして、学校から帰ってきた今、ゲームにログインしている。
シグがログインしたのは昨日ログアウトした《白撃竜リヴァエ》を倒した【魔物の森】だ。
ログインすると共にシグの元に、1本の通知が、半透明のパネルとして映し出された。
通知は、一日目に色々教えてくれたイチヤ・カイからのチャットだった。
『シグうううう やっとオンラインになったな 会えない?【始まりの街ヴェネラ】で』
チャットは、4つのメッセージで送られてきた。
(一日目以来だな。久しぶりに会うか。)
『おけ 今違う 場所にいるから 向かうわ』
会うと決めた、シグも4つのメッセージで返す。
『おっナイス 時計台の前の銅像で会おう』
シグは、激戦をくりひろげた【魔物の森】を後にして、【始まりの街ヴェネラ】に向かった。
【魔物の森】に来た時は約30分かかったが、AGI(敏捷)のステータスが上昇したことにより行動速度が早くなり約15分で到着した。
【始まりの街ヴェネラ】の入口である門をくぐると、今回の冒険の満足感がシグの心を満たす。
そしてシグは、【始まりの街ヴェネラ】の中心にある現実の渋谷のハチ公のような存在である、時計台の前にある謎の銅像に向かった。
時計台の前にある謎の銅像に着くと、たくさんのプレイヤーがいて上手くイチヤを見つけることが出来なかった。
しかし、シグの耳に、聞いたことのある声が入っていく。
「シグーー!!こっち!!」
イチヤの声だ。
声のした方向をむくと、イチヤらしき人物が手を振っていた。
足を運んでみると、イチヤで合っていた。
「久しぶりだな。シグ。」
「おう。久しぶり。なんか前と格好変わったな、イチヤ。青い甲冑着てるじゃん。カッケー。」
(かっこいいな、青い甲冑。俺もあんなのがいいわ。)
シグは、気に入らない着物に少し愚痴を思いながらも、イチヤの新しい装備をほめる。
「お前も、着物に変わってる。」
久しぶりに再会した2人は、元々同じいわゆる初期装備だったのが、装備が変わったことについて触れ合った。
そして、イチヤは、「あっそうだ!」という何か思い出したような声を上げて、シグの方を軽く叩いた。
「お前、有名になってたやん。アイチューブとかで。白撃竜倒したんだろ?普通にすごい。」
全く言っている意味を理解できないシグは、「ん?」という顔をして、イチヤに聞く。
「どゆこと??」
「やっぱ俺の予想当たってるな。知らなかったか。世界チャットっていう全世界で話せるチャットに、強いボスモンスターとか倒したら名前が乗るんだけど、シグの名前が乗ったんだよってこと。」
シグは、自分がなぜ有名になったのかは、全く分からなかったが、《白撃竜リヴァエ》を倒したことがチャットに上がって、それをほめられているということに少し照れる。
「本当にだるかったんだからな?《白撃竜リヴァエ》倒すの。聞いてくれよ……。」
「後で聞くって。とりあえず今日は要件があるから、呼んだんだ。」




