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第96話 ディートの尋問を聞いていよう

 そこで、ディートが口を挟む。


 「すみません。エルマーさん達が困っているようので、ちょっとよろしいですか?」


 「なんだい?お嬢ちゃん。」


 村人の一人が声を掛けらついそう答えてしまう。


 「あの、サシャさんが村に来た時、彼の腕を見た人は居ないのでしょうか?」


 ディートは村人達にそう問いかける。


 「うーん、サシャが初めて村に来たのって、秋だったよな?」


 「ああ、六、七年位前だったな。その頃はもう長袖で生活してたからな。誰かサシャの腕を見たことはあるか?」


 「確か、隣のナゼルのところに息子が生まれた年だから、七年前だな。俺は見ていないな。火傷をしたのもその年の冬だったしな。」


 「そうだ。そうだ。サシャが来てすぐ怪我の騒ぎがあって大変だったな。」


 そんな当時のことを話しをしながら、同時のことを思い出していたが、誰一人としてサシャの腕を見た者はいないようだった。

 その間、サシャさんは自分が発した発言が誘導ととられないようにか、あえて黙っていた。


 「はっきりしたことはわかりませんでしたな。でも、サシャさんが彼らの仇と言うと証言も出ませんでしたね。まだ、お尋ねしますか?」


 結果、特に新たな証言も出なかったことにアシルさんそう言ってきた。

 アシルさんにしてみれば、サシャさんに問題ない方がいいだろうからな。

 早くこの件を終わらせたいのだろう。


 「はい、申し訳ありませんがもう少しお付き合いお願いします。では、次の質問をさせていただきます。」


 「ふん、まだ何か聞くのか。」


 「ええ、もう少し、お付き合い願いますね。では、次にサシャさんよろしいでしょうか?」


 「お主も俺を疑っているのか?」


 「いえ、ただお互い疑念を持ったままというのは、すっきりしないでしょう。ですから、質問に答えて頂き、お互い納得して頂ければと思ったしだいです。」


 「まぁ、よい。それで疑いが晴れるなら、何でも聞け。」


 「では、サシャさんはここに来るまでにどこにいたのでしょうか?」


 「俺はここの村に厄介になる前は、受け入れてくれる村や町を探しておったのだよ。元はザルメル伯爵領の港町に生まれ、そこで人足をして居ったのだ。」


 俺はそれを聞いても地理が判らないので、ディートは質問中なので、次に地理に明るいパルマにどの辺りなのか小声で聞く。

 パルマはイオナの街から更に東方に進んだペルエ大河川と呼ばれる川沿いにある街だと教えてくれた。

 ちなみに、エルマー兄弟の出身のアダナウナー侯爵領は俺達が王都に入った街道沿いにある領地とのことなので、かなり離れているとのことだ。

 

 「それがなぜ、放浪することになったので?」


 「人足組合の争いでな。俺が所属していた組合が争いに敗れて、組合のみんなが、仕事場を追われた。よくある話だよ。」


 サシャさんは面白くなさそうに、そう昔話をする。


 「そうなのです?普通、人手も欲しいですし、追い出されるのではなく、普通そういった抗争後は勝った方に吸収されるのでは?」


 ディートはそう聞き返す。

 会社の派閥争いとかでも、負けたトップは追い出されるけど、使える有用な人材は抱え込んだりするよな。

 俺はそんなことを考えながら、二人の話を聞く。


 「ふん、仕事がなくなって紛争が起こるんだ。負けた方は皆追い出されるんだよ。」  


 縄張りを大きくするための島の争いでなく、仕事が無くなった影響での争いなのか?

 それでも、下っ端の労働力は貴重だろうに、全部追い出すのか?


 「それでも、すべてを追い出すというのはおかしくありませんか?」


 「知らん。そう言う決まりで闘争が行われていたんだよ。」


 サシャさんは詳しく説明せず、その辺は濁してきた。


 「そうですか。では、どうやってすべての組合員を把握できるのでしょう?それぞれの人足組合はそれなりの数が所属しているのですよね?」


 「ふん。どう把握しているかは組合ごとに違うから詳しくは言えんな。」


 「皆、それぞれの人足組合で、印があるのではないのですか?」


 「なんだと?」


 「例えばですね。腕に同じ印を彫り込んでいるとかでしょうかね。例えば、剣に蛇が巻き付いたような……。」


 「何をふざけている。そんな訳ないだろ。」


 サシャさんは大声でそう言って否定します。


 「そうでしょうか?私はイオナの街で商人をしている両親がおりますので、ペルエ大河の河川舟運業者にも懇意な方がおりますので、詳しいのですよ。」


 「くっ、この女の言ってることは嘘だ。現に組合にいた俺がそんなことはないと言っているんだぞ。」


 サシャさんはそう言って、ディートの言葉を否定する。 


 「見苦しいですよ。私がそんな噓を言う必要はないのではないでしょうか?」


 「そ、それは、そこの冒険者を冒険者同志庇って……。」


 さらにサシャさんは言い訳を重ねようとしたが、ディートに殺気を放った表情で睨まれ黙り込んでしまう。


 「エルマーさん、ライマーさん、どうします?こんな男を歯牙にかけ、父上の名誉は回復させますか?反省しているかはわかりませんが、今は堅気として生活してますよ。」


 「すみませんが、敵を討つ、だた、それだけのためにこうして冒険者を続けて来たのです。仇を取らせていただきます。」


 「はい、兄の言うとおりです。」


 「そうですか。アシルさん、村の方々もそれでよろしいでしょうか。異論があれば今のうちに。」


 ディートはそう言ったが、アシルさんも村人達も黙ったままだ。


 「では、パルマ。予備の剣をサシャさんに渡してあげなさい。」


 それを見て、ディートはパルマにそう命じる。

 パルマは馬車に戻って、俺が渡した鞄から剣を取りだすと、それをサシャに渡す。


 「お前ら、怪我をしてる俺がこいつら二人相手にしたら、勝てるわけないだろ。なぁ、誰か助けろよ。」


 サシャさんはそれを受け取らず、周りにそう言い放つが、賛同者は現れない。

 パルマはそれを見て無理やり、サシャさんに剣を握らす。


 サシャが剣を握ったのを見て、エルマーが懐から伯爵家からの仇討ちご赦免状を取りだし、読み上げる。

 そうして、エルマーとライマーも剣を構える。

 騎士としての手ほどきと、冒険者をしていただけあって、構えは立派である。

 サシャもしぶしぶ剣を構えるが、足を骨折しているので、こっちは構え以前である。

 勝負は一瞬で着いた。

 そして、エルマーさんはサシャさんの髪の毛の一部を剣で斬るとそれを証拠として懐に納める。


 その後は村人はサシャさんの死体を馬車に載せると村に戻る。

 アシルさんとエルマー達もアシルさんの商売のため村に一緒に向かう。

 エルマー達は村長さんに仇討ちの事後処理の書類を渡したりして、アシルさんの護衛が終わった後、仇討ちの報告のため、アダナウナー侯爵領へ戻るそうだ。

 アシルさんはサシャさんの替わりになる鍛冶師を街で探してなるべく早く連れて来ると言っていた。


 俺達は騒動を避けるため、ここで彼らと別れることにした。

 その道すがら、ディートに俺は聞いた。


 「なぁ、サシャさんはなんで過去を素直に語ったのだろう。嘘を言っていればばれなかったよな?」


 「多分ですけど、咄嗟の嘘に自分の知らないことを話せなかったのかと思いますよ。本当のことを話せば、誰もおかしいとは思いません。それにここはペルエ大河と離れています。ペルエ大河の人足業を知っている人はいないことに賭けたのでしょう。」


 「確かに知らないことを話して、嘘がばれるより、本当のことを話して、その中の真実を知られないことの方が可能性は高いか。」


 「多分ですけどね。それとあの兄弟もこれから大変だと思いますよ。」


 ディートはそう言って、彼らが進んだ方向を見る。

 俺はそれには習って、同じ方向に目を向けた。

 こうして、後味の良くない仇討ち騒動は終わったのだった。

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