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第95話 揉め事の立会をしよう

 「面倒事かな?それなら避けたいのだけれど。」


 一応、俺は正直に避けられるなら、避けたいと思いそう聞き返す。


 「面倒事と言われればそうなるでしょうかね。私はエルマーそして、こっちは弟ライマーのと申します。」


 「こっちは、もう名前を知ってるだろう。それで、どんな用件で俺達を引き留めた?」


 「そこのサシャとやらに、腕を見せて貰いたいので、その時の証人として、サシャさんと旧知の仲でない人物がここにいて欲しいのです。」


 サシャさんの腕を見てどうすんだ?

 俺は疑問に思い、サシャさんの方を見る。

 サシャさんは額に汗を浮かべ、うつむいている。

 うん、何かあるようだな。

 さて、どうしたものか?

 今度は、俺は仲間の方を見ると、すると何か事情を察したのか、ディートとミサが目線を合わせ、うなずく。

 二人とも、どうやらある程度事情を察したらしいな。

 よくはわからないが、頷いてきたということは、受けろということなのだろうな。


 「よし、いいだろう。ただ、できれば手短にすましてほしいな。」


 「はい。ありがとうございます。」


 エルマーはそう言うと、冒険者の二人は俺達に頭を下げる。

 そして、二人はサシャさんの前に進み出る。


 「な、なんだ。お前ら。」


 サシャさんは怪我をして椅子に座り込んでいるため、二人に見下ろされるような感じになっているので、威圧されながらそう二人問いかける。


 「サシャさんは昔、アダナウナー侯爵領都プラウタにいませんでしたでしょうか?」


 エルマーさんは、それを無視するようにそうサシャさんに問いかける。


 「プラウタだと?昔のことなど覚えておらん。もう一度く、なんなんだお前らは、答えろ。」


 その問いかけにサシャはまともに答えず、再度、彼らに用件を問うてきた。


 「アダナウナー侯爵にお仕えしていた騎士、我らが父、バール・グスキらが警護する一団ごと馬車を襲った記憶はないか?父上はその時殺されたが、その時の生き残った騎士たが証言した頭目の外見が、この男の外見、赤髪に右目の下に三つの黒子が並んでいるというのに一致しているんだ。」


 エルマーさんはそう言った。

 今の話からすると二人は騎士の息子、準貴族のようだな。

 すると、アダナウナー侯爵家にあらためて登用されるために仇を探しているといったところか。


 「俺がそんな事するはずがないだろうが、だいたい、俺に似た奴なんてそれこそ五万もいるだろ。他に証拠はあるのか?」


 サシャさんはそれを聞いて、強く否定する。

 そして、それ以外の証拠があるか問うてきた。


 「証拠か。なら、お前の腕を見せて見ろ。馬車を襲った一団は皆、腕に剣に蛇を纏わせている刺青を入れているはずだ。」


 エルマーさんはそう言って、サシャさんに腕を見せるように要求する。

 

 「うん、腕か?ほれ。」


 そう言って、サシャさんは右腕をまくって見せる。

 腕は鍛えられているが、まっさらで特に刺青を消したような跡はない。

 エルマーはそれに驚いたが、まだ片方の腕があると気を取り直し、もう片方も見せるように要求した。


 「そ、そんな。次は左腕だ。」


 「こっちは見せても納得してくれるかわからんが、ほれ。」


 そう言って、今度は左腕をまくる。

 こちらの腕は火傷で爛れていた。


 「こ、これは。」


 「俺が鍛冶の修行中、ちょっとした不注意でな。だが、刺青跡もない綺麗な火傷傷だろ。納得は出来んかもしれんが、これでいいかな。」


 困惑する二人をよそに、左腕の火傷跡を見せてから、まくった長袖を元に戻しながら、そう言った。

 確かに、焼けただれた後はピンクの爛れ傷になっており、刺青跡があるようには見えない。

 さて、これで二人の攻め手はなくなったみたいだけど、これで諦めるのかな。

 そう思い、二人の兄弟に目を遣る。


 二人は困った顔をして、お互い顔を見合わせている。

 おや、ここで本当に攻め手を失ってしまうのか?

 サシャさんは二人の反応を見て、少しホッとしたような顔をしていた。

 うーん、何かありそうだけどな。

 あの二人は完全に困ってしまっているようだし、さてどうなるのかな。


 そして、沈黙が続いているところにアシルさんが言葉を発した。


 「おい、お前ら、どうするんだ。商売の相手の村人に汚名を着せたんだぞ。せっかく、見どころがありそうだからと声を掛けたのにまったく。」


 そう言って、冒険者の兄弟を責める。

 アシルさんにしてみれば、自分が雇った冒険者が、お得意先の村人を犯人扱いしたのだ。

 しかも、その証拠を提示できずにいる。

 このまま、自分がそれを見逃せば、自分にも、その責めが及ばないとも限らない。

 なので、アシルさんとしては、二人を責めるしかないのだった。


 また、それに呼応するように、手伝いに来ていた村人達も、仲間であるサシャが罪人扱いされていたのをよく思っておらず、口々に兄弟に文句を言う。

 だが、兄弟もただ、黙ってそれを聞いている訳にも行かない。

 このまま周囲の不満が高まれば、今は口だけの攻撃も、ちょっとしたことから実力行使に出てこないとも限らない。


 「待ってくれ、まだ、サシャという男があの時の犯人でないと決まってはいない。火傷の跡なんて、皮膚を削いでから、火傷を負えば傷が綺麗なのも説明はつくはずだ。」


 そう言って、サシャがまだ罪人である可能性があると訴える。


 「だが、それを証明できないのであれば、サシャさんは犯人とは言えないだろう。なにか証明できるのかね?」


 兄弟を非難している連中の中では、一番学があり、口が立つであろう、アシルさんがそう告げる。

 アシルさんにそう言われて、兄弟は反論が出来ずにいる。


 さて、このままあの兄弟が罪人をでっち上げたということで捕まってしまうのか?

 そうなると、下手したら村で私刑に会う可能性だってある。

 サシャさんのあの様子は何かありそうだから、恐らく無罪だったということはないだろう。なので、その証拠を兄弟が付きつけることが出来るか?

 そうなったらなったで、サシャさんは足を怪我していて、しかも、相手は二人、結果は目に見えているよな。

 そのどちらかになりそうだが、どっちに転んでもあまりいい結果になりそうにないがどうなることやら。  

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