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第93話 村で修理を頼もう

 村に着くと、村の入口を警備している男に声を掛け、事情を説明する。

 男はアシルさんの名前を知っていたので、話はスムーズに進んだ。

 そして、警備をしていた男に案内されながら車軸の予備がある村長宅に向かう。

 その間、アシルさんのことや俺達が王都にいたことを聞いて、話好きなのか、途中もいろいろ聞いて来た。

 村長宅に着くと、警備の男がノックをして先に入り、あらかじめ村長に説明をしてくれた。

 アシルさんがこの村に来て貰っている行商人だったので、問題なく話は進むだろう。

 村長は警備の男と話が終わって出ていった後、俺達が通される。


 「ようこそ。わしはこの村の村長のハーゲンという。」


 俺達を見ると村長が俺達に自己紹介してくれた。


 「初めまして、俺は冒険者のギリーと言います。」


 「初めまして、私はイオナの街のディートと申します。同じく冒険者をしています。よろしくお願いします。」


 俺とディートもそれに応じる。

 そして、村長が話を進めて来た。


 「わざわざ、アシルさんのために協力いただいてありがとう。私からもお礼を言う。」


 「いえいえ、事情は大方聞いたようですし、車軸と修理できる職人を寄こしてくれませんでしょうか?案内は我々がします。」


 「それは有難いし、我々もすぐにそうしたいのですが、実は私の村の職人が足を折ってしまいまして、どうしたものかと考えております。」


 うん、俺の持っている薬を使えば治せるけど、貴重だし、そんな物を持っていると知れたら、騒ぎになってしまうから出せないよなぁ。

 さて、どうしたものか?と考えていると、ディートが話を進めてくれた。


 「でしたら、職人が指示をして頂いて、私どもと村の修理を補助して頂くというのはどうでしょう?」


 「それしかないかな。ただ職人のサシャはちょっと頑固者でな。まずは説得をしてみるか。」


 村長のハーゲンさんは、そう言うと、俺達についてくるよう言って、サシャさんのところに向かう事にした。

 行く途中、サシャさんについてハーゲンさんは簡単にどんな人物か説明してくれた。

 八年くらい前にこの村にふらふらとやって来て、一昨年引退した先代の鍛冶屋に弟子入りしてから、ずっとこの村で仕事をしているそうだ。

 普段は気立てがいいが、仕事の時と酒が入ると途端に頑固者になってしまうそうだ。

 上達が早く、サシャさんは鍛冶屋とは名ばかりで、村での簡単な左官仕事や大工仕事もしており、今ではもう一人前に仕事自体は出来るが、意固地になりやすいところがあるので、今回のような説得は大変だと言うことだ。

 


 そんな話をしながら、向かっていいると、家の前に着いたようだ。

 ハーゲンさんは、ノックをしてから、声を掛ける。


 「村長のハーゲンじゃ、サシャ入いるぞ。」


 そして、中の返事を待たずに扉を開ける。


 「なんだ。村長、尋ねてこられても、この通り仕事は出来んぞ。」


 そう言って、ベットの上に寝ているサシャさんは半身だけ置き上げり、添え木で固定している右足を軽くたたいて見せる。

 そんなやり取りを見ながら、俺達の扉を潜り、挨拶をした。 


 「うん、見かけない面だな。」


 「ああ、実はこの村に来てくれている行商人のアシルの馬車がだな……。」


 ハーゲンさんは、そう言って俺達がここに来た事情と、俺達のことを紹介してくれた。

 見張りの人もハーゲンさんもだが、俺達抜きで話をしているけど、この村ではこれが普通なのか?

 それとも、道すがらいろいろ話をしてきたし、ただ単に話好きなのか?

 まぁ、勝手な話が進んで行くので、楽でいいけど。


 「だがな。微調整までは素人にできるか?車輪と車軸の接続がずれて、またこの先で壊れたりしたら、アシルさんの金銭的負担は大きいぞ。」


 「かといって、修理せぬ訳も行くまい。サシャ頼む。」


 「うーむ。だが、中途半端な仕事はしたくねぇんだが。」


 「足の骨が折れて歩けないだけなのだろ。なら、調整だけはサシャさんがやるというのは、どうだ。」


 サシャさんが悩んでいたので、俺がそう提案してみる。


 「そうは言うが、細かく動かなきゃいかんのだ。右足がこの通り伸びきっているので、そんな作業をするのも一苦労だし、時間がかかり過ぎる。」


 「では、椅子かなにかにに座って、私達達が動かして調整を手伝うというのではいかがでしょう?」


 悩んでいるサシャさんにディートがそう提案した。


 「まぁ、それなら、横になっての作業は左足で動けばできなくはないしな。」


 サシャさんは、ディートの提案に少し考えてからそう呟く。


 「おう、やってくれるか。なら、道具をまとめておけ、その間に村の手伝い衆に声を掛けておく。」 


 ハーゲンさんは、サシャさんの言葉を聞いて、すぐさま必要な人員を確保しに動く。

 気が変わらないうちに話を進めたいのだろう。

 俺達はここに取り残される形になった。

 しまったな。ハーゲンさんと一緒に出ていって、どこかで時間を潰してれば良かったな。

 ただ立っていても仕方ないから、サシャさんの準備を手伝うか。


 「あー、サシャさん、なんか手伝えることがあれば手伝います。」


 「そうだな。すまんが急ぐので俺に肩を貸してくれ、なにぶん動くのがきついのでな。」


 「道具なら、場所を言って頂ければ、俺達が取てきますよ。」


 「馬鹿もん。道具はわしの命だ。他人に触らせられるか。おぬしだって、見知らぬ他人に武器を触れせられんだろ。」


 うん、別に俺はそこまで武器におも入れはないけどな。

 そんなことを言ってヘソを曲げられたら困るので、相手の言うとおりにすることにする。


 「わかりました。では、肩を貸します。立てますか?」


 「当たり前じゃ。ひとりで生活をしておるのだ。立つくらいはできるぞ。」


 そう言ってサシャさんは、ベットから立ち上がり、俺の肩に手をやる。

 うん、ちょっと臭いなこのおっさん。

 俺は顔をしかめながら、サシャさんの言うとおり、移動して仕事道具のところに移動し、意替えを手伝うことになった。

 着替えの間は、ディートは部屋に一緒にいる訳にも行かず、水を井戸から汲み上げて来て貰ったあとに、家の外に出て待つことにしてもらった。

 着替える前に、俺が体を拭いてやり、サシャさん一人では着かえづらいところを手伝った。

 まだ、頭の汗の匂いとか気になるが、先程よりだいぶ臭いがマシになったサッシャさんに肩を貸し、外に出る。


 外で立っててもらうのもお互い大変なので、サシャさんに許可を得て、食堂の椅子をディートに取って来て貰う。

 サシャさんにそこに座って貰い、俺達は村長たちが戻って来るのを待つことにした。

 しばらくすると、数人の男を引き連れて、馬車と共に村長が戻って来る。

 俺達の馬も引き連れて来てくれたので、このまま出立ができそうだ。

 村人とお互い自己紹介をすませると、サシャさんと村人は馬車に乗り込む。

 そうして、俺達の先導で、馬車の修理に向かうのだった。 

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