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第87話 マリーさんと公爵家に行こう

 公爵家に今回の件でいろいろ手を煩わせていたことを聞かされたため、マリーさん達が帰ってから、俺達は公爵家の執事長のカルステンさんにお礼を伝えることにする。

 宿の従業員に手紙を届けて貰うことをお願いし、可能なら返事を貰って来るように頼む。

 一応、ディートに確認し、公爵自身への手紙の返事ではないので、貰えるならすぐに貰いたいと伝えても平気だと確認は取ってお願いをしている。

 幸い、すぐに返答が貰え、五日後に会ってくれるので、迎えの馬車を寄こしてくれるとの返事が貰えた。

 一週間以上かかったら、予定が狂うからどうしようと思っていたが、そこは大丈夫だったので安心する。 


 そして、次の日からは、マリーさんは平パンではなく、手間のかかる発酵パンを揚げたりしたものを持って来てくれるようになった。

 俺も地球での知識を総動員して、出来る限り助言を行う。

 最初は油の温度が高く、焦げ付いて苦みを感じたり、生地が厚すぎて油っぽくなりすぎて重い感じがあったりと不満があったが、元から料理の才能があるのか、マリーさんはすぐにコツを掴んで上達していった。

 最初に試作を持ち込んで、そこから助言をするようになって、三日目にはすでにそれなりの美味しいパンが作れるようになっていた。

 そうして、一次発酵のパン生地を揚げたものは、チーズや味付けした肉、野菜を包み込み、変わり肉まんの揚げ物風な物いくつか作られた。

 二次発酵したパン生地はなにも練り込まずに、そのまま上げて、粉砂糖や炒った丸豆と呼ばれる大豆に似た豆を粉にして粉砂糖と混ぜて、きな粉状にしたものを振りかけたりして揚げパンのような物が作られた。

 そして、今日もみんなで味見をする。


 「同じ小麦粉で作ったのに、発酵の違いで随分食感も、見た目も変わるのですね。」


 ティアが、それぞれを味見しながら、そう感想を、漏らす。


 「だなぁ。どれも味がしっかりして美味いぞ。」


 リアは、味見用に細かく切り分けたパンを、次々に口に運び、そう言う。


 「この見た目がパンで甘いなんて説明を聞いて、少し変に感じたけど、食べると美味しいわ。」


 ミサは、揚げパンを食べると、そう感想を言い、残りの揚げパンも口に運ぶ。 

 仲間中では比較的良いものを食べていたディートやパルマからも、美味しいとの評価を貰う。

 俺的にはまだ、いまいちな点もあるが、趣味や実益で作っていた菓子作りや食事づくりのため、さすがにこれ以上細かな改善点を口だけで説明できそうにないので、いろいろな菓子や料理を食べている仲間が合格を出したので、これでよしとする。


 「ところで、明日、公爵家の執事長のカルステンさんの所に行くのだが、マリーさんも今回作った料理を持って、一緒に行かないか?」


 俺は、マリーさんにそう提案する。


 「明日。カルステンさんのところにですか?」


 マリーさんが驚いたようにそう聞き返す。


 「ああ、シルビアさんもよく知っているようだったし、マリーさんも知っているのだろう。」


 「ええ、知っていますが、お姉様どうしましょう?」


 それを聞いて困ったようにシルビアさんに問いかけていた。

 いつもここに来ているから、大丈夫かと思っていたが、ちょっと急な頼みすぎたかな?


 「いいでしょう。ただ明日は私は別件があるので、マリーをここに置いて行くから、あとはお願いしていいか?」


 シルビアさんは少し考えてから、そう言って、俺達にマリーさんのことをお願いしてきた。

 公爵家からは迎えが来るので、道中に何かあるとは思えないし、問題ないだろう。

 そう考え、シルビアさんの提案を了承する。

 また俺達がカルステンさんのところに向かう理由についても、イオナの街のように菓子の店を出す話を下準備のためにしに行くと、しっかり伝えておく。

 マリーさんはそれを聞いてあらためて気を引き締めるような表情をしていた。

 シルビアさんは、マリーさんから聞いていたのだろう。この話をしても特に驚いた様子もなく、何事もないように話を聞いていた。

 その後、シルビアさん達に明日の予定を伝え、マリーさんが来る時間も確認し、少し雑談をした後、今日は別れることにする。


 その後、俺は仲間と少し話をしてから、俺達の馬車で作業を行う。

 俺の提案が一応了承が貰えたので、領都を出た後に作る予定だった、餡子を作ってみることにする。

 小豆は見つからなかったので、大きさも色も違うが似たような食感の豆を煮込んで作ってみる。

 甘い豆は想像がつかないなとは言われたが、まぁ、美味しければいいんじゃないかと言われたのと、あまり豆を食べたりしない貴族にだすなら、そこまで違和感を感じたりしないだろうと言われた.

でも、それって豆料理を貴族に出してもいいのかともおもったけど、料理で出すのでなく、菓子として出すなら問題ないだろうと言われた。


 うん、一応できたが、淡くピンクぽい白餡だな。

 味や食感は、餡子と言われて出されても違和感はないかな。

 逆に餡子に慣れてないなら、この色の方がお菓子感があっていいかもしれない。

 そして、俺はラングドシャを鞄から取り出し、それに餡を塗り付け挟み込んだ菓子にして、仲間のみんなに食べて貰う。

 塩で煮込んだ豆を食べ慣れていた彼女らには、やはり少し豆が甘いのに違和感があるようだが、それでも美味しいと言って貰えた。

 一応、みんなから合格が貰えたので、この餡子も持っていくことにする


 翌日、俺達はいつもより良い格好をする。

 そして、マリーさんも約束どおり来てくれた。

 マリーさんは、俺たち以上に良い恰好をしている。

 いくら、親戚といえど、貴族の令嬢が公爵家に行くのだから、そこはやはり、ちゃんとした正装でなきゃ、まずいか。

 そう考えるとマリーさんに昨日声を掛けたのは急すぎたね。

 送り届けに来ていたシルビアさんも、騎士の正装姿だった。

 シルビアさんもなにかイベントに出席するのかな。

 なら、忙しい時にわざわざ送り届けて貰って悪かったかな。


 そして、マリーさんと話していると、公爵家の馬車が迎えに来てくれた。

 もともと俺達の人数が多いので二台の馬車でむかえにきてくれたのだが、一応昨日のうちに俺達の他にマリーさんが伺うことも伝えておいた。

 ただ、カルステンさんからの反応が薄かったのがちょっと気になったが、俺達とシルビアさんの家が関わっているのをカルステンさんも知っていたのだろうから、そんな反応なのかなと納得することにした。

 俺とマリーさん、ティア、ディートで一台目に乗り込む。残りのメンバーで次の馬車に乗る。

 マリーさんも自分の作ったパンが評価されることになるのが判っているからか、少し緊張気味である。


 やがて、公爵家に到着する。

 前回のように、カルステンさんらが屋敷の前で迎えに出て頂いていた。

 カルステンさんは挨拶を済ませると、一度準備があると下がって行った。

 そして、別の執事と給仕に応接室に案内され、お茶を出される。

 しばらくして、そこで俺達はお茶を味わいながら待っていると、ノックがされ、カルステンさんの声がした。


 「お待たせして申し訳ありませんでした。入室させていただきます」


 俺達は無言で同意の意を示し、席を立ち、頭を下げる。

 今回は公爵家の執事長でも、公爵の代理として会うので、貴族に会うのと同様の礼節が必要になるのだ。


 そして、中に入って来る。

 気配としては三人程だ。俺達が多数で訪れてしまったので、それなりに人数を出してくれたのだろうか?

 相手が対面の席に座る。


 「今日はご苦労である。席につき、頭を上げてよいぞ。」


 向こうから、そう声がした。

 あれ、カルステルさんの声じゃないような。

 とりあえず、言われたとおり、席に着き、頭を上げる。

 あれ、王都であったことがある人だ。あ、公爵閣下だ。なんでいるんだ?

 そして、隣には何故かシルビアさんもいる。

 俺はただ驚いた顔をする。


 「驚いてくれたようであるな。ミヒャエル達を捕らえてくれたばかりか、今度は人攫いを捕らえてくれて礼を言う。お陰で我が派閥に巣食うゴミも見つけてくれたのだからな。」


 公爵閣下は、俺達の反応に嬉しそうな顔を浮かべ、そう言うと俺達に頭を下げてくれた。

 俺達はどう返答をすればよいかわからず、黙り込む。


 「ギリー様、申し訳ありません。閣下からは三日前に早馬で戻ると連絡を頂いたので、慌ててギリー様との面談の件をお伝えにしたのですが、その後閣下との連絡が上手くいかずに、直接お会いすることを伝えることが出来ませんでした。」


 カルステンさんはそう言って、俺達に謝る。

 いや、公爵閣下、喜んでいたし、絶対ワザと伝えなかっただけだよね。

 でも、さすがにそんなことは言えないので、カルステンさんの言葉を受け入れることにする。

 ただ、隣のマリーさんを見ると、彼女は既に知っていたらしく、涼しい表情で澄ましていた。

     

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