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第85話 宿で過ごそう

 訓練という名の模擬戦が終わり、その後もマリーさん達は相変わらず、俺達のもとに訪ねてきている。

 周りの貴族の子息、子女とも気軽に会えないから、俺達の所に来ているのだろうけど、よくも飽きないもんだな。

 そんなマリーさん達が来ると、うちの前衛陣が味を占めたのか。

 シルビアさんが一緒の時は、宿の裏庭で軽くて合わせをして貰っている。

 技能を抜きにしてなら、技量ではシルビアさんの方が上であるから、いい訓練相手なのだろう。


 最初はマリーさんやティア、ミサも付き合いで見学していたが、騎士団の訓練場でも見ていたからあそこより狭い場所での打ち合いなので、見る場所もそんなにある訳でないし、かえって邪魔になるくらいだから、早々に見学をやめ、部屋で話し込むようになっていた。

 俺も基本後衛だし、自分の実力確認のために前回は参加したなので、参加は見合わせていた。

 ただ、怪我した場合は治療をするので声を掛けるようにだけ言っておいた。

 お互い、それなりの実力があるので、その場でいないと間に合わないような怪我はしないだろうからね。

 ただ、女性陣のおしゃべりに加わるのも気まずいので、自室に戻ることにしていた。


 部屋での俺は、副管理者のさんから貰ったノートを眺め見ていたり、考え事をしたりしていた。

 ノートを眺め見てはいるが、まだ返答はない。

 これって、途中まで回答書いてくれたら、途中まで見れたりすんのかな?

 今日も、いつまでも変わらないノートを眺めていたら、部屋のノックがされた。

 俺はすぐさまノートをしまいながら、返事をする。


 「なにか用ですか。」


 誰かわからないので、一応丁寧に対応する。


 「マリーですけど、ちょっといいですか?」


 名乗った人物の名に驚いて許可を出そうと思ったが、さすがに十歳くらいとはいえ、貴族の女性と二人きっりになってはまずいよな。

 そう思いとどまり、返事をする。


 「なんでしょうか。ご用があるなら、そちらに伺います。」


 「いえ、でしたら、そこでお話をお聞きいただけませんか?」


 なんだ?貴族のお嬢さんを足しっぱなしにさせてもいいのだろうか?

 でも、いつ誰が来るかもわからない通路で話すのだ、きっと、立ち話で済むような会話なのだろう。

 俺はそう考えて、了承する。


 「わかりました。どうぞ、話をお聞かせください。」


 「では、単刀直入にお聞きさせていただきます。お姉様か、私を娶る気はありませんでしょうか?」


 は?シルビアさんは、まぁ、年の近いし、わからないでもないけど、マリーさんはさすがに若すぎるだろう。

 でも、なんで、そんな話になっているんだ?とりあえず、当たり障りなく断ろう。


 「申し訳ありません。私は平民な上、冒険者などという不安定なことをしております。とても結婚相手に釣り合うとは思えません。

 それに、私には既に結婚を決めている人がすでに三人おりますので、申し出はありがたいのですがお断りさせていただきます。」


 「まぁ、そうなのですね。それは失礼しました。でも、五人ではないのは意外ですね。」 


 やけにあっさり引き下がったけど、揶揄っているのかな?

 それに五人って、まぁ、そんな提案もあったけど、そこは振られちゃったからな。


 「揶揄われておられるのでしょうか。」


 「失礼しました。いえ、私自身の申し出については本気でしたのですよ。」


 私自身の?いやでも、心が五十歳過ぎのおっさんですから、十歳は無理ですよ。

 あと、シルビアさんの話の話は独断なのか?おそらく、家でいろいろ言われているであろう、お姉さんを気遣ってか?

 でも、ここは毅然とダメ押しをしておこう。


 「お心に沿えずに申し訳ありません。」


 「いえ、いいのです。どこぞの見知らぬ金銭的に余裕のある貴族か商人と結婚するよりか、ギリーさんのようなお金持ちの方がいいかと思っただけですから、ギリーさんは気にする必要はありません。では、失礼します。」

  

 そう言って、マリーさんは扉の前から去って行った。

 ふぅ、まぁ、この時代貴族の女性は家を立ち回させるための道具だろうからな。

 いろいろ不安もあるのは理解できるが、しかし、独断で十歳くらいの女性があんな立ち回りを考えなければならないなんて、俺の居た時代の地球じゃ考えられないな。


 その後、リア達が手合わせから戻って来た。

 幸いにして、大した怪我を負った者はいなかったが、それでも力が入ってしまったようで、いくつか小さな傷があったので、治療をする。


 「しかし、回復薬不要で傷を治せるのは良いな。」


 俺の治療行為を見て、シルビアさんが感想を漏らす。

 そう言えば、この間の訓練でも俺が治療に当たってたな。

 そこで、俺は質問をする。


 「公爵家の騎士団でも、回復士は貴重なのですか?」


 「うん、ギリー殿のような冒険者を除けば、回復士は普通教会に属しているからな。公爵家でも戦の時に高い寄付をして、同行を願う以外は、治療が必要な時は教会に行くことになる。」 

     

 「常時の貸し出しや、雇入れは出来ないのですね。」


 「できなくはないが、ちょっと一般的ではないからな。」


 「そうなのですね。」


 その後、マリーさんが持って来たパンを皆で食べて、感想を言い合う。

 やはり作り慣れているのか、日に日に味も良くなり、中に入れる材料も数が増えて行った。

 味の方も中に入れる餡の味付けの濃さをどのようなものにすればいいかわかって来たのか。安定して美味しいと思えるパンを作れるようになっていた。

 その後も、食べ物の談義や、戦いに談義をしてリ、換金等の進捗を聞いて、今日の訪問は終わる。

 マリーさんはあの後特に変わった雰囲気はなかったので、それで終わったと思っていた。


 だが、リアとパルマは一応警戒のため、探査を使っていたため、俺の部屋の前に一名反応があったのに気付いていた。

 そして、ミサ達に状況を聞いて、その反応がマリーさんだとわかり、俺は問い詰められていた。

 だが、特に問題になるようなことをしてないと思うので、素直に皆にその出来事について正直に話す。


 「そう言った話は、胸に秘めるべきですね。それくらい、察せられます。」


 「ですね。女性に対してデリカシーと言うものが足りませんね。」


 「だよなぁ。あたいだってそんな話他でされたらと思うと。」


 「だよね。」


 「ですね。」


 それを聞いて女性陣はそう反応を示す。

 そうだったね。死ぬ前は、男性としかほぼ打ち合わせをしていなかったから、そう言った女性への機微なんて忘れていたよ。

 こっちでギリーでの記憶にも、そう言ったことはなかったしね。はぁ。


 「それはともかく、本当にマリーさんのことはいいのですね?」


 ディートがそんな反省をして黙り込んでいる俺にそう聞いて来た。


 「え?十歳の妹のような存在だぞ。何がいいのですなんだ?」


 俺的には孫でもあり得るといえばあり得る存在なのだが、そうは言えないので、そう聞き返す。


 「いえ、ギリーがいいのでしたら、問題ありません。情にほだされて、結婚とまでは行かなくても、連れて行くとか考えなかったのかと思いまして。」 


 俺ってそんな風に思われているの?そこまでお人好しじゃないよ。


 「さすがにそこまでじゃないぞ。だいたい袋の存在をなるべく隠したいと思っているんだし、これ以上貴族との関係を無闇に増やすのは考えるぞ。」


 「ですが、私も、私を託された時は受け入れてくだいましたし、今回もそうするかと思いましたよ。」


 ティアがそう言ってきた。


 「いや、あの時は最初はティアが望めば、どこかの街で別れるつもりでいたし、契約魔法で縛れたというのもあったからな。」


 「確かに、そうでしたね。」


 「そう言うことだ。それにマリーさんにはパンのレシピがあるんだ。上手く立ち回れれば、ある程度自分の望み通りに事を運べると思うぞ。」


 「なるほど、そこまで考えているなら、いいでしょう。皆さんもそれでいですね?」


 俺の答えに、ディートがそう言って、他のみんなも特に意見がなかったので、それで終わった。

 うん、とりあえず、許された?許しを請うようなことしていないけどな。

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