第82話 創作パンを作ろう
調理前に一応これから作ろうと思う物を貴族とかに出して大丈夫か、ティアとディートに確認しておく。
「聞いたことはないですが、そんなおかしなものでもないと思いますよ。」
「どんなものかよくわかりませんが、父に聞いた話ではパンに甘い物を挟む地方のお菓子もあると聞いたことがあります。貴族に出すパンでしたら、大丈夫だと思いますよ。」
二人から許可を貰ったので、一応シルビアさんにもこれから作る物を確認して、許可を貰うことにする。
無発酵平パンを甘く仕上げようと考えているので、簡単に説明して、一緒に作っても問題がないかと聞いてみた。
シルビアさんも無発酵平パンという物がよくわからないようだったが、パンの発酵工程がない物だと説明したら、それなら妹のマリーだけでも作れそうだと承諾してくれた。
そんなわけで許可を貰ったので、作り始める。
塩とぬるま湯と小麦を混ぜる。
捏ねて纏めたら、濡れ布をかぶせて、三十分放置する。
それを取り出したら、十等分して、麵棒のようなもので丸く延ばす。
そこに本体なら、バターを塗り、生地を丸めるようにして棒状に巻く、それを渦巻き状にして、再び丸く伸ばして、揚げ焼きするんだけど、今回は中に具材を挟みこむことにする。
丸く伸ばしたパン生地の中央にジャムを乗せる。
そして、餃子を包む要領でパン生地の周りを水で濡らし、それを二つに折り、パン生地の端を糊付けして、それを少し多めに引いた油で両面焼き上げる。
今回は創作で作ってみたけど、味はどうかな?
出来や一つをここに居る人数分、切り分けて、試食してみることにする。
まずは、自分が食べてみる。
バターの香りがないから、パンがいまいち物足りないな。
でも、中のジャムは保存のためかかなり甘い物なので、パンが物足りないのもあり、もう一工夫したいな。
俺が食べているのを周りも興味深そうに見ている。
いまいち味に不満があるが、こう見つめられていたら、いまいち不出来だと引っ込めづらいので、とりあえず味わって貰うことにする。
こっちの人達の評価はどうなのだろう?
まぁ、甘い物に馴染んでないので、さほど酷い評価にはならないと思うが、どうなるか。
みんな、一摘まみづつ口に運ぶ。
「うん、うまいけどなんか物足りないような。」
「だよね。今まで食べた物に比べると、ちょっとね。」
リアとミサは、食べてそう感想を漏らす。
他の仲間の三人の顔を見ると、言葉にはしてないがやはり、同じような感想なのだろう。
皆も微妙な顔を浮かべている。
「そうなのか。これでも充分に美味しいと思うが」
「ええ、これでもすごくおいしいと思いますよ。」
一方、シルビアさんとマリーさんはそう言って、満足そうな表情を浮かべている。
うん、うちのメンバーは甘い物になれているからな。
「いまいちのようだな。今のは試作だからな。これから、ちょっと手を加えるから、待ってろ。」
「そんなすぐにこれ以上の物になるのか?」
「ですよね。そんなすぐに手を加えて、これよりおいしくできるのですか?」
俺に決意にシルビアさん達はそんな言葉をかけてくれる。
「任せろ。俺も不満があったから、そこを変えて見るさ。今回、基本的な作り方は見てわかっただろうから、さぁ、手伝ってくれ。」
そう俺は言うと、再び、作業に取り掛かる。
今度は、丸く伸ばしたパン生地に溶かしバターに砂糖を溶かしたものを塗り込む。
それを巻き込んで棒状にする。
棒状になったパン生地の片端を摘まみ、渦巻き状に巻き込こんで、それを麵棒のような物で再び丸く伸ばす。
通常の平パンを作る行程を加えて、生地に風味を出す。
さらに、ジャムも通常の保存重視の物でなく、俺が鞄に入れて保存する前提で作った果肉分の多いジャムを挟み、その後は先程の容量で生地を挟んで焼くだけなので、シルビアさんとマリーさんに任せる。
一応、慣れない二人なので細かく指示をさせても立ったが、そうして再び試作品だ出来上がったので、今度は先に作った俺達三人で試食することにした。
「お姉様、凄いです。先ほどよりも美味しくなりましたよ。」
「ああ、確かに前の菓子でも美味いと思ったが、こちらは確かに全体が上手くまとまっているな。」
二人がそうした反応を示したのを聞いた後、先程ダメだしした仲間にも試して貰うことにする。
シルビアさん達の言葉を聞いてか、先程より期待した表情で、作られた菓子を口に運ぶ。
「ああ、これなら美味いな。全体に味があって、バターの風味もあってか、甘いだけで終わらない感じがするな。」
「うん、飽きの来ない味だよね。」
「ええ、それにパン生地も発酵の手順が省略されていますから、作るのにそこまで時間もかからないようですし、作るのも簡単ですし、いいともいますわ。」
今度の菓子は気に入って貰えたようで、そう口々にお褒めの言葉を貰う。
どうやら、今回はみんなから、合格を貰えたようだ。
でも、これ菓子というより、やっぱりパンの域を出ないよな。
「しかし、ギリー殿の腕は冒険者にしておくのは惜しいくらいの腕前だな。懐事情的に男爵家でも砂糖を手に入れるのは大変なのだが、その甘味を一度食べて修正できるとか、凄すぎるぞ。」
「ですよね。うちが裕福なら、菓子職人として雇いたいです。」
おう、なんかシルビアさん達からの評価が高すぎるぞ。
あまり騒がれないよう、適当にマリーさんのご機嫌でも取って誤魔化しておくか。
「もったいない、お言葉を頂戴しまして感謝します。マリー様。」
「まぁ、お口もお上手ですのね。ますます、冒険者には見えません。で、このお菓子は何というのです?」
マリーさんは俺の対応に慣れた感じで対応して来る。本当に十歳前後なのか?
で、お菓子の名前か。さて?
元のパンの名前もネットの動画で見て作ったりしてただけのパンをアレンジして甘い菓子パンぽくしただけだし、名前などないのだが。
適当にそれっぽく原典を答えておくか。いい名前が浮かべばそれですませよう。
平焼きのパンなんてあっちこっちに原型が存在するしな。
「これは本来、異国の食事用のパンで、砂糖入りのバターを今回塗りましたが、ガーリックバターを塗り込んで焼いたり、香草や野菜を炒めた物を挟み込んで焼いたりして食べるパンなのです。それを、お菓子風にアレンジした物なので名前はないのですよ。このパン自体はここから遥か南東の異国料理だそうです。」
「ほう、そうなのか。ギリー殿は異国に行ったこともあるのか?」
「残念ですが、私はございません。私の両親も冒険者でして、異国を回ったこともあるそうです。」
「ほう、そうなのか。それは立派なご両親だな。」
「ありがとうございます。で、お菓子というかパンの名前ですが、異国でも甘いパンとして食べる食文化はなかったようで、名前はありません。せっかくですのでマリー様がお名付けしてくださいますか?」
うん、話を作って誤魔化したが、やはりいい名前なんでそうそう思い浮かばない。
よし、ここは丸投げしてしまおう。そう思い、マリさんにそう伝えた。
「良いのか?では、うーん。甘いマリーのパンとしよう。どうでしょう。お姉様?」
マリーさんは、嬉しそうに顔をほころばせると、少し考えてからそう言って、シルビアさんに命名の出来を問うていた。
なんか微妙な気がするが、どうなんだろう。そう思いシルビアさんを見ると、顔をニッコリとさせて、嬉しそうにこう言った。
「うむ。良いのではないか。」
シルビア様、本当にそれでいいのですか?
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