表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/146

第78話 馬車に詰め寄ろう

 東門を抜けると、リアとパルマに先行して、できれば先程の馬車の様子を伺うよう指示をする。


 そして、俺は二人に強化魔法を念のため、掛けておく。


 この世界は思ったより、魔法がまだ一般的でないのか、魔法使いや回復士が異様に少ないようなので、魔法で強化をすれば大分アドバンテージになる。


 しかも、武芸の書も通常の冒険者は初級までしか扱えないとなっている。


 これで、力も技量もこちらがかなり上の存在になれる。




 相手が果たして人攫いなのだろうか?向こうの馬車にも二頭の馬の護衛が付いているので、迂闊には近づいて確認は取れないだろう。


 さて、上手く状況を探って、そうだと分かればいいけれど、どうなることやら。


 向こうの馬車は積み荷が布だけでは間違いないと思うが、中が護衛という可能性も全くないわけでないからな。


 とは言っても中に一五名も護衛を控えさせていたら、多分交易は赤字になりそうだから、そんなことはないと思うけど。




 こちらの馬車は二頭立てだが、荷台に魔道具のフローティングボードを積んでいるので、荷台の重量はほとんどないの空馬車のような速度で相手の馬車を追える。


 対して、向こうは四頭立ての馬車だが、重量過多なため、スピードは出ていない。


 なので、馬車の速度はこちらが速いので徐々に距離が詰めることが出来る。


 上手く距離を詰めて、その間に相手の積んでいる人が攫った人だと確認できればいいが、どうなるかな。




 東門を出る時は、向こうの馬車は護衛が二頭だったはずだが、遠目に見ると今は八頭ほどに増えている。


 これで、普通の商人の馬車ではないとみて間違いないかな。


 向こうも怪しまれないように別々の門から出た護衛と合流したようだしな。


 そこにリアとパルマの騎馬が距離を詰めていく。


 向こうの馬がそれに気付き、四頭ほどがリア達に詰め寄り、馬車に近づけないように立ち塞がって来た。


 リア達は仕方なしに、速度を落とし、彼らの前で停まる。




 「おい、なんだ貴様ら。」




 向こうの男達がそう訊ねて来た。




 「すまない。所用で先を急ぎたいのだが。」




 パルマはそう言って、先を急ぐそぶりを見せる。




 「なら、街道を逸れて大回りして行け。」




 そう言って、大回りを促す。


 リアとパルマは顔をお互い見やり、頷くと、街道を逸れて進み始める。


 それを男達は見やりながら、街道を馬車へと引き返す。




 うん、リア達はどうするつもりだ?


 俺はとにかく、相手の馬車に少しでも近寄れるように、急がせる。


 やがて、リア達は相手の馬車に並走しそうなところで、急に方向を変える。


 それに気付いた相手の男達も、それを邪魔するように馬車側から二名、リア達を足止めしていた後方の騎馬も距離を詰めて、それを阻止しようと動く。


 あれじゃ、もし、向こうが問題のない商人だったら、盗賊行為と言われたら、言い逃れ出来なきないな。


 人攫いは捕らえたりしたいが、こちらがそこまで危険を冒さずに穏便に行きたかったな。


 それに、こっちがもう少し近づくまで、待っていてほしかったな。これじゃ、まだ援護も出来ない。




 リアとパルマは相手の馬車から迫って来る二頭の馬を左右に分かれる形で躱す。


 後方から迫る二頭の騎馬は乗り手が男性で体重も重いこともあり、懸命に迫るが追いつけずにいる。


 そして相手の馬車に迫ると、二人して剣を引き抜き、幌を切り裂く。


 最初の一撃では、幌の一部が少し破れる程度だった。




 俺はそれを見て、幌の布って結構丈夫なんだな。そう呑気に感想を浮かべる。


 だが、すぐ気を取り直して、馬車の中にいるディート達に状況を知らせる。


 それを聞いて、ミサが御者台に滑り込む。


 これで、俺は馬車の操作に集中できるし、ミサが中に状況を知らせることが出来る。


 それに、これで距離さえ縮まれば、いざとなればミサが魔法での援護も出来る。




 リア達はさらに数度幌を切り裂く。


 やがて、幌が大きく剝がれ、中が覗けるようになる。


 中には、手足を縛られ、猿轡を咬まされた女性が繋がれるようにして、馬車の荷台に乱暴に乗せられていた。




 「おい、この女性はなんだ?」




 リアは後方から一度すれ違って追いついて来た二騎の警護の連中にそう問いかける。


 パルマは御者台の方に向かい、御者を抑え込みに向かう。


 残り二人の護衛の騎馬が、パルマのその動きを阻止するため、馬車の反対側から、馬車の頭を回り込むようにして迫って来る。




 「ええい、賊だ。遠慮なく切り殺せ。」




 最初にリア達を足止めして、声を掛けて来た男が大声で叫び、そう命じた。


 それを合図に男達は剣を引き抜き、声を上げて二人に斬りかかる。


 リアは後方から来る男の剣を受け止めて、はじき返す。


 自分より小柄な女性への一撃だ。


 当然、力も自分が勝っていると思い剣戟で押し切れると思っていたのだろう。


 だが、その一撃は剣で軽く合わせられ、いとも容易く弾き上げられる。




 「な!」




 男は思わず驚嘆の声を上げるが、そのまま剣を上に弾かれて、隙だらけになった体に剣の腹の部分を叩き込まれ、体勢を崩すとそのまま落馬して倒れ込む。


 リアはそのまま、もう一人の男に距離を詰める。


 今度はもう一人の男も油断せずに、リアの一撃に剣を受け止めると一気に押し込み、リアを馬上から倒そうと試みる。


 リアはそれを軽くいなして、相手の勢いを利用して、馬から引きずり落とす。


 だが、止めを刺すには至らず、すぐに後続の騎馬を相手にすることになる。




 パルマは御者に馬車を停めるよう指示を出すが、すぐさま馬車を護っていた護衛が迫って来る。


 御者の相手を一時的に諦め、彼らに対峙する体制を取る。


 騎馬二頭が並走して、パルマに迫って来る。


 パルマは同時に二騎を相手にするのを避け、馬車から離れるように馬を走らせる。


 相手もパルマに正対しようと向きを変えるが、そこまで訓練されたわけでないようで、隊列を維持できずに一頭が一馬身離れてしまう。


 そこにパルマが迫り、一対一で仕掛ける。


 お互いの剣が交わるが、そのまま騎馬はすれ違う。


 そこで相手は機転の利かせ、一騎がリアに向かえば形勢は変わったかもしれないが、こちらでも数の優位を崩したくなかったのだろう。


 二騎とも向きを変え、再びパルマに迫る。


 俺もせめて魔法の射程に入るように、馬車を急がせる。


 早く援護しないと実力的に上回っていても、数が違うからな。 


よろしければブックマーク、評価、ご意見、感想などよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ