第76話 公爵家で布生地を貰おう
買い物をして二日後、再びシルビアさんが公爵邸への案内のため、俺達のもとに訪れてくれた。
俺達は身形の良い服を着て一応、公爵家に行くのに失礼のないように準備をする。
馬車での移動中も、前回の買い物の時もだが、シルビアさんは俺達が断った依頼について、再考するようにとか特に言ってこなっかたし、話題にも出さないようにしてくれていた。
そんな風に気を使ってくれていることも分かっていたので、本来はこちらから聞くべきではないのだが、騎士団長のシルビアさんが、前回、今回と俺達の相手をしているので、悪いと思い捜査の進捗について聞いてみた。
「捜査の方は残念ながら、相変わらずだ。それと私もそう言ったことは不慣れだし、市中の聞き込みとなるとまるで役立たないのでな。君達と一緒にいた方が気がまぎれると言うものだ。」
なるほど、貴族出身という弊害か、市井に人への聞き込みは確かに、向かないわな。
ただ、それを馬鹿正直に言う訳にも行かないので、失礼のない言葉で返す。
「そこは、人それぞれ向き不向きがありますから、私達も申し訳ありませんが、今回の依頼は不向きゆえに断らせていただいたわけですしね。」
「そう言ってくれると、有難い。あと、この間の買い物で気が付いたのだが、今回の公爵邸でも布の下賜は迷惑だったのではないか?もし、そうであったら、すまないことをした。」
シルビアさんは俺達が自分の服を買っていたに気付いたのだろう、そう言ってきた。
そこは、はい、そうですとも言えないし、適当に誤魔化す。
「いえ、そんなことはありません。貴重な布を融通して頂けるのですから、有難いです。なぜかここのところ、貴族様に関わることが多いので、なにかと役立つかもしれません。」
「ああ、そう言えば、ギリー殿はオーベルマイヤー閣下のところの菓子のレシピを買えるほどであったな。あれには改めて礼を言う。美味しかったし、私の妹にも喜んでもらえたぞ。」
シルビアさんはそう言ってきた。
うまく誤魔化せたようだ。
「それはよかったです。」
それから、公爵邸に着くまでシルビアさんの家族の事情なども聞かされたりしながら、向かう事になった。
聞かれるより、聞いていた方が気が楽だからいいけどね。
そうこうして、公爵邸に到着する。
公爵家の執事と給仕、数名が迎え出てくれている。
さすがに公爵家の関係者は居ないことに少し安堵する。
そして迎えに来てくれた執事らの後について、シルビアさんと一緒に屋敷内に入って行く。
案内された一室に入ると、布の山と一人の老人がいた。
「皆さま、お忙しいところ、お越しいただき申し訳ありません。私は、公爵家の執事長のカルステンと申します。本日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、貴重な布を賜る機会を頂きありがとうございます。」
「それに関しては、そこに居るシルビア様が勝手に事を運んだのでしょう。」
「おい、爺、そんないい方しなくても……。」
シルビアさんはそう言って口籠ってしまった。
まぁ、事実なので庇いようがないから、俺は黙るしかないがね。
「まぁ、いいでしょう。では、ここから布を10点ほどお譲りいたしたいのですが、どうしましょう。皆様方で選びますか?それとも私が選んでしまってもよろしいでしょうか?」
は、そう聞いてきた。
さて、どうしたものかな。シルビアさんの善意で貰えることになったものだし、こっちで選んでみてもいいかな。
「どうする?布を欲しがっていたパルマが選んでみるか?」
俺はパルマを見てそう尋ねる。
「よろしいのでしょうか。」
パルマはそう反応してきた。お、やる気なのか?ならと、俺は、後押しをするように話をする。
「ああ、パルマが言ったことによって叶ったことだ。例え、はずれを掴んでも、パーティーにはそこまで損失にはならないからな。皆もそれでいいだろ?」
俺の一言に他のメンバーからも特に異論が出なかったので、パルマも選んでみたいと言ってきた。
そう言うことなので、パルマに任せたいと、カルステンさんに伝えた。
さんも了承したので、パルマに選んで貰う。
パルマは、カルステンさんから手袋を渡される。
それを受け取り、両手に付けて、布を一つ一つ手に取って選んでいく。待っている間、暇なのでディートにも参加してみるかと話を振ってみた。
だが、ディートはこう言って遠慮してきた。
「自分は織物は専門外なので遠慮しておきますわ。」
「するとパルマはある程度勉強をしているのか?」
「ええ、もっとも本物のこちらの布を触ったのは、この間の二日前が初めてのはずですけどね。」
なるほどね。パルマとしては勉強の機会としてこの目利きを受けたわけか。
商会を立ち上げようとしてるだけあって、いろいろ努力をしているんだな。
そして、しばらくしてパルマが10反の布を選び終わったようだ。
「こちらでお願いしてよろしいでしょうか?」
パルマは、カルステンさんにそう言った。
「はい。わかりました。しかし、なかなかの目利きですね。品質より、流行りの色を優先しましたか。それに、冒険者にしておくのは、もったいないですな。」
「まだまだ先ですが、ゆくゆくは商人になることを目指していますので。」
「おや、そうでしたか。それでしたら、その時はわか領でも商いをしていただきたいものですな。あと、公爵家の販売許可証も、それぞれの布につけておきます。それさえあれば、他で流すことが可能でございすから。」
「いえいえ、まだまだ勉強中ですので、商売を始めるのはいつになることか。それと許可証の心遣い、ありがとうございます。」
「まぁ、許可証があれば、他所さまで売り払ったりしても、問題になるようなことはないでしょうからね。
また、そう言ったことにシルビア様は考えが及ばないので、こちらの布をあなた方にと軽い気持ちで言ったのでしょうが、そこがまだまだなのですよ。」
「そのことは、もう、わかっている。既にギリー殿らにも言っているのだがら、言うな。」
シルビアさんは顔を赤くしながら、シルビアさんに苦言を言ったカルステンさんにそう言う。
まぁ、先程からシルビアさんがいじられてるけど、シルビアさんは公爵と親戚関係と言っていたから、カルステンさんとは昔からのなじみなのだろうから、貴族であるシルビアさんにもああ言った言がでるのだろうな。
そして、シルビアさんもそれを不快に思わないのだろう。
とりあえず、カルステンさんにも合格を貰える布の選択をしたようだし、今回の件は満足してよさそうだね。
さて、ここの公爵家は問題多そうだし、さっさと帰りましょう。
そんな訳で、ひととおり手続きをして、今回の件でカルステンさんにお礼を言って下がることにする。
帰りは、シルビアさんの案内で玄関に進み、用意されていた馬車で一緒に宿まで同行してくれた。
宿の前で改めてシルビアさんにお礼を言う。
シルビアさんからもミヒャエルさん達を捕まえ、ここまで連れて来たことに礼を貰う。
そして、今後の予定を聞かれる。
再度旅のための買い込みをしたら、二、三日後にイオナの街に向かう事を伝える。
その時は、シルビアさんかそれが無理なら騎士の誰かを見送りに出すので、前日にでも知らせて欲しいと言ってくれた。
いろいろとお世話になっているので、それは断ろうとしたが、布生地を正面門から持ち出すと税がかなり取られるぞと言われた。
金額を聞くと、今回はよい品質の布生地が多いので、金貨数枚となるだろうと言われたので、有難く申し出を受けることにした。
なるべく払わずに済む金は払わずに済ませたいからな。
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