第75話 公爵領都で買い物をしよう
手紙は昨日のうちにディートがお米の試食会の時に頼まれた依頼の件の断りと合わせて、昨日のうちに書いて、フロントに届けて貰うように頼んでおいた。
そして、今日はゆっくり朝食を済ませて、出かける準備をしていると、部屋のノックがされた。
俺が返事をすると、声が聞こえた。
「ギリー様、よろしいでしょうか。シルビア様が見えてますが、いかがなさいますか?」
ノックをした宿の従業員がそう伝えてくれた。
こんな朝早くに何の用だろう?
とりあえず、扉を開けて、俺は従業員に指示を行う。
「すまないが、宿の応接室で空いてるところがあれば、そこに通して待っていて貰いたい。それと人数分のお茶を用意して欲しい。」
「わかりました。では、二階の応接室に案内しますので、準備できましたら、二階にいる宿の者にお声がけください。ご案内します。」
「ああ、よろしく頼む。」
俺はそう言って、大銅貨一枚をチップとして握らせる。
そして、俺は一度リア達のいる部屋に行き、シルビアさんの来訪を告げて、準備を急ぐように伝える。
それから、俺も一度、自分の部屋に戻り、身だしなみを整えて、リア達の部屋の前で待つ。
あまり時を待たずして、彼女達も出て来た。
「急がせて悪いな。用件はわからないが、二階の応接室に待たせてある。行くとするか。」
「朝早くから、連絡も無しに来るなんて、何かあったのでしょうか?」
「さぁな。この公爵領、いろいろ問題続きのようだし、そんなことはないと願いたいな。」
「だよなぁ。まぁ、行けばわかるから、さっさと行って済ませようぜ。」
「だな。」
二階で従業員に、シルビアさんの待つ、応接室を教えて貰い、残りのお茶と新しいシルビアさんのお茶も用意して貰うよう頼み、先程と同じようにチップをは払う。
従業員は貰った硬貨を見て、ニコリと笑い、足早に準備のために離れる。
俺達は、教えられた応接室に向かい、入室して、お互い挨拶を済ませる。
そして、シルビアさんは用件を切り出してきた。
「慌ただしい来訪で、すまないな。手紙を見て、今日は領都で買い物をすると言うことだったので、迷惑でなければ案内をしようと思って、お邪魔させて貰った。どうだろう。」
うん、いきなり来て、そう言われては断れないだろ。
まぁ、今日はここの名産の布で作られた服を買うつもりでいたし、地元の評判の店や、紹介が必要な店に行くこともできるだろうしで、同行されて特に困ることもないしな。
あと、ここの名物とかも教えて貰えれば、有難いしな。
「それは、ありがたいです。なにせ不慣れな土地ですからね。」
「そうか。では、今日はよろしく頼む。それでどこに行くのだ?」
「ああ、その前に今、お茶を用意したので、せっかくですから、それを済ませてから出かけましょう。お茶菓子も用意しますので。」
そんなことを言っていると、宿の従業員が人数分のお茶を運び込み、退出する。
そこに俺が菓子をいくつか取りだし、一時を楽しみながら、寛ぐすることとする。
俺達にとっては普通の行動だったが、シルビアさんは慣れておらず、差し出された菓子を食べて頬を緩ませる。
あ、ついつい菓子を出してしまったが、詳しいことを問われないようにしないとな。
「この菓子は美味いな。どこで手に入れたのだ?」
シルビアさんがさっそく、俺達にそう話を振って来る。
「これはイオナの街で出されているお菓子です。公爵家あると商会の共同出資で出されているのですが、その商会と幾分縁があるので作り方を買い取っって作らせて貰いました。」
俺はとっさにそう話をする。
多少、俺が提供したのを、提供されたことにした嘘は混じっているが、概ね事実なので、外からは確認しようがないので問題はないだろう。
シルビアさんもイオナの街の店の菓子で、俺が無理に伝手で作り方を買ったと言われてしまえば、それ以上は追及できなくなってしまう。
俺の説明を聞いて、シルビアさんが残念そうな顔をしているのを見て、少しかわいそうになってしまったが、これを商売にしている者もいるのだ仕方あるまい。
だが、あまりに残念そうにしていたので、彼女に昨日街の外に出た際に作ったと言うことにして、いくつか菓子を持たせることにする。
それを大切そうに受け取ったシルビアさんを見て、一言、日持ちしないので早めに食べるように伝えておく。大切にされてカビを生えさせてしまってはまずいからな。
俺の言葉に残念そうな顔をしたが、菓子を大切にしまい込んで、俺達に礼を言ってきた。
その後、俺達はシルビアさんの案内で市場を少し見て、この街の名産品などを聞いたりして見たが、シルビアさん自体、この街でほぼ過ごしていたので、あまり他の街と流通している物の違いも判らなかった。
それと、貴族という出自もあり、野菜や調味料に知識がなかったので、市場の買い物にはあまり役は立たなかったが。
市場での買い物を一段落させて、次に本来の目的である服飾店に向かうのだった。
「服飾店か、市場では役に立てなかったが、そちらでなら、多少は役に立てるぞ。」
シルビアさんは、俺達の次の目的地を聞いて、気を取り直してそう言ってきた。
まぁ、貴族であるシルビアさんが一緒なら、ある程度格式のある高い店にも入れるかな。
店の選定は、シルビアさんに任せることにする。
ただ、俺達は平民なのでそれに見合った服が売っている店を紹介して貰うように、念は押しておく。
案内された店は見た目は上級そうであったが、屋敷の給仕達も利用している店だということだ。
それなら、大丈夫かな。
店な中に入るとシルビアさんを見つけた店員がすぐに近づいて来た。
シルビアさんが簡単な説明をしてくれて、俺達の衣装を見繕うよう店員に伝える。
さすがに店員の数が足りないので、女性は二組に別れ、俺には一人の店員が付き、相手をしてくれる。
生地の肌触りを見てみると普通の布に比べ、ざらつかず、肌触りの良い感じであった。
話を聞くと、この地域で特別に育てられている羊の毛が使われているらしい。ただ、数が少ないので本当に品質の高いものはとても貴重らしい。
ちなみにこの店で扱われている品質は、中の上から中の中くらいの物が使われているそうだ。
いくつかの既製品の衣装に袖を通させて貰う。
確かに着心地はこの世界の服の中でもかなり良い物に感じる。
服の重さも軽く、染められた色の発色も他の産地の布より良いし、確かに良い物なのだろう。
ただ、最近名声が上がり、あちらこちらの商人から引き合いがある。
そのため、領主もなるべく領外に流さないようにしているが、それでも外へ出て行く布が増えて、年々生産量が上がってはいるが、それでも手に入れるのが難しくなっているので、値段も上がっているそうだ。
本当に評判になっているんだな。
しかし、出来の悪いのもでもあまり高くなると庶民には回らなくなるだろうけど、大丈夫なのだろうか。
なるべく地元に残そうと努力はしてるようだし、頑張って入るのだろうな。
そんな話をしながら、いくつか服を選ぶ。
そして、寸法直しが終わり、しばらく、みんなの買い物が終わるのをゆっくり待つ。
他のメンバーも納得した買い物が出来たのだろう。少しづつ、俺の周りに集まって来た。
「いい買い物ができたようだな。」
「ああ、ちょっと値段はいいけど、着心地がいいよな。ちょっと余計に買っちまったぜ。」
「だよねー。色も綺麗だし、デザインもなんかすっきりした物があって、よかったわ。」
そんな会話をしているうちに全員の買い物が終わった。
満足な買い物ができたことに、シルビアさんにお礼を言う。
その後はいくつか雑貨店を顔を出したりして一日を終える。
地元のシルビアさんがいたおかげもあり、楽しく効率的に街を回れた。
最後に二日後の公爵邸に伺う話を軽く済ませる。
迎えにシルビアさんが来てくれるらしく、その辺は知った人がいるのは、有難く思うことにする。
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