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第74話 宿屋で話し合おう

 宿に予定通り戻れたので、馬車を世話する奉公人に挨拶を済ませ、フロントに鍵を貰いに行く。


 「ああ、ギリー様、お戻りになられたのですね。」


 俺の姿が見えたら、すぐさまフロントからそう声を掛けられた。

 おや、誰か来客が見えてたか?

 ここに知り合いなどあまりいないから、シルビアさん辺りだろうけど、だったら、昨日会った時に一言断っておけばよかったな。


 「ああ、戻ったぞ」


 俺はフロント係に返事をする。

 フロントから宿の主が言付けを預かっていると聴き、部屋の鍵を預かると、リア達は部屋に先に行って貰うことにした。

 そして、それから俺は宿の主のところに話を聞くため、案内されて向かった。

 フロントマンは俺の来訪を告げ、ドアを開けると戻って行く。


 「失礼します。で、どうしましたか。」


 俺は、主のいる部屋に入ると、そう質問した。


 「どうぞお座りください。それでですが、騎士団長のシルビア様がお昼頃、こちらにお見えになりまして、ギリー殿がご不在だと伝えたところ、お手紙とご伝言を預かりましたので、申し訳ありませんがお呼びだてさせていただきました。」


 宿の主はそう言って、俺に着席を促すと手紙を差し出してきた。


 「わざわざ替わりに対応いただきすまなかった。」


 俺は座わると、そう言って手紙を受け取る。


 「いえいえ、これも仕事ですのでお気になさらずに、それでご伝言ですが、……。」


 宿の主から聞いた内容は、「当初は宿かシルビアさんの屋敷でこの領地の名産品である布の選定をする予定であったが、いくら公爵家で使わぬ生地とはいえ、それを数多の数、外に持ち出すのは許可が出なかったので、申し訳ないが公爵家にお越し願うことになってしまった。面倒をかけるがそれで話を受けて貰いたい。詳しくは手紙を読んでいただきたい。」とのことだった。

 どうも行き違いがあったようだ。

 パルマだってそんな貴重な生地を頂くつもりはなかったと思うぞ。

 そんな上等な生地では彼女らだって衣装をつくれないのではないか?

 たぶん庶民が使えるようなグレードの生地を望んでいたと思うが、仕方がない。

 とりあえず、伝言の礼と手紙の礼を言い。謝金を渡して、また、もしかしたら手紙を頼むかもと伝えて、部屋に戻る。

 ここで、手紙を読んでも、二度手間になるからな。 


 俺はノックをして入室の許可を貰うと女性陣の部屋に入る。

 そして、手にある手紙をひらひらと皆に見せる。


 「公爵邸へのご招待状らしい。」


 「なんでだ?昨日の依頼の件を改めて受けて欲しいとかか?」


 「いや、布の褒美の件でだ。」


 「あー。」


 リアはそう言って、パルマを見る。つられて、周りもパルマを見る。

 パルマはそれに申し訳なさそうに小さくなる。


 「まぁ、とりあえず、まだ読んでないので、読ませて貰うぞ。」


 だいたい手紙の内容は俺の予想通りだった。

 話としては褒美の布を渡したいが、公爵家の財産でもあるので、待ち出しを許したくない。なので、公爵家の屋敷で引き渡したいとのことだ。

 それで、執事の手が比較的空いている一週間以内に来るようにと言ったことが書いてあった。


 「それでどうする?」


 「行くしかないのでは?」


 ディートが俺の問いにそう問い返してきた。

 それはそうだけどね。


 「そうなのだが、全員で行くのかということだがどうする?」


 改めて、言い方を変えて聞き返す。


 「あー、行かなくて済むなら、行きたくはないな。布なんて見ても分からないし、万が一汚してしまったらとか考えるると、気を使うだけだからな。」


 「だよね。私も行かないでいいなら、パス。」 


 「あ、私もそういった場所にあえて出たくはないので、ご遠慮したいです。」


 リアとミサはわかっていたが、ティアまでそう言って辞退してきた。

 ティアはこういったことに勉強のためと言ってついてくるとばかり思っていたんだけど、行きたくないなら仕方がない。

 そこで、俺は残りのパルマとディートを見る。


 「あ、あの、」


 ディートが何か言おうとしたところに俺は言葉をかぶせる。


 「パルマは言い出しっぺだから、来て貰うぞ。それであとは、ディートだが、どうする。」


 俺の言葉を聞いて、すがるようにパルマはディートを見る。

 自分のご主人様という扱いのディートに対して、そんな目線を向けるなんてなんか新鮮だな。

 俺はそんなことを考えつつ、パルマの視線を追うようにしてディートを見る。


 「ふぅ。仕方がありません。私も同行しますよ。しかし、そんな公爵家が使ったり、贈答したりする物を貰っても、困りますけどね。」


 「そうですよね。おかしなことになり申し訳ありません。それと、同行、ありがとうございます。」


 ディートの言葉を聞いて、パルマがそう礼を述べる。


 「布はあまり良い物は困るとそれとなく、向こうで執事さんにでも伝えてみようか。では、三人で向かうとするか。

 すまないがすまないがディート文をしたためてくれるか。

 伺うのはそうだな。あまりがっついていると思われたくはないから、三日後くらいにしておくか。」


 「わかりました。では、そのように文を用意し、フロントに渡しておきます。」


 「すまないが、よろしくお願いする。では、明日は勉強も兼ねてみんなで庶民向けの洋裁店にでも行って、生地について学んで、ついでに買い物もしてみるか。」


 俺はそう提案する。

 俺もまったく布生地のことを知らずに執事さんに顔合わせするより、多少知っていた方がいいだろうからな。


 「ああ、そういった店に行くなら、あたい達も付き合うよ。」


 リアが公爵家行きを断った面々を代表して、そう言ってきた。

 王都である程度衣装は揃えたが、それでもやはり女性だからなのか、ここの特産の生地には興味があるらしい。

 ミサとティアもリアの言葉にうなずいていた。

 なら、明日はみんなで買い物に出かけるとしようか。

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