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第68話 護送任務をしよう

 出発の準備も終わり、公爵家からも依頼から三日後の朝に出立と知らされる。

 うん、予想はしてたけど、最短の出立日だね。

 前日に馬車と馬を宿に持ち込み、当日は待ち合わせの貴族の出入りする東門へと向かう。

 朝の市に向かう馬車や荷車と途中まで経路が同じだったため、待ち合わせにはギリギリでの到着となった。

 ただ、向こうはまだ現れていなかったため、何とか失礼はないように到着できた。


 俺達は一応、周囲を伺う。

 俺も探査で周りを確認しても、特に物陰に潜んでいるような人物は発見できなかった。

 もっとも、朝のために貴族用の出入り口と言え、かなりの馬車や護衛が出立の準備をしているので、それなりの人が居るので、この中に公爵家の動向を作業しながら探るような人物がいたら、気付けないが。


 「特に怪しそうな人物は見つけられない。皆はどうだ?」


 「こっちもだめだな。」


 「すみません。特に気になる動きは見つけられませんでした。」


 俺の問いに、同じく探査スキルを得られたリアとパルマが答える。

 まぁ、俺を含めて、探査スキル以外は特に見張りを見つける知識も能力もないから、仕方ないけどな。


 そんな感じで周辺警戒をしていると、少し遅れて公爵家の一団が現れた。

 脚竜の騎士の一団は嫌でも目立つな。

 一団は脚竜が五騎に通常の馬が四頭で牽いている大型の馬車が一台だった。

 馬車以外はミヒャエル達を追って来た騎士達だけか、それでは、確かに万一強襲があった場合不安になるか。


 「遅れて済まない。時間通り来てくれたようだな。」


 俺達を見つけて、近寄って来たシルビアさんがそう言ってきた。


 「いえ、我々も朝の喧騒に巻き込まれたので、今来たとこです。」


 「そうか。早速だが出立して構わないか?」


 「ええ、もちろんです。」


 「では、君達の馬車は我々の馬車の後ろに着くようについて来てくれ、馬は後ろの警戒をして、ついて来てくれ。」


 シルビアさんは俺達の構成を見てそう隊形を指示し、ついてくるよう言ってきた。

 そう短いやり取りをして、東門を出る。

 来た時より簡単に、一通の書簡を見せるだけで、チェックもなく通される。

 しばらくして、探査をかけるが特に後をついてくるような者も見られない。

 このまま、無事に着けるといいのだが、さてどうなるか。


 俺達はいつもどおり、馬車と馬二頭の騎乗を交代で運用する。

 ただ、騎乗するのは奇襲等に備え、前衛のリア、ディート、パルマと俺が交互に騎乗し、馬車は魔法が使えるミサとティアが御者を務めることにした。

 そして、護送任務での移動中と言うこともあり、騎士達は朝と夜しか食事をしないため、移動中の昼食はなかったので、俺の街の外での日課であるパンケーキ作りはなくなるかと思ったが、幌馬車内で秘かに作らされ、彼女らは移動中に交代で食すことにしていた。

 まぁ、少しだし、役に立つかもわからないけど、調理スキルが上がるからいいけどね。

 でも、いくら揺れないとはいえ、馬車の中で毎回隠れて作るのは大変なので、三日目には作り置きして鞄に突っ込んでおくことにした。

 それでも、彼女達からは文句は出なかったので、許された行為だと思っておく。


 朝夕の食事も食中毒を考えてもあるのか、俺達と騎士は別々に各自で作ることになっていたので、初日は豪華にソーセージを使ったパエリア風のご飯とスープにした。

 匂いに釣られ、騎士が何人か顔を出したので、勧めてみたが、職務中なのでと断られたので、無事に領都についたら、振舞ことを約束させられた。

 まぁ、米食を普及させて、美味しい米を作るようになって貰いたいので、こっちは構わないのではあるが、あまり騒ぎにならないように考えないとだな。

 いっそ、幾人かの冒険者に広めてしまうとかも考えたが、それはそれで冒険者内で目立ってしまう気がするし、なにかいい考えがないか、ディートやパルマと相談するか。

 朝食は夕食の残りのスープに野草や干し肉、塩漬け肉、チーズ等を加え、それに米を入れてリゾット風にして食すといった感じにする。

 この辺も保存重視の黒パンに比べれば、味もしっかりしていて食べやすく、大変好評であった。

 夜の見張りも俺達と騎士がそれぞれで見張りを立てる形になったので、俺達はいつもどおり、俺が一人、パルマとディート、リアとミサで組んで見張りにつくことにした。

 さすがに即席冒険者のティアは本人はやる気でいたが、見張りは遠慮して貰った。

 そんな感じで、食事中は羨望のまなざしに耐える必要があったが、それ以外は特に問題もなく、護衛の任務は続いていく。


 二日目には、王領を離れ、別の貴族の領内を進む。

 ここから、しばらくは、同じ派閥の貴族領を通過するようになるそうだ。

 ただ、今回は護衛任務のため、貴族邸への立ち寄りはなく、すべて野営になるそうだ。

 騎士達の話によると、同じ派閥の貴族領を公爵と同行したりすると、土産物を渡す代わりにもてなされるので、同行する騎士はいつもより美味い物が食べられる貴重な機会になるらしい。

 なので、王都への護衛任務は栄誉なうえ、美味しい食事にありつける貴重な機会でもあるらしい。

 俺は騎士は結構いいものを食べているのかと思い驚いたが、普段は訓練の野営は御覧のとおり、干し肉と黒パンや麦粥だし、通常の食事はパンの質はもう少しよくなるものの、肉は少なるなると言っていた。

 給与はいいが、装備の手入れや買い替えにもそれなりに掛かるので、あまり食事には金をかけられないそうだ。

 なんとも世知辛いな。


 移動途中、幾人かの巡回兵士に出会ったが、公爵家の騎士団と言うこともあり、止められることなく進むことが出来た。

 そんな感じで順調に五日目がそろそろ終わり、野営に適した場所を探していると、夕時には不似合いな一団が移動をするのを見つけた。


 「パルマ、感じたか?」


 俺は馬車の背後を一緒に並走しているパルマに近づき、そう声を掛けた。


 「ええ、騎馬の一団が十五騎ほどでしょうか、近づいてますね。このままだと日の落ちるころに遭遇してしまいそうです。」


 「だよな。どうするか。」


 「そうですね。まだ距離があり過ぎるので、知らせても信じて貰えないでしょう。でも、ここで足止めすれば、日暮れ前に後ろからの一団に遭遇出来ますね。」


 パルマの言うとおり、なんだよなぁ。

 探査スキルの存在がどの程度知られているかわからないから、今の段階で後方から近づく存在を知らせても信じて貰えるかわからないけど、敵かはわからないけど出迎えるにはここがちょうどいいタイミングなんだよなぁ。


 「では、ここで少し足を止めるか。」


 そう言うと、俺は自身に強化魔法をかけ、更に防御魔法もかけて、身体を強化すると激しく馬から落ちて倒れ込む。

 馬は、俺が身体強化をして飛び降りた力が自分に掛かったので驚いて走り出していく。


 「ギリーさん!」


 パルマは慌てて大声で叫びを上げる。

 そして、馬の足を止めると、慌てて俺に駆け寄る。

 うん、いい演技だね。

 パルマの声を聞いた御者を務めていたティアも慌てて場所を止める。

 そして、それに気付いた騎士も二人ほど、前方の騎士に止まるよう指示を出しながら、俺に近寄って来る。

 馬車の中にいたディートとリア、ミサも、馬車が停まるのを確認すると、駆け寄って来る。

 御者をしていたティアは馬を曳きながら、馬車を通行の邪魔にならないように道の脇に移動させる。

 リアが後方の一団の存在を気付いたのだろう、三人とも武器をしっかり携帯している。


 パルマは俺に近寄り、声を掛ける。


 「お怪我は大丈夫ですか?」


 俺は腕を動かしながら、異常がないか確認するように上半身を起こして、大丈夫だと合図する。

 それを見て、馬車から近づいた仲間は 少し安心した様子を見せる。

 騎士達も俺が動けるのを見て、安堵した様子で声を掛けて来た。


 「どうした?怪我はないか。」


 「ええ、大丈夫です。馬がちょっと機嫌を損ねたようで、落馬してしまいました。」


 騎士に問いかけにそう答える。

 それを聞いて、騎士は俺が無事なのを確認し、軽口を言ってきた。


 「気を付けろよ。領都で飯を振舞って貰うのが、怪我をしちゃそれだけ遅れるからな。」


 「そうですね。気を付けます。」


 俺もそれにそう答え、今度は下半身の異常を確認するようにしながら立ち上がる。

 そんなことをしていると、シルビアさんが俺を振り落としたことにされた馬を捕まえてくれたようで、馬を曳きながらこちら近づいてきてくれた。

 その馬をお礼を言って、受け取ると馬に異常がないか入念に確かめるようにして、時間を稼ぐ。

 そして、異常がないのを確認してそれを伝え、出発をしようとした時に、パルマが後方の異常を見つけそれを伝えたのだった。


 「後方より、騎馬の一団らしきものが接近中です。」

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