第66話 騎士に任命されよう
そんな騒動があった後、馬車を牧場に戻したり、買い物をしながら、ゆっくりしているとオーベルマイヤー侯爵から、連絡があった。
名誉騎士の叙勲の準備が整ったので、執り行いたいとのことだ。
日程の調整を終えて、式に臨むことにする。
叙勲には、ティアとディートが同行してくれることになった。
他の仲間は宿で大人しくしているとのことだ。
俺のせっかくのめでたい式だから、見に来るよう言ったのだが、丁重に断られてしまった。
苦労も分け合おうよ。
当日、仕方なく俺達三人で迎えの馬車に乗り、侯爵邸に向かうことにする。
なんか、三人だけだと寂しい感じがするなと感想を言ったら、私達は二人で何回も往復しましたよと、言われてしまった。
まぁ、確かにだな。苦労をかけてすまないと謝っておく。
それには、二人揃って「「冗談よ。」」と返してきた。
仲がよろしいことで、まったく。
屋敷に着くと、俺は応接室にとおされる。
ティアとディートは一足先に侯爵様の所に向かうそうだ。
そこで、任命式のレクチャーを受ける。
なんか、侯爵様の前で一礼して跪くだけでいいの?
最後に本当は一言あるらしいけど、それは今回は名誉騎士なので言葉にする必要はないそうだ。
ただ、心の中ではちゃんと発して欲しいと言われた。
まぁ、ただ跪くだけではレクチャーにならないだろうから、承知しておく。
そして、任命式が始まる。
大広間に案内され、中から声が掛けられる。
緊張しながら、開かれた扉を潜ると、目の前には侯爵夫妻が座っている。
その前には、この屋敷にいる騎士や文官、そしてティアやディートが両脇に控えている。
俺は侯爵様の目の前まで進むと、一礼して跪く。
公爵は立ち上がり、儀礼用の剣だろうか、それを鞘から引き抜き、俺の肩に剣をあてる。
そして、何やら言っているが、どうやら王命で任ずるところをオーベルマイヤー侯爵の名において任ずると言うことを古語を用いて言っているようだ。
古語はうまく聞き取れないと言うことは、それは、何となく感じていたが、俺は言語として使えるのはこの国の言葉だけなんだな。
それが終わると俺も教えられた言葉を心な中で発する。
「これで、終了だ。何かあったら、我が家の名誉騎士を名乗るがよい。」
侯爵様は手にしていた剣を配下に渡すとそう言った。
「ギリーさん、なかなか立派でしたよ。」
座っていた夫人も立ち上がって、近づくとそう言ってきた。
「ありがとうございます。オーベルマイヤー家の名に恥じぬよう振舞います。」
俺もそう夫人に答える
「ええよろしく頼むわね。」
それを聞いて、夫人はそう言って、にっこり微笑む。
なかなか妖艶なほほえみだねぇ。
気品あふれると言うか、さすがお貴族様です。
その後、侯爵夫妻と別室に通されて、この前頂いた短剣とは別に、騎士としての剣を渡された。
細身の剣で、鎧の隙間を狙うような魔物用ではない、対人向きの剣だ。
それをありがたく拝領する。いろいろ持ち物が増えてくな。
それと周りに人もいないで、先日あった剣で、そこで詳しくは言えないので、濁したがエーデルシュタイン公爵様と知己になったとこを伝えておく。
報連相は大事だし、面倒に巻き込まれそうなら、頼らせて貰うつもりだしね。
「そうか。エーデルシュタイン公は同じ派閥の長でもある。なにかあれば、我が名を出しても問題はないだろう。」
おう、同じ派閥なのか、ならば安心かな。
俺は侯爵の言葉を聞いて、そう安堵の表情を浮かべる。
「ギリーよかったわね。」
ディートがそう声を掛けてくれる。
彼女も内心、公爵家と関わりになったことを心配してたのだろう。
「だな。面倒を避けようとしているんだが、どうも面倒が寄って来るよな。」
「ははは、実力がある者の所には、昔から苦労が寄って来ると言うからな。」
俺の言葉を受けて、侯爵様がそんなことを言って来る。
そんな例え知らないですよ。この世界独自の例えですか?
「旦那様、苦労は皆平等に来るものですよ。その苦労を乗り越えられる実力がその人にあるかないかだけです。」
夫人は侯爵様の言をそう否定して来る。
うん、思想や宗教観の違いかな。
でも、そりゃ、苦労はみんなに襲って来るかもだけど、苦労は個々で難易度が違ってくると思いますよ。
上の者の言い争いに交わる気はないので、内心そう思いつつも黙っているけどね。
それから、侯爵からエーデルシュタイン公爵の情報を簡単に教えて貰った。
なるほど、他の派閥から支援を受けていたミヒャエルの一派が跡継ぎを廃嫡しようとして、失敗した訳か。
それで恐らく、王都で別派閥の元の協力を借りて、もうひと勝負出るつもりだったようなのか。
大体の経緯はわかったが、口止めされているので、それは伝えず。
叙勲していただいたことと、公爵家の情報を頂いたことだけに礼を言い、屋敷を後にすることにした。
てことは、ミヒャエルが生きたまま捕らえられたことで、まだ、一悶着この件はありそうだな。
とりあえず、これで王都での用件はなくなったので、巻き込まれないように雪解けを待ってイオナに向かうつもりだったが、少し回り道をして別ルートで帰還するとか、考えて予定を練り直した方がいいかもな。
俺は帰りの馬車でそんなことを考えながら、宿に戻ったが、そんな考えを無にするような事態が宿で待ち構えているのを知るのはもう少し先のことであった。
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