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第56話 プロポーズをしよう

 しばらくすると、ティアが来たのだろう。部屋のドアがノックされた。

 俺は、中に入るように促す。


 「失礼いたします。」


 ティアは幾分緊張気味に部屋に入ってくる。


 「まぁ、ちょっと話を聞いてくれないか。」


 「はい。」


 ティアはそう返事をして、俺の正面に座る。

 俺も緊張しながらも話を切り出す。


 「まだ、出会って1カ月ちょっとしか経っていないし、プライベートでもさほど繋がりがないから、こんなことを急に言われても困るかもしれないが、愛している。俺と結婚して欲しい。」


 そう言って、俺は鞄の中に入っていた指輪を取りだして、ティアに差し出す。

 これはボス装備の一つで、指輪に効果を発動させると『防御』の効果を持つ物だが、純度が高い魔輝石が嵌め込まれていて見た目も黄色く輝いていて綺麗な一品だ。

 このタイプの指輪はいくつかあるので、何も渡さずにプロポーズするよりましだろうと、先程とっさに用意した物だ。


 「あ、あの、侯爵夫人のお言葉でと言うことであれば、無理をしなくてもよろしいですよ。私は別に気に致しませんから。」


 俺の突然の告白に、侯爵家での一件である程度覚悟をしていたであろう、ティアはそう断って来た。

 だが、俺もここで引くのは男としてどうなのだと思い。

 さらに踏み込んでティアに迫った。


 「きっかけは、そうかもしれない。だが、これからのこと、パーティーのこと色々考えて、それと一番大事な自分の気持ちにも正直になるべきだとも考えた結果だ。

 ただ、俺の申し出を受けて貰えても、ティアだけでなく、他の人とも結婚をすることになかもしれない。

 俺と結婚は嫌だ。そんな複数のとの関係は嫌だというのなら、断ってくれても構わない。

 もう一度言わせてもらう。結婚してくれないか。」


 「はい、喜んでお受けいたします。ですが、本当に私とでよろしいのでしょうか?」


 ティアは少し逡巡しゅんじゅんを見せたが、今度はそう言って、俺のプロポーズを受けてくれた。


 「もちろんだとも。」


 俺はそう言うと、ティアの指に指輪をはめて、優しく抱きしめる。

 ティアの柔らかい体の感触が伝わってくる。

 その体制のまま、ティアはこう語ってくれた。


 「最初は、冒険者をしている人のところに働きに出ることになると聞いて、不安だったのです。でも、私を給仕としてでなく、他の皆さんと同等に扱ってくださってうれしかったのです。そればかりか冒険者として魔法まで授けて下さり、仲間として扱ってくれるんだと嬉しかったのですよ。」


 「そうか。他にも妻を向かい入れたいと言っている男の言葉だと軽く聞こえるかもしれないが、これからも大切にするつもりだし、幸せを築いて行こう。」


 「はい、私もギリーさんに相応しいと世間から思われるようにいたします。それとお声がけする相手ですが、リアさんにも、お声がけをするのですね。」


 「ああ、よく分かったな。そのつもりだ。こっちもどうなるかわからないのだけどな。」


 「うふっ。その心配はいらないと思いますよ。」


 「そうなのか?」


 「ええ。」


 「それと、あとディートが第二夫人に立候補してくれた。なのでディートにも声を掛けるつもりだ。」


 「なるほど、それがいいかもしれませんね。というか、もういっそのこと皆さんにお声がけしてはいかがですか?」


 「いや、さすがに、それはどうなんだ。」


 「ふふふ、それ位の甲斐性を見せて頂いてくれてもよろしいですよ。」


 「まぁ、それは置いておいて、余韻もないことを頼んで、すまないがリアを連れて来てくれないか。」


 「連れて来るって、私も一緒にですか?」


 「ああ、妻になるんだ。一緒がいいだろ。」


 「うーん、私はそれがいいかもですが、リアさんはどうでしょうかね。ですので、私は向こうで待っていますね。」


 そう言うものか。

 どうも俺はその辺の機微はいまいちのようだな。

 ギリーの記憶にもそう言った経験もないしな。

 それと一夫多妻を容認できる思考というのにも慣れていないから、余計女心が判らないよなぁ。

 そんなことを思っていると、再びドアがノックされた。


 俺は心を落ち着かせると、入ってくるよう声を掛けた。


 「お邪魔するよ。で、なんのようだ。」


 リアは、そう言って部屋に入ってくる。

 俺はとりあえず、座るように促す。

 リアが座ると、俺は再び緊張しながらも本日二回目のプロポーズをする。

 なんかそう聞くと軽薄そうにかんじてしまうよな。

 でも、こっちでは懐に余裕があれば一夫多妻は認められているんだ。恐れず行こう。


 「リア、俺は先程、これからも貴族と関わる可能性があるので、今後も変な貴族から婚姻関係を求められないようにと社交界なとの取り仕切りのため、ティアを第一夫人に迎えた。

 もちろん、ティアのことも愛している。」


 「そ、それはめでたいな。おめてとう。」


 「いや、もう少し話を聞いてくれ、それとは、別にリアをそう言ったしがらみのない地位の第三夫人に迎えたい。

 リアと一緒にいて楽しいし、心も安らぐ。愛していると気付かされた。結婚して欲しい。」


 「なぁ。あたいとなんていいのかよ。それこそギリーならいくらでも器量よしの女を侍らせられるだろ。」


 リアは、赤面しながらそう言ってきた。


 「いや、お前がいいんだ、リア。結婚しよう。」


 俺は、リアに再度そうプロポーズをする。


 「本当にあたいなんかと結婚して後悔しないな。」


 「もちろんだ。」


 リアの問いに俺はそう即答する。


 「わ、わかった。よろしく頼む。」


 リアは俯きながら、そう答えてくれた。


 「ありがとう。」


 そう言って、俺は再び指輪を今度はリアの指にはめた。

 こちらはティアに渡したものと同様のお効果がある予備用の物ではあるが、なぜか魔輝石の輝きは赤で違うので、見た目がかぶらないと思い用意した物だ。


 「こっちこそ、ありがとな。

 あたいはギリーと違って頭もよくないから、パーティーでそう言った感情を持って、それで関係がギクシャクしないかとかいろいろ足りない頭で考えてたりしてたんだ。

 でも、答えを出せずにいて、こんなこと仲間にも相談できないしで、どうしたらいいかわからずにいたんだ。」


 「そうか。すまなかったな。俺ももっといろいろ理由を付けずに自分に素直になっていれば良かったのかな。」


 「そんなことないって。でもよあたいは第三夫人だろ?第二夫人はどうすんだ?」


 「そこは、ディートに頼もうと思う。彼女自身から立候補してくれたのでな。」


 「あー、なるほど、さっきのはだからか。じゃぁ、もう少しこうしていたいけど、皆のところに行こうぜ。」


 「いや、一応、ディートもここに呼んで、話をするつもりなんだがな。」


 「でも、ディートがあたいとの話が終わったら、ギリーを連れて来いって言ってたぜ。」


 うん、なんだ、一応ディートにも告白をと考えていたんだが、まぁ、ディートの考えなら、こう言ったことは詳しいはずなので、任せるか。


 「そうか。確かにもう少し二人でいたいが、それはこれからいつでもできるし、行くか。」


 「おい、恥ずかしいこと言うなよ。」


 そうして、彼女達のいる部屋にリアと共に戻ることにした。    

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