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第55話 覚悟を決めよう

 話を聞くと、王都のお店で侯爵家の顔が効くお店などいくつか教えて貰っていたようだ。

 その中に給仕達が出入りするようなお店もあったので、そこに行くことにした。

 それで肝心の侯爵様との話し合いの内容は、後で俺にとりあえず話して、それ次第で皆にもどこまで伝えるか決めるそうだ。


 無事に宿屋がある街区に着くと既に陽が沈むころとなっていたので、俺達はそのまま自分たちの宿に直行する。

 夕食はディート以外試食でそれなりに食べたはずだが、食べるということなので、注文を行う。

 皆さん貴族宅で緊張してたせいか、結構がっつり注文する。

 俺はなんか軽くでいいか。

 そうして、食事ができるまでそれぞれの部屋で一旦休むことにする。


 食事はいつもどおり行われ、ディートも普段と変わらない様子で皆とおしゃべり楽しみながら食事をしていた。

 普段と変わらないようだけど、大したことじゃないのかな?

 でも、俺と話してから、皆に話すと言っていたし、なんか気になるな。

 だが、周りは普段の雰囲気で食事が進み、そして、明日とりあえず、馬車の中で話したお店に服を買い揃えに行くことにする。

 食事が終わるといつもはここで、皆で寛ぐいてくだらない話に興じるが、ディートが俺と話したいと言ってきた。


 とりあえず了承し、俺とディートで俺の部屋に向かう。

 女性と二人で、部屋に入るのはまずいと考え、レストランの方で話すかと聞いたのだが、なるべく人に聞かれたくないということでこうなってしまった。

 とりあえず、部屋に入ると、椅子に座るよう促し、俺の鞄から酒とつまみを取りだし、酒を盃に注ぐとテーブルに置く。


 「ありがとう。」


 そう言うと、ディートは座って、軽くお酒を口に含む。


 「で、侯爵様達に何を言われたんだ。」


 俺も酒を口に運びながら、本題に入るよう促す。


 「せっかちですわね。まぁ、いいでしょう。」


 そう言って、ディートは語りだした。

 まず、一つ目は、侯爵としては、この少人数で大型の魔物を倒した俺達を心配しているとのことらしい。

 侯爵家ではもちろん秘密を知られないようにするが、どこで秘密が漏れるかもわからない。

 俺達の強さの秘密はわかっていないようだが、それでも普通の冒険者ではなしえないことができるということは知られれば、当然問題になる。

 なので、囲い込む気はないが、俺達のことが世間に知られるようなことになった場合、後ろ盾になれるよう、ティアとの婚姻を積極的に考えて欲しいとのことらしい。


 うん、確かに初級の武芸の書だけでこの人数で倒すのは厳しい敵だけど、それを二体こちらの犠牲なしに倒しているのは確かに異常か。

 もう少し考えて、動くべきだったか。

 ボスのドロップをちょっと簡単に処分しすぎたなぁ。

 お金に困ってる訳でないから、もう少し手元に置いて、処分方法ももうちょっと考えるべきだったか。


 「何を悩んでるのかしら?もしかして、リアのこと?」


 ん、リア?なんで、リア?

 俺が疑問の表情をしているのを読み取ったのか、ディートは続けて話をしてきた。


 「あら、ごめんなさい。違ったのね。」


 「リアって、何のことだ?」


 「貴方を好きらしいから、それで貴方が気にしたのかと思ってたの。ごめんなさいね。」


 「へ、リアが?」


 「そうよ。気付いてなかったのね。」


 「いや、何となくは、感じてたけど。そう言った感情を持ち出すのを避けていたのかな。」


 「そう。その辺を気にしているなら、ティアを第一夫人にして、リアを第三婦人に向かえればいいのよ。」


 へ?第二でなく、第三?


 「あの?第二は?」


 「それは、ちょっと失礼な言い方だけど、もう少し身分か教養のある貴方が気になる人を迎えればいいのよ。第一、第二婦人は公式な場に出る必要があるの。冒険者としてや商人として名が売れれば、そこに顔を出す必要があるのよ。彼女はそんなの望まないでしょう?」


 「なるほど。」


 このまま冒険者しばらく、冒険者をするにしろ、ディートと商売をするにしろ、目立たないようにするつもりだけど、現にこう貴族と関わったりしてしまっているし、形だけでもか。

 でも、本当に侯爵家と繋がりを強化する必要があるのかな。

 ティアだって、俺と結婚するというのをどう思っているかわからないし。

 そう考えこんでいると。


 「侯爵家は結婚すれば、貴族位か名誉騎士の称号を与えると言っているわ。それがあれば多少目立っても、侯爵家からそれなりの力を与えられたと思われるわ。

 それと、ティアのことなら、貴方のこと満更でもないと思ってるはずよ。」


 ディートは、そう言ってきた。

 なんですか、ディートさん、貴方はエスパーですか。


 「本当に?」


 「ええ、女性の勘ですが、保証しますわ。」


 勘なの。違ってたらどうするの。

 まぁ、実際問題、侯爵に特別な強さと思われている以上、今後こう言ったことがばれる可能性がある。

 俺達をボスドロップの買取以上に利用する気もなさそうだし、後ろ盾になって貰うのもありか。

 俺としては、リアにしろ、ティアにしろ、結婚をしろと言われて拒否するほどの悪感情もないし、向こうが俺の求婚を受けてくれれば、問題はないのか。

 侯爵にも行ったように、悪感情はないけどそれが愛しているという感情なのかが、いまいちわかんないのだよな。

 でも、一緒にいるのは楽しいし、苦にならないと考えれば、好意自体はあるのか、なら、そこに愛があるかないかと問われると、あるという考えたほうが、論理的にも成り立つのか。

 結婚は自体、お互いの家の強化とか考える時代だし、愛があるかないかを考えるのが時代にそぐわないけど、俺の感情的にはこだわりたい。

 その結果、愛がないわけではないと考えるべきなら、一人だろうと二人だろうと結婚してやろうじゃないか。

 あ、でも、第二夫人て空席だけど、ずっと開けておくことって出来るのか?


 「あの?第二婦人は開けておくことも可能なのか?」


 「可能か、不可能化で言えば、可能よ。ただし、貴族からまたねじ込まれたら、断るのは難しい場合があるわ。相手次第ね。」


 「それは困るな。」


 「なら、貴方さえよければ、私を第二婦人にすることも可能よ。」


 「え、でも、いいのか?」


 「まぁ、貴方との関係がずっと継続できるし、悪い話じゃないと思うわ。他の誰かを迎えても、貴方との繋がりを邪推されたらかなわいから、結婚して自分の地位を固めるのはありですわ。」


 「えー、そこに愛情はないのか。」


 「それは、……。」


 そう言って、ディートはうつむく。

 ちょっと意地悪過ぎるな。彼女なりに覚悟を決めての発言だろうし、恐らく侯爵サイドからもそんな話を持ち掛けられたのだろう。


 「まぁ、ちょっと意地悪を言い過ぎた。俺も覚悟を決めるよ。ただ、順序もあるのでディート。ちょっと待ってくれ。」


 「わかったわ。」


 「すまないが、ティアをここに呼んでくれないか。」


 こうして、自分の気持ちもまだちゃんと整理できていないし、侯爵達にうまく転がされているような気もしないが、俺だけじゃなくパーティーメンバーを守るということを考えれば、動かなきゃいけないだろう。

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