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第54話 料理に生の素材を使わないようにしよう

 とりあえず、俺は話が済んだということで、部屋を出されて厨房の方に案内された。

 ディートのことは気になったが、今はディートに任せるしかないので、調理の方に集中することにした。

 俺が準備を整えて、厨房にはいるってみると、すでにリア達によって下拵えがほとんど終わっているようだった。


 「よう、遅かったな?あれ、ディートはどうした?」


 俺が厨房に入って来たのに気付いたリアが声を掛けて来た。


 「ちょっと、侯爵様達に呼び止められている。」


 「お嬢様に何かあったのです?」


 俺の回答に、パルマが慌てて反応する。


 「いや、そう言ったことじゃないと思うぞ。まぁ、あとで話せる内容なら、ディートが話してくれるだろう。」


 「そうですか。」


 いまいち心配気味の表情のままパルマはそう俺の言葉に返してきた。

 まぁ、心配なのは分かるが、ここは今の依頼を無事に終わらせることに集中しよう。


 「まぁ、気になるのはわかるが、今はディートを信じて、俺達は俺達でやらなきゃいけないことに集中しよう。いいな。」


 「わかりました。」


 「で、準備は見たところ大分進んでいるようだな。」


 「ああ、それぞれで先に進めて問題ない準備だけはやっておいたぞ。調味料も全部揃っていたし、いつでも料理に取り掛かれるぞ。」


 「リアが、張り切って仕切ってくれたんだよ。」


 「ミサ、うるさいって、そんな事どうでもいいだろ。」


 「いいえ、冒険者とは思えない素晴らしい包丁捌きと指示ぶりでしたよ。料理長である私も感心しました。」


 「ええい、そんなことはどうでもいいって、さっさと続きをするぞ。こっからはギリーに任せるからな。」


 ミサだけでなく、料理長にまで褒められ赤面しながらもそう言って、続きを俺に振って来た。

 俺もふざけてそれに応じる。


 「そこまで凄い人から変わって教えるのは、恐縮ですがここからは私が説明しながらやらせていただきます。」


 そうして料理を作っていく。

 米料理として、魚が嘔吐では流通していないのか見なかったので、淡白な鶏肉を使ったパエリア風の料理とトマトも流通していないのでピラフを卵で包んだオムライスにホワイトソースをかけた料理の二点を用意する。

 肉料理はかなり悩んだが、揚げ物にする。

 一品目はとんかつだと似たようなものがあるかもしれないので、メンチカツを作る。

 ソースはいろいろ試行錯誤したがなかなか満足する物が出来なかったので、チーズと生クリームに肉や野菜で作った出汁を加え、ニンニクを多めに加えた一時日本でも流行ったシュクメルリというジョージア料理風の煮込みをソース風仕上げて作った。

 まぁ、日本の調味料になれた俺にはちょっと物足りなかったが、彼女らには好評だったので、これで良しとした。

 もう一品は魚があれば良かったのだが、なかったのでとり天といくつかの野菜天を作った。

 ただし、衣に味を付けて塩味を強くし、それにビネガーソースを作ってかける。

 天ぷらというより、フィッシュアンドチップのフィッシュような感じのものを作った。

 本当はソースをマヨネーズかタルタルソースにしたかったのだが、マヨネーズなんぞ自作したこともないから、一から配合を試さないといけない。

 それに卵が生だけど恐らく酢で殺菌されているのかも知れないが、異世界だし、地球にいた時の知識で作って安全性を検証せずに提供して、貴族に教えて万一があったら、ただでは済まないので、火を通すソースや彼女らが知っていたソースをアレンジして作った物を試して、料理に一番味が馴染んていた物をだしたのだ。

 最後はスープだが、中華風の肉団子スープと、もしかしたらあるかもしれないが女性陣は知らなかったので人参のクリームスープを作ってみた。

 なるべく、今ある材料で美味しいと喜ばれる料理をということで頑張ったよ。


 ここまでで、説明や質問にも答えながら作っていたため、結構時間が掛かってしまった。出汁とかはこれを煮込んで灰汁を取って煮込むという説明で済ませ、料理番組風に出来上がりの出汁を用意したんだけどね。

 料理人だけあって、色々な知識もありかなり色々聞かれたからね。

 そんな訳で、お菓子はまた日を改めてと言うことになった。


 ディートは結局かなり話し込んでいたようで、俺達が料理を作り終えて試食をして感想を交えながら料理人達と試食をしているときだった。

 彼女にも試食をするよう勧めたが、疲れたのともう食べているので別室で休んでいると言われた。

 ディートのことも気になったし、料理長もこれから教えた料理をこちらの技術と融合させてマッシュアップしたりしたいだろうし、侯爵様達への夕食の準備もあるだろうしで、試食会は速めに切り上げた。


 俺達が片づけをしているとき、料理人が家令さんを呼んで下さり、お菓子作りの日程を詰める。

 ボスドロップを売ったお金が入ったから、今までの収支も計算するまでもなくプラスに転じたし、報酬はその時まとめて支払ってくれるようにお願いをした。

 帰りも馬車を用意して下さったので、ありがたく使わせて貰う。

 馬車の中で、俺はティアに話しかけた。


 「そう言えば、ティアは今日は侯爵様と顔を合せなかったが、良かったのか?」


 「はい。私は母が亡くなった時以外は、使用人としてしか接していませんので、父親という感覚がありませんので会う必要はないかと思います。」


 ティアはそう言ったが、夫人が貴族籍を用意して王都の邸宅に迎えてくれると言っていたのだし、向こうはそうは思っていないのでは?と考えたが、それは口に出さずに頷くだけにした。

 しかし、そんな大事に思っていると思うのだが、なぜ俺と婚姻とかいう話を持ち出してきたんだ?

 その辺は侯爵より夫人の方の意向という気がするけど、それを言ったら貴族籍を用意して迎えるというのも夫人の意向か。

 侯爵の考えなら、イオナの街で俺に下げ渡そうとせずに王都に連れて行けと依頼していたはずだしな。

 でも、結婚を考えろとは、いくら貴族社会で一般的とはいえ、自由恋愛が主流だった世界の俺からすると受け入れられないよな。

 ティアと恋愛か。いくら一緒にいるとは言え、会って一カ月ちょっとだし、それもなぁ。

 確かに綺麗だし、体つきも、器量もいいけど、って、俺は何考えているんだ。


 「ティアは給仕服だからいいよな。あたいとミサは貴族邸に伺える衣装は冒険者の恰好を除くとこれだけだから、あたい達も給仕服着て伺うか?なぁ、ミサ」


 「それは、いいかも。でも、イオナの街でティアは給仕服買ったから、お揃いを揃えられるかしら?」


 「出立まで時間がなかったので既成の物を買ったので、似たようなデザインならあるのでは?」


 ここは、そうだ出かけるときに考えていたことを提案しよう。


 「なら、今回はみんなの服装を既製品になってしまうが、明日にでも買いに行こう。それとしばらく王都にいるのだから、ついでにオーダーメイドの物もいくつか発注しよう。金なら今日の報酬で十分なほど入ったからな。」


 「そういえば報酬はいくらだったんだ?」


 リアは俺の提案より、報酬の方が気になったらしくそう聞いて来た。

 提案のことを無視されたのはちょっとショックだったが、気を取り直して、盛り上げるように金額を発表した。


 「なんと聞いて驚くなよ。依頼料の金貨100枚と合わせて700枚だ。」


 「はぁ?前回が120枚だったろ?というか、わずかな期間にこんな稼ぎまくれるなんて嘘のようだな。」


 「本当よね。」


 「皆さん凄いですね。」


 リアとミサは前回との違いと金額の大きさに驚いていたが、ティアは他人事のように驚いてそう言った。


 「何言っているんだ。ミサも今回の討伐には加わっていただろ。お陰で大した苦戦もせずに倒せたんじゃないか。冒険者登録もしているし、当然今回の報酬の分け前はあるぞ。」


 「えええ。でも、私は雇われも身ですし。」


 「それは、家事についての雇われ契約だろ。みんなもそれでいいよな。」


 「もちろんだとも。」「ええ。」「異論はありません。」「当然です。」


 他のメンバーもそう言って肯定してくれた。


 「そういうことだ。いいな。それとみんなで服も明日買いに行くぞ。」


 「それはいいけど、王都の紹介状がいるような店の当てはあるのかしら?」


 ああ、高級店はそれがあるのかうっかりしてた。どうする侯爵に頼むか?


 「なかった。」


 「まったく、では、私が案内します。」 


 ディートはそう言ってくれた。でも、ディートも王都初めてでしたよね。  

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