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第53話 ドロップ品を売却しよう

 その後、たわいのない雑談が行われ、俺の知識にそれらが蓄積される。

 貴族との会話は有意義ではあるが、やっぱり面倒だからできればしたくないよなぁ。

 身分差があるから、余計なことや失礼なことが言えんしな。

 そんなことを考えながら、相手の言葉に相槌を打つ。

 そうこうしていると、部屋の扉がノックされ、「魔物のドロップ品の鑑定結果がでたのでお持ちしましたと。」とノックした自由を付けられた。

 家令がその対応に向かう。


 家令は部下から手紙を受け取ると侯爵の目の前にそれを置いた。

 その手紙を前にして、侯爵は俺達に問いかける。


 「結果が出たようだが、鑑定結果の一番高い金額を支払うということでよろしいかな。」


 え、普通中間の金額か平均額でとかじゃないの?

 俺はもう交渉はディートに任せるつもりだったのだが、思わず聞いてしまった。


 「あの、普通は鑑定結果の中間額や平均額での支払いではないのですか?」


 「いや、普通に最高額での支払いが基本だが?そうであるな。」


 俺の質問にそう答え、家令にも確認を行う。

 家令の侯爵の言に当然のように頷く。

 まじか。じゃぁ、なんで複数名鑑定をさせるんだ?

 俺の表情を読み取ったのか、侯爵はこう付け加えてくれた。


 「ああ、もちろん、鑑定額にあまりに差異があった場合は保留させて貰うぞ。」


 なるほど、不正な値付けが無いかのチェックのための複数の鑑定なのね。


 「なるほど、でしたらそれで異論はございません。」


 あ、同意してしまったけど、いいよね?

 そう心配になり、俺はディートを見やる。

 ディートは特に表情を動かさずに、前を見据えたままでいる。

 口を挟んでこないなら、問題ない?


 「では、同意が行われたので、開封させて貰うぞ。」


 侯爵はそう言うと、家令が前に進み出で侯爵の替わりにその中の一通の開封を行い、それを侯爵に差し出す。

 それを侯爵が読み上げる。

 その金額を聞いて俺達は驚く。

 だが、残りの二通も同じように侯爵が読み上げ、その金額が妥当と言うことを証明してくれる。


 でも、イオナでクライン商会に売った魔物のドロップはこの五分の一くらいの値だったけど、もしかして、ディートのお父さんに買いたたかれた?


 「では、それぞれの最高額と言うことで、魔石が金貨200枚、剣が金貨50枚、頭の角が150枚でいいかね?」


 全部で金貨600枚って、なんかすごいな。いや、正確には依頼料の金貨100枚もあるのか。

 しかも、ボス一戦だけでこの収益はえぐくないか。

 それでも、前回と値付けが違いすぎるので、先程の疑問を尋ねてみる。


 「金額的には問題ないですが、以前のドロップ品と値段が違いすぎませんか?」


 「ははは、それは売った場所の違いだよ。

 いいかね。イオナであれを買えるのは、私含めて五人もいないうえ、その中でも一番金を出せるのが儂と言うことになるだろう。

 だが、ここ王都に屋敷を持つ侯爵以上の爵位を持った者だけでも、五十人は下らない。それに王都の豪商の中には貴族にも負けぬ稼ぎがある好事家も多い。

 つまり、儂以上に金を出せる人間が当然出て来る。

 すると買うために必要な資金力もイオナなら、ほぼ言い値で済むが、王都ではそうは行かなくなるので、儂だけなら出さないであろう、金額に跳ね上がるのだよ。」


 「なるほど、需要と供給のバランスで、イオナでは買い手が強くなるが、王都では売り手が強くなるので値が張るということですか。」


 「そう言うことだ。君は冒険者の割に難しい言葉を知っているな。」


 あ、しまった。そうだよね。つい普通に話してしまった。

 でも、需要や供給という言葉が知識層には認知されていたのは、俺の発言を誤魔化せるし、よかったな。

 

 「いえ、たまたま冒険者であった両親から、された昔話に出て来て、覚えていただけですよ。」


 そう言って、この場を誤魔化す。上手く納得してくれるといいな。


 「そうなのか。まぁよい。では、この金額で契約と言うことで問題ないな。」


 「はい、それでよろしくお願いします。」


 俺の返事を聞いて、侯爵は家令に命じて、支払いや契約の準備を行わせる。

 家令が準備のため部屋を出て行くと、侯爵は俺にこう話しかけて来た。


 「なぁ、ああ言った物があるはいろいろと役立つのでな。無理に倒せとは言わんが、また、倒せそうな機会があったらで構わんが、儂に回してくれないか?」


 「たまたま倒せただけですし、結構危ない戦いでしたので今度出会っても、戦うかはわかりませんよ。

 それに今回と前回で結構稼がしていただきましたので、余計危ない橋は渡らないかと思います。

 なので、あまり期待せずに頂ければということでしたら、よろしいでしょう。ディートもそれで構わないか?」


 まぁ、戦って負けることはないだろうが、無傷で勝てるわけでもないし、パーティー内の目的も違うので無理に戦うこともない。

 ただ、もし、戦ってドロップを処分するのに伝手があるのはいいことだし、空約束で良ければと言うこで了承し、一応商人を目指しているディートにも取り扱う気はないよなという意味で確認しておく。


 「ええ、ギリーがそれで良ければ、お任せしますよ。」


 「ああ、君は、お父さんと同じ、商人を目指していたのだったな。君が取り扱うなら、君から買ってもいいが?」


 「いえ、それには及びません。王都で商売をするほどの実力はまだ備わっていないと承知しております。まず、別のところで足を固めて、そこで成功したら、王都でぎるどかにゅうをかんがえておりますので。」


 「おお、そうか、しっかり考えておるのだな。もし、王都に店を構えるなら、我が家を頼るとよい。紹介状の一つや二つ用意してやるぞ。」


 そう言って、侯爵はあらかじめ用意していたのだろう。小ぶりの短剣を二本、懐から取り出し、テーブルの上に置くと俺とディートの前に差し出す。

 その短剣を見ると侯爵家の紋章が刻まれている。


 「ありがとうございます。侯爵閣下。」


 ディートはそれを丁寧に両手で取り上げ、そうお礼を言う。

 俺も慌てて、ディートに倣い、同じようにその短剣を受け取る。


 「儂やエミーリアが居ないときでも、それを見せれば我が家の誰かに取り次げる。それと、貴族と揉め事があればそれを見せろ、よほどの相手でない限り、無下にはされまい。」


 そんな話をしているうちに家令が書類を整え戻って来た。

 契約書をお互い確認し、問題がないということを確認して契約が結ばれる。

 そして、金貨が小さなトレーに載せられて、運ばれてくる。本来は確認するべきだが、相手が貴族なのと枚数が多いことから、それを受け取ると、皮袋を取りだしてしまいこむ。

 これだけの金貨が侯爵家ですぐに支払われるということは、貨幣は思ったより流通しているのかな?


 「これで、こっちの話は無事終了だな。お陰で殿下の機嫌を損なわずに済みそうで助かったよ。」


 「こちらも王都で羽を休ませるのに、思わぬ臨時収入で助かりました。まだ、料理の方の依頼を済ませないといけませんので、では、これで失礼します。」


 そう言って、無事にこちらの用件は片付き、俺達は、今度はリア達が料理をしている厨房へ向かおうとする。

 すると、商談の間、黙っていた夫人がディートを呼び止め、残るように言う。


 俺は心配して、ディートを見る。

 だが、ディートはすこし微笑むように顔で、俺にこう言ってきた。


 「こっちは大丈夫です。それに厨房では、私はあまり役立ちませんから、先行ってください。」


 「わかった先行っている。でも、最近は料理の腕を上げて来たし、役立たないということはないぞ。」


 俺も笑い返しながら、そう言いうと先に部屋を後にすることにした。

 でも、なんでディートが呼び止められた?さっきの商売の話か? 


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